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第二章
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しおりを挟むプロフェッサー引退の情報と、プロフェッサーが少女を匿っているという情報を知った商人は、早速その情報を売るべく闇市へと帰った。
情報を売る相手を探している時、彼はデットロリポップ海賊団が女を捜しており、且つその女の情報が思うように集まっていない事を知る。
その事を知った商人は、情報を売り込むべくデットロリポップ海賊団に連絡を取った。
「ほんまです。お探しの人は、プロフェッサーの研究所に匿われていますんや」
デットロリポップ海賊団の駆逐艦スカルヴァイトのブリッジで、もみ手をしながら商人は言った。
「証拠はあるんだろうな?」
「もちの論です~。ほな、これをお聞き下さい」
商人は、懐から取り出した端末に入っている音声データを再生した。
端末から流れてくる声は、小娘の声…と知らない男の声が二つ。
だが、そんな事はデットロリポップ海賊団のお頭であるデルトンには関係ない。
「くくく、見つけたぞ小娘め!」
紛れも無く自身を馬鹿にした小娘がそこに居るという事。それさえ分かれば、それ以外はどうでもいい。
「いいだろう。情報料を払ってやる幾らだ?」
「いえいえ、今回の情報は、ロハでサービスさせていただきます」
商人は、端末をしまい、もみ手をしながら言った。
その様子を見ていた海賊の頭が目を細める。
「何?がめついテメェら商人がロハで、情報をくれてやるだと?何考えてやがる?しかもそこはお前の得意様じゃなかったか?」
「ええ。ええ。ですから、今回の事は残念でなりまへん。あそこの博士はんがあそこを畳みなさる言うて…。もうあの御仁が作るパーツを卸していただけなくなるそうなんですわ…ちゅー訳で泣く泣く…」
「それで、お得意様を売るって訳だ」
皮肉げにデルトンが言う。
「こちらとしても、博士の生活に協力したのに、こちらに何の相談も無くこんな不義理許せることでは無いんですわ」
いかにも残念そうだが、目は笑っている。
実際はギブアンドテイクの協力関係でしかないのに、それが途絶えたからと言って、情報を売って相手を不義理を批判するのはおかしい。だが、そんな事は棚に上げて自分を正当化する。
「ご存知の通り、あの爺さんのいる研究所の周りには、修理されたビーム砲が多数配備されてます。これには、さすがのデットロリポップ海賊団でも無傷で通り抜けるのは至難の技」
「そんな事は知っている。他の連中がそいつで沈められてんだからな」
「ワイも、こんな事もあろうかと商売に行く度に、ビーム砲の隠し場所を調べてたんですねん。一つわてのお願いを聞いてくだされば、その厄介なビーム砲のある位置を示した宙域図を差し上げまっせ」
「はっ!そんなこったろうと思ったよ。言ってみろ。場合によっちゃぁ聞いてやらんことも無いぞ」
デルトンの返事ににんまりと笑いながら商人は話し始めた。
「ほんまでっか!いえね。簡単なお願いですねん。それさえ飲んでいただければ、こちらのデータも無料で提供させていただきますぅ」
「…なるほど、やっこさんの塒の中にゃ、タップリとお宝を溜めこんでるって事か…」
「いやぁ~参った。そこまで悟られてはこっちも商売上がったりですわ!どうでっしゃろ、博士の研究所にあるパーツを売ったら7:3で儲けを分けまへんか?」
「当然俺が7だよなぁ?」
「がっついちゃぁいけません。そんなんしたら、わいの生活すらままなりませんわ。仕舞いにゃ女房子供を質に入れなきゃあきまへん事になりますわ。わてが7、デットロリポップ海賊団が3ですわ」
「ふん。知ったことでは無いわ。俺らが6、お前が4」
「無理言っちゃああきまへん!ワテのデータが無ければ、目的を達成できたとしても、それなりの傷を負う事になりまっせ!それに儲けが付くんですさかいワテが6、旦さん達が4。これ以上は負けられまへん!」
「ちっ!まぁいいだろう」
(いざとなりゃあ。コイツもぶっ殺しちまえばいい)
「それに、今回の作戦には、他の海賊にも協力を取り付けておます」
「何ぃ?」
お頭が凄むが、商人は平然とした様子で言い返した。
「何言ってますのん。博士の研究所に行くまでに配置されている隠し砲台の地図はありますけど、砲台の数はかなりありますねん。一隻の駆逐艦で全て破壊していくとなります時間が掛かりますで?そんな時間があったら博士は研究所を爆破して逃げてまうでっしゃろ?なら数揃えて一気呵成に攻めなあきまへん!」
これは、ある種の保険だった。
デットロリポップ海賊団以外には、作戦が成功すれば、プロフェッサーの修理した違法パーツを三つ無料で進呈すると言う条件で取引を既に纏めていた。これは、土壇場になってデットロリポップ海賊団が、約束を反故にしようものなら他二つの海賊団の保有する駆逐艦によって沈められる事を意味する。それによって、デットロリポップ海賊団の行動を抑止しようと言う商人の作戦だった。
姑息なのは、"パーツの売り上げの内4割をデットロリポップ海賊団に渡す"と言った契約だ。これならば、無料で進呈したパーツ分のお金は払う必要が無い。例え失敗したとしても、商人には、なんの損失も無く、成功すれば商人にとっては儲けしかない取引なのだ。
「…いいだろう。乗ってやる」
元々、採算度外視でクレハを殺すと決めていたお頭には、多少の儲けなど、ちょっとした小遣い程度にしか考えていない。それどころか、自身の邪魔をするなら、商人の連れてきた海賊団の駆逐艦を沈めてしまう事すら予定の内に入れる。
「では契約成立ですな!」
双方の思惑が錯綜する中、プロフェッサーの研究所を制圧する作戦が動き始めた。
プロフェッサーの居る研究所に向かって4隻の駆逐艦が航行していた。1隻はもちろんデットロリポップ海賊団のスカルヴァイトそれ以外の艦は、商人が違法パーツで釣って来た海賊達だ。
商人の思惑としては、4隻の駆逐艦によって、研究所周囲の隠れビーム砲台を全て破壊、その後、研究所に海賊を送り込んで制圧する予定だ。
最初から、圧倒的戦力差を見せ付けることで、相手に絶対に勝てないと思わせ、投降させる。
これにより研究所と博士を両方無傷で確保し、あわよくば、自身の商会で違法パーツを延々と作らせ、それを自分が売る。それが商人の考えたプランだ。
デットロリポップ海賊団の艦以外にも3隻用意したのは、 もし、土壇場で、デットロリポップ海賊団が、約束を反故にしたり、こちらに攻撃を仕掛けてきたとしてもこちらは駆逐艦3隻、たとえ不意打ちで一隻落とされたとしても、無事だった2隻で袋だたたきにしてやればいい。そう言う考えからだ。
(これで博士はんも諦めて降伏するでっしゃろ。…そうしたら。闇市でのわての地位はうなぎのぼりや!)
自身の輝かしい未来に胸を膨らませながら、商人がプロフェッサーのパーツを餌に仲間に引き入れる事が出来たロルド海賊団の駆逐艦オルガーのブリッジに立っていた。
研究所の近くまで来ると、ブリッジにいる海賊たちに向かって声を張った。
「さぁみなさん!そろそろ博士はんの罠がある場所や!きばってや!」
プロフェッサーの研究所がある場所は、リンデット宙域でもデブリの厚い位置にある。とはいってもその浮遊しているデブリにも、濃い薄いが存在しする。
商人は、デブリの薄い場所を縫うようにしてプロフェッサーの研究所へと通っていた。
その宙域を4隻の駆逐艦は単縦陣の陣形で進んでいく。先頭が商人が雇ったフィア海賊団の駆逐艦ディロット、その後ろをデットロリポップ海賊団の艦スカルヴァイト、その後ろに商人が雇ったロルド海賊団の駆逐艦、オルガーとマシュラの順。この順なのは、デットロリポップ海賊団が裏切れば、すぐに後ろからズドン!と出来るからだ。
「…砲台を発見しました!ってありゃデータが無けりゃデブリにしか見えねぇな」
商人のマップを頼りに砲台を探していたオルガーのレーダー分析官が唸る。
「そうでっしゃろ!わいが、時間を掛けて作ったマップでっせ!信用度はぴか一やで!」
そう言っていると先頭の艦が、見つけた砲台を破壊する。
「さぁどんどん行きまっせ!」
海賊艦隊は、それから順調にビーム砲台や、停止(スリープ)状態で置かれていたミサイルなどを破壊しながら進む。
研究所に近づくにつれ、商人は違和感を感じた。それは、何時もと違う船から見た風景だからと言うわけではない。それを加味したとしても、数十キロ離れた位置から見た研究所の姿が何かおかしい。
近づいて違和感の理由に気がついた。
「何やあれ?」
確かに、商人の目の前に浮いているのは、今まで、商人が取引をしに行っていた研究所だった。だが、それには今まで見たことも無かったものが追加されていた。
以前ボロボロの駆逐艦が研究所にくっ付いたのには驚いたが、今回のは、さらに異質だ。駆逐艦は、再利用できる物として、まだ理解できるが、今回の物は理解できない。
遠めで見れば、研究所を中心に薄いドーナツ型の何かが浮いていたのだ。
『何だあれは!こんなのデータに入ってねぇぞ!』
デルトンが、商人に向かって怒鳴る。
「わても知りまへんで!きっとわてらが来る事を予想した博士はんが用意したんや!気をつけてや!あのお人はイカレてまっせ!きっとアレにも意味がありまっせ!下手につっこんだらあきまへん!」
商人の警告に、従い艦隊が停止した。
だが、謎のドーナツの正体は、あっさりと分かった。それは、この周囲にもある単なるデブリだった。
大小さまざまなデブリが研究所の周りを物凄い速さで回っているのだ。それはまるで土星の輪の様に。商人が謎のリングに困惑していると、研究所から海賊艦隊に対して通信が入った。
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