【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ

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第1章

第13.5話 Side:結衣 友達の為に

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 柴田結衣しばたゆいは、偶々窓を見ていた。特に意味はなく、何となく廊下が気になっただけだ。そうしたら見付けた、室内を見ている藤木涼介ふじきりょうすけの姿を。
 最初は嬉しそうだったのに、すぐに暗い表情になって帰って行った。何かが気になった結衣は、彼が何を見ていたのか確認した。間違いなく彼が見ていたのは、友人の清水凛しみずりんだった。
 最近凛にやたら構う様になった男子生徒と、会話している所を目にしたらしい。そこに違和感を覚えた結衣は、凛を問いただす事に決めた。

「ちょっとちょっと、凛ちゃん」

「え、何? どうしたの?」

「良いから、ちょっと来て」

 凛に好意があるらしい男子から凛を引き離した結衣は、凛を連れて教室を出る。あまり人の多い所でする話でもないので、階段横のスペースへと向かう。

「ねぇ凛ちゃん、藤木君と話したんじゃないの?」

「それは…………まだ」

「どう言う事?」

 事情が分からない結衣は、凛に詳しい説明を求めた。スマホで連絡する勇気が持てず、会いに行ったら女バスの可愛い女子と一緒に居るのを見た。
 また自分では勝てない体育会系の女の子が側に現れたから、辛くて逃げ出したと言う事だった。そんな事になっていたと知らなかった結衣は驚愕した。

「え、それ別に付き合ってるんじゃないでしょ?」

「知らないけど、多分そうだよ」

「何でそう思うの?」

「昔、水野みずのさんと仲良くしてた時もあんな感じだったもの」

 水野と言うのは、小学3年生の時に涼介に告白した女子の事だ。体操が得意な元気で明るい女の子。
 クラスの中心に居るタイプで、人前で堂々と告白した為に沢山のクラスメイトが見ていた。結衣もその時現場に居たので、何の話かはすぐ理解出来た。

「でも、あれだって小学生だよ? 恋人ごっこみたいなものだよ」

「……私は恋人ごっこすら出来てない」

「そう言う事じゃなくてさ、ちゃんと話そう? 藤木君と」

「もう良いの。私は遠くから見守るだけで良いから」

「ちょっと! 凛ちゃん!」

 結衣の静止も聞かずに、凛はその場を離れてしまった。後に残された結衣は悩んだ。友人達の恋愛に余計な手出しはしない方が良い。
 そう言うのは、あまり褒められた行為ではない。下手に土足で踏み込んで良い問題じゃない。
 だけど結衣は知っている。凛がどれだけ涼介が好きかを。涼介が隠しきれない程に、凛が好きだと言う事に。

 幼稚園からの付き合いがある結衣としては、2人に上手く行って欲しい。このまま終わりになって欲しくない。
 かと言って下手に涼介本人の所へ行くのも憚られるし、余計なお世話はしたくない。逆効果になったら最悪だし想いはちゃんと、本人達が自分の口で伝えるべきだ。
 そんな理由から、結衣は少しずつ調査を始める事に決めた。踏み込み過ぎない範囲で、涼介がどう思っているのかを調べる為に。

 しかし1点だけ問題がある。それは交友関係の幅だ。涼介の周りに居る様な男子達と、結衣の間に親交はない。
 デリケートな話題だけに、下手な相手には聞けない。噂話として広まってしまったら最悪だ。自分のせいで、友人を好奇の視線に晒してしまう。無理の無い範囲で、上手く影に隠れて行動しないといけない。

「藤木君と仲が良くて、口が固い人……か」

 結衣から見れば、先ず当たるべきはバスケ部になる。しかし、結構口が軽そうな人物がチラホラと居るイメージだ。
 先輩は先ず論外で、同じ中学出身の3人は先ず無い。間違いなく本人に言ってしまうだろう。信用するのは危険としか言えない。

「別の中学の人が居たよね? その辺りから調べてみよう」

 友人達の恋路の為に、1人の生徒が暗躍を開始した。果たしてそれが、吉と出るか凶と出るか。
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