【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ

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第2章

第47話 インターハイ予選 前編

 遂に始まったインターハイ予選。去年はただ応援に来ただけの会場に、今は選手としてベンチに居る。
 そもそも着替えもせずに制服姿だった1年の時とは、何もかもが違う。単純に2年生になったと言う変化もあるけれど、それ以上に違うのはメンタル面だ。
 去年のままの俺なら、ここまで高いモチベーションは維持出来て居なかった。どう考えても、りんちゃんの存在が大きい。
 今彼女は、観客席で観てくれている。俺はスタメンではないけれど、18番としてレギュラーメンバーに含まれている。

 バスケは通常、1番から18番までの18人がレギュラーとなる。15番までが3年生で、16番が北山きたやま。17番が信也しんやで18番は俺だ。
 俺達2年生の3人は第2クォーターからの展開次第で、試合に出る可能性がある。今日は1試合だけして終わりではない。
 勝ち進めば、まだ試合に出ねばならない。その場合は、3年生の温存も視野に入る。その時や状況次第で、俺達2年生の出番となる。

「行くぞ!」

「「「おお!」」」

 部長である和田わだ先輩の掛け声で、スタメンがコートに入って行く。結構な謎であるのが、サボり魔の山下やました先輩がスタメンに入っている事だ。
 身長も高くジャンプ力もあるので、ジャンパーとしてセンターサークルに立っている。女性関係はダラシないし、わりと適当な人だがバスケは上手い。
 だからこそ、モテてしまうのかも知れない。インターハイの予選と言う大事な試合で、こんな事を考えるのは良くないかも知れないが本当に罪作りな人だ。
 観戦に来ている女性陣の中には、山下先輩を目当てにしている人が居るだろう。そしてそれは、決して1人ではないだろう。観客席で別の戦いが始まらない事を祈るばかりだ。

「「「オーフェンス!オーフェンス!圧勝オーフェンス!」」」

 試合が始まり、うちの先攻で始まった。今の俺に出来るのは、ただ応援する事だけ。これもまた学校によって様々だが、応援のコールにも特徴が出る。
 1年間も所属していれば慣れもするが、誰がこう言うコールを考えるのか不思議に思う。代々引き継がれて行くので、発案者は不明のままだ。
 中学と高校、それぞれの発案者に会ってみたいと常々思っている。あと、個人的に気持ち良くないフレーズに対する苦情も入れたい。

「「「ナイッシュー!」」」

 和田先輩からのパスを貰った山下先輩が、見事にゴール下の戦いを征して得点を決めた。2対0で先ずは先制、出だしとしては悪くない。
 しかしバスケにおいて2点は、1回ゴールを決めただけに過ぎない。幸先が良いとは、まだまだ言えない。簡単に覆る点数では、喜んでいられない。
 人によって価値観の違いがあるだろうけど、俺の中では10点差まではリードと言うには弱い。スリーポイントを3回決められたら、1点差まで縮んでしまう点差だからだ。

 バスケをやった事のない人なら、そんな簡単にスリーポイントは決まらないと思うかも知れない。
 しかし、3連続ぐらい簡単に決める上手い選手は普通に居る。甘く考えて居たら、痛い目を見る羽目になる。
 点数的な余裕があると考えられるのは、20点差辺りからだと俺は思う。

「山下は一旦休め、北山と交代だ」

 試合開始からの流れは悪くない。第1クォーターで23対11と、とりあえずは勝ち越し。ここから更に点差を広げられるかが肝となる。
 少し余裕があるとの考えから、要である山下先輩が下げられた。悪くない判断だと思う。1番身長が高い山下先輩を休ませても、こちらは不利にならない。
 相手チームには極端に背の高い選手が居ないからだ。この調子で勝ち越し続ける様なら、2回戦に向けて山下先輩の温存をするのも戦略だ。
 どうしても身体的接触が避けられない競技である以上は、突然の怪我が発生する事もある。
 中には荒々しいプレイスタイルの選手も居るので、そう言った面からも過信は禁物だ。昔それで痛い思いをした事が俺にもある。

「なあ涼介りょうすけ、俺達出られるかもな」

「このまま行けばそうかもな」

 この調子で点差が広がって行けば、俺達にもチャンスがある。実際2番目に背が高い北山が、2年生ながら第2クォーターから参戦だ。
 これは期待しても良いだろう。もちろん後輩に経験を積ませると言う、部長としての考えもあるのだろうが。
 それでもやっぱり、出られるなら嬉しいに決まっている。せっかく凛ちゃんも観に来ているのだから、試合に出て活躍している所を見せたい。
 そして何よりも、会場に居るからにはバスケがしたい。観ているだけなんて、俺の性に合わない。

「じゃあ2人共、行って来る」

「一発かまして来いよ!」

「頑張れよ北山!」

 2年生の3人で、拳を軽くぶつけ合う。俺達2年の公式戦デビューが北山から始まる。やはりここは順当に、俺達のキャプテンからスタートで良い。
 あいつなら3年生を相手にしても遅れは取らないだろう。山下先輩に代わりジャンパーとして北山がセンターサークルに立つ。
 両チームの準備が整うと、主審のトスアップによりボールが宙を舞う。跳び上がった2人の選手のうち、ジャンプボールを征したのは北山だった。

「ナイスぅ!」

「良いぞ北山!」

 公式戦1回戦は、好調な滑り出しで進んでいた。
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