【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ

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第2章

第48話 インターハイ予選 後編

 予想通りに、試合はうちの優勢が続いていた。第3クォーターを過ぎて73対50。このスコアなら、油断さえしなければ勝てる。
 無理をせずに堅実に試合を運べば、1回戦突破は確実だろう。残すは第4クォーターのみ。そして回って来た俺達の出番。

信也しんや涼介りょうすけ、行けるな?」

「「はいっ!」」

「信也、無理はしなくて良い。冷静に回せ」

「はい!」

 和田わだ先輩の指名により、信也と俺が第4クォーターで舞台に上がる。センターの山下やました先輩と北山きたやま、パワーフォワードの和田先輩。
 そしてスモールフォワードの俺と、ポイントガードの信也。シューティングガードを抜いて、ゴール下での強さを優先したスタイルだ。

 基本はゴールに近い位置から、確実に2点を取って安定的に試合を進める。ゴール下での戦いに強いメンバーで固めて、リバウンドとディフェンスで勝ちに行く。
 相手は点差を埋めたいから、積極的に攻めて来るだろう。特にスリーポイントでの猛追に注意せねばならない。
 このメンバー構成だと、シューティングガードをマークするのは俺の仕事だ。徹底的に妨害させて貰う。妨害は俺の得意分野だ、絶対にスリーポイントなど打たせない。

「山下、頼む」

「任せておけ」

 第4クォーターのジャンパーは再び山下先輩だ。勝ちを確信している俺達は、先攻前提で配置を決めて居る。
 信也か俺が受け取り、和田先輩か北山がシュートを打つ算段だ。当然向こうも警戒しているから、特に北山へのマークが厳しめだ。
 第2クォーターでゴール下での強さを見せた為に、そう簡単にはやらせないと言う警戒心が働いたのだろう。
 それを見た和田先輩、そして俺と信也が目配せをする。そう来るのであれば、初見の俺と信也の出番だ。手の内をまだ見せて居ない今が絶好の機会。

「信也!」

 ジャンプボールは予定通り山下先輩の勝利となり、信也がボールをキャッチした。信也から飛んで来た鋭いパスを受け取り、すぐに和田先輩へとパスを流す。
 流石に新人戦の時の様に、簡単に速攻など決まらない。相手もこの流れを3回も見たからか、和田先輩と北山、そして山下先輩への警戒は強い。
 だからこその俺と信也だ。他の3人に警戒が集中している隙を突いた信也がシュート体勢に入る。慌てた相手が妨害に入るも、それはフェイントだ。
 再び俺の手にボールが来た時には、既に準備完了。スリーポイントラインの外から放った俺のシュートは、吸い込まれる様にゴールリングを潜り抜けた。

「良くやったお前ら!」

「ありがとうございます!」

 第4クォーターの先制点が、最高の形で決まった。更に開いた点差に、相手の焦りは膨らんで行く。試合運びの上手い新顔のポイントガードに、開幕からスリーポイントを決めた俺。
 俺が得点役だとここで勘違いしてくれれば、尚更こちらは動き易い。そして点差を埋めたい相手としては、中々に厄介な状況だろう。
 試合の結果が決まる第4クォーターで、何をするのか分からない2人の登場。全然分析が出来ていない、未知の相手と戦わないといけない。リードを許している現状では、即座に対応は難しいだろう。

「涼介!」

「はい!」

 相手のオフェンスが始まり、マンツーマンでのディフェンスを開始。俺はシューティングガードに、絶対に打たせない守備が求められる。
 ガードは瞬発力と速度に長けた選手が多い、離されない様に距離を詰め続けねばならない。例に漏れず相手チームのシューティングガードは素早かった。
 踵を地に着かせず、つま先立ちで腰を落とす。相手の動きに合わせて、瞬時に対応して行く。今回はセンター2人にパワーフォワード1の構成だ。
 俺はリバウンドに集中しなくて良い。そちらは3人に任せて、徹底的にマークをし続ける。相手のセンターが放ったシュートは、リングに阻まれた。
 焦りから急ぎ過ぎたのか、精確さに欠けていた。リバウンドは和田先輩がもぎ取り再びオフェンスに移行した。




「涼介、あれやれるか?」

「良いぞ。タイミングは任せる」

 試合終了まで残り僅かと言うタイミングで、信也から行動開始の合図が来た。今なら仮に失敗したとしても、逆転される事はない。
 余裕があるからこその、ちょっとしたイタズラ心。追い詰められた相手の焦りを、更に刺激しに行く。そう言う悪巧みならば、喜んで手を貸そう。
 こちらのオフェンスが終わり、攻守交代と言うタイミングで行動開始。そのままディフェンスに戻らず信也と2人、それぞれポイントガードとシューティングガードを徹底マークする。

 エンドラインからのスローインは、5秒以内にせねばならない。それなりの疲労感が溜まって来たタイミングでの、厄介な行動に相手の選手は逡巡する。
 俺達の行動に察した先輩達が、自分のマーク相手をしっかりマークする。5秒と言う僅かな時間の中で、焦りから中途半端な位置に投げられたボールを信也がスティール。
 それを確認した時点で、俺はハーフラインから全力で走り出している。俺がやるべき事は理解している。

「信也!」

「行け涼介!」

 宏樹こうきに何処で使うんだと言われた、例のアレを使う時が来た。信也からパスが届く瞬間にはトップスピードに乗っている。
 何度も練習した事により、タイミングは完璧だった。ワンステップで一気にゴールまで近付き、ツーステップ目でシュート体勢に入る。
 俺を止めに来たスローインをした選手から、ファウルを貰ってフリースローへ。オフェンシブファウルにならない様に気を付けながら、ファウルを貰いに行く形で突入したので狙い通りだ。
 フリースローの1本目を落ち着いて処理。続く2本目もしっかり決めて、相手へのプレッシャーを更に掛ける。

「っしゃ!」

「ナイス涼介!」

 信也と2人、練習通りのコンビネーションで決めた2点だ。公式戦で成功させたのは素直に嬉しい。
 その後も積極的なディフェンスで相手を疲弊させ、オフェンスはしっかり落ち着いて攻める。完全にこちらのペースにハマった1回戦は、無事に勝利で終わった。
 試合終了を知らせるブザーが鳴り響くと同時に、俺は観客席を見上げた。視線の先には、笑顔で拍手をしているりんちゃんが居た。
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