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第1章 最凶の女王が生まれた日
第33話 アルベールの記憶 (イリア視点)
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私は一体どうしたのでしょうか。確か体調を崩して、寝込んでいたはず。それなのにやけに意識はハッキリしています。
かと言って、体が自由に動くわけでもなし。これまでに体験した事の無い、何とも不思議な感覚ですわね。
一番近い感覚で言えば、明晰夢のような状態でしょうか。しばらく何も出来ないままで居ると、何かの映像が目の前で流れ始めました。
知らない人々の会話が流れています。人との関わりが著しく低かった私です。間違いなくこんな人々と、会った事はありません。つまりこれは、私の夢ではない?
(これは、もしやアルの記憶? 声は間違いなく彼のものです)
目の前に流れている映像は、恐らくアルの過去なのでしょう。彼の視点で映しだされた、遥か昔に失われた時代の映像。
なるほど確かに聞いていた話と、幾つか共通点があります。大昔の人々は、こんなただの布みたいな衣服しか、着ていなかったのですね。
それについては、以前の私も似たようなものでしたので、何も言えませんが。それにしても先ほどから、同じ女性ばかり出て来ます。
何だか少し面白くありませんね。映像に出て来るその女性は、美しくて気高い強い女性です。
どんなカラクリかは分かりませんが、アルの感情まで伝わって来ます。あんな事を言っておいて、やっぱり好きだったのではありませんか。
こんなに気にしておいて、そんな関係じゃないなんて嘘でしょう。愛とか恋とか、あまり知りませんけど。
(えっ……)
あっという間に流れが変わっていき、アルの目の前で女性はあっさりと殺されてしまいました。
流れて来る感情が、複雑過ぎて頭がおかしくなりそうですわ。後悔、悲しみ、憎しみ、怒り、そして喪失感。
それらが一度に押し寄せて、他人事なのに私でも辛さが理解出来ました。それからのアルは、冷酷かつ冷徹に世界を支配しようとしました。
これが理由だったのですね。邪神になるきっかけとなった原因は。本人が教えてくれないので、今の今まで知りませんでしたが。
あんな風に普段は飄々としているくせに、随分と執着心が強いのですわね。夢から覚めたら少し揶揄ってあげましょう。
(ああ、これがアルの言う勇者ですか)
精悍な顔立ちの青年が、黄金に輝く鎧を身に纏って、虹色に輝く剣でアルを圧倒していきます。流石にまだ人間のアルには、勇者の相手は厳しかったのでしょうね。
確かにこれは、私も勝てる気がしません。ここにミアのような聖女まで一緒に居れば、絶対に勝てないでしょう。
今回は勇者だけのようですが、こんなとんでもない存在を相手に良く健闘したものです。だからこその今があるのでしょうね。
そこから先は、アルに聞いていた通り新たに邪神となって生まれ変わったアルの記憶です。
懲りずに世界を支配しようとして、サフィラ様に怒られています。ちょっと聞き分けのない子供みたいで可愛いですね。
(輪廻転生ですって? そんなものがあるのですか?)
アルが愛した女性の魂は、それから何度も生まれ変わり続けました。それをただ見守り続けるアルの日々。
人によっては、気持ち悪いと思うかもしれません。ですが私は、素直に凄いと思いました。
何度も生まれ変わる想い人を、ずっと愛し続ける事が出来るでしょうか? そのお相手として生きるのではなく、ただただ遠くから見守り続けるだけ。
並大抵の想いではないでしょう。自分の娘すら、平気で捨てる人間も居ると言うのに。少し見直しましたわ、アルは案外一途なのですね。
私それほど想われる方が少し羨ましい。私には絶対、手に入らないものでしょう。だからでしょうか、少し胸が苦しいのは。実の親ですらあの有様なのですから。
(また場面が切り替わりましたね……あれは、一体?)
繰り返される1人の人生が、突然目茶苦茶にされてしまいました。何らかの魔法の実験だったのでしょうが、アルの想い人の魂ごと爆発に巻き込まれて吹き飛びました。
たくさんの魂が砕け散り、消え去ってしまいました。その時のアルの感情は、怒りと憎しみに染まっていました。
こればかりは私も同情せざるを得ません。こんなにも想い続けた人が、今度こそ完全に消えてしまった。
これが500年前の真実だったのですか。だからアルは世界を滅ぼそうとし、再びサフィラ様の使いに敗北した。
(しかしそれなら、なぜ今は大人しいのでしょう? 私なら再び、世界を滅ぼそうとしますけれど)
またしても場面は移り変わり、今度の記憶は…………私との日々? 映像の中に居る自分を見るのは変な気分ですわね。
しかも最初の頃は、結構小馬鹿にしておりましたのね。確かに小娘ですけれども、成人まで数年のレディを子供扱いするなんて、少し酷いのではなくて?
出会った当時も、そこまで幼くはありませんでしたわ。目が覚めたら抗議を…………え?
(私が、あの魂を持っている?)
全く同一ではなくとも、一部が混ざり合っていると。それに気付いたから、最近対応が変わったのですね。
それじゃあ、今のアルは私を? 大切だと言うのは冗談ではなく? どうしたらいいのでしょう。
こんな形で知ってしまうなんて、どうしたらいいのか分かりません。これがただの夢、というには流れ込む感情がリアル過ぎます。
これは恐らく、何らかの形でアルとの繋がりが出来た結果でしょう。確か眠る前に、私の肉体が変化していると言っていました。
そこに原因があると思いますが…………目が覚めた後にどうするか、考えておかねばなりませんね。
かと言って、体が自由に動くわけでもなし。これまでに体験した事の無い、何とも不思議な感覚ですわね。
一番近い感覚で言えば、明晰夢のような状態でしょうか。しばらく何も出来ないままで居ると、何かの映像が目の前で流れ始めました。
知らない人々の会話が流れています。人との関わりが著しく低かった私です。間違いなくこんな人々と、会った事はありません。つまりこれは、私の夢ではない?
(これは、もしやアルの記憶? 声は間違いなく彼のものです)
目の前に流れている映像は、恐らくアルの過去なのでしょう。彼の視点で映しだされた、遥か昔に失われた時代の映像。
なるほど確かに聞いていた話と、幾つか共通点があります。大昔の人々は、こんなただの布みたいな衣服しか、着ていなかったのですね。
それについては、以前の私も似たようなものでしたので、何も言えませんが。それにしても先ほどから、同じ女性ばかり出て来ます。
何だか少し面白くありませんね。映像に出て来るその女性は、美しくて気高い強い女性です。
どんなカラクリかは分かりませんが、アルの感情まで伝わって来ます。あんな事を言っておいて、やっぱり好きだったのではありませんか。
こんなに気にしておいて、そんな関係じゃないなんて嘘でしょう。愛とか恋とか、あまり知りませんけど。
(えっ……)
あっという間に流れが変わっていき、アルの目の前で女性はあっさりと殺されてしまいました。
流れて来る感情が、複雑過ぎて頭がおかしくなりそうですわ。後悔、悲しみ、憎しみ、怒り、そして喪失感。
それらが一度に押し寄せて、他人事なのに私でも辛さが理解出来ました。それからのアルは、冷酷かつ冷徹に世界を支配しようとしました。
これが理由だったのですね。邪神になるきっかけとなった原因は。本人が教えてくれないので、今の今まで知りませんでしたが。
あんな風に普段は飄々としているくせに、随分と執着心が強いのですわね。夢から覚めたら少し揶揄ってあげましょう。
(ああ、これがアルの言う勇者ですか)
精悍な顔立ちの青年が、黄金に輝く鎧を身に纏って、虹色に輝く剣でアルを圧倒していきます。流石にまだ人間のアルには、勇者の相手は厳しかったのでしょうね。
確かにこれは、私も勝てる気がしません。ここにミアのような聖女まで一緒に居れば、絶対に勝てないでしょう。
今回は勇者だけのようですが、こんなとんでもない存在を相手に良く健闘したものです。だからこその今があるのでしょうね。
そこから先は、アルに聞いていた通り新たに邪神となって生まれ変わったアルの記憶です。
懲りずに世界を支配しようとして、サフィラ様に怒られています。ちょっと聞き分けのない子供みたいで可愛いですね。
(輪廻転生ですって? そんなものがあるのですか?)
アルが愛した女性の魂は、それから何度も生まれ変わり続けました。それをただ見守り続けるアルの日々。
人によっては、気持ち悪いと思うかもしれません。ですが私は、素直に凄いと思いました。
何度も生まれ変わる想い人を、ずっと愛し続ける事が出来るでしょうか? そのお相手として生きるのではなく、ただただ遠くから見守り続けるだけ。
並大抵の想いではないでしょう。自分の娘すら、平気で捨てる人間も居ると言うのに。少し見直しましたわ、アルは案外一途なのですね。
私それほど想われる方が少し羨ましい。私には絶対、手に入らないものでしょう。だからでしょうか、少し胸が苦しいのは。実の親ですらあの有様なのですから。
(また場面が切り替わりましたね……あれは、一体?)
繰り返される1人の人生が、突然目茶苦茶にされてしまいました。何らかの魔法の実験だったのでしょうが、アルの想い人の魂ごと爆発に巻き込まれて吹き飛びました。
たくさんの魂が砕け散り、消え去ってしまいました。その時のアルの感情は、怒りと憎しみに染まっていました。
こればかりは私も同情せざるを得ません。こんなにも想い続けた人が、今度こそ完全に消えてしまった。
これが500年前の真実だったのですか。だからアルは世界を滅ぼそうとし、再びサフィラ様の使いに敗北した。
(しかしそれなら、なぜ今は大人しいのでしょう? 私なら再び、世界を滅ぼそうとしますけれど)
またしても場面は移り変わり、今度の記憶は…………私との日々? 映像の中に居る自分を見るのは変な気分ですわね。
しかも最初の頃は、結構小馬鹿にしておりましたのね。確かに小娘ですけれども、成人まで数年のレディを子供扱いするなんて、少し酷いのではなくて?
出会った当時も、そこまで幼くはありませんでしたわ。目が覚めたら抗議を…………え?
(私が、あの魂を持っている?)
全く同一ではなくとも、一部が混ざり合っていると。それに気付いたから、最近対応が変わったのですね。
それじゃあ、今のアルは私を? 大切だと言うのは冗談ではなく? どうしたらいいのでしょう。
こんな形で知ってしまうなんて、どうしたらいいのか分かりません。これがただの夢、というには流れ込む感情がリアル過ぎます。
これは恐らく、何らかの形でアルとの繋がりが出来た結果でしょう。確か眠る前に、私の肉体が変化していると言っていました。
そこに原因があると思いますが…………目が覚めた後にどうするか、考えておかねばなりませんね。
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