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第3章
第147話 死神の神子と憤怒の神子
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神坂清志は普通ではない形でSランク魔術師になった少年だ。幼い頃から黄泉津大神に鍛えられ、黄泉の国に住まう亡者達とも危険な訓練を積んで来た。
普通ではない経歴を持つからこそ、強者となった存在である。人外との戦闘経験が豊富な清志は、簡単に死ぬ様に育てられていない。
どれだけ過酷な戦場であっても、必ず生還出来る様に鍛えられて来た。だからこそイラが想像していた様な、普通の学生とは全く違う人生を歩んでいる。
清志の粘り強さと、高い戦闘能力は確かな裏付けがあるのだから。
「てめぇ、どんな生き方をして来た?」
「色々あったんだよ」
「それは説明になってねぇぞ」
既にボロボロな状態になっているイラが、額から流れる血を拭いながら清志に問いかけた。
致命傷こそ避けては居るが、イラの受けたダメージは非常に大きなものだ。彼の人生でここまで追い込まれた経験はそう多くない。
まだ弱かった時を除けば、ほんの数回しかないのだ。イラから見えていた清志のイメージは、一族が滅びかけたので仕方なく継承した神子だ。
だが実際はそうではなく、最悪の状況下で神子となったのが真実である。神坂家の一族である皆と、両親が死んで行くのを見ているしか出来なかった殺戮の現場。
そんな中で禁忌の継承をし、死神の神子となったのが清志の真実である。
「人に話す様な事じゃないからな」
「……はんっ、少々てめぇを侮っていたらしい」
「降参するというなら、この空間から早く出してくれ」
アイナとの出会いによって、容赦なく殺すという判断をしなくなった清志は無暗に殺めない。
清志と似た立場から、物を言える人が周囲に居なかった。魔導犯罪の被害に遭った人数だけで考えれば、清志の様な被害者はそれなり居る。
だがその中から魔術師になって、尚且つ執行者になった人は稀なのだ。魔導犯罪を憎むあまり、人格面が歪んでしまう事が多い。
そのせいで面接の所で落ちてしまう。清志の場合は、両親と伊邪那美命の教えがあった事が幸いした。悪人は全員殺処分という、偏った思想にまで発展する事はなく。
程度に合わせて判断が出来るだけの下地があった。例え悪人であったとしても、命は命であると分けて考える事が出来た。
それに波多野支部長が根気よく面倒を見てくれたのも大きい。清志が歪まずに済んだのは、周囲の環境が大きく起因していた。
「それは出来ねぇ相談だ。出たいなら戦って勝て」
「お前、まだやる気なのか!?」
「さあ、続けようぜ!」
極悪人にまでは優しくはない清志だが、根本的にはお人好しの少年だ。もうこれ以上の戦闘は必要無いというのに、まだ戦おうとするイラに困惑する。
確かにイラ達は大きな罪を犯してはいるが、話の通じない相手と断じるには早計だ。彼らの言い分が全て間違っているとは言い切れず、話し合う余地はまだあると清志は感じていた。
彼らのやり方が悪いだけで、アプローチの方法を変えれば落としどころが見つかるのではないか。ちゃんと話し合いの場を設けて、改めて対策を考えれば解決の糸口は見つかる。
どうしても清志から見れば、その様に感じてしまうのだ。しかしイラはあくまで、厄介な自己犠牲の精神は消えないままだ。
「もう止めろ! こんなやり方は間違っている!」
「人間の多くは、お前みたいに考えちゃいねぇんだ!」
「だからって! お前が命を賭ける事とは別だろう!」
ボロボロになりながらも、自らの主張を通す為に戦うイラ。その主張自体は清志にも理解出来なくはない。
魔導犯罪者ではない人々が、何の間違いも起こさないというのは幻想だ。犯罪かどうかは法と照らし合わせて決まるものだ。
でも法で縛れない間違いや、違法とは言えない過ちが世の中には溢れている。それら全てを正す事が出来るかと言えば、難しいとしか言えない。
彼らの言う人という種をより高いステージに上げる為、そういう人達を全て切り捨てるやり方は清志としては受け入れられない。どうにか違う方法を、見出したいと清志は感じていた。
「余計な手心は要らねぇ、戦士なら最後まで戦え」
「けど、それじゃあ!」
「情けをかけるつもりか? それは戦士への侮辱だぞ」
あくまでも戦士として扱われる事を願うイラに対して、殺してしまいたくない清志は葛藤する。
そうまで言われてしまえば、本気で戦うしかなくなる。複雑な気持ちを抱えながらも、清志は応戦を続けた。
長く続いた激闘の果てに、決着の時が訪れる。積み重なったダメージにより、イラのバックステップが遅れてしまう。
ちょうどそのタイミングで清志の振るう大鎌が、吸い込まれる様に袈裟斬りに振り抜かれた。
左肩から右の脇腹に掛けて、大きく切り裂かれたイラの体が眩く発光を始める。思わず目を瞑った清志だったが、目を開けた時には黄泉津大神の背中が目の前にある。
すぐ近くにはアイナの姿もあり、白い世界から元の倉庫へと帰還しているのが分かった。
そして黄泉津大神の向かい側には、傷付いたイラとアヴァリティアの姿がある。どうやら同じ様にアイナも戦っていたのだと、清志は察するのだった。
普通ではない経歴を持つからこそ、強者となった存在である。人外との戦闘経験が豊富な清志は、簡単に死ぬ様に育てられていない。
どれだけ過酷な戦場であっても、必ず生還出来る様に鍛えられて来た。だからこそイラが想像していた様な、普通の学生とは全く違う人生を歩んでいる。
清志の粘り強さと、高い戦闘能力は確かな裏付けがあるのだから。
「てめぇ、どんな生き方をして来た?」
「色々あったんだよ」
「それは説明になってねぇぞ」
既にボロボロな状態になっているイラが、額から流れる血を拭いながら清志に問いかけた。
致命傷こそ避けては居るが、イラの受けたダメージは非常に大きなものだ。彼の人生でここまで追い込まれた経験はそう多くない。
まだ弱かった時を除けば、ほんの数回しかないのだ。イラから見えていた清志のイメージは、一族が滅びかけたので仕方なく継承した神子だ。
だが実際はそうではなく、最悪の状況下で神子となったのが真実である。神坂家の一族である皆と、両親が死んで行くのを見ているしか出来なかった殺戮の現場。
そんな中で禁忌の継承をし、死神の神子となったのが清志の真実である。
「人に話す様な事じゃないからな」
「……はんっ、少々てめぇを侮っていたらしい」
「降参するというなら、この空間から早く出してくれ」
アイナとの出会いによって、容赦なく殺すという判断をしなくなった清志は無暗に殺めない。
清志と似た立場から、物を言える人が周囲に居なかった。魔導犯罪の被害に遭った人数だけで考えれば、清志の様な被害者はそれなり居る。
だがその中から魔術師になって、尚且つ執行者になった人は稀なのだ。魔導犯罪を憎むあまり、人格面が歪んでしまう事が多い。
そのせいで面接の所で落ちてしまう。清志の場合は、両親と伊邪那美命の教えがあった事が幸いした。悪人は全員殺処分という、偏った思想にまで発展する事はなく。
程度に合わせて判断が出来るだけの下地があった。例え悪人であったとしても、命は命であると分けて考える事が出来た。
それに波多野支部長が根気よく面倒を見てくれたのも大きい。清志が歪まずに済んだのは、周囲の環境が大きく起因していた。
「それは出来ねぇ相談だ。出たいなら戦って勝て」
「お前、まだやる気なのか!?」
「さあ、続けようぜ!」
極悪人にまでは優しくはない清志だが、根本的にはお人好しの少年だ。もうこれ以上の戦闘は必要無いというのに、まだ戦おうとするイラに困惑する。
確かにイラ達は大きな罪を犯してはいるが、話の通じない相手と断じるには早計だ。彼らの言い分が全て間違っているとは言い切れず、話し合う余地はまだあると清志は感じていた。
彼らのやり方が悪いだけで、アプローチの方法を変えれば落としどころが見つかるのではないか。ちゃんと話し合いの場を設けて、改めて対策を考えれば解決の糸口は見つかる。
どうしても清志から見れば、その様に感じてしまうのだ。しかしイラはあくまで、厄介な自己犠牲の精神は消えないままだ。
「もう止めろ! こんなやり方は間違っている!」
「人間の多くは、お前みたいに考えちゃいねぇんだ!」
「だからって! お前が命を賭ける事とは別だろう!」
ボロボロになりながらも、自らの主張を通す為に戦うイラ。その主張自体は清志にも理解出来なくはない。
魔導犯罪者ではない人々が、何の間違いも起こさないというのは幻想だ。犯罪かどうかは法と照らし合わせて決まるものだ。
でも法で縛れない間違いや、違法とは言えない過ちが世の中には溢れている。それら全てを正す事が出来るかと言えば、難しいとしか言えない。
彼らの言う人という種をより高いステージに上げる為、そういう人達を全て切り捨てるやり方は清志としては受け入れられない。どうにか違う方法を、見出したいと清志は感じていた。
「余計な手心は要らねぇ、戦士なら最後まで戦え」
「けど、それじゃあ!」
「情けをかけるつもりか? それは戦士への侮辱だぞ」
あくまでも戦士として扱われる事を願うイラに対して、殺してしまいたくない清志は葛藤する。
そうまで言われてしまえば、本気で戦うしかなくなる。複雑な気持ちを抱えながらも、清志は応戦を続けた。
長く続いた激闘の果てに、決着の時が訪れる。積み重なったダメージにより、イラのバックステップが遅れてしまう。
ちょうどそのタイミングで清志の振るう大鎌が、吸い込まれる様に袈裟斬りに振り抜かれた。
左肩から右の脇腹に掛けて、大きく切り裂かれたイラの体が眩く発光を始める。思わず目を瞑った清志だったが、目を開けた時には黄泉津大神の背中が目の前にある。
すぐ近くにはアイナの姿もあり、白い世界から元の倉庫へと帰還しているのが分かった。
そして黄泉津大神の向かい側には、傷付いたイラとアヴァリティアの姿がある。どうやら同じ様にアイナも戦っていたのだと、清志は察するのだった。
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