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第3章
第148話 一時撤退
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アヴァリティアとイラをそれぞれ倒したアイナと清志は、謎の白い空間から帰還した。
イラと清志の戦闘中に一切関与しなかった黄泉津大神が、今になって現れているのは強欲と憤怒の神々が関与していたからだろう。
頭髪から和服まで、全て漆黒に染まった大和撫子が表情を歪めていた。形の良い眉が跳ね上がり、忌々しげにアヴァリティアとイラの背後を睨んでいる。
そこには何も存在していないが、黄泉津大神にはその向こう側に居る存在を視ていた。神々の力で生み出した空間に清志を誘い込み、黄泉津大神との繋がりを強引に引き離した。
その技術は全く新しく、黄泉津大神も初めて経験した妨害だ。完全に神と神子の繋がりそのものを断ち切る効果が無かったのは、自分達も困るからだろうと黄泉津大神は予測した。
だが何れにしても驚異でしかなく、警戒せざるを得ない。
「随分と面倒な技術を生み出したみたいね?」
「待ってくれ、何の話だ」
完全に事態を把握したわけではない清志が、いきなり姿を現した黄泉津大神に問う。しかし今はその問いに答える余裕が彼女にはない。
黄泉津大神とて、決して褒められた存在ではない。毎日1000人を殺すと言い放った死神であり、人間から見れば善とはとても見なせない女神だ。
しかしそれでも、世界を滅ぼし兼ねない危険な思想までは持ち合わせていない。対して七つの大罪を司る、七柱の神々は世界すら滅ぼし兼ねない急進派だ。
カテゴリだけで言えば黄泉津大神も近い存在だが、彼らと比べれば遥かに人類の味方寄りである。
そんな黄泉津大神から見れば、今になって新しい技術を彼らが編み出した事を最大限に怪しんでいた。
「後で教えるわ。それよりお前達、答えなさい」
『……ふんっ相変わらず高圧的な女よね』
「貴女には言われたくないわ、強欲の」
アヴァリティアのすぐ近くに、エスニック風の派手なドレスを来た女性が姿を現す。
彼女は七つの大罪の1柱である強欲の女神、グリードの名を持つ悪神だ。特徴的な真紅の腰まである頭髪は、絹のようにサラサラと流れている。
挑発的な流し目と意思の強そうな瞳、人間離れした美貌を持つ点は黄泉津大神と似ている。あくまでも雰囲気の話であり、容姿そのものが似ているわけではない。
ただ人間とは違う、圧倒的な存在感と纏う危険な香りは同質のもの。その場に漂う圧力は、一気に厚みを増した。
死の匂いを漂わせる死神と、全てを我が物にせんとする強欲の神が睨み合う。
『くだらん争いをするなグリード』
「あら? 憤怒のアナタがそれを言うのラース?」
イラの背後に現れたのは、彼よりも一回り大きな肉体を持つ巨漢の男性だ。逆立つ濃い紫色の短い髪は、憤怒を体現しているのだろうか。
外見は厳つい中年の男性で、柔道でもやっていそうなガタイの良さだ。太めの眉は斜めに吊り上がり、引き結ばれた口元は怒りを感じさせる。
憤怒を司るだけあって、表情だけで近寄り難い空気を生み出す。グリードや黄泉津大神とはまた違う、別種の圧力が新たに狭い空間を圧迫していた。
警備隊の隊員達は、助かったと思った直後に人外の圧を受けて身動きが取れない。今この場で平然としている人間は、神々の神子達とアイナだけだった。
しかし彼らでさえも、神々の会話に割って入る真似はしない。清志とアイナはこの場を黄泉津大神似任せていた。
「こんな技術を今更生み出して、七つの大罪は何をするつもりかしら?」
「我らは何も変わらない。常に在り方は1つ」
「人類が試練に耐えられなければ、それで終わりというだけよ」
今までどの神もわざわざ生み出さなかった技術を、こうして開発して来た七つの大罪の真意。
それが黄泉津大神には分からない。神の関与を一切許さないというならば、彼らだってノイズだと言える。
人類に試練を与える彼らの目的を考えれば、全ての神々と繋がりを完全に絶たねば不公平だ。
しかし完全に繋がりを断つのではなく、関与だけが出来ず神子としての力までは残したままだった。
人類の素の力を試そうという訳でもなく、非常に中途半端な妨害だったと言える。
まだ完成形ではなく、試験的な運用だったという事なら理解は出来なくもないが。黄泉津大神は様々な可能性を考慮して彼らと対峙していた。
「全てが成功とは言えぬが、得るものはあった。帰還しろイラ」
「じゃあねぇ~根暗な根の国のお姫様~」
「待ちなさい!」
撤退する七つの大罪を止めようとした黄泉津大神だったが、最初からそうするつもりだったのか眩い閃光が放たれる。
全員が目を開けた時には既に、2柱の神と2人の男性の姿は消えていた。主犯格を逃がしてしまった事にはなるが、神子を相手に捕縛するのは非常に難しい。
よほど神同士の間で力の差が無い限りは、実力が拮抗して無力化までは出来ない場合が殆どだ。
そもそも神子が犯罪に加担するというパターンがレアケースで、尚且つ大体は七つの大罪の様に厄介な相手である。
清志とアイナも神子を相手に捕縛しようとしたのは初めてだ。逃してしまったとしても仕方がない。
それに何よりも、まだこの事件は解決していない。ミカカ族の3人が、まだ諦めていない決意を固めた表情で清志達を見ていた。
イラと清志の戦闘中に一切関与しなかった黄泉津大神が、今になって現れているのは強欲と憤怒の神々が関与していたからだろう。
頭髪から和服まで、全て漆黒に染まった大和撫子が表情を歪めていた。形の良い眉が跳ね上がり、忌々しげにアヴァリティアとイラの背後を睨んでいる。
そこには何も存在していないが、黄泉津大神にはその向こう側に居る存在を視ていた。神々の力で生み出した空間に清志を誘い込み、黄泉津大神との繋がりを強引に引き離した。
その技術は全く新しく、黄泉津大神も初めて経験した妨害だ。完全に神と神子の繋がりそのものを断ち切る効果が無かったのは、自分達も困るからだろうと黄泉津大神は予測した。
だが何れにしても驚異でしかなく、警戒せざるを得ない。
「随分と面倒な技術を生み出したみたいね?」
「待ってくれ、何の話だ」
完全に事態を把握したわけではない清志が、いきなり姿を現した黄泉津大神に問う。しかし今はその問いに答える余裕が彼女にはない。
黄泉津大神とて、決して褒められた存在ではない。毎日1000人を殺すと言い放った死神であり、人間から見れば善とはとても見なせない女神だ。
しかしそれでも、世界を滅ぼし兼ねない危険な思想までは持ち合わせていない。対して七つの大罪を司る、七柱の神々は世界すら滅ぼし兼ねない急進派だ。
カテゴリだけで言えば黄泉津大神も近い存在だが、彼らと比べれば遥かに人類の味方寄りである。
そんな黄泉津大神から見れば、今になって新しい技術を彼らが編み出した事を最大限に怪しんでいた。
「後で教えるわ。それよりお前達、答えなさい」
『……ふんっ相変わらず高圧的な女よね』
「貴女には言われたくないわ、強欲の」
アヴァリティアのすぐ近くに、エスニック風の派手なドレスを来た女性が姿を現す。
彼女は七つの大罪の1柱である強欲の女神、グリードの名を持つ悪神だ。特徴的な真紅の腰まである頭髪は、絹のようにサラサラと流れている。
挑発的な流し目と意思の強そうな瞳、人間離れした美貌を持つ点は黄泉津大神と似ている。あくまでも雰囲気の話であり、容姿そのものが似ているわけではない。
ただ人間とは違う、圧倒的な存在感と纏う危険な香りは同質のもの。その場に漂う圧力は、一気に厚みを増した。
死の匂いを漂わせる死神と、全てを我が物にせんとする強欲の神が睨み合う。
『くだらん争いをするなグリード』
「あら? 憤怒のアナタがそれを言うのラース?」
イラの背後に現れたのは、彼よりも一回り大きな肉体を持つ巨漢の男性だ。逆立つ濃い紫色の短い髪は、憤怒を体現しているのだろうか。
外見は厳つい中年の男性で、柔道でもやっていそうなガタイの良さだ。太めの眉は斜めに吊り上がり、引き結ばれた口元は怒りを感じさせる。
憤怒を司るだけあって、表情だけで近寄り難い空気を生み出す。グリードや黄泉津大神とはまた違う、別種の圧力が新たに狭い空間を圧迫していた。
警備隊の隊員達は、助かったと思った直後に人外の圧を受けて身動きが取れない。今この場で平然としている人間は、神々の神子達とアイナだけだった。
しかし彼らでさえも、神々の会話に割って入る真似はしない。清志とアイナはこの場を黄泉津大神似任せていた。
「こんな技術を今更生み出して、七つの大罪は何をするつもりかしら?」
「我らは何も変わらない。常に在り方は1つ」
「人類が試練に耐えられなければ、それで終わりというだけよ」
今までどの神もわざわざ生み出さなかった技術を、こうして開発して来た七つの大罪の真意。
それが黄泉津大神には分からない。神の関与を一切許さないというならば、彼らだってノイズだと言える。
人類に試練を与える彼らの目的を考えれば、全ての神々と繋がりを完全に絶たねば不公平だ。
しかし完全に繋がりを断つのではなく、関与だけが出来ず神子としての力までは残したままだった。
人類の素の力を試そうという訳でもなく、非常に中途半端な妨害だったと言える。
まだ完成形ではなく、試験的な運用だったという事なら理解は出来なくもないが。黄泉津大神は様々な可能性を考慮して彼らと対峙していた。
「全てが成功とは言えぬが、得るものはあった。帰還しろイラ」
「じゃあねぇ~根暗な根の国のお姫様~」
「待ちなさい!」
撤退する七つの大罪を止めようとした黄泉津大神だったが、最初からそうするつもりだったのか眩い閃光が放たれる。
全員が目を開けた時には既に、2柱の神と2人の男性の姿は消えていた。主犯格を逃がしてしまった事にはなるが、神子を相手に捕縛するのは非常に難しい。
よほど神同士の間で力の差が無い限りは、実力が拮抗して無力化までは出来ない場合が殆どだ。
そもそも神子が犯罪に加担するというパターンがレアケースで、尚且つ大体は七つの大罪の様に厄介な相手である。
清志とアイナも神子を相手に捕縛しようとしたのは初めてだ。逃してしまったとしても仕方がない。
それに何よりも、まだこの事件は解決していない。ミカカ族の3人が、まだ諦めていない決意を固めた表情で清志達を見ていた。
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