死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第4章

第169話 ポジティブに考える

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 清志せいじは戦いながら遺跡について考察を続けている。徐々に難易度が上昇していくトラップ。
 恐らくは何らかの形で、停止させられた増援と集団戦。古代の言語が読み取れたら、謎解きが出来たのだろうと。
 強引にクリアをしたけれど、あの試練は恐らく対応力や協調性を図る意図があると清志は見ている。
 そして続く転移させての個人戦。青白い獣と猛禽が陸と空から襲い掛かる。対人戦闘ではなく、人間以外との戦闘力を図られている。

「はっ!」

 大きく振るった大鎌が、4匹まとめて獣達を切り裂く。人型とは違い部屋を埋め尽くす程の量ではないが、絶え間なく追加の増援が増えて行く。
 武器を操る人間の厄介さはないが、動物故の素早さは厄介だ。追い詰められる程ではないとしても、油断できない状況なのは変わらない。

「こういうのは、アイナ向きだよなぁ!」

 魔術で猛禽達を叩き落としつつ、囲まれない様に立ち回る清志。相手はどちらも鋭い牙や爪を持っている。
 直撃を喰らえばそれなりのダメージになるだろう。後ろを取られるのだけは不味いと、器用に位置関係を維持し続ける。

(この感じ、やはりAランク以上の戦力を想定しているのか?)

 清志はその可能性が高いと感じている。古代の人々が洗礼か何かを行う為の施設か、それとも鍛える為の設備なのか。
 少なくともある程度の実力を持った存在を前提に、ここが作られていると清志は判断した。

(少々面倒だけど、良い鍛錬にもなるか)

 恐らくAランク魔術師が使うレベルの魔術までなら、使用しても大丈夫だとは思われる。
 しかし確証はないし、遺跡を作った者の想定が分からない。大丈夫だろうと強力な魔術を使用して、海水でも流れ込むと大変な事になる。
 どうしても魔術の使用には慎重にならざるを得ない。ただしその制限を、清志は鍛えるのに丁度いい機会だと判断した。

 特定の魔術を使えない想定で、戦闘する訓練にもなって良いからと。そんな訓練も当然受けているけれど、いつもと違った内容なので新鮮味もある。
 古代の遺跡が提示して来る試練を利用させて貰う事にしたのだ。最近遭遇した七つの大罪の存在もある。
 実力をつけて行くのはメリットしかない。こうしたアイナとの分断も、また使って来る可能性もある。様々な状況に備えて予め考慮しておく意味はある。

「ん? そろそろ勢いが落ちて来たか」

 増援の追加ペースが落ちて来ている。単独で戦わせるからか、先の人型ほどに数が出て来ないらしい。
 それでも十分な脅威であり、気を緩めずに清志は戦闘を続ける。

(しっかし、何だかシャーマンを相手にしている気分だな)

この戦闘はシャーマンや、陰陽術の使い手との戦闘に似ている。彼らは動物の霊や使い魔を使って戦闘を行う。
 獣や猛禽などはその典型であり、彼らの集団と戦っている状況に近い。清志はシャーマンの魔術をあまり使わないが、習得自体はしている。
 アイナと違って制限を受けていない清志は、有名な魔術を大体身に着けた。どんな相手と戦う事になっても良い様に。
 アイナとは真逆を行く方向で、魔術師を続けて来た。だからこそ2人は、こうしてお互いを補い合う事が出来る。
 正統派の清志と、邪道を行くアイナ。実に良いコンビだと言える。

「終わり、か?」

 突っ込んで来た最後の猛禽を、大鎌で切り裂き清志は足を止める。縦横無尽に走り回りながらの戦いは、どうやらこれで終わったらしい。
 丁度そのタイミングで、青い光の玉が清志の方にゆっくりと近付いて来た。ふわふわと漂いながら清志の目の前で停止すると、光が消えて狼の牙を模ったような石が出現した。

「……持って行けと?」

 宙に浮かぶ石を清志が受け取ると、空に浮かぶ太陽が閃光を放つ。あまりの眩しさに清志は手を翳して視界を遮る。

「今度は何だ?」

 暫く待っていると、光は収まり清志の視界もクリアに戻る。いつの間にか広大な草原は焼失し、石造りの一室に空間が変化していた。
 どうやらこれでこの試練が完全に終わりらしい。念のために清志は室内を調べる。一般的な学校の教室よりは、少し広いかと言ったところか。
 壁面には相変わらず何らかの絵が書かれており、松明が明かりを灯している。そして部屋の中央には、何らかの石碑が立っていた。

「うーん……読めない」

 石碑に書かれた文章は、清志の知らない古代の文字。突破した事を讃える文章なのか、そうではない何かなのか。
 それは分からないとしても、1つだけ確信を持って取るべき行動が清志にも理解出来た。
 石碑の中心には、先程受け取った牙型の石が丁度嵌りそうな窪みがある。

「まあ、嵌めるよな。普通に考えて」

 カチリと小さな音を立てながら、清志は石をセットした。どこかに扉でも現れるのかと思っていた清志だったが、予想とは違う変化が起きる。
 壁同士が擦れる様な音を立てながら、部屋全体が下へと向けて降りて行っているようだ。

「エレベーター? 大昔にこんなのを作れたのか……」

 古代人の技術に驚きながらも、清志はその技術力を高く評価していた。
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