死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

文字の大きさ
168 / 184
第4章

第168話 清志の試練

しおりを挟む
 謎の魔法陣により転移させられた清志せいじは、初めて見る通路に立っていた。
 これまでの遺跡内とそう大差はない光景で、外に出たわけでは無さそうだ。人間が3人も並べば狭苦しいぐらいの、やや狭い真っ直ぐな通路だ。

「アイナ? どこだ?」

 清志が呼び掛けるも、特に反応は見られない。どうやら分断されてしまったらしい。
 背後に扉は無く、もう足下に魔法陣は存在していない。戻る事は出来そうになかった。
 こうなると進むしか無くなるので、仕方なく清志は通路に従い歩き始める。またトラップが無いか警戒しつつ、遺跡の中を進んでいく。
 それにしてもやけに広い遺跡だなと、清志は感心している。これまでに移動して来た距離を思えば、海底遺跡の露出している部分はごく一部に過ぎない。

 海底の下には相当な深さまで遺跡が広がっているものと思われる。これを調査するとなると、かなり大規模な調査団が必要だろうと清志は考えている。
 恐らくは最低でも数ヶ月、歴史的価値次第では数年の調査が必要だろうと。
 レヴィアタンの調査もまだ始まったばかりなのに、日本の学者達は随分と忙しくなりそうだ。

「ん? 何だ?」

 清志が通路を進んでいくと、眩しい光が奥から差し込んでいる。今まで無かった状況に、清志は警戒をしながら歩みを進める。
 眩しい光を手で遮る様にかざしながら、通路の先へと至った清志。彼の目の前には、広大な草原が広がっている。上空には太陽が輝き、心地いい風が流れている。

「外……いや、魔術で作った光景か?」

 常識的に考えれば、外に出たとは考えにくい。清志が後ろを振り返ると、通路がそこに残っている。
 明らかに遺跡と繋がった空間である。恐らくここは、清志達が学校で使うシミュレーターと似た効果を持つ魔術が使われている。
 清志の勘はそう訴えている。どうやら大昔には、同じ考えで作り上げた者が居たのだろう。
 今の所この技術は、真っ先に解明する必要があるだろうと清志は判断した。古代のシミュレーターが、どんな構成で作られたのか清志も興味がある。

「まあ、そうなるよな」

 周囲を感心しながら見ていた清志の前に、今度は青白い獣らしき存在が姿を現す。見た目はからして狼か犬を思わせる風貌だ。
 数十匹の群れが、清志の方を見ている。人型の存在との戦闘が終わったから、次は人外との戦闘を行わせる。
 この遺跡が試練を与える目的で作られたのなら、こんな展開になるのも納得出来る。清志はすぐさま戦闘態勢を取る。
 警戒していたので、慌てる事もない。1つ厄介な所は、この空間の強度だ。学校のシミュレーター程の強度があるなら、清志が少々本気を出しても壊れない。
 しかしそうでないのであれば、強力な魔術は使用する事が出来ない。下手に使うと空間ごと崩壊してしまう。仮にそうなった時、中に居る清志が無事で済むかは不明だ。

「どこまでも厄介な遺跡だな」

 強すぎる力は如何なる時でも行使するとは限らない。熊を駆除する為に、核ミサイルを使わないのと同じだ。
 この遺跡は総じて清志とアイナに優しくない。どうしても制限を受けた状態で戦わないといけない。
 彼らの強さが逆に足を引っ張る事はたまにあるが、この遺跡はとことん足枷を強制して来る。

「ガウ!」

 群れのリーダーらしき存在が、何かの合図をする。一斉に群れが行動を開始し、清志に向けて襲い掛かって来る。

「チッ! 結構速いな!」

 獣らしく素早く移動しながら清志に向けて殺到する。人型とは動きの速さが段違いだった。
 武器を使って来る事はないが、その代わりに素早さが人間離れしている。
 だが力を制限されているとは言っても、清志の反射神経まで落ちてはいない。
 飛び掛かって来る青白い獣達を、冷静な判断で捌いていく。死神の大鎌が次々と切り裂いては消滅させていく。
 暫くそうしていると、今度は空から猛禽類の様な青白い鳥まで出現し始めた。

「今度は空も同時か!」

 威力よりも数を稼げる魔術を清志は牽制に使う。複数の火球が清志の周囲に出現し、連続で打ちだされて行く。
 魔術としてはそう高度な術ではないが、清志のコントロールが合わさると非常に高い命中精度を発揮する。
 殆ど百発百中で、飛来する猛禽達を迎撃していく。

「やはり防御力はあまり高くなさそうだな」

 Bランク魔術師であれば誰でも使える程度の魔術だったが、一撃で青白い猛禽を仕留められている。
 空を飛ぶ生命は、その性質上高い防御力を備えるのは難しい。清志の予想通り、平凡な魔術で対処可能だった。
 しかし陸と空の両方を、1人で対応せねばならないのは面倒である。その上動物らしく、動きにパターンがある訳でもない。
 まだ人型は使う剣術などに共通点が見られるが、この相手は完全に獣達だ。縦横無尽に駆け回りながら清志へと襲い掛かって行く。
 減らしても追加が現れるのも先の試練と同じらしい。

「少々厄介だが、何とかするしかないな!」

 大鎌と体術で狼らしき獣を処理し、魔術や投擲で空を舞う猛禽を倒して行く。
 近接寄りの清志には、少々厄介な戦闘が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...