14 / 184
第1章
第14話 Sランクコンビ
しおりを挟む
魔術により再現されたフィールドは、高層ビルの中だった。複数の会社がオフィスを構えた、オフィスビルの11階に清志とアイナは立っていた。
窓の外にも似たようなビル群が建ち並んでいるのが室内から伺える。このシミュレーターには、特殊な魔術が施されている。
空間拡張の最新技術が使われており、窓の外もちゃんと作られている。作り出された空間は、最大で半径500mまで拡げる事が出来る。
元々コンサートホールぐらいの広さがある闘技場ではあるが、それでもその広さには限りがある。複数の生徒が戦闘訓練に利用するには、少々手狭であった。
しかしこのシミュレーターがあれば、何の問題もない。出入りする為の専用ゲートを利用するだけで、拡張空間内を出たり入ったり出来る。
ゲートは通常のドアを倍にした程度のサイズでしかないので、それより大きな物は入れられない。今は闘技場の中央に、専用ゲートがポツンと鎮座している。
今回はSランクコンビの訓練用に使っているが、本来ならこの空間に全員が入る。そこでシチュエーションに合わせた戦闘訓練を受けるのが魔法戦技本来の授業である。
「俺が先行すれば良いか?」
「ええ、こっちで合わせるから」
学園で初めて誕生したSランクコンビの戦闘とあって、客席で観戦している生徒は多い。今回は天井から吊るされたモニターに、シミュレーター内部の映像が映し出されている。
拡張空間の中に居る2人には確認出来ないが、清志達の後ろを着いて行く様な映像や出現した敵の映像が確認出来る。
これらの機能を利用すれば、実戦さながらの闘技大会も開催が可能だ。実際授業の一環として、トーナメント戦等をやる日もあったりする。
とても便利なシステムではあるが、非常に高価で維持コストも馬鹿にならない。かなりの金食い虫だ。
開発当初はこれがあれば、競技場などの施設をいちいち作る必要がないのではないか。そんな意見も出た事もある。しかしコスパが合わずに立ち消えとなった。
今の技術ではまだ、テーマパークやショッピングモールなどの建造物を普通に作る方が安い。空間拡張技術の本格的利用は、まだまだ先の未来になりそうだった。
「発見した。先に行く」
「オーケー」
オフィスビルの様な室内戦では、清志の大鎌は取り回しが悪い。それもあって今は小太刀を使用していた。清志は大鎌の他に、複数の武器を使い分ける。
今使ってる居る小太刀や、薙刀に和弓などマルチな戦い方が可能だ。それぞれ全て、サブウェポンとして十分に使いこなす事が出来る。
武器を使わない格闘戦も可能で、狭い室内だからと言ってパフォーマンスは低下しない。素早く駆け抜けた清志が、銃火器を所持した武装集団に突撃する。
5人組の異国人風の男達の内、2人が瞬く間に制圧された。まだ対応しきれて居ない残された3人に向かって、アイナが放った弾丸が突き刺さる。
今倒された敵の設定はBランク魔術師に相当していた。人数差があっても、この2人にとっては障害にはなり得ない。
「やるな」
「これぐらい余裕よ」
「じゃあ次だ」
それからも、複数のグループを制圧して回る2人。前衛の清志が切り込み、後衛のアイナが精確な射撃で援護する。
突然の遭遇戦になっても、遠近両方こなせる2人は揺らぐ事はない。格闘戦も可能なアイナが瞬時に対応し、清志が魔術でサポートする。
どちらが前衛後衛をやっても、結果に大きな差は生まれない。順調に敵集団を無力化していく。これはシミュレーターなので、無力化した敵を縛り上げたりする必要はない。
まるでゲームの様にポリゴンの欠片となって消えて行くだけだ。そのせいもあって、異様な早さで先に進んで行く。観戦している他の生徒達は、驚きを持って2人の戦闘を観ていた。
「そろそろ来るな」
「次のお相手は誰かしら?」
「アイツは……昔処理されたA級犯罪者の毒島透だったか」
2人の前に姿を表したのは、50人以上の一般人を無惨に葬った凶悪殺人犯。風を操り人間を斬り刻む事を楽しみに生きていた、快楽殺人鬼だった男のコピーデータだ。
ビル内の様な狭い場所で、不可視の斬撃はかなり厄介だ。相性次第では、一方的に攻められて敗北する可能性がある。
特に今回の相手は、元Aランク魔術師だ。犯罪者としても魔術師としてもAの認定は、イコール強敵の証となる。
魔導犯罪の等級は、必ずしも強さを示すとは限らない。決定付けるのは罪の重さだけだ。だから戦闘力が皆無のA級犯罪者も居る。
その場合は捕縛も簡単だ、ほぼ一方的な蹂躙になる。だが今回の様な相手の場合は、確保に回る側のリスクがかなり高い。
同じAランク魔術師同士のペアであっても、捕獲する側が命を落とす事も少なくはない。決して油断は出来ない相手だ。普通であれば。
「先手もーらい!」
「あっ! おい待てよ」
駆け出したアイナを清志が追う。海上の船内でも戦う訓練を日々受けて来たアイナには、こんなオフィスビル程度は障害にならない。
艦艇の通路に比べれば、遥かに広い室内をスイスイと移動して行く。デスクを飛び越え時に利用し、飛来する風の刃を綺麗に躱して行く。
牽制射撃も行いながら、瞬く間に距離を詰めたアイナの蹴りが正確に毒島の顎を捉えた。倒れ込む男の体を、追い付いた清志の小太刀が斬り裂いた。
「お、流石。着いて来られるんだ」
「これぐらい、俺だって出来るよ」
普通ならしっかり時間を掛けて、冷静に攻略する様な相手。それをこの2人は、遊びであるかの様に簡単に倒してしまった。Sランクコンビと言うものがどれ程強力か、この日2人は生徒達の前で示して見せた。
窓の外にも似たようなビル群が建ち並んでいるのが室内から伺える。このシミュレーターには、特殊な魔術が施されている。
空間拡張の最新技術が使われており、窓の外もちゃんと作られている。作り出された空間は、最大で半径500mまで拡げる事が出来る。
元々コンサートホールぐらいの広さがある闘技場ではあるが、それでもその広さには限りがある。複数の生徒が戦闘訓練に利用するには、少々手狭であった。
しかしこのシミュレーターがあれば、何の問題もない。出入りする為の専用ゲートを利用するだけで、拡張空間内を出たり入ったり出来る。
ゲートは通常のドアを倍にした程度のサイズでしかないので、それより大きな物は入れられない。今は闘技場の中央に、専用ゲートがポツンと鎮座している。
今回はSランクコンビの訓練用に使っているが、本来ならこの空間に全員が入る。そこでシチュエーションに合わせた戦闘訓練を受けるのが魔法戦技本来の授業である。
「俺が先行すれば良いか?」
「ええ、こっちで合わせるから」
学園で初めて誕生したSランクコンビの戦闘とあって、客席で観戦している生徒は多い。今回は天井から吊るされたモニターに、シミュレーター内部の映像が映し出されている。
拡張空間の中に居る2人には確認出来ないが、清志達の後ろを着いて行く様な映像や出現した敵の映像が確認出来る。
これらの機能を利用すれば、実戦さながらの闘技大会も開催が可能だ。実際授業の一環として、トーナメント戦等をやる日もあったりする。
とても便利なシステムではあるが、非常に高価で維持コストも馬鹿にならない。かなりの金食い虫だ。
開発当初はこれがあれば、競技場などの施設をいちいち作る必要がないのではないか。そんな意見も出た事もある。しかしコスパが合わずに立ち消えとなった。
今の技術ではまだ、テーマパークやショッピングモールなどの建造物を普通に作る方が安い。空間拡張技術の本格的利用は、まだまだ先の未来になりそうだった。
「発見した。先に行く」
「オーケー」
オフィスビルの様な室内戦では、清志の大鎌は取り回しが悪い。それもあって今は小太刀を使用していた。清志は大鎌の他に、複数の武器を使い分ける。
今使ってる居る小太刀や、薙刀に和弓などマルチな戦い方が可能だ。それぞれ全て、サブウェポンとして十分に使いこなす事が出来る。
武器を使わない格闘戦も可能で、狭い室内だからと言ってパフォーマンスは低下しない。素早く駆け抜けた清志が、銃火器を所持した武装集団に突撃する。
5人組の異国人風の男達の内、2人が瞬く間に制圧された。まだ対応しきれて居ない残された3人に向かって、アイナが放った弾丸が突き刺さる。
今倒された敵の設定はBランク魔術師に相当していた。人数差があっても、この2人にとっては障害にはなり得ない。
「やるな」
「これぐらい余裕よ」
「じゃあ次だ」
それからも、複数のグループを制圧して回る2人。前衛の清志が切り込み、後衛のアイナが精確な射撃で援護する。
突然の遭遇戦になっても、遠近両方こなせる2人は揺らぐ事はない。格闘戦も可能なアイナが瞬時に対応し、清志が魔術でサポートする。
どちらが前衛後衛をやっても、結果に大きな差は生まれない。順調に敵集団を無力化していく。これはシミュレーターなので、無力化した敵を縛り上げたりする必要はない。
まるでゲームの様にポリゴンの欠片となって消えて行くだけだ。そのせいもあって、異様な早さで先に進んで行く。観戦している他の生徒達は、驚きを持って2人の戦闘を観ていた。
「そろそろ来るな」
「次のお相手は誰かしら?」
「アイツは……昔処理されたA級犯罪者の毒島透だったか」
2人の前に姿を表したのは、50人以上の一般人を無惨に葬った凶悪殺人犯。風を操り人間を斬り刻む事を楽しみに生きていた、快楽殺人鬼だった男のコピーデータだ。
ビル内の様な狭い場所で、不可視の斬撃はかなり厄介だ。相性次第では、一方的に攻められて敗北する可能性がある。
特に今回の相手は、元Aランク魔術師だ。犯罪者としても魔術師としてもAの認定は、イコール強敵の証となる。
魔導犯罪の等級は、必ずしも強さを示すとは限らない。決定付けるのは罪の重さだけだ。だから戦闘力が皆無のA級犯罪者も居る。
その場合は捕縛も簡単だ、ほぼ一方的な蹂躙になる。だが今回の様な相手の場合は、確保に回る側のリスクがかなり高い。
同じAランク魔術師同士のペアであっても、捕獲する側が命を落とす事も少なくはない。決して油断は出来ない相手だ。普通であれば。
「先手もーらい!」
「あっ! おい待てよ」
駆け出したアイナを清志が追う。海上の船内でも戦う訓練を日々受けて来たアイナには、こんなオフィスビル程度は障害にならない。
艦艇の通路に比べれば、遥かに広い室内をスイスイと移動して行く。デスクを飛び越え時に利用し、飛来する風の刃を綺麗に躱して行く。
牽制射撃も行いながら、瞬く間に距離を詰めたアイナの蹴りが正確に毒島の顎を捉えた。倒れ込む男の体を、追い付いた清志の小太刀が斬り裂いた。
「お、流石。着いて来られるんだ」
「これぐらい、俺だって出来るよ」
普通ならしっかり時間を掛けて、冷静に攻略する様な相手。それをこの2人は、遊びであるかの様に簡単に倒してしまった。Sランクコンビと言うものがどれ程強力か、この日2人は生徒達の前で示して見せた。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる