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第1章
第26話 疑惑と観察
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アイナとは意見の相違はあれど、互いのスタンスを把握した事でまた一つ先に進めたと思う。これから先の事を思えば、理解が深まったのはプラスだ。
なんせ怪しいと噂の西山製薬から特別講師の講義がこれから始まる。場合によっては、この場で戦闘になる可能性すらある。
パートナーとの連携は必要不可欠だ。今回の特別授業は、参加希望者も多く講堂が使用される。大学に良くある様な、前方に向かって少しずつ段差が出来ているタイプのオーソドックスな構造だ。
怪しい動きをすれば簡単に補足出来るし、窓側に陣取って居れば窓なら逃げられる事もない。事情を知っている亮二や茉莉は入口側を、窓側に俺とアイナが陣取っている。
他にも事態を把握している一部の生徒と連携してターゲットを監視する算段になっていた。
「生徒の皆さん始めまして。僕は西山製薬の斎藤和真と申します」
教室の前方、黒板の前に立った斎藤となのる男が講義を始めた。見たところはぜいぜいBランク程度の魔力しかない。
アイナみたいな人間が早々居る筈もないので、見たままの能力しかないだろう。つまりこの男1人で何かを出来る可能性は低い。
一緒に連れて来ていた女性は、まともに魔力を感じない。恐らくはただの平社員か秘書の様な存在だろう。そちらの脅威度は低く、警戒の必要はない。
そしてこの学園にテロリストの様な存在は入り込めない。結界にはばまれて侵入が出来ないので、バトル漫画の様な展開になる事もない。
『どう思う?』
『ん~~胡散臭い?』
『いや、見た目の話じゃなくて』
スマートフォンのメッセージアプリでアイナと連絡を取り合う。確かに胡散臭い眼鏡の男ではあるが。投資詐欺でもやって居そうな雰囲気をしている。
しかしそれは見た目だけの話で、今回の本質的な問題とは関係ない。大事なのは、この男とテロリストに繋がりがあるのかどうか。
そして何かしら怪しい魔術の痕跡などがないかだ。あるいは執行者としての勘が告げる何かでも良い。とにかく必要となるのは手掛かりだ。
「数年前に開発した弊社のアプリですが、これが中々に人気でして。皆さんの中でもご存知の方が……おっと、結構いらっしゃるみたいで。ありがとうございます」
斎藤と名乗る男の講義に怪しい点はない。言葉の中に暗示を混ぜる様な事もなく、ごく普通に講義をしているだけだ。
現在は西山製薬が製作した健康管理アプリについて話しているだけだ。数年前にサービスが開始したアプリで、ほんの少量の魔力をスマートフォンを通して送るだけで健康状態が正確に分かると言うもの。
主に若い女性を中心に人気のアプリで、ダイエットなどに良く使用されている。血糖値や血圧が気になる中年男性にも人気があるので、わりと幅広いユーザーが居る。
俺は興味が無いから使用していないが、茉莉やシャーロットが使っているのを聞いた記憶がある。
『普通、だな?』
『うん。だけど何か気になるわ』
『だよな、違和感がある』
魔術を用いた会話でも良いのだが、相手に気付かれる危険がある。こう言う時には科学の力が有り難い。魔術師は魔力を感知出来ても、電波までは感知出来ない。
この様な状況下では電力稼働のツールは重宝する。魔導協会支給のスマートフォンは電力でも魔力でも動かせるので、環境に合わせて使い分けが可能となる。
今回の様に監視対象が魔術師の場合、電力での稼働を使用する。逆にジャミング等電子機器が妨害されている環境では魔力で稼働させる事が可能だ。使い分けが非常に便利なので、現場に出る魔術師にとっては必須のツールだ。
「この様に、最低限の魔力しか持たない一般人の方の微小な魔力であっても利用出来る。これからの時代にはこう言った技術も必要になると私は考えています」
「一般人にも、ですか?」
「良い質問が出ましたね。現在、魔術師になれない人となれる人の格差について問題になっています。だからこそ、普通の人でも扱えるツールの増加には高い需要が生まれています」
講義は恙無く進んで行く。話の内容も学生向け、主に将来生産職に就くタイプの生徒にとって意義のあるものだった。
至極真っ当な内容で、怪しい所は見受けられない。テロリストに内通する様な思想も感じられず、危険な人物には見えない。一般的な価値観で見れば。
しかし執行者としては、こう言う人物こそ要注意だ。一見問題がある様には見えず、善人と感じられる人物。そんなタイプが裏では、と言うパターンを何度も見て来た。
善人に見えると言うのは、詐欺師が良く使う手法だ。悪い事を考える人間は、そう見える様には活動しない。
中には絵に描いた様な悪人も居るが、大体はそうじゃない連中ばかりだ。あの手この手で他人を騙し、欺き陥れる。そうやって犠牲者を大量に作り上げて行くのが凶悪な魔導犯罪者だ。
『俺もグレーに見えるな』
『私もかな。あの胡散臭い笑顔を見てると殴りたくなるわ』
『まだ手を出すなよ』
俺とアイナの執行者としての勘は怪しいと判断している。やはり事前に聞いていた通りだ。一見人畜無害に見えるが、腹の底では何を考えているか分からない。
そんな魔導犯罪者にありがちな得体の知れなさをひしひしと感じている。駄目押しだ、うちの神様の感想も聞いておこうか。自分の中にある繋がりを通して、死神様の意見を尋ねる。
『なあ、どう思うあの男』
『アレ? 随分と濃い死が漂っている男ね』
ほぼ確定の回答が返って来た。罪状は不明だが、ほぼ黒と断定して良いだろう。既に犠牲者を出した後なのは間違いないのだから。
なんせ怪しいと噂の西山製薬から特別講師の講義がこれから始まる。場合によっては、この場で戦闘になる可能性すらある。
パートナーとの連携は必要不可欠だ。今回の特別授業は、参加希望者も多く講堂が使用される。大学に良くある様な、前方に向かって少しずつ段差が出来ているタイプのオーソドックスな構造だ。
怪しい動きをすれば簡単に補足出来るし、窓側に陣取って居れば窓なら逃げられる事もない。事情を知っている亮二や茉莉は入口側を、窓側に俺とアイナが陣取っている。
他にも事態を把握している一部の生徒と連携してターゲットを監視する算段になっていた。
「生徒の皆さん始めまして。僕は西山製薬の斎藤和真と申します」
教室の前方、黒板の前に立った斎藤となのる男が講義を始めた。見たところはぜいぜいBランク程度の魔力しかない。
アイナみたいな人間が早々居る筈もないので、見たままの能力しかないだろう。つまりこの男1人で何かを出来る可能性は低い。
一緒に連れて来ていた女性は、まともに魔力を感じない。恐らくはただの平社員か秘書の様な存在だろう。そちらの脅威度は低く、警戒の必要はない。
そしてこの学園にテロリストの様な存在は入り込めない。結界にはばまれて侵入が出来ないので、バトル漫画の様な展開になる事もない。
『どう思う?』
『ん~~胡散臭い?』
『いや、見た目の話じゃなくて』
スマートフォンのメッセージアプリでアイナと連絡を取り合う。確かに胡散臭い眼鏡の男ではあるが。投資詐欺でもやって居そうな雰囲気をしている。
しかしそれは見た目だけの話で、今回の本質的な問題とは関係ない。大事なのは、この男とテロリストに繋がりがあるのかどうか。
そして何かしら怪しい魔術の痕跡などがないかだ。あるいは執行者としての勘が告げる何かでも良い。とにかく必要となるのは手掛かりだ。
「数年前に開発した弊社のアプリですが、これが中々に人気でして。皆さんの中でもご存知の方が……おっと、結構いらっしゃるみたいで。ありがとうございます」
斎藤と名乗る男の講義に怪しい点はない。言葉の中に暗示を混ぜる様な事もなく、ごく普通に講義をしているだけだ。
現在は西山製薬が製作した健康管理アプリについて話しているだけだ。数年前にサービスが開始したアプリで、ほんの少量の魔力をスマートフォンを通して送るだけで健康状態が正確に分かると言うもの。
主に若い女性を中心に人気のアプリで、ダイエットなどに良く使用されている。血糖値や血圧が気になる中年男性にも人気があるので、わりと幅広いユーザーが居る。
俺は興味が無いから使用していないが、茉莉やシャーロットが使っているのを聞いた記憶がある。
『普通、だな?』
『うん。だけど何か気になるわ』
『だよな、違和感がある』
魔術を用いた会話でも良いのだが、相手に気付かれる危険がある。こう言う時には科学の力が有り難い。魔術師は魔力を感知出来ても、電波までは感知出来ない。
この様な状況下では電力稼働のツールは重宝する。魔導協会支給のスマートフォンは電力でも魔力でも動かせるので、環境に合わせて使い分けが可能となる。
今回の様に監視対象が魔術師の場合、電力での稼働を使用する。逆にジャミング等電子機器が妨害されている環境では魔力で稼働させる事が可能だ。使い分けが非常に便利なので、現場に出る魔術師にとっては必須のツールだ。
「この様に、最低限の魔力しか持たない一般人の方の微小な魔力であっても利用出来る。これからの時代にはこう言った技術も必要になると私は考えています」
「一般人にも、ですか?」
「良い質問が出ましたね。現在、魔術師になれない人となれる人の格差について問題になっています。だからこそ、普通の人でも扱えるツールの増加には高い需要が生まれています」
講義は恙無く進んで行く。話の内容も学生向け、主に将来生産職に就くタイプの生徒にとって意義のあるものだった。
至極真っ当な内容で、怪しい所は見受けられない。テロリストに内通する様な思想も感じられず、危険な人物には見えない。一般的な価値観で見れば。
しかし執行者としては、こう言う人物こそ要注意だ。一見問題がある様には見えず、善人と感じられる人物。そんなタイプが裏では、と言うパターンを何度も見て来た。
善人に見えると言うのは、詐欺師が良く使う手法だ。悪い事を考える人間は、そう見える様には活動しない。
中には絵に描いた様な悪人も居るが、大体はそうじゃない連中ばかりだ。あの手この手で他人を騙し、欺き陥れる。そうやって犠牲者を大量に作り上げて行くのが凶悪な魔導犯罪者だ。
『俺もグレーに見えるな』
『私もかな。あの胡散臭い笑顔を見てると殴りたくなるわ』
『まだ手を出すなよ』
俺とアイナの執行者としての勘は怪しいと判断している。やはり事前に聞いていた通りだ。一見人畜無害に見えるが、腹の底では何を考えているか分からない。
そんな魔導犯罪者にありがちな得体の知れなさをひしひしと感じている。駄目押しだ、うちの神様の感想も聞いておこうか。自分の中にある繋がりを通して、死神様の意見を尋ねる。
『なあ、どう思うあの男』
『アレ? 随分と濃い死が漂っている男ね』
ほぼ確定の回答が返って来た。罪状は不明だが、ほぼ黒と断定して良いだろう。既に犠牲者を出した後なのは間違いないのだから。
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