65 / 184
第2章
第65話 人工島ワタツミ
しおりを挟む
清志とアイナ達を乗せた定期船は小笠原諸島に到着し、港から研究チームが宿泊している拠点へと移動する。
海上に作られた研究施設である為に、父島二見港から更に別の船に乗り換え再び海上へ。その施設は当初、巨大な海上レジャー施設として建設が始まった。
しかし計画を主導していた企業が倒産。宙ぶらりんとなった所を国が買い取り、海洋研究所を中心とする人工島となった。
日本を代表する海の神から名を借りたその研究所は、『ワタツミ』と呼ばれ実際にワタツミの加護も与えられている。
海を守護する神が認めた施設なだけあり、安全性も非常に高く大きな事故とは無縁でいる。そしてそんなワタツミと言えば伊弉冉尊と伊邪那美命の子供である為、清志ともそれなりに縁がある施設でもある。清志と言うよりは黄泉津大神の方が関係は深い。
「駄目だ。絶対出る気はないらしい」
「どうして? 自分の子供なんでしょ?」
「だから嫌なんだとさ」
これまでにも何度か、神坂家の代表として清志は招かれていた。その度に黄泉津大神は頑なに現世に姿を現す事を拒んだ。
伊邪那美命としての姿では無く、醜くなってしまった黄泉津大神としての姿を我が子に見せたくはない。それが黄泉津大神の意思であった。
研究施設としての『ワタツミ』には、大綿津見神は常駐していないのだがそれは関係ないらしい。
普段は偽装しているのだから、気にする必要はないと何度も清志が諭してもその意思が変わる事は無かった。
「まあ臨海学校には関係ないから良いけどさ」
「神様って、必要以上には教えてくれないものね」
「そう言う決まりだからな」
確かに神々は人間の前に姿を現しはしたが、何でも教えてくれはしない。例えば魔導犯罪の捜査だって、度を超えない限りは神々が手を貸す事はない。
人間に協力する事はあっても、解決は人間がやらなければならない。困った時の神頼みと言う言葉があるが、人間達がそうなってしまわない為の神々が決めたルールだった。
自分達で調べ学び試す事を阻害しない様に、神々は情報を意図的に秘匿する。それは海についても同様であり、例えばギリシャのポセイドンや日本の大綿津見神は人間に深海の秘密を何も開示していない。
知りたければ自分で調べろと言うスタンスである。ただ一点だけ人間に教えたのは、人間が考えている以上の神秘に満ちていると言う話だけ。その言葉に魅力され、海洋研究に熱中している研究者は大勢いた。
「清志君! 1年振りかしら?」
「美咲さんが海から離れないからですよ」
「清志、この女性は?」
「柏木美咲さん、ここの主任研究者だよ」
アイナほどの背丈は無く、平均的な日本人女性の体格をした女性。絶世の美女と形容する程ではないが、眼鏡の似合う十分に美しい彼女は清志の説明の通り『ワタツミ』の主任研究員をしている。
アメリカの大学を卒業し、海洋研究に没頭していたアクティブな女性だ。年齢は今年で27歳、独身で子供も居ない。海が恋人だと言わんばかりの生活を送っている。
ダイビングの資格を所持しているので、頻繁に潜りに行く為ダイビングスーツの日焼け跡が残っている。そんなアグレッシブな女性研究者と、清志は式典以外にも何度か一緒に活動した事がある。
嵯峨学園が研究に協力しているので、毎年行われる臨海学校で顔を合わせる事が多いからだ。
「今年は美咲さんの研究を?」
「ええ、今年は貴方達学生に協力して貰うわよ」
「知っている人で助かりました」
「そっちの子は、初めましてよね? 宜しくね」
美咲とアイナが握手を交わし簡単に自己紹介を行う。アイナの立場を知り美咲も最初は驚いたが、清志のパートナーなのだからそれなりの人物になるのは当然かと納得した。
何より海洋調査が目的なのだから、海での活動経験を持つプロの参加を喜んだ。言うまでもないがアイナもダイビングの経験は何度もある。
海洋調査とはまた目的は違うが、海のプロである事に変わりはない。互いの経験などについて、また詳しく話をしようと言う事で初めての邂逅は終わりを見せた。
「柏木主任! ちょっと来て下さい!」
「今行くわ! それじゃあ2人とも、また後でね」
「はい、俺達もそろそろ行きます」
「色々教えて下さいね!」
部下の研究者に呼ばれて美咲は2人から離れる。アイナと清志の2人もまた学園のメンバーの下へと合流する。太平洋に浮かぶ『ワタツミ』かなり大きな人工島だ。
科学と魔術の融合により誕生した、ちょっとした海上都市と化している。研究施設だけでなく、ヘリポートや商業施設にホテルまで完備している。
長期に渡り滞在出来る様に、生活に必要なものは大体揃っている。海外からの来訪者も多い為、研究施設がメインではあっても観光スポットに近い状態だ。
一般人が入れない区画も多いが、ただ見て周るだけでも十分に楽しめる人工の島だ。
「噂には聞いていたけど、凄いわねココ」
「アイナは初めてだもんな。俺も最初は驚いたよ」
「アメリカにも欲しいわ。こんな人工島」
全員が到着したのを各クラスの担任が確認をしている間、清志達は雑談をして過ごした。まだこの時まではごく普通の臨海学校だった。
ちょっとしたリゾート気分を味わいながら、学生達は海に出る時を楽しみにしながら、どんな水着を買って来たかなどの話に花を咲かせていた。
海上に作られた研究施設である為に、父島二見港から更に別の船に乗り換え再び海上へ。その施設は当初、巨大な海上レジャー施設として建設が始まった。
しかし計画を主導していた企業が倒産。宙ぶらりんとなった所を国が買い取り、海洋研究所を中心とする人工島となった。
日本を代表する海の神から名を借りたその研究所は、『ワタツミ』と呼ばれ実際にワタツミの加護も与えられている。
海を守護する神が認めた施設なだけあり、安全性も非常に高く大きな事故とは無縁でいる。そしてそんなワタツミと言えば伊弉冉尊と伊邪那美命の子供である為、清志ともそれなりに縁がある施設でもある。清志と言うよりは黄泉津大神の方が関係は深い。
「駄目だ。絶対出る気はないらしい」
「どうして? 自分の子供なんでしょ?」
「だから嫌なんだとさ」
これまでにも何度か、神坂家の代表として清志は招かれていた。その度に黄泉津大神は頑なに現世に姿を現す事を拒んだ。
伊邪那美命としての姿では無く、醜くなってしまった黄泉津大神としての姿を我が子に見せたくはない。それが黄泉津大神の意思であった。
研究施設としての『ワタツミ』には、大綿津見神は常駐していないのだがそれは関係ないらしい。
普段は偽装しているのだから、気にする必要はないと何度も清志が諭してもその意思が変わる事は無かった。
「まあ臨海学校には関係ないから良いけどさ」
「神様って、必要以上には教えてくれないものね」
「そう言う決まりだからな」
確かに神々は人間の前に姿を現しはしたが、何でも教えてくれはしない。例えば魔導犯罪の捜査だって、度を超えない限りは神々が手を貸す事はない。
人間に協力する事はあっても、解決は人間がやらなければならない。困った時の神頼みと言う言葉があるが、人間達がそうなってしまわない為の神々が決めたルールだった。
自分達で調べ学び試す事を阻害しない様に、神々は情報を意図的に秘匿する。それは海についても同様であり、例えばギリシャのポセイドンや日本の大綿津見神は人間に深海の秘密を何も開示していない。
知りたければ自分で調べろと言うスタンスである。ただ一点だけ人間に教えたのは、人間が考えている以上の神秘に満ちていると言う話だけ。その言葉に魅力され、海洋研究に熱中している研究者は大勢いた。
「清志君! 1年振りかしら?」
「美咲さんが海から離れないからですよ」
「清志、この女性は?」
「柏木美咲さん、ここの主任研究者だよ」
アイナほどの背丈は無く、平均的な日本人女性の体格をした女性。絶世の美女と形容する程ではないが、眼鏡の似合う十分に美しい彼女は清志の説明の通り『ワタツミ』の主任研究員をしている。
アメリカの大学を卒業し、海洋研究に没頭していたアクティブな女性だ。年齢は今年で27歳、独身で子供も居ない。海が恋人だと言わんばかりの生活を送っている。
ダイビングの資格を所持しているので、頻繁に潜りに行く為ダイビングスーツの日焼け跡が残っている。そんなアグレッシブな女性研究者と、清志は式典以外にも何度か一緒に活動した事がある。
嵯峨学園が研究に協力しているので、毎年行われる臨海学校で顔を合わせる事が多いからだ。
「今年は美咲さんの研究を?」
「ええ、今年は貴方達学生に協力して貰うわよ」
「知っている人で助かりました」
「そっちの子は、初めましてよね? 宜しくね」
美咲とアイナが握手を交わし簡単に自己紹介を行う。アイナの立場を知り美咲も最初は驚いたが、清志のパートナーなのだからそれなりの人物になるのは当然かと納得した。
何より海洋調査が目的なのだから、海での活動経験を持つプロの参加を喜んだ。言うまでもないがアイナもダイビングの経験は何度もある。
海洋調査とはまた目的は違うが、海のプロである事に変わりはない。互いの経験などについて、また詳しく話をしようと言う事で初めての邂逅は終わりを見せた。
「柏木主任! ちょっと来て下さい!」
「今行くわ! それじゃあ2人とも、また後でね」
「はい、俺達もそろそろ行きます」
「色々教えて下さいね!」
部下の研究者に呼ばれて美咲は2人から離れる。アイナと清志の2人もまた学園のメンバーの下へと合流する。太平洋に浮かぶ『ワタツミ』かなり大きな人工島だ。
科学と魔術の融合により誕生した、ちょっとした海上都市と化している。研究施設だけでなく、ヘリポートや商業施設にホテルまで完備している。
長期に渡り滞在出来る様に、生活に必要なものは大体揃っている。海外からの来訪者も多い為、研究施設がメインではあっても観光スポットに近い状態だ。
一般人が入れない区画も多いが、ただ見て周るだけでも十分に楽しめる人工の島だ。
「噂には聞いていたけど、凄いわねココ」
「アイナは初めてだもんな。俺も最初は驚いたよ」
「アメリカにも欲しいわ。こんな人工島」
全員が到着したのを各クラスの担任が確認をしている間、清志達は雑談をして過ごした。まだこの時まではごく普通の臨海学校だった。
ちょっとしたリゾート気分を味わいながら、学生達は海に出る時を楽しみにしながら、どんな水着を買って来たかなどの話に花を咲かせていた。
0
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。
しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。
一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる