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第2章
第70話 船内の調査③
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清志と愛花の2人は客室を見て周っていた。どこにも人は居ないのに、所々に人が居た痕跡が残されている。
まだカップに入ったままのコーヒーや、片付けられていない食器類。脱いだばかりと思われる部屋着が椅子の背凭れに掛かっている。
切り分けられたステーキはまだ腐敗しておらず、まだ先程まで人が居たのではないかと思える状況である。だと言うのに、どこにも人が居ないのだ。
「誰かいませんかー?」
「ねぇ神坂君、ホントにホラーっぽくない?」
「……まあ霊が居ても斬れば済むし」
「死神の神子様が居ると雰囲気が出ないなぁ」
今回のメンバーで言えば、最もホラー耐性が強いのが清志だ。なにせ黄泉津大神の神子であるのだから、幽霊や悪霊など恐れる相手ではない。
何なら黄泉の国にいる者達の方がよほどホラーだ。たかだか人間の幽霊程度、死神の鎌で切り裂けば終了だ。それであの世へ強制的に送られる。
力技で除霊出来てしまうので、何の障害にもならない。愛花としては、それなりに状況を楽しみたかったのだが相手が悪かった。
「こう、キャーッ! って女子に抱き着かれたりとかしたくないの?」
「え、そんな事より調査の方が大事だろ?」
「真面目か! 知ってたけど!」
愛花は別に清志に対して特別な感情を持ってはいない。だが清志は容姿にも優れたモテる男だ。ちょっとぐらい、そんな体験をしても良いとは思っていた。
悪い気はしないし、何より夏らしくて楽しいだろうと考えての事。ちょっとした肝試しの感覚で居た。これだけ探しても無人なのだ、人が居る可能性は非常に低い。
現在はどちらかと言えば、人が消えた理由を探している。何人乗船していたのかは不明だが、少なくとも最低限の船乗り達が居た筈だ。
そうでなければ、こんな大きな船を動かす事は出来ない。海上での活動経験がそれほど多くない清志と愛花には、アイナの様に海賊の可能性までは思い至っていない。
「転移系の魔術で脱出したとかじゃない?」
「救難信号を出したのにか?」
「うーん、気が変わったとか」
現状だけを見れば、転移系の魔術もしくは魔道具で脱出した可能性が考えられる。Aランクの魔術師でも乗っていたのなら、有り得ない話ではない。
ただその場合は、書き置きなり何か残す筈だ。でなければ、この船が海上に放置されたままになる。決してポイ捨て出来るほど安い代物ではない。
回収に来る船でも現れないとおかしい。何より錨は上がったままである。ここに停泊しているとは考え難い。やはり原因を断定するには情報が少なすぎた。
「あっ!?」
「姫島? 何かあったのか?」
「あっち! 今小さな女の子が走って行ったよ!」
「人が居たのか!?」
愛花の視界には、一瞬だけ小さな少女の姿が映った。顔までは見えなかったが、小学生ぐらいの女の子であると思われた。
まさか本当に人が居るとは思って居なかった2人は、急いで少女が向かった先へと向かう。陸上選手もかくやと言う速度で駆け抜けた2人であったが、その先には誰も居ない。
目の前にはパーティー等に使われる大ホールが広がっているだけ。少女の姿はおろか、誰の姿もそこには無かった。
2人の移動速度を考えれば、追いつけない筈がない。だと言うのに相変わらず無人の船内が広がっているだけ。まるでキツネに化かされたかの様な気分で愛花は首を傾げる。
「あっれー? 確かに見たんだけどな」
「子供が通れる様な隙間は……無さそうだし」
「私の勘違いだったのかな?」
ホラーだのなんだのと言っていたから、そんな幻を見てしまったのかと愛花が頬に手を当てた時だった。突然船体が振動し、ホール内の机や食器類が派手に音を立てる。
地震でも起きたかの様な揺れが暫く続いたあと、大ホールのステージ上に変化が訪れる。靄の様なものが立ち込めると、空中に小学校低学年ぐらいの少女が現れた。
今度こそ冗談でも何でもなく、完全にホラーな展開であった。愛花は驚愕の表情で少女を見つめ、清志は即座に大鎌を取り出す。
「嘘……」
「君は一体何者だ!」
「ウフフフ、フフフフフフフフ」
少女が笑いながら空中でクルリと踊る様に回るとその姿は消えていた。その直後、再び豪華客船の船体に振動が走る。
先程までの揺れとは違い、今度の揺れは船体が動き出した事によるもの。乗組員が居ない筈の船が、何故か動き始めていた。
その事に気がついた清志と愛花は、急いで甲板を目指す。ホールを抜け、客室が並ぶ廊下を急いで走り抜ける。
甲板に出る為の階段を駆け上がると、外の天気は一変していた。真っ白な霧がアドベンチャー号の周辺を完全に包み込んでいる。先程まで降り注いでいた真夏の太陽は、どこにも見えなかった。
「何なのよ、これ……」
「これは、まさか異界か!?」
「面白い事になっているじゃない、清志」
「また今回も遅い登場だな」
いつの間にか清志の隣には、真っ黒な和服を着た美女が浮かんでいた。清志が仕える日本の死神、黄泉津大神が楽しそうに微笑みを浮かべている。
不審な豪華客船の調査は、新たな局面を迎えていた。冗談などではなく、本当にホラー映画を思わせる状況に清志達は放り込まれた。
まだカップに入ったままのコーヒーや、片付けられていない食器類。脱いだばかりと思われる部屋着が椅子の背凭れに掛かっている。
切り分けられたステーキはまだ腐敗しておらず、まだ先程まで人が居たのではないかと思える状況である。だと言うのに、どこにも人が居ないのだ。
「誰かいませんかー?」
「ねぇ神坂君、ホントにホラーっぽくない?」
「……まあ霊が居ても斬れば済むし」
「死神の神子様が居ると雰囲気が出ないなぁ」
今回のメンバーで言えば、最もホラー耐性が強いのが清志だ。なにせ黄泉津大神の神子であるのだから、幽霊や悪霊など恐れる相手ではない。
何なら黄泉の国にいる者達の方がよほどホラーだ。たかだか人間の幽霊程度、死神の鎌で切り裂けば終了だ。それであの世へ強制的に送られる。
力技で除霊出来てしまうので、何の障害にもならない。愛花としては、それなりに状況を楽しみたかったのだが相手が悪かった。
「こう、キャーッ! って女子に抱き着かれたりとかしたくないの?」
「え、そんな事より調査の方が大事だろ?」
「真面目か! 知ってたけど!」
愛花は別に清志に対して特別な感情を持ってはいない。だが清志は容姿にも優れたモテる男だ。ちょっとぐらい、そんな体験をしても良いとは思っていた。
悪い気はしないし、何より夏らしくて楽しいだろうと考えての事。ちょっとした肝試しの感覚で居た。これだけ探しても無人なのだ、人が居る可能性は非常に低い。
現在はどちらかと言えば、人が消えた理由を探している。何人乗船していたのかは不明だが、少なくとも最低限の船乗り達が居た筈だ。
そうでなければ、こんな大きな船を動かす事は出来ない。海上での活動経験がそれほど多くない清志と愛花には、アイナの様に海賊の可能性までは思い至っていない。
「転移系の魔術で脱出したとかじゃない?」
「救難信号を出したのにか?」
「うーん、気が変わったとか」
現状だけを見れば、転移系の魔術もしくは魔道具で脱出した可能性が考えられる。Aランクの魔術師でも乗っていたのなら、有り得ない話ではない。
ただその場合は、書き置きなり何か残す筈だ。でなければ、この船が海上に放置されたままになる。決してポイ捨て出来るほど安い代物ではない。
回収に来る船でも現れないとおかしい。何より錨は上がったままである。ここに停泊しているとは考え難い。やはり原因を断定するには情報が少なすぎた。
「あっ!?」
「姫島? 何かあったのか?」
「あっち! 今小さな女の子が走って行ったよ!」
「人が居たのか!?」
愛花の視界には、一瞬だけ小さな少女の姿が映った。顔までは見えなかったが、小学生ぐらいの女の子であると思われた。
まさか本当に人が居るとは思って居なかった2人は、急いで少女が向かった先へと向かう。陸上選手もかくやと言う速度で駆け抜けた2人であったが、その先には誰も居ない。
目の前にはパーティー等に使われる大ホールが広がっているだけ。少女の姿はおろか、誰の姿もそこには無かった。
2人の移動速度を考えれば、追いつけない筈がない。だと言うのに相変わらず無人の船内が広がっているだけ。まるでキツネに化かされたかの様な気分で愛花は首を傾げる。
「あっれー? 確かに見たんだけどな」
「子供が通れる様な隙間は……無さそうだし」
「私の勘違いだったのかな?」
ホラーだのなんだのと言っていたから、そんな幻を見てしまったのかと愛花が頬に手を当てた時だった。突然船体が振動し、ホール内の机や食器類が派手に音を立てる。
地震でも起きたかの様な揺れが暫く続いたあと、大ホールのステージ上に変化が訪れる。靄の様なものが立ち込めると、空中に小学校低学年ぐらいの少女が現れた。
今度こそ冗談でも何でもなく、完全にホラーな展開であった。愛花は驚愕の表情で少女を見つめ、清志は即座に大鎌を取り出す。
「嘘……」
「君は一体何者だ!」
「ウフフフ、フフフフフフフフ」
少女が笑いながら空中でクルリと踊る様に回るとその姿は消えていた。その直後、再び豪華客船の船体に振動が走る。
先程までの揺れとは違い、今度の揺れは船体が動き出した事によるもの。乗組員が居ない筈の船が、何故か動き始めていた。
その事に気がついた清志と愛花は、急いで甲板を目指す。ホールを抜け、客室が並ぶ廊下を急いで走り抜ける。
甲板に出る為の階段を駆け上がると、外の天気は一変していた。真っ白な霧がアドベンチャー号の周辺を完全に包み込んでいる。先程まで降り注いでいた真夏の太陽は、どこにも見えなかった。
「何なのよ、これ……」
「これは、まさか異界か!?」
「面白い事になっているじゃない、清志」
「また今回も遅い登場だな」
いつの間にか清志の隣には、真っ黒な和服を着た美女が浮かんでいた。清志が仕える日本の死神、黄泉津大神が楽しそうに微笑みを浮かべている。
不審な豪華客船の調査は、新たな局面を迎えていた。冗談などではなく、本当にホラー映画を思わせる状況に清志達は放り込まれた。
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