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第2章
第89話 船内の魂達
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何らかの意図を感じた愛花の証言を元に、少女の霊を探す事にした清志達一行。ただ一つだけ問題があり、通常の空間ではなく異界に居る事だ。
通常の空間であれば清志や黄泉津大神が、特定の霊を探すのはそう難しくない。生物の魂はそれ程多く地上を彷徨ってはいないからだ。
もちろんそれは魂の総数に対しての話であり、厳密に言えば十分多いとは言える。中国やインドで人口1億人が1割にしかならないのと同じである。
要するに密度の問題であり、今回の件ではそれが問題となっている。死神とその神子が使える特殊な霊視の魔術で、船内の魂について調べた清志と黄泉津大神は大いに困惑する事になった。
「何だよコレ?」
「随分と愉快な事になっているわね」
「囚われているにしても異常だろ」
通常の空間であれば、動物の魂も含めて地上では一定量存在している。
ただそれは広範囲に分散しているので、例えば直径1km範囲内に固まって存在している事はない。
そもそも魂は天へと昇るか地獄に送られるかで、長時間地上に留まる事は無い。
どうしても墓地の様な場所には、未練が残り霊として留まる場合があるけれども。事故現場や殺人事件があった場所も比較的残留し易くはある。
それらに対処するのがエクソシストなどの聖職に就く者達の仕事である。
霊に関する仕事の内容はともかくとして、現在のアドベンチャー号は異常な状態にある。状況の分からない他の3人から、アイナが代表して尋ねる。
「どういう事なの?」
「魂が密集し過ぎているんだ」
「密集?」
船内に巡らされた妨害魔術が原因で、完全には把握出来ない。だがそれでも相当数の魂がこのアドベンチャー号に集まっているのは確実だ。
巨大とは言え、ただの船舶に集まる量ではない。清志の見立てでは、凡そ1万近い人間の魂が漂っている。人間以外も含めるともっと多い。
黄泉津大神もほぼ同意見である様だ。これが如何におかしな状況かと言えば、学校の教室に千人の人間を詰め込む様な無理がある状態だ。
恐らくは異界化しているからこそ、この様な異常な状況が続いていると思われる。何らかの要因で周辺から魂を吸い寄せているのではないかと清志は推測する。
「そんな事が可能なの?」
「稀にあるんだ。心霊スポットみたいな存在が、こうして異界化した時なんかね」
「人の魂に限らず、怨念や執念が濃いとそうなる時があるのよ」
黄泉津大神によってその詳細が語られる。生物の魂が死ぬ際に抱いた恨み辛みや、執着心が淀んで溜まった場所が生まれるとする。
そうすると周囲から似た様な魂が吸い寄せられていく。本来はそうならない様に浄化が行われるのだが、何らかの原因で行われなかった場合に心霊現象の起きる場が生まれる。
最初はたった1つの魂が抱いた負の念であっても、複数集まると負の集合意識になる。それが更に放置されたままだと、異界化する事がある。
異界化まで進んだ場所が、より広い範囲でお構いなしに魂を収集し始める場合が稀にあるのだ。
そしてこのアドベンチャー号は、そのレアパターンであると言う事。それも近年稀に見るレベルの濃密な密度を持った幽霊船だ。
「ひっ!? はははは早く出ましょう!」
「甲板に出ても帰れないぞシャーロット」
「最悪ですわ!?」
始まりは違法な人体実験にあるのは間違いないだろう。狂気に飲まれて行った研究者達が、正当な手段で浄化など行う筈が無い。
何よりも聖職者をこの場に呼べる訳がないのだから。そうして溜まりに溜まった怨念と、レヴィアタンとの接触で起きた事故。
その両方が合わさって、この様な状況を作ったのだろう事は想像に難くない。
異界化さえしていなければ、負の念が溜まり心霊現象が起きる場所になるだけで済んだ。
なまじ異界化してしまったが為に、こんな異様な幽霊船が生まれてしまった。
恐らく犠牲者達と、レヴィアタンに繋がりが生まれてしまった事も複雑化した理由と思われる。何らかのシンパシーを感じているのだろう。
「なるほど、思っていた以上に厄介って訳ね」
「しかも下層エリアに集中しているみたいだ。上の方ではそんな気配が無かったしな」
「実験していた場所だからって事かな?」
愛花の疑問に清志と黄泉津大神は頷く。死亡した場所に執着するのは、魂の動きとして不自然ではない。
その魂達が集中している場所は限られており、ほぼ一か所に固まっている。アイナ達には見えないが、清志にはその異様な密度の魂達が視えている。
恐らく少女の霊も普段はそこに居るのではないかと清志は当たりをつけた。何故ウロウロと船内を移動していたのかは不明だが、住処らしき場所はこれで判明した。
ただ相当な量の負の念が集合しているのは確実であり、細心の注意を払う必要がある。特に清志以外の人間は、魂への干渉に対する守りは強くない。
アイナはその魔力により呪い等を受ける事が無いとしても、残るシャーロットと愛花はどうなるか分からない。
「3人は現場から離れた位置で待っていてくれ」
「私も多分平気だよ?」
「……念の為だ、待っていてくれ」
負の念が渦巻く問題の地点に向かって、清志達は進んでいく。人間や世界への悪感情を持っているであろう魂達と、上手く分かり合えるかどうか。
それはまだ不明だが、行ってみなければ解決はしない。彼らが正しく成仏出来るかどうかは、清志の行動に掛かっている。
通常の空間であれば清志や黄泉津大神が、特定の霊を探すのはそう難しくない。生物の魂はそれ程多く地上を彷徨ってはいないからだ。
もちろんそれは魂の総数に対しての話であり、厳密に言えば十分多いとは言える。中国やインドで人口1億人が1割にしかならないのと同じである。
要するに密度の問題であり、今回の件ではそれが問題となっている。死神とその神子が使える特殊な霊視の魔術で、船内の魂について調べた清志と黄泉津大神は大いに困惑する事になった。
「何だよコレ?」
「随分と愉快な事になっているわね」
「囚われているにしても異常だろ」
通常の空間であれば、動物の魂も含めて地上では一定量存在している。
ただそれは広範囲に分散しているので、例えば直径1km範囲内に固まって存在している事はない。
そもそも魂は天へと昇るか地獄に送られるかで、長時間地上に留まる事は無い。
どうしても墓地の様な場所には、未練が残り霊として留まる場合があるけれども。事故現場や殺人事件があった場所も比較的残留し易くはある。
それらに対処するのがエクソシストなどの聖職に就く者達の仕事である。
霊に関する仕事の内容はともかくとして、現在のアドベンチャー号は異常な状態にある。状況の分からない他の3人から、アイナが代表して尋ねる。
「どういう事なの?」
「魂が密集し過ぎているんだ」
「密集?」
船内に巡らされた妨害魔術が原因で、完全には把握出来ない。だがそれでも相当数の魂がこのアドベンチャー号に集まっているのは確実だ。
巨大とは言え、ただの船舶に集まる量ではない。清志の見立てでは、凡そ1万近い人間の魂が漂っている。人間以外も含めるともっと多い。
黄泉津大神もほぼ同意見である様だ。これが如何におかしな状況かと言えば、学校の教室に千人の人間を詰め込む様な無理がある状態だ。
恐らくは異界化しているからこそ、この様な異常な状況が続いていると思われる。何らかの要因で周辺から魂を吸い寄せているのではないかと清志は推測する。
「そんな事が可能なの?」
「稀にあるんだ。心霊スポットみたいな存在が、こうして異界化した時なんかね」
「人の魂に限らず、怨念や執念が濃いとそうなる時があるのよ」
黄泉津大神によってその詳細が語られる。生物の魂が死ぬ際に抱いた恨み辛みや、執着心が淀んで溜まった場所が生まれるとする。
そうすると周囲から似た様な魂が吸い寄せられていく。本来はそうならない様に浄化が行われるのだが、何らかの原因で行われなかった場合に心霊現象の起きる場が生まれる。
最初はたった1つの魂が抱いた負の念であっても、複数集まると負の集合意識になる。それが更に放置されたままだと、異界化する事がある。
異界化まで進んだ場所が、より広い範囲でお構いなしに魂を収集し始める場合が稀にあるのだ。
そしてこのアドベンチャー号は、そのレアパターンであると言う事。それも近年稀に見るレベルの濃密な密度を持った幽霊船だ。
「ひっ!? はははは早く出ましょう!」
「甲板に出ても帰れないぞシャーロット」
「最悪ですわ!?」
始まりは違法な人体実験にあるのは間違いないだろう。狂気に飲まれて行った研究者達が、正当な手段で浄化など行う筈が無い。
何よりも聖職者をこの場に呼べる訳がないのだから。そうして溜まりに溜まった怨念と、レヴィアタンとの接触で起きた事故。
その両方が合わさって、この様な状況を作ったのだろう事は想像に難くない。
異界化さえしていなければ、負の念が溜まり心霊現象が起きる場所になるだけで済んだ。
なまじ異界化してしまったが為に、こんな異様な幽霊船が生まれてしまった。
恐らく犠牲者達と、レヴィアタンに繋がりが生まれてしまった事も複雑化した理由と思われる。何らかのシンパシーを感じているのだろう。
「なるほど、思っていた以上に厄介って訳ね」
「しかも下層エリアに集中しているみたいだ。上の方ではそんな気配が無かったしな」
「実験していた場所だからって事かな?」
愛花の疑問に清志と黄泉津大神は頷く。死亡した場所に執着するのは、魂の動きとして不自然ではない。
その魂達が集中している場所は限られており、ほぼ一か所に固まっている。アイナ達には見えないが、清志にはその異様な密度の魂達が視えている。
恐らく少女の霊も普段はそこに居るのではないかと清志は当たりをつけた。何故ウロウロと船内を移動していたのかは不明だが、住処らしき場所はこれで判明した。
ただ相当な量の負の念が集合しているのは確実であり、細心の注意を払う必要がある。特に清志以外の人間は、魂への干渉に対する守りは強くない。
アイナはその魔力により呪い等を受ける事が無いとしても、残るシャーロットと愛花はどうなるか分からない。
「3人は現場から離れた位置で待っていてくれ」
「私も多分平気だよ?」
「……念の為だ、待っていてくれ」
負の念が渦巻く問題の地点に向かって、清志達は進んでいく。人間や世界への悪感情を持っているであろう魂達と、上手く分かり合えるかどうか。
それはまだ不明だが、行ってみなければ解決はしない。彼らが正しく成仏出来るかどうかは、清志の行動に掛かっている。
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