死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第2章

第105話 その後のワタツミで

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 アドベンチャー号の調査がある程度進んだ時点で、清志せいじ達学生は本来の目的であった海洋の調査に戻った。
 そちらではレヴィアタンの実在を知ったワタツミの研究者達が、大盛り上がりで調査に乗り出していた。
 シーネストが行っていた違法な研究については、適切な処理が行われ同様の研究は禁止となった。
 ただしL細胞の情報については魔導協会で占有せず、ワタツミやアメリカに公開されている。

 50メートル級神話生物の発見である為、生態などの調査が必要になる。暫くすれば魔導協会とアメリカから、複数の研究者がワタツミに集まって来る予定だ。
 彼らより先に調査がスタート出来たワタツミは、徹夜してまで研究室に籠っている職員が大量に居た。
 その中には主任研究員である葛木美咲かつらぎみさきも含まれており、清志やアイナに連日質問をしていた。

「体内はどんな質感だったの!?」

「し、質感かぁ……意外と硬かった、かな?」

「色とか覚えているかな!?」

 もの凄い勢いで質問を続ける美咲に、アイナはやや押され気味だ。一緒に椅子に座らせている清志も少し呆れている。
 以前から親交のあった清志ですらも、初めて見る美咲の姿に驚いていた。これ以上無い大発見であるのは確かであり、研究者であれば熱狂するのは清志達にも理解は出来る。
 ただその勢いは凄まじく、まさに血眼と表現するのが相応しい。L細胞だけでもとんでもない発見であり、研究を進める価値は高い。
 純粋な海洋研究の材料として、現状では一番に優先すべき対象だ。場合によっては難病を治す手掛かりになる可能性もある。

「あの美咲さん、そろそろ休まれた方が……」

「心配しないで清志君、私はまだまだ働けるわ!」

「そう言う意味ではないのですが」

 一旦落ち着いたらどうか、と清志が暗に匂わせたが美咲は止まる気配がない。少しの情報も聞き逃さないと、手元のノートにガリガリと書き込んでいる。
 自身の予測も含めて書かれた情報は、既にかなりの量になっていた。この調子で数ヶ月か数年か、はたまた10年単位で研究を続けるのだろう。
 研究者とは良くも悪くも没頭する能力が高い人達だ。研究して解き明かしたとて、何かの役に立たない場合も少なくは無い。
 それでも彼ら彼女らは、飽くなき探求心に突き動かされて調べるのだ。

「OK、じゃあ次は魔術的な観点から見た話も聞きたいのだけど」

「あ、あはは」

「これはまだまだ続きそうだ」

 聞きたい事は全部聞くと言わんばかりに、美咲は質問を続けて行く。清志とアイナには、彼女の気持ちが理解出来ていた。
 何故なら自分達も、強くなる為に必死で魔術を習得したからだ。学問の探求も、強さの探求もそう大きくは変わらない。
 何かを追い求めて、ただひたすらに追い続ける。その結果が清志やアイナの強さへと繋がった。
 美咲もまた未知との出会いで、こうして必死になっている。彼女の姿がかつての自分を思い出させて、2人は苦笑していた。
 臨海学校の目的から外れてはいないので、このまま暫く付き合う事に決めた2人。

「魔術的な視点で言うなら、体内は生物が生きられる環境になっていましたよ」

「不思議な話よね、何の為にそんな肉体構造に?」

「直感的な感想で良いなら、私はそう造られた感じがしました」

 アイナはあくまで真嶋の確保に突入しただけであり、内部を詳しく調べるつもりは無かった。
 そもそも潜られてしまえば脱出が出来なくなる。ゆっくりと体内を見て回る暇は無かった。
 ただその様な状況にあっても、周囲の観察はしっかりやっていた。レヴィアタンが造られた理由をアイナは知らないが、彼女の直感が本質に近い所を突いていた。
 種の保存を図る為に造られた箱舟としての役割。レヴィアタンが持つ存在意義を、知る事が出来るかは研究者次第だろう。
 そこまで至れる人類を、神々は求めている。しかし今の世を生きる人々がどこまで行けるか、それは誰にも分からない。

真嶋まじまは内部を知っていたみたいだし、アイツの証言で分かりそうだけど」

「それがねぇ、言っている事が滅茶苦茶で駄目みたい」

「確かに初めて会った時も、会話にならない感じだったわ」

 現在も真嶋に対する取り調べが行われているものの、その証言は支離滅裂で意味が分からない内容が多い。
 元からおかしくなってしまっていた上に、レヴィアタンを失った事で余計悪化したと思われる。
 もはや研究者と言うよりも、新興宗教の狂信者に近い状態だ。レヴィアタンが特別な存在であるのは間違いないが、真嶋が求めていた用途とはまた違う。

 神話生物の発見とその細胞によって、変わり果ててしまった研究の行き着いた先。触れてはならない領域に手を出し、自らにもその細胞を投与した。
 その時点で既に、彼はもう人ではない何かになってしまったのだろう。欲望に身を任せて、溺れた者の末路。そんなものは教訓にもならない当たり前の結果だ。
 そうして破滅して行った者達と、何ら変わらぬ終わりを真嶋も迎える事となった。しかしそんな事はどうでも良いと、美咲は2人への質問を続けるのであった。
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