死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第3章

第128話 美月の救出作戦

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 誘拐された神薙美月かんなぎみつきを救出するチームが出揃い、犯人達の確保と巫女の奪還を狙う用意が整った。
 現在犯人達は富士山から近い倉庫街に隠れている様子だ。何故近くまでわざわざ戻って来たのか不明だが、距離が近いのは清志達にとって好都合だった。
 そこは龍王の里や周囲の宿泊施設が所有する倉庫が大半で、あまり人の出入りも多くない。
 先んじて警察が周囲を封鎖している。これより龍王の里の警備隊から選ばれたエリート達と、魔導協会の選ばれし精鋭で現場へ急行する。
 龍王の里に配備された警備隊の軍用ヘリで、速やかに現場上空から降下し包囲する作戦だ。

「ねぇ清志せいじ、警備隊って呼んでるけど、装備が自衛隊と同じじゃない?」

「ああ、それは自衛隊の特殊部隊だからだよ」

「へぇ、だから装備も一緒なんだ」

 何度か海軍の一員として合同演習に参加しているアイナは、自衛隊が使う装備について良く知っている。
 彼らが装備している小銃や軍用ヘリは全て、米軍が使っているものと同じだ。最新式ではないものの、現役で使われているものばかり。
 アイナにとっては見慣れた物っばかりだった。清志が言う様に龍王の里を警備しているのは、自衛隊から出向しているエリートが中心だ。
 指揮をしているのが大昔から龍王の里を守って来た一族で、それ以外は全て外部から来た者達だった。
 だがそんな優秀な彼らであっても、流石に初めて見るマイナーな精霊魔術には出し抜かれてしまったが。

神坂こうさかさん、全員揃いました」

「分かりました、後は警備隊の隊長に従って下さい」

「了解です」

 静岡支部から来たAランクの魔術師達は、全員清志とアイナの事を知っている。
 なぜ高校生ぐらいの子供が? なんて疑問を覚える事はない。Aランクにまでなった者で有名な2人を知らぬ筈も無かった。
 特にトラブルや軋轢もなく、彼らは清志とアイナの指示に従っていた。この奪還部隊のリーダー、警備隊の部隊長が指揮を執っている。

 始めは現役軍人のアイナにと隊長を頼まれたのだが、部隊長の経験は無かったのでこれを辞退。
 これからの作戦は全て警備隊が仕切る事に決まった。幾ら戦闘経験が豊富とは言え、20人以上の人間を指揮した経験は清志とアイナにはない。
 美月の安全が最優先である以上は、経験者がやる方が良いと判断した形だ。

「では出します!」

「お願いします!」

「まさか日本で降下作戦をやる事になるなんてね」

 警備隊の軍用ヘリがヘリポートから飛び出して、静岡の空を飛ぶ。この型のヘリは魔術による高いステルス性能を有している。
 ローター音は全くせず、光の屈折を利用して地上からは姿が見ない。今回の様な作戦を行う際には、非常に優秀な移動手段となる。
 警備隊を10人乗せたヘリと、魔導協会の魔術師を10人乗せた2機のヘリが倉庫街へと向かう。
 距離はそう離れていなかったので、10分程で現場上空に到着した。隊長の指示でホバリング中のヘリから、警備隊員がラペリング降下を開始。
 魔術師達は各々魔法を使って、フリーダイブで倉庫の屋根へと静かに降下する。アイナはお手製のホバー機能を持つブーツを使用して、他の者と同様に倉庫の屋根に着地した。

(美月を見つけた!)

(了解!)

(合図が来たら一気に行くぞ!)

 屋根から窓を覗き込んでいた清志が、椅子に縛られた美月を発見した。そして犯人グループの5人も少し離れた所に居るのが見えていた。
 後は無線で隊長から突入の指示で屋根を破って飛び降り、美月を回収して護送役が即時撤退。怪しげな男2人を清志とアイナで確保を狙う。
 撤退と護送は飛行が得意な魔術師達が担当し、護衛を連れて即座に上空のヘリへ移動する作戦だ。
 また精霊魔術を得意とする魔術師は、ミカカ族との対峙を専任する。シンプルだが余計な無駄のない完璧な作戦だった。

『突入!』

「行くぞ!」

「ええ!」

 清志が大鎌を使用して大きな穴を屋根に空けて、倉庫の中に魔術師チームが飛び降りる。
 入り口と裏口から警備隊が5名ずつ突入し、完全に追い詰めた筈だった。清志達が着地した瞬間に、アイナと清志はそれぞれ別に場所に居た。
 何もない真っ白な空間に、清志の前にはイラが居て、アイナの前にはアヴァリティアが居た。
 それぞれ似た別の空間に囚われてしまっている様子だ。本来ならこの手のトラップが効かない筈の、呪いを持つアイナですらも転移させた。
 それだけでアイナは相手が何者なのか察する事が出来た。アイナの呪いが弾けるの魔術のみで、神が使う奇跡までは跳ねのけられない。
 つまりそれは、相手の背後に神が居るという事。

「貴方、神子なのね?」

「ええそうですよ。私の名前はアヴァリティア、強欲の罪を象徴する神の神子をやっています」

「……七つの大罪って事? あれって実在していたの?」

「ええそうですよ。我々の存在を忘れてしまうなんて、やはり人間は愚かですねぇ」

 女性にしては背が高いアイナだが、アヴァリティアはそのアイナよりも背が高い。
 180cmを超える痩せ型の男性で、レンズの小さな丸眼鏡を着けている。蒼い長髪を後頭部で結んでおり、髪の色に似たサファイアの様な瞳をしていた。
 顔立ちも線が細く、慇懃無礼で神経質そうな印象を与えている。白いスーツを着ている彼は、前回に対峙した時と同じ氷で出来た槍を手にしていた。
 元々戦いになるのは分かっていたので、アイナはここで確保する事を決まる。どうせ倒さないと出られないだろうから、そう考えたアイナはアヴァリティアとの戦闘を開始した。
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