死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第3章

第132話 厄介な自己犠牲

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 清志せいじとイラの戦いは続いていた。互いに容赦のない攻撃を繰り返して来たが、致命的な一撃が入らないまま。
 戦闘力が拮抗しており、決め手に欠けているのはこちらも同じであった。両者ともに細かい傷は負ったものの、2人はまだまだピンピンしていた。
 しかし幾らSランク魔術師と言え、体力が無限にある訳ではない。無駄な消耗を避ける意味も含めて、今は足を止めて睨み合っていた。
 攻めあぐねているというのもある。流石のイラもここまで清志が戦えるとは思っておらず、認めざるを得ない状況に置かれていた。

「チッ! しゃーねぇな」

「何がだよ」

「ちょっとぐらいは教えてやるよ」

 七つの大罪を司る神々の神子であるイラ達の目的。人間に試練を与える事で、より良い未来を目指す。それこそが彼らの目的だ。
 人という生き物は傲慢で強欲で嫉妬深く、憤怒と色欲に支配され暴食と怠惰に浸り続ける。
 どう足掻いても最後に待っているのは滅びの未来であり、このままでは今の世界も滅ぶしかない。
 人間という生命は何度やり直しても、変わらない末路を辿り続けている。地球という神々が用意した箱庭の中で、望まれた未来を掴む為に彼らが居る。
 だからこその試練であり、人という種をより高いステージへと上げる為の必要悪。それが彼ら七つの大罪だった。

「そんな話、聞いた事はないぞ!」

「当たり前だ、他の神達は自然な成長を望んでいるからな」

「だったらお前達のやり方は間違いじゃないか!」

 神々にも派閥の違いや望む未来が違っている。主流となっているのが人間達の自然な成長であり、必要以上の事は教えない方針を取って来た。
 何度も文明がやり直している過去の話だって、わざわざ教える神はそう居ない。七つの大罪意外では、殆ど居ない少数派だ。
 レヴィアタンの存在もその一つであり、あくまで人間達がどう見つけどう活かすかが試されている。
 古代文明の謎もまた、人間達に与えられた試練の1つと言えるだろう。そこから何を見つけて、何を学び成長するのか。その答えを神々は待ち続けている。

「生ぬるいんだよ、今のやり方じゃなぁ!」

「だからって、暴力で解決しようって言うのか!」

「使えねぇ奴は、ぶっ叩いて教えてやるしかねぇからなぁ!」

 イラの考えはやや脳筋が過ぎる発想だが、七つの大罪がやろうとしている事は概ね同じだ。
 いつまでも待つ姿勢では埒が明かないと、過激な方法で人間の進化を促そうとして来た。大昔から対立を続けて来た、神々の代理戦争とも言える争い。
 永遠を生きる彼らにとっては、途方もない時間を懸けた戦いも些細な事に過ぎなかった。
 どちらが正しいかは結果で示せば良いと主流派は考えており、封印するなどの明確な妨害行為は行っていない。
 何より七つの大罪が目指す道は、究極的には負ける為の存在だ。ならば放置しても大局は変わらないと判断されても仕方がない。

「正気か!? 自分達を生贄にするなんて!?」

「ああ? そんなもん勝ってから言えよ」

 彼らはある意味純粋に進化を願っている。ただそれが強引で過激だというだけで。
 核ミサイルを撃ち込んでも生きていた奴が本物。そんな力技で人間を成長させようとしている。
 それ故に俺達を超えて見せろという形でしか、先に進む道が用意出来ない。試練という名の強者による自己犠牲の果てに、彼らが望む未来がある。
 あまりにも傍迷惑で攻撃的かつ強引な押し売り行為であり、巻き込まれる側はたまったものではない。
 十分な戦力を持った押しつけがましいテロリスト、それが一番分かり易い表現だろう。ベースは善意だが、やっている事は悪意の塊である。

「他にやり方があるだろ!」

「いいや、俺はまどろっこしい事は嫌いでね」

「くそっ! この頑固者め!」

 再び始まった清志とイラの戦い。彼らの目的を全て明かした訳ではないが、何がしたいのかは一応知る事が出来た清志。
 人の未来を願う者達である以上は、今ここで殺してしまう気にはなれない。それにまだ殺人などの事件を起こしてはいない。
 要人の誘拐を行った時点で重罪ではあるが、まだ罪状的にはそれだけだ。清志はまだ知らないが、アドベンチャー号の事件にも関与しているので彼らの罪はそれなりにある。
 他にも色々と起こして来てはいるものの、現在の清志にその全てを把握する方法がない。それ故に生まれてしまった殺せない理由が、清志の心に躊躇いを産む。
 アイナと出会って変わった事で、清志の行動にも変化が生まれた。

「なんだぁ? 手加減のつもりか?」

「そうじゃない! まだお前には聞きたい事が山ほどある!」

「殺す気でこねぇと、お前が死ぬぞガキ!」

 無暗に殺さない理由と意思、それは時に困難を産む。最初から殺す気で戦えば、楽が出来る場面はどうしてもある。
 加減というものは実力差があって初めて可能な行為だ。拮抗している相手とは、上手く成立させるのは難しい。
 しかしだからこそ、成長に繋がる事もある。未来へ進む為の戦いが、より激しさを増して続いて行く。
 イラの意思が勝つか、清志の意地が勝つのか。まだまだその結果は出ないままだ。
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