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第3章
第133話 ユートピアとディストピア
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銃弾と氷弾が飛び交う戦場で、アイナはアヴァリティアと戦い続けている。
イラと同様に相手を認めたからか、アヴァリティアもまた七つの大罪が持つ使命について少しだけ漏らした。
ただのありふれた人間ではなく、崇高な精神と優れた戦闘力を持つアイナと清志。2人にこのまま試練を与え続ければ、破滅の未来を回避出来るかも知れない。
そんな期待感がアヴァリティアの中に生まれていた。しかしそれは極端な優生思想が根底にあり、彼ら七つの大罪に認められなかった人々には一切の救済がない。
多くを見捨てて優秀な血統のみを未来の残そうという考えだ。
「お優しいのは結構ですが、弱者はどうせいつか滅ぶのですよ?」
「そうはさせない! だから私はここに居る!」
「使えない者に未来を与えるのも、それはそれで残酷だと思いますが」
救われない人を少しでも減らす為に、アイナはこれまでやって来た。どれだけ強くなっても、全てを救えない事も理解している。
それでも1人でも多く救いたいというアイナの願は、清く尊い願いだ。しかし同時にアヴァリティアの言い分も一理あって、生きているだけが幸運とは思えない人も居る。
死が救済となってしまうぐらい、追い詰められる人の意思までも完全に否定するのは難しい。満たされていない人にとっては、何が救いになるか分からないからだ。
結果として誤った道へ進んでしまう人も居るし、彼ら彼女らが求める救いが世間一般で言う救済と同じかは人による。
「終わらせてあげる優しさも、あるのではないですか?」
「仮にそうだとしても、選ぶ権利があるでしょう!」
「権利、ですか。義務も果たせない者に、権利など与える必要がないでしょう」
激しい撃ち合いを続けながら、互いの意見をぶつけあう2人。アイナが求めるのは優しい未来。優しさが全てを救うとは限らなくても、せめて選択ぐらいは自由に出来る世界。
対してアヴァリティアは、徹底的に管理された未来を望む。自由はない世界だが、計画的で機械的に選別がされる。
人間社会に不要な者は排除して、有能な者だけを生かす社会だ。どちらにもメリットとデメリットがあり、正しい方を簡単に決める事は難しい。
今は正しいとされている事でも、100年後200年後にどうなっているかは分からない。
魔術が一般化していない社会が続いていたら、現在とはまた違う世界になっていた筈だ。神や魔術なんて、迷信だと思われていただろう。
「結局貴方達が正しいって証拠が無いじゃない!」
「私達が目的を果たせば、その時に正しいと証明されます」
「そんなの結局無責任なだけでしょ!」
どちらも人間社会の発展を願う者同士だが、目的と目指す方向性が違い過ぎる。理想のユートピアと、諦観のディストピア。
人間の輝かしい部分を信じる在り方と、人間の醜さにフォーカスした在り方。100人居れば善人が一定数含まれるが、悪人だって一定数は確実に居る。
その中で優秀なのは一握りで、無能もまた一握りだが存在する。悪い方も機会を与えられるべきか、バッサリと切り捨ててしまうべきか。
現在も似た様な議論が世界中で行われているが、完璧な正解を知っている者などいない。何を信じて判断するかは、結局その人の価値観次第だ。
「罪を犯しても、更生して社会に戻る人も居るわ!」
「ですが何も悪くない人は、最初から犯罪とは無縁でしょう?」
「その人達だって、いつか加害者になってしまう未来もあるのよ!」
70代までずっと無事故無違反で、ゴールド免許だった人が人身事故を起こす。ついうっかりとした些細な不注意で、会社に膨大な損失を出してしまった。
悪意があったのではなく、やむを得ない事情から加害者になってしまう事だってある。どれだけ徹底した管理を行ったとしても、それらは決してゼロには出来ないだろう。
人間は量産された機械の様に、一定の行動しか取れない存在ではない。想像もしない結果を招く事もあるし、生命である以上は突然変異する可能性だってある。
メスしかいない環境下で、単為生殖に成功する生命は意外と身近に存在しているぐらいだ。
現在の魔術が浸透した世界だって、ある意味では人間の進化とも言えなくはない。
「……神子でもない身でまだ粘るとは、貴女は一体何者です?」
「ちょっと特殊な錬金術師よっ!」
「チッ! まだ戦えると言うのですか!」
どうしてアイナがSランクになれたのか、その真相は公表されていない。それこそ突然変異の様に、ある日急に現れた1人の少女。
魔導犯罪を憎むあまり、自らに呪いを重ねて施した幼い子供。本来なら厳しい制約が原因で、魔術師として終わる可能性の方が高かった。
しかしその制約を利用する道を選んだアイナは、誰も予想出来なかった存在へとなって見せた。
この世界のバグとでも言うしかない、特異過ぎるアイナの存在はアヴァリティアにとって異常な存在に映る。
後先を考えない無謀な行いが招いた、規格外の錬金術師が生まれた切っ掛け。アイナ・クラーク・三島の過去に、その秘密が眠っている。
イラと同様に相手を認めたからか、アヴァリティアもまた七つの大罪が持つ使命について少しだけ漏らした。
ただのありふれた人間ではなく、崇高な精神と優れた戦闘力を持つアイナと清志。2人にこのまま試練を与え続ければ、破滅の未来を回避出来るかも知れない。
そんな期待感がアヴァリティアの中に生まれていた。しかしそれは極端な優生思想が根底にあり、彼ら七つの大罪に認められなかった人々には一切の救済がない。
多くを見捨てて優秀な血統のみを未来の残そうという考えだ。
「お優しいのは結構ですが、弱者はどうせいつか滅ぶのですよ?」
「そうはさせない! だから私はここに居る!」
「使えない者に未来を与えるのも、それはそれで残酷だと思いますが」
救われない人を少しでも減らす為に、アイナはこれまでやって来た。どれだけ強くなっても、全てを救えない事も理解している。
それでも1人でも多く救いたいというアイナの願は、清く尊い願いだ。しかし同時にアヴァリティアの言い分も一理あって、生きているだけが幸運とは思えない人も居る。
死が救済となってしまうぐらい、追い詰められる人の意思までも完全に否定するのは難しい。満たされていない人にとっては、何が救いになるか分からないからだ。
結果として誤った道へ進んでしまう人も居るし、彼ら彼女らが求める救いが世間一般で言う救済と同じかは人による。
「終わらせてあげる優しさも、あるのではないですか?」
「仮にそうだとしても、選ぶ権利があるでしょう!」
「権利、ですか。義務も果たせない者に、権利など与える必要がないでしょう」
激しい撃ち合いを続けながら、互いの意見をぶつけあう2人。アイナが求めるのは優しい未来。優しさが全てを救うとは限らなくても、せめて選択ぐらいは自由に出来る世界。
対してアヴァリティアは、徹底的に管理された未来を望む。自由はない世界だが、計画的で機械的に選別がされる。
人間社会に不要な者は排除して、有能な者だけを生かす社会だ。どちらにもメリットとデメリットがあり、正しい方を簡単に決める事は難しい。
今は正しいとされている事でも、100年後200年後にどうなっているかは分からない。
魔術が一般化していない社会が続いていたら、現在とはまた違う世界になっていた筈だ。神や魔術なんて、迷信だと思われていただろう。
「結局貴方達が正しいって証拠が無いじゃない!」
「私達が目的を果たせば、その時に正しいと証明されます」
「そんなの結局無責任なだけでしょ!」
どちらも人間社会の発展を願う者同士だが、目的と目指す方向性が違い過ぎる。理想のユートピアと、諦観のディストピア。
人間の輝かしい部分を信じる在り方と、人間の醜さにフォーカスした在り方。100人居れば善人が一定数含まれるが、悪人だって一定数は確実に居る。
その中で優秀なのは一握りで、無能もまた一握りだが存在する。悪い方も機会を与えられるべきか、バッサリと切り捨ててしまうべきか。
現在も似た様な議論が世界中で行われているが、完璧な正解を知っている者などいない。何を信じて判断するかは、結局その人の価値観次第だ。
「罪を犯しても、更生して社会に戻る人も居るわ!」
「ですが何も悪くない人は、最初から犯罪とは無縁でしょう?」
「その人達だって、いつか加害者になってしまう未来もあるのよ!」
70代までずっと無事故無違反で、ゴールド免許だった人が人身事故を起こす。ついうっかりとした些細な不注意で、会社に膨大な損失を出してしまった。
悪意があったのではなく、やむを得ない事情から加害者になってしまう事だってある。どれだけ徹底した管理を行ったとしても、それらは決してゼロには出来ないだろう。
人間は量産された機械の様に、一定の行動しか取れない存在ではない。想像もしない結果を招く事もあるし、生命である以上は突然変異する可能性だってある。
メスしかいない環境下で、単為生殖に成功する生命は意外と身近に存在しているぐらいだ。
現在の魔術が浸透した世界だって、ある意味では人間の進化とも言えなくはない。
「……神子でもない身でまだ粘るとは、貴女は一体何者です?」
「ちょっと特殊な錬金術師よっ!」
「チッ! まだ戦えると言うのですか!」
どうしてアイナがSランクになれたのか、その真相は公表されていない。それこそ突然変異の様に、ある日急に現れた1人の少女。
魔導犯罪を憎むあまり、自らに呪いを重ねて施した幼い子供。本来なら厳しい制約が原因で、魔術師として終わる可能性の方が高かった。
しかしその制約を利用する道を選んだアイナは、誰も予想出来なかった存在へとなって見せた。
この世界のバグとでも言うしかない、特異過ぎるアイナの存在はアヴァリティアにとって異常な存在に映る。
後先を考えない無謀な行いが招いた、規格外の錬金術師が生まれた切っ掛け。アイナ・クラーク・三島の過去に、その秘密が眠っている。
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