死神の神子と魔弾の機工士

ナカジマ

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第3章

第135話 7歳の誕生日

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 幼かった頃のアイナは、忙しい父親とどうしても遊びたい欲求があった。父親に貰った精霊銃のヘンリーが、その寂しさをある程度は和らげている。
 けれどもそれは、父親の代わりにはならない。子供が幼い頃の両親から受ける影響は非常に大きく、居て欲しい時に居ない状況が悪影響を及ぼす。
 もちろんアイナの両親もそれは理解していたし、出来るだけ共に居る様に注意して来た。
 ヘンリーも上手く間を取り持ちながら、あれから1年近くが過ぎた頃。7歳の誕生日に、父親が仕事で帰って来られないと連絡が入る。
 どうしても許せなかったアイナは、家を飛び出してしまう。暫く走り回ったアイナは、ヘンリーに諭されていた。

「ほれ、もういいじゃろう? 許してやったらどうだ?」

「だって……」

「父親が働くのは子供の為じゃ。アイナを要らない子だと思ってなどおらんよ」

 娘の自分よりも仕事の方が大切なのかと、幼い故の勘違いをしてしまった。子供ならば誰でもそう感じてしまう事はある。
 価値観も感性も幼く、社会を知らないからこその考え。子供にとっての判断基準は自身の思考であって、世間一般の常識とはズレている事が多い。
 その点はアイナとて変わらない頃が確かにあった。それでもアイナにはヘンリーが居たので、誘拐などの事件に巻き込まれる前に踏みとどまる。

 父親が帰って来ないのは一旦許す事にし、自宅に戻る事に決めた。夕方に家を飛び出したアイナは、1時間程うろついていた。
 帰宅を決めた頃には辺りが暗くなり始めていた。自宅に到着する頃には陽が落ちており、母親に怒られてしまうかなと心配しながら玄関を開けた。
 すると家の中から、あまり嗅いだ事のない鉄臭い匂いがしている。

「ただいま」

「……待てアイナ! 様子が変じゃ!」

 ヘンリーが警告を発するも時は既に遅し。リビングに入ると真っ赤な液体に染まった父と母の姿があった。
 帰って来られないのでは? という子供らしい疑問を真っ先に覚えたアイナだったが、問題はそんな事ではない。
 明らかに倒れており様子がおかしい両親よりも、リビングに居た見知らぬ男の方が問題だった。
 顔に入れ墨の入ったスキンヘッドの男は、その手に大きなナイフを持っている。そしてそのナイフには、アイナの両親と同じ赤い色に染まっていた。
 明らかに目が血走った男は、ぐるりと振り返ってアイナを見つめる。

「ああそうか、娘が居たんだったな」

「いかん! 逃げるんじゃアイナ!」

「あっ……あっ……」

 見知らぬ男性の異常性が怖くて、状況も良く理解出来ない。7歳になったばかりの少女では、こんな時に適切な対応など取れる筈もない。
 結果足が竦んで動けないアイナに、スキンヘッドの男が近付く。しかし間一髪の所で、駆けつけた警官がアイナを救い出す。
 アメリカでは犯罪者にGPSを取り着ける為に、この様な事態があればすぐに警察が駆けつける。
 しかしスキンヘッドの男があまりにも早く行動に移した為に、ギリギリ間に合う事が出来なかった。
 それでもアイナの命だけは救われ、救助される事となる。犯人は駆けつけた警官の静止を聞き入れず、その場で撃たれて死んでしまった。

「すまない……間に合わなくて」

「ねぇ、パパとママはどうしたの? 寝ちゃったの?」

「アイナ……違うんじゃよ……」

 不運が重なった結果の事件。アイナが飛び出したと聞いて、無理矢理帰宅した父親のエリックはアイナを探そうとした。
 母親のレイコと共に、捜索に出ようとした所に男が現れた。それはかつてエリックが逮捕した殺人犯。
 魔術を使って2人を殺し、逃走中の所を確保された。収監中は模範的な態度を見せていた為に、仮釈放が許された。
 だがそれは全て、エリックに復讐をする為だ。その為に生きて来た男は、用意周到に行動した。エリックを狙っていると悟らせずに、隙を突いて一気に攻める。
 結果警察の対応は遅れてしまい、エリックとレイコは殺されてしまった。

「犯人は射殺、犠牲者は2名です」

『……了解』

「それから……救助者が1名、7歳の少女です」

 両親の死という意味をまだ良く理解出来ていないまま、アイナは警察に保護される事になる。
 両親が亡くなったという事を受け入れられるまで、アイナは結構な時間を要した。それから手続きは進み、両親の葬儀が行われる。
 ただ棺に入れられた2人を、泣きながら見送るしか出来ないアイナ。少女の悲痛な泣き声が、同席した大人達の心を抉った。

 特にエリックの同僚達の苦しみは大きく、優秀な警察官の死を嘆く。だが悲しいかなこれが魔導犯罪の日常であり、この様な痛ましい事件は世界中で起きている。
 幼くして両親を失ってしまった子供が、どこにでも居るのが今の世の中だ。争いも犯罪も無くなる事は無く、常にどこかで誰かが被害に遭っている。
 対処の為に働く者達が大勢いるものの、対処が間に合っていないのが現実だ。こうして魔導犯罪の被害者となったアイナは、両親を失って父方の祖父母に引き取られた。
 その先でアイナは悲しみと向き合い、そして魔導犯罪を激しく憎む。その先でアイナは、世界でも最高峰の力を得る事に繋がる。
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