13 / 34
第1章 守護神石の導き
第5話 カルディーマの門番(3)
しおりを挟む
間もなく、ティムとライアンの前に賑やかな繁華街が姿を現した。
活気のある様々な商店や酒場がぎっしりと建ち並ぶ街通りは、老若男女問わず恐ろしい程の数の人々でごった返している。大勢の人々の話し声、笑い声を突き破るように、商人たちの威勢のいい掛け声が轟く。犬や豚などの動物も堂々と放し飼いにされており、馬車や牛車も忙しなく道を行き来していた。
「うおお・・・。何という賑わい・・・」
ライアンが感動の声を上げる。
「すごいね。全然俺たちの村とは違うな」
ティムは目を輝かせながら、初めて見る都会を前に視線を泳がせた。
人が多いので、ほんの少しよそ見をしていると、対向する人とぶつかりそうだった。辺りから絶え間なくどよどよと人の声が聞こえてくるので、二人はまるで大賑わいの酒場の中にでもいるかのような感覚に陥った。
街を歩く人々の顔ぶれを見てみると、貴族や王族と思われる立派な身なりをした人々、旅人らしき風貌をした人々、後は商人たちが大半だとわかる。その中にちらほらとそれ以外の人々も見られたが、それは恐らくこの町に住んでいる人々だろうか。後は汚らしい身なりの物乞いが地面に寝そべっていたり、道行く人に施しを求めて歩いたりしていた。
しばらく通りを進むと、二人は町の中心部と思われる広場に出た。
「さて、まず何から始めよう。まあ、聞くまでもないか」
ティムが言うと、ライアンはいくぶんと声を高くして言った。
「その通り。早速遊ぶぜ!」
「例の女遊びかい?」
「もっちろんよお!」
ライアンは白い歯を見せながら眼尻を垂れ下げた。
「美女と酒を酌み交わしながら楽しくおしゃべりした上、隙あらばあんなことやこんなことを・・・」
「ふうん」
「何だよ、そのつれない返事。まさか行かないとか言うんじゃ・・・」
「ああ。俺はいいや」
「マジかよ!せっかくカルディーマに来たのに?」
ライアンは目をひん剥くと、こう続けた。
「だったらお前はどこに行くつもりだ?」
「さあね。まだどこに何があるか全然分からないから、しばらく街の中を歩き回ろうかと思うよ」
ライアンは立ち止まると、両手を左右に広げた。
「そうかい。だったら好きにするといいぜ。少しの間だけ別行動だ。明日の朝に、この広場の噴水の前で落ち合おう」
「ああ、いいけど、せっかく二人で来たのに別行動っていうのもつまんないな」
ライアンは笑った。
「心配すんな。俺たちがこの街にいられる時間は今日だけじゃねえんだぜ。明日だって明後日だって時間はある。焦る必要はねえ」
「まあそれもそうか」
ティムは腕を組むと、目線を天に泳がせた。
「でも・・・」
「でも、何だ?」
「それを言い出したら俺、いつまでもカルディーマに居座りそうな気がする」
ライアンは豪快に吹き出した。
「それは大丈夫だ。その時は俺がお前の目を覚まさせてやるぜ」
ティムもつられるようにして笑った。
「わかった。その時は頼むよ」
ライアンはティムにウインクしてみせる。
「よおし。じゃあ明日の三時課の鐘が鳴ったらこの広場の噴水の前な。遅れるんじゃねえぜ」
「ああ。お前もね。また明日」
二人は手を振り合って別れると、人ごみの中へ消えていった。
活気のある様々な商店や酒場がぎっしりと建ち並ぶ街通りは、老若男女問わず恐ろしい程の数の人々でごった返している。大勢の人々の話し声、笑い声を突き破るように、商人たちの威勢のいい掛け声が轟く。犬や豚などの動物も堂々と放し飼いにされており、馬車や牛車も忙しなく道を行き来していた。
「うおお・・・。何という賑わい・・・」
ライアンが感動の声を上げる。
「すごいね。全然俺たちの村とは違うな」
ティムは目を輝かせながら、初めて見る都会を前に視線を泳がせた。
人が多いので、ほんの少しよそ見をしていると、対向する人とぶつかりそうだった。辺りから絶え間なくどよどよと人の声が聞こえてくるので、二人はまるで大賑わいの酒場の中にでもいるかのような感覚に陥った。
街を歩く人々の顔ぶれを見てみると、貴族や王族と思われる立派な身なりをした人々、旅人らしき風貌をした人々、後は商人たちが大半だとわかる。その中にちらほらとそれ以外の人々も見られたが、それは恐らくこの町に住んでいる人々だろうか。後は汚らしい身なりの物乞いが地面に寝そべっていたり、道行く人に施しを求めて歩いたりしていた。
しばらく通りを進むと、二人は町の中心部と思われる広場に出た。
「さて、まず何から始めよう。まあ、聞くまでもないか」
ティムが言うと、ライアンはいくぶんと声を高くして言った。
「その通り。早速遊ぶぜ!」
「例の女遊びかい?」
「もっちろんよお!」
ライアンは白い歯を見せながら眼尻を垂れ下げた。
「美女と酒を酌み交わしながら楽しくおしゃべりした上、隙あらばあんなことやこんなことを・・・」
「ふうん」
「何だよ、そのつれない返事。まさか行かないとか言うんじゃ・・・」
「ああ。俺はいいや」
「マジかよ!せっかくカルディーマに来たのに?」
ライアンは目をひん剥くと、こう続けた。
「だったらお前はどこに行くつもりだ?」
「さあね。まだどこに何があるか全然分からないから、しばらく街の中を歩き回ろうかと思うよ」
ライアンは立ち止まると、両手を左右に広げた。
「そうかい。だったら好きにするといいぜ。少しの間だけ別行動だ。明日の朝に、この広場の噴水の前で落ち合おう」
「ああ、いいけど、せっかく二人で来たのに別行動っていうのもつまんないな」
ライアンは笑った。
「心配すんな。俺たちがこの街にいられる時間は今日だけじゃねえんだぜ。明日だって明後日だって時間はある。焦る必要はねえ」
「まあそれもそうか」
ティムは腕を組むと、目線を天に泳がせた。
「でも・・・」
「でも、何だ?」
「それを言い出したら俺、いつまでもカルディーマに居座りそうな気がする」
ライアンは豪快に吹き出した。
「それは大丈夫だ。その時は俺がお前の目を覚まさせてやるぜ」
ティムもつられるようにして笑った。
「わかった。その時は頼むよ」
ライアンはティムにウインクしてみせる。
「よおし。じゃあ明日の三時課の鐘が鳴ったらこの広場の噴水の前な。遅れるんじゃねえぜ」
「ああ。お前もね。また明日」
二人は手を振り合って別れると、人ごみの中へ消えていった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる