触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?

雪 いつき

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番外編 最終話


 それから数日後。

「アオ様ーーっ!」
「おー、ジン。今日も元気だな……って涙目?」
「う~~っ……シオン様がっ、小刻みに会いにくるんですっ……!」

 可愛い唸り声に癒やされていると、ジンは涙目のままで説明してくれた。
 シオン様は「私の護衛騎士だから気になって」と言って、会議や視察の帰りにちょくちょくやってくるらしい。 


「ジンは、会いたくない?」
「俺はっ、…………会いたい、ですけど……会ったら、気持ちが溢れそうで……」
「その言葉を、そのまま伝えたらいいと思うよ。ジンに気持ちが伝わってるか心配で会いに来てるのかもしれないしさ」

 まあ理由の大半は、会いたくて会いに来てるんだと思うけど。

「……俺、シオン様にきちんと伝えてない……です」

 ジンはハッとする。

「言葉にするのが大事って、俺がシグルズ様に言ったこともありますし……そうっすよね! 俺もちゃんと言葉にします!」

 ようやくテンパってない時のジンの口調に戻った。丁寧なのも可愛いけど、この元気なのもジンって感じで、安心する。


「シオン様みたいに雰囲気のある言葉は、俺には言えないっすけど……」
「ジンの髪も瞳も、眩しくてたまらないよ。ジンはいつでも私を照らす太陽だ」
「!?」

 突然、シオン様の声がした。

「ここにいるかなと思って、視察の帰りに寄ってみたよ」
「っ……!」

 後からシオン様に抱き締められて、ジンは顔を真っ赤にして固まってしまった。

「アオバ」
「あ、シグルズ、おかえり。仕事お疲れ様」
「ただいま、アオバ」

 シグルズは嬉しそうに瞳を細めて、俺の額にキスをする。

「アオバ。君の髪も瞳も、闇夜のようだ」
「シオン様に対抗しなくていいって~」
「私だけが、君という夜空に浮かぶ月であってほしい」

 うん……比喩の意味がちょっと分かりづらいけど、なんかドキッとした……。

「……分かりづらいか。君のそばには、私だけがいればいい。君が聖者でさえなければ、この屋敷に監禁できるのに」
「一気に不穏!」
「シグルズ、気持ちは分かるよ。私もジンを、私の部屋に閉じ込めてしまいたい」

 にっこりと微笑むシオン様の目が笑ってないのは、ジンには見えなくて良かった。なんか怖いし。


「ジン、声を聞かせて?」
「はいっ、あの、シオン様……」

 ジンは涙目になりながらも、しっかりと声を出した。

「俺も、シオン様と会えると嬉しいです。でもまだ、突然だと平静を保てないので……あまり会いにこないで欲しいです」

 シオン様が笑顔のまま固まる。ジンはちゃんと気持ちを伝えられたけど、会いにこないで、はつらい。
 ジンを抱えたままショックで何も言えないシオン様に、俺は慌てて補足する。

「ジンは、それだけシオン様のことが好きってことだよな?」
「えっ、あのっ…………はい」

 コクンと小さく頷くジンが可愛すぎる。初々しいなぁ。
 シオン様はゲームの石化魔法が解けたように動き出し、ジンの髪や頬にキスをした。

「愛情も人それぞれなのか」
「ん?」
「私は、愛する者には数分でも数秒でもいいから会いたい」

 シグルズに背後から抱き締められる。

「出来ることなら、アオバを抱えて仕事をしたい」
「シグルズって、ちゃんと仕事する気があって偉いよな」

 俺がシグルズなら、仕事やめて籠もりたいって言いそう。褒められたシグルズは、嬉しそうに俺に頬擦りをした。


「ジンジャーも、恥ずかしがらずに今のうちに会っていた方がいい。護衛騎士の任務が始まれば、年の大半は主従関係だ」

 シグルズの言葉に、ジンはハッとする。
 そばにいても、シオン様の命を守るためには気が抜けない。
 シオン様もきっと、ジンを守るために私的感情は封じて護衛騎士として扱うだろう。

「休日だけしか、恋人でいられない」
「…………シオン様。俺、今日からちゃんと恋人ができるように、頑張ります」

 シグルズの言葉に、ジンはそう言って、前に回るシオン様の腕をぎゅっと抱き締めた。

「……ジン。今夜、私の部屋にきて欲しい」
「えっ」
「身も心も、私のものになって欲しい」

 言葉の意味に気付き、ジンはまた真っ赤になる。でもすぐに、小さく頷いた。


「アオバ。今夜、私の部屋……と風呂場、どちらがいいだろうか」
「んー、風呂かな。疲れてるだろ? マッサージしてやるよ」
「ありがとう。楽しみにしている」

 初々しいジンに反して、俺とシグルズはこんな感じだ。ときめく場面はあるものの、ジンと違って、喘がされた回数が桁違いだからな。

「そろそろ戻らなければ……。アオバ、また夜に」
「ああ。仕事頑張ってな」

 俺からキスすると、シグルズは俺の頭をがっしりと掴んで舌を入れてくる。仕事の休憩中にするキスじゃない。

「ジン。私たちは私たちのペースで、恋人になっていこう」
「はいっ……」

 もはや喰われる勢いのキスをされながら、視界の端に、シオン様がジンの頬に可愛いキスをする光景が映った。





-END-



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