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友人、メンタル強い
しおりを挟む笹山 耀は、同じ学部の友人だ。
優斗が縁遠いと思っていたタイプの明るい性格で、いつも派手な服を着ている。最近はロックな格好にハマっているらしかった。
今日は黒と赤を基調にした服装で、彼は天丼をお盆に乗せて席につく。わらび餅も乗っていた。このアンバランスはちょっと可愛い。
そんな事を思いながら優斗は日替わりのハンバーグ定食をテーブルに置く。今日はグレープフルーツジュースにしてみた。
夏休みの間に何度か会った為か、後期が始まっても久しぶりな気がしない。相変わらず明るい耀の話を聞きながら、美味しく昼食をとったところで耀がジッと優斗を見た。
「そういや、橘さ、あれからどうなった? エロいことしたいって子と」
「っ……!!」
思わずジュースを吹き出しそうになった。何とか堪えて咳き込むと、ごめんごめん、と耀は軽く笑う。
「いやー、橘が最近可愛くなったってみんな言ってるからさ、もうヤったかなーって」
「してないよ!? というか、みんなって誰!?」
「俺の周りのみんな!」
抽象的過ぎて分からない。それに、男相手に可愛いとは……。
「そもそも、付き合ってもないし……」
いや、優斗の所為でそうなっているのだが……。改めて口にすると申し訳なさが募る。恋人候補になってから、もうすぐ二ヶ月が経ってしまうのだ。
「なん、だと……? 橘! 俺の友はお前だけだ!」
「笹山友達多いじゃん」
「そーいうとこが好きだぞー!」
「あはは、よく分からないけど、ありがとう」
向かいからテーブル越しに伸びて来た手にブンブンと握手をされ、楽しげに笑う。このテンション、近所の柴犬がこんな感じだったなと懐かしくなってしまった。
「でも俺は、橘の幸せも願っているんだ。俺のことは構わず付き合ってくれてもいいんだぞ?」
「何キャラだよ」
「うん、そういう雑なとこ、けっこー好き」
「どうも。俺は笹山の元気で素直なところ好きだよ」
笑いながら軽く返したところで、バンッと隣に何かが置かれた。
「へぇ? 優斗、そいつのこと好きなんだ?」
「は、……せん、ぱい……」
まさかの隆晴がそこにいた。こちらは座っている所為で、高いところから見下ろされて威圧感が凄い。
「竹之内先輩、こんにちはー! なんか怒ってますー?」
――笹山、メンタル強っ……。
ギョッとする優斗を他所に、隆晴はそのまま優斗の隣に座る。
「ああ。優斗がな、俺には好きだって言ってくれなくてな?」
「え? マジですか。橘、なんで?」
「なんで、って……」
「あっ、でも気持ちはわかるぞ。先輩、かっこよすぎだから勇気いるよなー」
「笹山。お前は俺のこと好きか?」
「はい! 好きです!」
元気に答える耀の頭をわしゃわしゃと撫でる。耀は“イケメンに褒められた!”と嬉しそうに笑った。
「あれですかねー。橘ってツンデレなところあるから」
「なるほど」
「いや、ツンデレって……」
そんな属性を持った覚えはない。
「橘。こういうのはスパッと言った方が恥ずかしくないぞ?」
「え、ええっ……?」
「さあ、スパッと!」
「えっ、今!?」
さあ! と耀が輝く笑顔を向ける。隣の隆晴の方は、圧が強くて見られなかった。
「え、っと…………、また今度で……」
スッ……と視線を反らし、蚊の鳴くような声で答えた。
「そっかー。誰もいないとこなら恥ずかしくないかもな?」
「うん……」
「先輩、また今度だそうです!」
耀は明るく答えた。
耀のこういう、空気が読めなさそうで読めるところが好きだ。グイグイ引っ張ってくれるところも、本当に無理なところではちゃんと分かってくれるところも。
「お前って、いい奴だな」
「ありがとうございます! なんで褒められたかわかりませんけど!」
素直過ぎる耀を、隆晴はまたわしゃわしゃと撫でた。
そこで耀は、次の教室が遠いからと先に出て行ってしまった。
「あいつ、全く気付いてないの凄いよな」
「はい……救われます……」
貴重な数少ない友人に妙な気を使わせずに済んで良かった。
いくら優斗でも、男同士が簡単に受け入れられない事は理解している。そのうえで二人は想いを寄せてくれているのだから……。
……性別。優斗はハッとする。
そういえば、同性だからという理由で断る事も出来た筈だ。それなのに、実際に体の関係が持てるかどうかを一番に悩んでいた。
それはつまり、自分は既にそこまで二人の事を……。
「悪かったよ」
「え?」
「次からは場所考えるわ」
「……はい」
優斗はチラッと周囲を見るが、会話の聞こえる範囲に人はいなかった。隆晴はきちんと考えてくれていたのだ。
「ま、仕方なくって感じでスパッと言われるのもどうかとは思ってたけどな」
「だったら笹山のこと止めてくださいよ」
「止めなくてもお前、言わないって分かってたし」
「っ……、……ごめんなさい」
「でもさ、お前のそういう真面目なとこ、好きなんだよな」
わしゃ、と髪を撫でる。隣に座る隆晴を見れば、優しい顔……ではなく、ニヤリと口の端を上げていた。
「先輩、意地悪です」
「お前が可愛いからな」
「理由になってませんよ」
口を尖らせる優斗を、そっと目を細め、見つめる。
耀と楽しげに話していた事に嫉妬した、など言えるわけもなく。
「機嫌直せよ。好きなもん買ってきていいからさ」
「……遠慮なく買いますよ?」
「いくらでも。ついでにコーヒー頼むわ」
「ただのパシリじゃないですか」
と言いながらも隆晴の財布を持ち、立ち上がった。アイスのMサイズでいいですか? と律儀に確認までして。
そんなとこが可愛いんだよな、と優斗の後ろ姿を見ながら、また小さく笑ってしまった。
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