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答えを聞かせて2
しおりを挟む好きな人に初めて触れた。
しかも、友人関係でもあまり触れない、髪に。
「花楓さん」
「?、うん」
「俺のユニット、D-BlinKって言うんですけど」
「うん」
「意味、知ってます?」
「うーん、ごめん、意味までは」
眉を下げる花楓の顔の横に、トン、と手を付き、壁との間に閉じ込める。キョトンとして見上げる花楓の耳元へと唇を寄せ、意図的に声を低めた。
「瞬きする間もないくらい、あなたを夢中にさせてみせます」
「っ……」
「という意味を込めてるんですよ」
「っ、……そ、そう、なんだ?」
ほんのり顔が赤くなっている。息を呑む音すら愛しくて、胸に込み上げる綺麗じゃないものをグッと呑み込んだ。
「ドキドキしました?」
「うっ…………はい」
「やった」
テストで良い点を取った子供のように無邪気な顔で笑う。
Don't blinkの意味は“瞬きしないで”だが、そのくらい夢中にさせられるようにと活動してきた。
職業柄、先程と同じように誰かに囁いた事もある。それなのに、好きな人が相手だと胸がドキドキしてみっともなく指先が震えてしまった。
「アイドルの俺はそういうキャラですけど、恋をしたのは花楓さんが初めてです」
初恋です。そう言ってそっと目を細めた。
元のように距離が空き、花楓はホッと息を吐く。そして、静かに声を零した。
「ちゃんと、考えてみたんだけど」
「はい」
「……ごめん。……分からないんだ」
花楓はそっと視線を伏せた。
「君のことは好きだよ。一緒にいると楽しくて、心が暖かくなる。でも、それが恋愛の好きかと言われたら、分からないんだ」
眉を下げ、床に視線を落とし胸元をぎゅっと握る。この答えが隼音を傷付けないか、そう心配しているのだろう。
「それで充分です」
きっと、一生懸命考えてくれた。普通ならその場で断っても良い事を、何ヵ月も考えてくれたに決まっている。
それに、この答えは隼音にとっては思ってもみない幸運だった。
「俺、恋愛として好きになって貰えるように、頑張ります」
「隼音君……」
好きだけど分からないなら、今度は恋愛の好きになって貰えるように頑張るだけだ。
「あの、ごめんね。俺、ずっと料理ばかりしてきたから、恋人とかも居たことなくて……ずっと分からないままかもしれない。だから、隼音君に他に好きな人が出来たら」
「出来ません」
「でも」
「出来ません」
「もしかしたら」
「ありません。花楓さん以外なんて、あり得ません」
きっぱりと言い切られ、花楓は困ったようなホッとしたような顔をした。
「一年でも、十年でも、いつまででも待ちます。あ、でも、時々好きになってくれたか聞くので、遠慮なく本音を教えてください」
出来れば何年も待たずに好きになって欲しい。
聞くの? と花楓は驚いた顔をして、だが、隼音らしい緩さにクスリと笑った。アイドルだと知られても、隼音は変わらず緩く優しいままだ。
「ということで、まずはお友達からよろしくお願いします」
「お友達……、うん、そうだね。こちらこそ、よろしくお願いします」
差し出された手を取り、ふわりと笑う。すると隼音は途端にピンと背筋を伸ばした。
「えー、では、花楓さん。まずは連絡先の交換からしていただいてもよろしいでしょうか?」
「うーん、お友達にしてはちょっと堅苦しいかな?」
「あ、すみません、喜びと緊張がこう、ぶわーっと」
駄目だーっと片手で顔を覆う。その姿が年相応に可愛くてつい声に出してしまったら、「花楓さんの方が可愛いです」と両手を握られ言い切られてしまった。
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