異世界転移したけれど、今までの世界と比べて平和でした。

犬宰要

文字の大きさ
42 / 64

42

しおりを挟む
 戦場で死線をいくつもくぐり抜けてきた身として、ナミの時折見せてくる死線というのは種類が違うものだった。戦場はどうやれば生き残れるのか、生き残るために攻撃したり、回避したり、環境を利用したり、様々な手を考え生き残ってきた。それが実力だったり、運もあったりしてきた、くぐり抜けて生き延びて来た事で死の間際が迫っても冷静に対処してきた。
 
 だが、ナミが時折見せる死線というのは、冷静さは保てるが対処方法がわからない。
 
 対処方法がわからないというのは、何をしたらその死線がやってくるのか、わからないのだ。俺は何かをしてしまったのだろう。昔、似たようなことがあり原因を聞いたら終わったことだからと同じような重圧感に襲われた。そうか、としか返せなかったがちゃんと聞いた方がよかったのだろうかと今では思った。
 
 昔なら、たとえ身体が粉々になっても修理されるし問題ないだろう。下手したら死ぬかもしれないが、きっと仲間が止めに入ってくれる。そ
 
 データ連携。卵型の武具により情報開示要求があり、対応します。
 
 あれ・・・?
 
「ナミ?」
 
「よく考えたら、何が起きたかデータ連携してもらえばよかったことに気づいたの、ちょっと待っててね」
 
 えぇ・・・おかしいなぁ・・・俺の許可なしにデータ連携ってされるの?
 
 肯定。生存戦略判断として選択しました。
 
 されるがままに数分後、ナミは腕を組み考えて、答えが出たのか人魚のメロジーヌ・ドライの方に近寄っていった。
 
「ひ、ひぅ」
 
「歌を知りたいだけなの?」
 
「は、はいぃぃぃ」
 
 メロジーヌ・ドライは涙目になりがなら祈るように手を組み、何回も頷いていた。その様子を見てナミが納得したのか、重苦しさはなくなり俺の方を向いて、にんまりして彼女は言った。
 
「ねぇ、私閃いたのだけど――」
 
 俺は彼女が閃いたことを聞いて、ハーピーがいる区画へ向かっていた。一度都市内を調査してるので、最短距離で移動をしていた。光学迷彩をし、建物を飛び跳ねて移動をし、該当するハーピーがいる場所へ向かっていった。
 
「魔力を乗せる技術は置いておいて、歌に対して貪欲な上位の歌姫ハーピーを連れてきて」
 
 俺はナミに言われるまま、情報収集から調査した該当するハーピーを捕獲することにした。該当するハーピーは一人で歌を懸命に歌っていたが、ノイズキャンセリングで歌はどこにも響かずにいた。
 
 夕方に差し掛かり、日が暮れる前に彼女を鹵獲しないといけないと思った。
 
 気配を感じたのか、俺の方を振り返り怪訝な顔し、何かを思い出したのか歌を辞め、指をさして叫んだ。叫んでいたがノイズキャンセリングで声は届いていない。
 
 あー、お前を台無しにしたばかやろーと言っています。
 
 ナビが丁寧に読唇術から教えてくれた。
 
 はぁ、とため息をし、対人用指向性スタンボルトを放出し、気絶させた。穏便に話し合いでついてきてくれるかと思ったが第一印象から交渉するには時間を要すると判断し、捕獲することにした。幸いにも彼女が歌っていた周りには人がいなく、目撃者もいなかった為、問題はなかった。
 
 ナノマシンを周囲に展開し、光学迷彩を起動させ彼女を担ぎ、宿泊所に戻ることにした。
 
 宿泊所に戻り、気絶した彼女を空いてるソファに降ろすとナミは頭を抱えながらため息をついていた。
 
「どうした?」
 
「なんでもないわ、とりあえず起こしてくれる?」
 
「わかった」
 
 俺はハーピーに微弱な電流を流し、覚醒させた。
 
「シビビビビビ! いたっいたたたたた!」
 
「起こしたぞ」
 
「えっ!? ちょ!? えっ!? ここどこ? っていうかセイレア・ヴィヨンじゃない! あれあんたは・・・メロジーヌ・ドライ!? なんで? え? えええ?」
 
「混乱してるところ悪いけれど、自己紹介をお願いしてもいいかな」
 
 ナミは
 
「ピュイデリカ・ピッピ・・・一応ハーピー歌姫二位よ。てかなんなの?」
 
「ピッピちゃん、歌をうまくなりたくない?」
 
「てか、てめぇ誰だよ。なぁここどこ? なんなの? あとピッピちゃん言うな・・・あれ、なんでここ声出るの?」
 
「あ、あのね。この人たちが本当の歌を教えてくれるの!」
 
「私が聴いた中で最高の歌でした。あなたも是非学びましょう!」
 
 セイレア・ヴィヨンとメロジーヌ・ドライがハーピーのピュイデリカ・ピッピを説得するのだった。
 
「はぁ? えっ? えぇぇ?」
 
 俺はこのピュイデリカ・ピッピは結構バカなんじゃないかなと思った。調査した時は、見た目からは頭が良さそうな雰囲気があり、知的さがあると思っていたが、ゴブリンたちと変わらないような雰囲気が今はあった。
 
 俺は少しだけナミが閃いたことに不安を覚えるのだった。そんなナミは頭を抱えてため息をつき、俺の方をじとりと見ていた。
 
 俺が悪いの?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...