異世界転移したけれど、今までの世界と比べて平和でした。

犬宰要

文字の大きさ
59 / 64

59

しおりを挟む
 俺はいくつかの車屋を巡り、自分たちが貰った車は割とハイグレードな車だと知った。それでも上には上の車があり、それにするか迷った。ナミに相談してからどの車にするか、一通り目星をつけておき、俺は約束の時間になりそうだったので、待ち合わせ場所に向かった。
 
 高エネルギー体補足。
 
 ナビからアナウンスがあり、補足した先にはナミと見知らぬ角が無い金髪の大柄な男がいた。
 
「ナミ、すまない。待たせた・・・こちらは?」
 
 ニヤニヤしており俺を見下していた。身長差から見下さず得ないが、何か今まで出会った人とは違う感じがした。
 
「ナンパしてきて、そのまま無視してもついてきた人よ」
 
「つれないねぇ・・・君たち有名人じゃん? お近づきになろうと思ってな」
 
 八重歯がギラりと光るような獰猛な笑みをした。
 
 大気中の電圧変化を確認。
 
 ナビがさっきから何か観測して、俺も何か奇妙な感じがした。
 
「それで何のようなんだ?」
 
「オレはジル、ジル・ロベルトって言うんだが・・・まあ、ジルって気軽に呼んでくれ、君たちの事は知ってるよ、レンツくんにナミちゃんだろう? いや、すごいねぇ角無しなのに」
 
「お前だって角無しだろう?」
 
「そうだね、物理的な角はないね。確かに無い・・・が、実はあるんだなぁ角はさ」
 
 高エネルギー体圧縮確認。
 
 ジル・ロベルトと名乗った頭部に二対の巨大な捻じれた角が出現した。立体ホログラムに似た青白く、不思議と眩しくない半透明な角だった。
 
「ほらぁ、あるだろう?」
 
「ちょっと、静電気ひどいからやめてくれない?」
 
 ナミの髪の毛が大変な状態になっていた。そして、バチンッと青白い火花が二人の間に目に見える状態で起きていた。
 
「おっと? ハハッすまないすまない」
 
 ジル・ロベルトが角を無くすと青白い火花は消えたが、ナミの静電気は収まらず髪の毛は広がったままだった。
 
「ないわぁー」
 
 ナミはかなり機嫌が悪くなっており、どうしたものかと思った。ジル・ロベルトは悪いと思ってない表情をしており、何しに近寄ってきたのかわからなかった。あたりの通行人や車なども、気が付いたら遠巻きで様子を伺うように離れており、何か様子がおかしく感じた。
 
 ナビ、こいつの魔力量は?
 
 測定範囲外、推定ドラゴン以上。
 
 なるほど、こいつは領主とかそういうレベルの強さを持つ存在と言うことか・・・。
 
「なぁ、お前何者なんだ?」
 
「ん~、ああ、オレは魔人族でちょっと偉い立場なんだよ。鬼人族が多い領地の都市で二人のうわさ聞いてさぁ、それでちょっと確かめたいと思ったわけよ。やっぱ自分で確かめないとダメじゃん? そう思わない?」
 
 偉い人、という割には服装がみすぼらしかった。街中で見かける中でも一番みすぼらしく見え、偉いさというのだったらさっきの魔力量でしかわからない。
 
「別の種族が違う都市に物見遊山で来ちゃいけないのか?」
 
「んん~? いや別にそんなこと関係ないでしょ、いやさ・・・レンツくん、君さちょっと付き合ってよ」
 
 ジル・ロベルトの眼が青白く変わり、電流が瞳孔に向かって流れていた。
 
「魔人の中で偉いのなら、デート中じゃなくてアポイントメントっていうお暇な時間に会いたいから時間調整してくれませんか? ってできないのかしら? それとも静電気で頭イかれてるのかしら?」
 
 高エネルギー体圧縮確認。
 
 バチンッ! という音がなったと思えば、眼の前が真っ白になった。
 
 色調、光調整。視覚を通常状態に戻します。
 聴覚デバイス損傷、復旧完了、通常状態に戻します。
 第一級、戦闘態勢に移行。体感時間遅延剤投与。
 
 体感時間を遅延し、判断能力は据え置きにする薬剤が投与され時間間隔が伸びていった。それがフラッシュグレネードと似たようなものだと気づいた。ナミは元から視力がないので、聴覚へ影響され、その場で崩れ落ちていた。幸いにも卵型の武具が頭から落ちないように支えられており、優秀な武具だと思った。
 
 俺は命には別条がないことを確認し、即座にレーザービームソードを引き抜き胴体部分に向かって突きと同時にレーザービームを出力した。
 
「へぇ、やるじゃん」
 
 胴体部分が貫かれたまま、言葉をしゃべる相手だった。こいつは人類敵の異電子なみの生命力がありそうだなと感じた。刃型のレーザービームソードを指向性拡散レーザービームに切り替え、ハチの巣にすることにした。異電子のような人類敵はどこかしら核があり、それに傷がつくのを恐れ距離をとる。このジル・ロベルトが同じような生命体かはわからないが、さすがに全身穴だらけは嫌がるだろうと思った。
 
 本当は大出力状態にして、塵も残さずレーザービームソードで焼き切りたいが、ナミが近くにいるため余波によってダメージを負ってしまう可能性がある。
 
「いやぁ、二撃目はさすがに食らいたくないかなぁ」
 
 一瞬にして、距離を離された。
 
 ナビ、解析。
 
 現段階の未確定解析・・・雷の声質と類似。
 
 くそ、光速エネルギー体型かよ・・・!
 
 俺は心の中で舌打ちをした、強襲型のサイボーグでさえ戦術リンクで光速ネットワークで対応し、別部隊と連携してやっと倒せるような相手だった。それを類似してるとナビが判断してるとなると、どう転んでも今の状態では勝てない。
 
 部分解析完了。高エネルギー体の魔力吸収可能。
 
 ん?
 
「今後は、オレの番」
 
 ジル・ロベルトが手をこちらにかざした瞬間、眼の前に真っ白な電流が幾重にもなって襲ってきた。光速に近い攻撃が繰り出され、避けることが不可能だと直感した。何度も死線と隣り合わせでよく今まで生きてきたし、平和な時間をひと時でも味わえたなら、悪くないかと頭によぎった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...