64 / 64
64
しおりを挟む
卵型の武具が分解してもそういう形にはなるわけがないような、元の大きさよりも大きくなっていた。円形型のオブジェがそこにあり、中心部は何か景色が映し出されていた。
「立体映像?」
俺はナミに問いかけるものの、ナミはふるふると首を横にふった。
「それはなんなんだ? いや何が起きてる?」
「なんか面倒ごと起きてて嫌だなぁと思って、ここじゃないどこか行きたいなぁと思ったらこうなった・・・」
なるほど、わからん。
解析完了。重力センサー異常発生確認、類似データと判明しました。
俺は重力センサー異常発生という言葉を思い出した。この世界に転移した時にナビが言っていた言葉であり、目の前で起きているのは転移するゲートが出来たという事なのかと考えた。
「それってもしかして――」
「そうだね、別世界の繋がってるね~」
突然、自称神と言っていたパープリープが腕を組みながらゲートの前に現れた。
「ああ、どうやってここに? そりゃ神なんだから可能だよ」
本当に神だったのか・・・。
「反物質をいくつか必要なレベルなエネルギーを得られたから、それを使って異世界転移ゲートを形成するとはすごいね。ナミさんはこれの扱いがうまいねぇ」
「じゃ、じゃあ・・・元の世界に戻れ・・・いや見える景色からするとどこだ・・・?」
表示されている景色はここの世界とは異なった空の色をしていた。そして、この世界と同じような自然豊かな草原、草木も見えていた。
「レンツは元の世界に戻りたかったの?」
ナミに問われずともあの死と隣り合わせの世界で毎日戦うのはこの世界で旅をして合ってないというのがよくわかった。絶対に戻りたくない。
「いや、よく考えたら戻りたくないな。ナミは?」
「私はレンツとならどこへでも、って感じかな」
ナミが口をとがらせながら横を向いた。時折、ナミの仕草が妙に気になる時があり、俺自身のサイボーグとしての不調と思ったりした事を思い出す。
異常なし。
ナビが即座に心を読んだかのようにアナウンスした。
「異世界転移ゲートを見る限り、繋がってる世界は僕が知ってる世界だね。この世界と同じくらいの危なさはあるかなぁ、二人を見る限り難なく楽しめる世界だと思うよ」
「どうしてか聞きたいが、どうせネタバレになるからといって教えてくれないんだろう?」
「いや、別の世界だからね。その世界の神様じゃないし、わからないかな! まあ、大丈夫だよ思うよ」
俺はこの神様が適当だなと思った。
「僕が上げたその眼もあるし、ナミさんに上げた武具もあるしね」
俺はこの魔界を全て旅したわけじゃないが、いろんな都市で恥ずかしい事をしでかしてきた事から有名人になってジル・ロベルトという面倒が起きたのだと思った。このまま魔界にとどまって、まだ見ぬ場所を旅するよりも別の世界に行ってしまうのもありかと考えた。
「なぁ、もしかして・・・俺が――」
「君の世界にいた人類敵もいないこの世界は最高だったろ?」
俺の気持ちを察して、パープリープは聞いてきた。
「まったく最高だぜ」
このパープリープという神様は俺が恥ずかしいことをするのを見越していたんだろう。そして、それを含めて楽しかったが、これ以上長居すると嫌気が指すから別の世界に行けるようにしたんだろうとわかった。パープリープはニヤリとしていた。
「ねぇ、どうするか決まった?」
「ああ、その世界に行こう」
「レンツくん、ナミさん・・・このヘッドギアを、改めてありがとう。おかげで一人旅がはかどったよ」
「どういたしまして」
「この武具ありがとう、最高だわ」
俺はナミの方へ行き、異世界転移ゲートの前に二人で立った。
「まあ、また魔界に来たらその時は歓迎するよ。いってらっしゃい」
彼は手をひらひらさせていた。
「ああ、ここの後始末とかこのジルくんに関しては任せておいて」
もとより面倒臭いから別の世界に逃げるようなものだ、あとのことなんて知るかと思っていた。
「それじゃよろしく頼む」
俺は振り返って答え、そして、異世界転移ゲートをくぐり抜けた。後ろを振り返るとパープリープは手をふっており、ナミもそれに対して手をふった。
「じゃ、閉じるわね」
ナミが言うと異世界転移ゲートはいつもの卵型の武具に戻った。
今までいた場所と違って、電磁フィールドで覆われた都市でもなく、ただ草原が広がり、遠くには山々があり、耳をすませば何か生物の咆哮が聞こえたりした。
「よく考えたら、荷物コンテナボックスに入れっぱなしだったわね」
「また最低限の装備でサバイバルだな」
「あれ? そうでもないみたい・・・?」
ナミが頭を傾げながら卵型の武具をつんつんしていた。
「この中に入ってるわ」
「なるほど・・・よくわからないな。ははっ」
俺はジル・ロベルトが言っていた事をふと思い出した。わからないことだから、知らないことだから、何か得られると言っていた言葉から、自分はもっと色々知っていけばいいのかもしれないと思った。
「なぁ、ナミ・・・ところでその浮遊してる卵型の武具はなんて名前なんだ?」
「え~、今更聞く? これはね~」
ナミはやっと聞いてくれたのかと楽しそうに話をはじめ、俺はそれを聞きながら新たな世界でもっといろんなことを知っていこうと思った。
「立体映像?」
俺はナミに問いかけるものの、ナミはふるふると首を横にふった。
「それはなんなんだ? いや何が起きてる?」
「なんか面倒ごと起きてて嫌だなぁと思って、ここじゃないどこか行きたいなぁと思ったらこうなった・・・」
なるほど、わからん。
解析完了。重力センサー異常発生確認、類似データと判明しました。
俺は重力センサー異常発生という言葉を思い出した。この世界に転移した時にナビが言っていた言葉であり、目の前で起きているのは転移するゲートが出来たという事なのかと考えた。
「それってもしかして――」
「そうだね、別世界の繋がってるね~」
突然、自称神と言っていたパープリープが腕を組みながらゲートの前に現れた。
「ああ、どうやってここに? そりゃ神なんだから可能だよ」
本当に神だったのか・・・。
「反物質をいくつか必要なレベルなエネルギーを得られたから、それを使って異世界転移ゲートを形成するとはすごいね。ナミさんはこれの扱いがうまいねぇ」
「じゃ、じゃあ・・・元の世界に戻れ・・・いや見える景色からするとどこだ・・・?」
表示されている景色はここの世界とは異なった空の色をしていた。そして、この世界と同じような自然豊かな草原、草木も見えていた。
「レンツは元の世界に戻りたかったの?」
ナミに問われずともあの死と隣り合わせの世界で毎日戦うのはこの世界で旅をして合ってないというのがよくわかった。絶対に戻りたくない。
「いや、よく考えたら戻りたくないな。ナミは?」
「私はレンツとならどこへでも、って感じかな」
ナミが口をとがらせながら横を向いた。時折、ナミの仕草が妙に気になる時があり、俺自身のサイボーグとしての不調と思ったりした事を思い出す。
異常なし。
ナビが即座に心を読んだかのようにアナウンスした。
「異世界転移ゲートを見る限り、繋がってる世界は僕が知ってる世界だね。この世界と同じくらいの危なさはあるかなぁ、二人を見る限り難なく楽しめる世界だと思うよ」
「どうしてか聞きたいが、どうせネタバレになるからといって教えてくれないんだろう?」
「いや、別の世界だからね。その世界の神様じゃないし、わからないかな! まあ、大丈夫だよ思うよ」
俺はこの神様が適当だなと思った。
「僕が上げたその眼もあるし、ナミさんに上げた武具もあるしね」
俺はこの魔界を全て旅したわけじゃないが、いろんな都市で恥ずかしい事をしでかしてきた事から有名人になってジル・ロベルトという面倒が起きたのだと思った。このまま魔界にとどまって、まだ見ぬ場所を旅するよりも別の世界に行ってしまうのもありかと考えた。
「なぁ、もしかして・・・俺が――」
「君の世界にいた人類敵もいないこの世界は最高だったろ?」
俺の気持ちを察して、パープリープは聞いてきた。
「まったく最高だぜ」
このパープリープという神様は俺が恥ずかしいことをするのを見越していたんだろう。そして、それを含めて楽しかったが、これ以上長居すると嫌気が指すから別の世界に行けるようにしたんだろうとわかった。パープリープはニヤリとしていた。
「ねぇ、どうするか決まった?」
「ああ、その世界に行こう」
「レンツくん、ナミさん・・・このヘッドギアを、改めてありがとう。おかげで一人旅がはかどったよ」
「どういたしまして」
「この武具ありがとう、最高だわ」
俺はナミの方へ行き、異世界転移ゲートの前に二人で立った。
「まあ、また魔界に来たらその時は歓迎するよ。いってらっしゃい」
彼は手をひらひらさせていた。
「ああ、ここの後始末とかこのジルくんに関しては任せておいて」
もとより面倒臭いから別の世界に逃げるようなものだ、あとのことなんて知るかと思っていた。
「それじゃよろしく頼む」
俺は振り返って答え、そして、異世界転移ゲートをくぐり抜けた。後ろを振り返るとパープリープは手をふっており、ナミもそれに対して手をふった。
「じゃ、閉じるわね」
ナミが言うと異世界転移ゲートはいつもの卵型の武具に戻った。
今までいた場所と違って、電磁フィールドで覆われた都市でもなく、ただ草原が広がり、遠くには山々があり、耳をすませば何か生物の咆哮が聞こえたりした。
「よく考えたら、荷物コンテナボックスに入れっぱなしだったわね」
「また最低限の装備でサバイバルだな」
「あれ? そうでもないみたい・・・?」
ナミが頭を傾げながら卵型の武具をつんつんしていた。
「この中に入ってるわ」
「なるほど・・・よくわからないな。ははっ」
俺はジル・ロベルトが言っていた事をふと思い出した。わからないことだから、知らないことだから、何か得られると言っていた言葉から、自分はもっと色々知っていけばいいのかもしれないと思った。
「なぁ、ナミ・・・ところでその浮遊してる卵型の武具はなんて名前なんだ?」
「え~、今更聞く? これはね~」
ナミはやっと聞いてくれたのかと楽しそうに話をはじめ、俺はそれを聞きながら新たな世界でもっといろんなことを知っていこうと思った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる