異世界転移したけれど、今までの世界と比べて平和でした。

犬宰要

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 卵型の武具が分解してもそういう形にはなるわけがないような、元の大きさよりも大きくなっていた。円形型のオブジェがそこにあり、中心部は何か景色が映し出されていた。
 
「立体映像?」
 
 俺はナミに問いかけるものの、ナミはふるふると首を横にふった。
 
「それはなんなんだ? いや何が起きてる?」
 
「なんか面倒ごと起きてて嫌だなぁと思って、ここじゃないどこか行きたいなぁと思ったらこうなった・・・」
 
 なるほど、わからん。
 
 解析完了。重力センサー異常発生確認、類似データと判明しました。
 
 俺は重力センサー異常発生という言葉を思い出した。この世界に転移した時にナビが言っていた言葉であり、目の前で起きているのは転移するゲートが出来たという事なのかと考えた。
 
「それってもしかして――」
 
「そうだね、別世界の繋がってるね~」
 
 突然、自称神と言っていたパープリープが腕を組みながらゲートの前に現れた。
 
「ああ、どうやってここに? そりゃ神なんだから可能だよ」
 
 本当に神だったのか・・・。
 
「反物質をいくつか必要なレベルなエネルギーを得られたから、それを使って異世界転移ゲートを形成するとはすごいね。ナミさんはこれの扱いがうまいねぇ」
 
「じゃ、じゃあ・・・元の世界に戻れ・・・いや見える景色からするとどこだ・・・?」
 
 表示されている景色はここの世界とは異なった空の色をしていた。そして、この世界と同じような自然豊かな草原、草木も見えていた。
 
「レンツは元の世界に戻りたかったの?」
 
 ナミに問われずともあの死と隣り合わせの世界で毎日戦うのはこの世界で旅をして合ってないというのがよくわかった。絶対に戻りたくない。
 
「いや、よく考えたら戻りたくないな。ナミは?」
 
「私はレンツとならどこへでも、って感じかな」
 
 ナミが口をとがらせながら横を向いた。時折、ナミの仕草が妙に気になる時があり、俺自身のサイボーグとしての不調と思ったりした事を思い出す。
 
 異常なし。
 
 ナビが即座に心を読んだかのようにアナウンスした。
 
「異世界転移ゲートを見る限り、繋がってる世界は僕が知ってる世界だね。この世界と同じくらいの危なさはあるかなぁ、二人を見る限り難なく楽しめる世界だと思うよ」
 
「どうしてか聞きたいが、どうせネタバレになるからといって教えてくれないんだろう?」
 
「いや、別の世界だからね。その世界の神様じゃないし、わからないかな! まあ、大丈夫だよ思うよ」
 
 俺はこの神様が適当だなと思った。
 
「僕が上げたその眼もあるし、ナミさんに上げた武具もあるしね」
 
 俺はこの魔界を全て旅したわけじゃないが、いろんな都市で恥ずかしい事をしでかしてきた事から有名人になってジル・ロベルトという面倒が起きたのだと思った。このまま魔界にとどまって、まだ見ぬ場所を旅するよりも別の世界に行ってしまうのもありかと考えた。
 
「なぁ、もしかして・・・俺が――」
 
「君の世界にいた人類敵もいないこの世界は最高だったろ?」
 
 俺の気持ちを察して、パープリープは聞いてきた。
 
「まったく最高だぜ」
 
 このパープリープという神様は俺が恥ずかしいことをするのを見越していたんだろう。そして、それを含めて楽しかったが、これ以上長居すると嫌気が指すから別の世界に行けるようにしたんだろうとわかった。パープリープはニヤリとしていた。
 
「ねぇ、どうするか決まった?」
 
「ああ、その世界に行こう」
 
「レンツくん、ナミさん・・・このヘッドギアを、改めてありがとう。おかげで一人旅がはかどったよ」
 
「どういたしまして」
 
「この武具ありがとう、最高だわ」
 
 俺はナミの方へ行き、異世界転移ゲートの前に二人で立った。
 
「まあ、また魔界に来たらその時は歓迎するよ。いってらっしゃい」
 
 彼は手をひらひらさせていた。
 
「ああ、ここの後始末とかこのジルくんに関しては任せておいて」
 
 もとより面倒臭いから別の世界に逃げるようなものだ、あとのことなんて知るかと思っていた。
 
「それじゃよろしく頼む」
 
 俺は振り返って答え、そして、異世界転移ゲートをくぐり抜けた。後ろを振り返るとパープリープは手をふっており、ナミもそれに対して手をふった。
 
「じゃ、閉じるわね」
 
 ナミが言うと異世界転移ゲートはいつもの卵型の武具に戻った。
 
 今までいた場所と違って、電磁フィールドで覆われた都市でもなく、ただ草原が広がり、遠くには山々があり、耳をすませば何か生物の咆哮が聞こえたりした。
 
「よく考えたら、荷物コンテナボックスに入れっぱなしだったわね」
 
「また最低限の装備でサバイバルだな」
 
「あれ? そうでもないみたい・・・?」
 
 ナミが頭を傾げながら卵型の武具をつんつんしていた。
 
「この中に入ってるわ」
 
「なるほど・・・よくわからないな。ははっ」
 
 俺はジル・ロベルトが言っていた事をふと思い出した。わからないことだから、知らないことだから、何か得られると言っていた言葉から、自分はもっと色々知っていけばいいのかもしれないと思った。
 
「なぁ、ナミ・・・ところでその浮遊してる卵型の武具はなんて名前なんだ?」
 
「え~、今更聞く? これはね~」
 
 ナミはやっと聞いてくれたのかと楽しそうに話をはじめ、俺はそれを聞きながら新たな世界でもっといろんなことを知っていこうと思った。

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