9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
23 / 82

23

しおりを挟む
 アカネがいなくなった後に、ムッツーから根掘り葉掘り聞かれそうになったが、マナチが今日はもう遅いから寝ようという事になった。テントを準備して、クッション材を敷いて、寝袋を用意したら急激な眠気が襲ってきた。よく考えたら、夜通し休憩もせずに動いてた。
 
 僕は防具を外し、シャワーも浴びずにそのまま寝袋に入り寝た。。
 
 目が覚めたら外は明るくなっていて、僕がテントから出るとみんな起きていた。
「あ、おはよう」
 挨拶をすると皆それぞれ挨拶を返してくれた。僕はシャワーを浴びてくるといって、別の部屋に移動し、そこで簡易シャワーを召喚して、昨日の汗とかを流した。シャワーを浴びている中であの爆発を巻き起こしたのは誰だったのだろうかと思った。もしかして、あの集団食中毒で生き残った人なのだろうか、と考えても答えが出なく頭を振った。
 
 それよりも気になったのは、あの爆発の中で爆発に巻き込まれたり、火に当たっているのにも関わらず、あの二人はものともせずだったことだ。
 
 考えても答えが出るわけでもなく、ヒントとなるような事はツバサとジュリに聞けばもしかしたらわかるかもしれないと改めて思った。そういえば、銃撃乱舞の事についても聞いてなかったし、もうちょっといろいろ詳しくなっていこうと思った。
 
 シャワーを浴び終え、パッと着替え、元の部屋に戻るとムッツーが待っていたとばかりに、近寄ってきた。いきなりチューしてくれてもウェルカム。
 
「ヨーちゃん、昨日あったことを詳しく教えてくれ」
 僕は頷き、昨日の事について話をした。ネズミたちをやっつけていたが、途中で危なかった事。危なかったけれど、アカネが致死性毒ガスを使って撃退した事。そして、廃墟の街で一番高い建物の上からここを見つけた事を共有した。
 
「今度は私も、戦うから」
 僕が話し終えるとマナチは何か決意したような表情で言った。
「私もだ、そのすまない……そしてありがとう」
 ムッツーもなんだか戦うぞ、という感じだった。
 
 その後、僕は一呼吸おいて今後の事に関わるアビリティ・スキルを持っている他の人について話すことにした。
「あの爆発は、わかってる人もいると思うけれどアビリティ・スキルを使って起きた事だと思う」
「ああ、それは間違いだろう……同じ人間に向けてしまえばこれは凶器になる」
 ムッツーは一呼吸し、話をつづけた。
「だが、あの二人はネズミを倒していたのだと思う」
「ネズミ、ね……私はネズミだけじゃなく、人も入ってると思う」
 
 ヨーちゃんはムッツーが言いにくいことを代わりにはっきりと告げた。周りもわかっているけれど、実際に言葉として耳に入ることで、現実だったと認識させた方がいいと思った。
 
 ハルミンを見ると涙を流していた。
「大丈夫、きっと大丈夫だから……」
 タッツーがそれに気づき、召喚したタオルで涙をぬぐっていた。それを見た僕は、それ以上何も言えなくなった。場の雰囲気がより冷め、スンスンと泣いている声だけが聞こえた。
 
「ごめ、はな、話を続けて……」
 彼女は辛いけれど、自分のせいで話が進まず詰まっている状態は苦痛だったのか、タッツーから背中をさすられながら言った。
 
「あの敵意が私たちに向いてきてはいないが、巻き込まれる可能性もあるし、もし……もしも、私たちに向けられたらどうしよう」
 ムッツーが項垂れながら、言った言葉はどうしたいのかという投げかけではなく、自分はどうしたらいいのかという悩みであり、目を背けたい不安を吐露しているようだった。その言葉を聴き、僕は拳を握り、震え、何かを言おうにも言葉が出てこなかった。
 
「に、逃げよ……そうよ、逃げよう」
 僕はマナチが言った言葉に対して聞いた。
「どこに逃げる?」
「あの光りを目指せば、きっと元の世界に戻れる……はず」
「そうかもしれない……そうかも……しれないな」
 
 僕もそれにすがりたい思いが出ていた。正直、ネズミとはいえ銃で倒していて気持ちがいいものではなかった。
 
「これにしたって、私たちは何もわからないしね」
 タッツーがアーミーナイフを手にしながら、夜でも空が明るくなる方向に向かう事に同意しながら呟いた。
 
「他のみんなもそれでいいか?」
 ムッツーがマナチ、タッツー、ジュリ、ツバサの顔を見てそれぞれが頷いたのを確認したのだった。頷いたのを確認すると、ムッツーはジュリが小さく手を上げているのを見つけた。僕は今までジュリやツバサが何かしら発見していることで、生き残るための見逃してはいけない何かなんだと感じていた。
 
「何かわかったのか!?」
「ひぅっ」
 ムッツーは思わず声を荒げてしまったのだった。
「いや、すまない……それでそのどうしたんだ?」
「そ、その、前までなかった、あのアーミーナイフでわかる。そのアビリティ・スキルがふぇ、増えてました」
 
 目をきょろきょろし、おずおずとつっかえながら答えてくれたのだった。タッツーや周りの人たちもすぐさま、アーミーナイフに意識を向けて、何が変わったのか確かめるのだった。ただ、ハルミンだけは手に握ったアーミーナイフに目をやるだけで確かめているというよりも、気が沈み疲れているようだった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...