9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
22 / 82

22

しおりを挟む
 僕は彼女がグイグイくるのが苦手だった。という話だけではなく、何か奇妙な感じがあり、距離を置きたいと思えた。言葉ではうまく説明できないが、何か苦手だ。性的にこうアプローチをかけられても多分、僕は遠慮してしまうというか逃げる。
 この逃げるというのは、生理的に無理に近いのだけど、今まで振り返って考えてみるとそういうシチュエーションもありだなと思っていた頃もあった。そして実際に妄想してみると別に問題はない。
 
 つまり、僕はこのアカネをただ苦手としている。
 
 廃墟の街をアカネと二人で歩いている中で、僕はクリスベクターカスタムの銃を常に出しっぱなしに、何かいきなり出てこないか警戒していた。
「ヨーちゃん、大丈夫だよ。ここ一帯はなにもいないよ?」
「そ、そうか。ちょっと廃墟の街って何か怖くてさ」
「あ、わかるわかる。私も最初そうだったしぃ」
「そういえば、アカネの仲間は心配してないのか?」
 彼女が一人で、しかも遅くまで付きっきりの状態は、仲間を心配させるのではないかと思った。
「大丈夫大丈夫、あたしネズミ殺せるから見てきてくれって頼まれたんだもん。それに私だけだからね、ネズミ殺せるの」
「そうか、ありがとう」
 普通に暮らしていたらそもそも動物を殺す事を受け入れて日常的に出来るような人はいないと思った。ネズミの駆除を仕事にしている人でさえ、今日の僕のように銃で殺しまくったりしないだろう。アカネは僕が思ってるよりもカースト上位の嫌な奴ではない気がしてきた。
 
 でも、なんか苦手なのは変わらない。
 
 +
 
 何十分か歩いてると廃墟の学校に到着した。建物を実際に目にすると門はあるものの、開けっ放しの状態だった。グラウンドは土ではなく、ひび割れたゴム製のグラウンドだった。ひび割れた場所から雑草なども生えてなかった。
 二階部分の一室が明かりがついており、多分そこにいるのかなと思った。窓ガラスもなく、カーテンもないため、わかりやすかった。
 
「仲間がいるといいね」
 アカネは防護マスク越しでもわかる笑顔で僕を励ましてくれた。
「ああ、そうだね」
 これでマナチたちじゃなくて別の人たちだったらどうなるんだろうか、と不安がよぎったがあの場所からそう遠くない所でわかりやすく明かりがついてるのなら、マナチたちだろうと思った。ていうかあってくれ。
 
 僕たちは、グラウンドを通り、廃墟の学校に入っていった。下駄箱置き場があると思ったけれど、そういったものは一切なく、棚とかもない。ドアすらもないのだから、作り途中のまま放置されたような状態だった。この廃墟の街を歩いている時もそうだったが、同じ時期に同時に作られて、そのまま廃棄されたようだった。
 
 僕たちは二階に上り、明かりがある部屋を目指した。
 
 廊下や中は薄暗いが、問題なく歩けた。外からの光りが全体的に真っ暗にさせないで薄暗さを保っていた。あの遠くにある光りは一体何なんだろうと改めて思った。
 
 明かりがある部屋に近づいていくと声が聞こえてきた。僕はその声に聞き覚えがあり、段々と何を話をしているのか聞こえるようになった。
 
「助けに行こうよ!」
 マナチが誰かを助けに行こうとしているのがわかった。
「――」
「わからないじゃん! 生きてるかもしれない、それにあの時、一緒に戦えばよかった……戦えるのに、ヨーちゃんだけ任せて、戦えばよかったんだよ」
「――」
「私、一人でも行く!」
「おい、勝手な行動はするな! 今は助け合っていかないといけない!」
 
 なんだが、白熱して声もあらぶりがうかがえた。ここで実は僕生きてるから喧嘩しないで仲良くしようよとか参上するほど、僕はコミュ力高くない。
 
「知らない!」
 
 マナチが明かりがある部屋から飛び出してきた。まさか飛び出してくるとは知らず、廊下でお互い目がばっちり合った。
 
「ひゅえ?」
「あ、ただいま?」
 僕は銃を持ってない方の手を挙げて、ひらひらとさせた。厚ぼったい防具をつけ、泣きそうな顔をしてるマナチだった。
 
「ヨ、ヨ、ヨ……」
 動揺しすぎてマナチが固まっていた。
「おい、マナチ――って、ヨーちゃん!? 生きていたのか!」
 死んでねぇよ、いや死にそうだったよ。ムッツー、もっと喜んでくれてもいいんだぞ。
「ん、なんとかな」
 僕はクールに答えた。
「その子誰?」
 マナチが冷静になったのか、僕の横にいるアカネを見ている。
 
「ああ、この人はアカネ。途中で助けてもらったんだ。この廃墟の街に詳しくて、ここに来れたんだ」
 自分で言ってて、なんか説明が下手だなと思った。あとマナチがなんか怖い。
「ふぅ~ん、アカネさん……ヨーちゃんを助けてくれてありがとう」
「ふふん、いいってことよ。ネズミを殺してる人は仲間だしね!」
「ここで話すのもなんだし、中で話さないか?」
 
 ムッツーに言われ、僕たちは部屋に入った。そこにはタッツーに引っ付いているハルミン、身を寄せ合ってるツバサとジュリがいて、みんな無事だったことに安堵した。
 
「その子はどなたかしら?」
「あたしはアカネ、よろしくね! ヨーちゃんがネズミを殺してたから、一緒に殺したんだ!」
「そ、そうヨーちゃんを助けてくれてありがとう」
「んじゃ、私そろそろ帰るねっ! 明日またくるね、この廃墟の街を案内するよ!」
「え、ええ?」
 タッツーもどうやら彼女のノリについていけてないようだった。よかった、僕だけじゃない。
 
「そのアカネ、ヨーちゃんをありがとう」
 ムッツーがアカネにお礼を言った。
「えっへへ~、いいってこと! それじゃまた明日くるね、それじゃ!」
「あっ」
 ムッツーが何か言う前にアカネは部屋から走って出ていった。
 
「え、えーっと……ただいま?」
「おかえり!」
 マナチが抱き着いてきた。厚ぼったい服、というかガッチガチな防具が身体にあたったが嬉しかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための25の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

処理中です...