9ライブズナイフ

犬宰要

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 ビジネス街特有の建物が立ち並ぶ中で、大きく開けた場所が目についた。道沿いに歩いていくと大きなショッピングモールがそこにあり、駐車場にいくつもの車が駐車されていた。僕は地方には必ずあるようなショッピングモールがなぜこんなビジネス街の中にあるのか、不思議に思った。
 
「ねぇ、ちょっと中見ていかない?」
 マナチが気になったのか、みんなに話しかけてきた。
「私は賛成、ここだけ車がやたら多くあるのが気になる」
 ハルミンはマナチに賛成していた。
 駐車場を見ると、どこかで見た事ある車がとまっており、この街にいるのは普通に僕たちと同じ人だと思うようになっていた。
 
「あ、あそこの車に人が乗ってない?」
 マナチが指さす方向に、確かに車に人が乗っていた。運転席に座り、首を左右に動かしていた。肩でもこったからなのか、ゆらゆらと動かしていた。
 
「ツバサ、ジュリどう思う」
「ゾンビですね」
「ゾンビかと」
「だよなぁ」
 僕はツバサとジュリに聞いて、ゾンビだろうと思った。
 
 ムッツーとタッツーが互いに頷きながら、大回りでその車に近寄り、正面から見据えるとやせ細った緑色、茶色、紫色が混在した皮膚を持つ人間が左右に揺れていた。眼は開ききっており、どこを見ているのかわからない目をしていた。掻きむしったような後が顔や首など、見える範囲に見えていた。
 
「う、あれってもしかして――」
 マナチが目をしかめていた。
「ゾンビだな」
「ゾンビね」
 ムッツーとタッツーがゾンビと断定した。
「ゾンビですね」
「ゾンビ」
 ツバサとジュリもゾンビゾンビと言った。マジゾンビ。
「ゾンビだな」
 僕もゾンビと言った。ゾンビを言いたかった。
「キモイね、ゾンビ」
 ハルミンがマナチの肩にポンと手を置き、言った。ハルミンは廃墟の街を脱出してから、おどおどビクビクしてタッツーに甘える事がなくなり、なんというかたくましくなった。今までの反動からか、周りに冗談や絡みが増えていた。
 
「どうする?」
「車から出てこないだろうし、放置でいいんじゃないかしら?」
 もうすでにムッツーとタッツーは倒すという思考回路だった。僕は少し気になって、警戒しながら近寄ろうとしていったら、車の中のゾンビは僕を見つけたのか左右の揺れがおさまり、ジーッとこちらを見てきた。
 
 一定距離に近づいたら見えた、という感じなのだろうかと思いゆっくり移動してみたらそのままジーッと目で追ってきた。相手からは見えているというのがわかり、そーっと離れて、元の位置まで戻ると相手から見えていないのか左右に揺れ始めた。
 
「ちょ、ちょっとヨーちゃん何してるの?」
「いや、ちょっと見えてるのか気になって……」
「そういうのは先に言ってくれないか」
「音で反応するゾンビもいるから声かけれなかったですよ。不用意に刺激させないでください」
 マナチから心配され、ムッツーからは怒られ、ツバサから追い打ちをくらった。
「ご、ごめんなさい」
「全く、マナチどうする? このショッピングモールに入ってみるか、あそこから入れそうだがもしかしたらゾンビがいるかもしれないぞ?」
 ムッツーがマナチに入りたいのか聞く、どのみちみんな入って確かめたいのだろう。
「むむむっ」
 悩んでるマナチ、かわいい。
 
 +
 
 結局のところ、ショッピングモールに入る事にした。シャッターが中途半端に開いている所があり、警戒しながら中に入った。驚いたことに中は電気が通っていた為、明るかった。そして、ゾンビがうごめいていた。
 
「じゃあ、事前に話し合った通りに行こう」
「わかったわ」
「了解」
 など各自返事をしていった。
 
 事前に話し合った内容は、ゾンビは容赦なく頭を撃つ事、高性能サイレンサーをつけた状態で使う。ジュリに関しては散弾でも吹き飛ばせるだろうという事でスラッグバースト弾ではなく、高性能サイレンサーをつけて散弾になっていた。もし、ダメだった場合はスラッグバースト弾を使って対応する、という事になった。
 
「じゃあ、近くのからやっていこう」
 ムッツーが号令を出すと、各自近くにいるゾンビに対して銃を撃っていった。
 
 高性能サイレンサーから発射される銃声はゾンビたちにとって無音に近いのか、発砲時の音では反応しなく、ゾンビが倒れた音に辛うじて反応するくらいだった。僕たちはショッピングモールの地上階を隅から隅までゆっくりと歩きながらゾンビを排除していった。
 
「この階には服が売ってる店が一件もない……」
「あるのはスーパーと飲食店エリアって感じですね」
 マナチがボヤくとハルミンがかえしていた。
「それにしてもゾンビの格好がどれも似たような服を着た者たちだな」
「ええ、なんていうか医者っぽいというかなんか、そういう服装よね」
 ムッツーとタッツーが言うのもわかる。どれもデザインが簡易的な服で、清潔感を主としたデザインで飾りっけがあまりない服なのだ。
 
 従業員エリア以外の地上階にいるゾンビたちはすべて殲滅し、二階へと登る事にした。
 
「ねえ、案内図を見る限り三階建てのショッピングモールね」
「あの吹き抜けのエリアで上を見た時も三階だと思ったら、三階だったか」
 案内図を見るとJの字をしたショッピングモールだった。丁度、Jのカーブがある部分が吹き抜けになっており、僕たちは今吹き抜けがないエリアにいた。
「エスカレーターで上に行くか? それとも階段で行くか?」
 僕はどちらから行くのかムッツーとタッツーに聞いたら、ツバサとジュリが割り込んできた。
「「階段で行きましょう」」
「お、おう?」
 二人が言うには、エスカレーターだと登ってる最中に降りる方から襲われたら逃げにくいからという事だった。言われてみれば確かにその通りだった。
 僕たちは警戒しながら二階へ上り、近くにいるゾンビを撃ち倒していった。どのゾンビも走ってきたり、ジャンプしてきたり、跳ねてきたり、四つん這いになって高速移動してきたりはしなかった。
 
「定番の古いゾンビでなんというかよかったかなと思ってます」
「ジュリもそう思いますか、私もです」
 ツバサとジュリが言う定番のゾンビというのがどんなのか後で聞いてみようと思った。二階も同じように倒していったが、どの店も商品がなく、ハンガー掛けや棚などは設置されているだけの状態だった。
「もしかして、ここには何もない……?:
 マナチが残念そうに言ったので僕は慰めた。
「三階ならあるんじゃないか?」
「三階は案内図を見た時に確かめたけれど、本、文具、雑貨系でしたよ」
 ハルミンが希望を砕いた。いやマナチならチェックしていたかも?
「何も無かった……残念だよ」
 マナチは残念がっていた。慰め失敗。
 
 僕たちは人だったゾンビを倒す事に躊躇はしていなかった。というのも瓦礫の山、廃墟の街での出来事を経て覚悟が変わったというのが大きい。ここでは元は人間なんだから、治るかもしれないし、という考えは誰も持っていなかった。むしろ襲われる前に倒すという結論を廃墟の街を出た際に話し合って決めた事だった。

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