9ライブズナイフ

犬宰要

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 僕たちは外に出ると正面の出入り口は銃を持った人たちがバリケードの向こう側からゆっくりと進んでくるゾンビたちを見ていた。なぜ、誰も発砲しないのかという疑問を持った。
 
「ん、あれ君たちどうしたの? 避難しないのか?」
 EXP部隊のシュシャが声をかけてきた。
「僕たちも戦います」
「確かに君たちがいれば生存できそうな気がするよ。あのショッピングモールはゾンビだらけだったはずなのに、倒しきってるからね。期待しちゃうが、いいのか?」
 僕たちは頷いた。
「そうか、なら頼らせてもらおう」
 彼は笑顔頷き、シュシャと同じ服を着た仲間たちに僕たちが手助けにきてくれたことを伝え、軽く自己紹介をした後にゾンビたちと応戦する事になった。
 
 作戦なんてものはなく、射程県内に入ったら行動不能にさせるだけ、近寄られたら負け、というものだった。ただ、基本的に正面にいるゾンビを狙う事というシンプルなものだった。
 
「ハルミンを中央にし、左右に僕とジュリ、ムッツーとタッツーを左に、右はツバサとマナチで行こう。ハルミンのマシンガンは出し惜しみ無しで行こう」
 僕はみんなに伝え、バリケードの後ろ側に立ち、銃をゾンビに向けて構えた。ベェスチティに囲まれた時に比べて大分冷静だった。ゾンビもゆったりとした動きでそこまで脅威ではないことをショッピングモールで知っている。
 
 そういえば、誰もまだ発砲していない。そもそもどうしてゾンビは一斉にここに向かってきているんだ?
 
「詳しい説明をしていなかったと思うから状況を説明する」
 シュシャが僕たちがバリケードの後ろに準備出来たタイミングで話しかけてきた。僕たちは振り返り、彼の話を聞くことにした。
「アーネルトさんやアンネイさんから聞いてたらあれなんだが、一定周期になると街の中を巡回して、人がいるところを襲いまわるんだ。近寄られると成すすべもないから、確実に倒さないとゾンビにこちらがなってしまうのもあるし、弾の弾数ももとないのもあって、割とヤバイ状態さ」
 
 一呼吸し、シュシャがさらに続けて言う。
 
「危なくなったら、俺たちに構わず逃げてほしい。いいね?」
 
 僕はゾンビの行動習慣はわからなく、こうやって一斉に動き出す事に疑問を感じた。だが、今は目の前の脅威と思われているものの排除だ。幸いにも僕たちの弾は無限だ。
 
「わかりました、もう撃っても大丈夫ですか?」
「あ、ああ……この距離からか……? あれ、その子が持ってる銃はどこから?」
 シュシャはハルミンがだけいつも銃を持っていなかったが、今はごつくでかい銃をゾンビに向けている。そのことに違和感を覚えているようだった。
 
「ハルミン、やってしまおう」
「了解ですッ!」
 
 ハルミンのマシンガンは重量型中型機関銃禄弐式というものだった。ツバサとジュリがその名前や形状から銃撃乱舞にも存在しないタイプのものだというのがわかり、架空の銃だという事以外わからなかった。使用されている弾は僕が使っている特殊素材ミストウォーカーの徹甲弾。ただ違うのは弾の大きさで、僕やアサルトライフルと比べると大きかった。
 
 発射音が鳴り響き、銃口からは放たれた弾はゾンビたちを一網打尽にしていった。射線上のゾンビはまとめて吹き飛ばされていき、肉の破片が散乱していった。それでもなお歩みを止めず、ただミンチになるためだけにゾンビたちは行進してきた。ハルミンはゾンビの上半身より上を狙って撃っていた。
 
 僕はあとでゾンビの倒した数を確かめようと思った。
 
「こ、ここは任せるぜ」
 シュシャが何か引き気味で言うと、別の場所へ行った。
「はい、任せてください!」
 
 僕たちはハルミンを蹴散らせていない、端から来ているゾンビたちに向けて撃ち、撃ち漏らしがないように片づけていった。ほぼ僕たちが、というよりも僕たちで全ての向かってくるゾンビたちを片づけた。
 
 最後の一体と思われるゾンビを倒すと、周りから大歓声が沸き起こった。
 
 拍子抜けするような感じはあったものの、倒しながら数えていたゾンビの数は二百を越えており、僕は数え切れてない分も数えなおしたら三百はいくだろうと思った。
 
「すごいな、俺たちの出番はなかったよ。ありがとうな」
 シュシャがにこやか笑顔でお礼を言うと周りの人たちも声をそろえてお礼をいい、笑いあった。
 
 さらにここからゾンビはでないだろうと思ったが念のため、確認するために倒したゾンビの数を数える事にしようと思った。
「一応、何かあるかわからないから、二、三日はここにいてくれないか?」
「何かっていうのは?」
 シュシャが何か気がかりなのか、ゾンビの方を見て言った。
「倒したゾンビは消滅すると思うんだが、こんなに大量に倒した現場は見た事がないからな、それの不安がある。なので様子見を一緒にしてもらいたいってことだ。見張ったりするのはこちらの役目としておこなう、ダメなら諦めるさ」
 
 僕たちは顔を見合わせた。
「どうする? 乗り掛かった舟みたいなものだし、僕はいいかなと思う」
「そうだな、私も異論はない」
「私もいいと思うわ」
 ムッツーとタッツーは問題なしだった。
「様子見して何かあれば対応するのは問題ないよ」
「私もいける」
 ハルミンとマナチも賛成だった。
「ツバサとジュリはどうだ?」
「はい、大丈夫です」
「私も」
 というわけで全員問題なかったので、シュシャの方に振り向いて頷いた。
 
「助かる、それじゃ、アーネルトさんやアンネイさんに報告し、方針を伝えるよ」
 僕たちは病院内に戻り、血液検査をまた受けて、エントランスホールの一角で待っているとアーネルトとアンネイがやってきて感謝された。シュシャから事情を話されると二人して頭を下げ、さらに感謝された。
 
「君たち七人が一緒の方がいいと思うから、相部屋の使われていないこの部屋を使ってもらう事になるけれどいいかな? あ、シーツとかは洗濯とかされているから、殺風景で悪いけれど」
 通された部屋は二階の広い病室だった。ベッドが十個あり、カーテンで区切られるようになっていた。機密エリアに該当しないのか、階段を登るとすぐに行ける場所だった。
「「「ありがとうございます」」」
「まあ、何かあればそのボタン押せばだれかくるからくつろいでくれると嬉しい」
 僕たちはここの人たちと良好な関係を築けている、と思った。
 
 ふと生存確率を見ると50%になっていて、まだ外のゾンビの問題が残っているのかもしれないと感じた。

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