9ライブズナイフ

犬宰要

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 その日、窓の外でEXP部隊の人が火炎放射器でゾンビを焼いている姿を見た。焼く前に記録をとっているのか、写真を撮って残している人もいた。特にゾンビが復活するような事はなく、その様子を窓から眺めていた。僕はどこかでゾンビは時間経過で消滅するような気がしていた。全身防護服で作業のように淡々とゾンビの処理をしている彼らを見て、安心感と安堵感が僕の胸の中にあった。
 
 それから誰の訪問があるわけでもなく、夜が訪れ僕たちは部屋の中央でそれぞれご飯などを召喚して食事をした。部屋の中に監視カメラみたいなものがあるのかと見渡したが、特にそういうレンズのようなものは存在しなかった事もあり安心した。
 
「ゾンビの処理が終わるまでここで待機、ってことになると思うのだが、その後はどうする?」
 ムッツーが僕に聞いてきた。彼女の中でもう何か答えを持っていそうだった。
「僕はアーネルトとアンネイにクライドのことを聞いてみようかなと思う。知り合いなのかちょっと気になったし」
「確かにゾンビの数のことを言っていたものな、どういう意味かはわからなかったが」
「ムッツーはどうするんだ?」
「私は自分たちの世界に帰るために何か調査とか研究をしているか聞いてみようと思ってる」
「それなら私も話を聞いてみたいわ」
 タッツーも会話に入り、今後について三人で話し合う事になった。
「ゾンビの状況次第になってくるけど、明日ゾンビの調査が続きそうならその時に聞いてみるってどうだ?」
 僕が二人に言うと、そうしようという事になった。
「みんなはどうする?」
「私もそれでいいと思う」
「ヨーちゃんにお任せする」
 ハルミンとマナチは特にしたいことがないような感じだった。
「私は、気になる事があって、明日以降の動きはいいんですが、今夜の事で……」
「同じく私も今夜の事で相談したい」
 ツバサとジュリは真剣な表情だった。みんながその表情を感じ、二人が話始めるのを待つと、ツバサとジュリが互いに遠慮し合っていた。決着がついたのか、ジュリの方が喋る事になった。
 
「え、えとあの……何が起きるかわからないので、交代で番をしながら過ごしたいです」
「あ、私も同じこと考えてました」
 どうやらツバサとジュリは、ここはまだ油断するわけにはいかないから警戒しておくに越したことはないと考えていたようだった。
「確かに、まだわからないものね。ゾンビがまた突然現れる可能性もあるし」
 ハルミンは頷いていた。
「考えすぎではないな、廃墟の街からこの街に来る間も交代で夜起きていたしな、そうしよう」
「そうね、班分けはいつもの感じで行きましょう」
 ムッツーとタッツーも賛成だった。
 
 交代で番をして、夜を過ごした。特段自分が番をしていても何も起きず、生存確率も50%のままで気にする事はなかった。夜の番は僕とマナチ、ムッツーとタッツーとハルミン、ツバサとジュリといった三つ班にわかれて交代でいつもしていた。僕とマナチは、番をする時間の間はいつも静かにしている事が多い。みんな寝ているのもありテントじゃないし、それに今日は何か落ち着かなかった。
 
「ねぇ、帰れる……かな」
 ぼそりとマナチが外を眺めながら言った。窓から移る景色はどの建物からも明かりがついておらず、道路のゾンビが火で焼かれている光りが映し出されているだけだった。不気味、といえば端的すぎるが何か心地悪さがある炎だった。
「帰れるさ……なぁ、帰ったら一緒にデートしないか?」
 僕は気が付いたら欲望を口にしていた。ホテルいかないか、と言わなくて良かったが言って後悔した。
「ふふっ、何それ……まあ、でも全然いいよ。映画とかさ、美味しいもの食べにいきたいね」
「……えっ、ほんと? 本気にしちゃうよ?」
 まさかのいいよって言われたので、僕は嬉しくて今夜はいい夢が見れそうだ。それに何としても元の世界に戻らねばならぬ。
 その後、僕たちは番の時間が終わるまで元の世界に戻ったらどんな映画を見に行こうかとか何を食べに行こうかという話をしていた。
 
 +
 
 そろそろ交代の時間になり、ムッツーを起こした。ただいつもならムッツーとタッツーとハルミンの三人で番をするのが、その夜はムッツーとタッツーだけだった。
「ハルミンは今日がんばってもらったからな、寝ていてもらおうってわけさ」
「なので起こさないでそのままにしてあげてね」
 僕は頷き、マナチと共に自分のベッドに入った。二人の話し声がなんか艶やかな感じがあり、興奮しそうになったがマナチとのデートの件を思い出し、妄想していたら朝だった。
 
 ツバサとジュリは最後の番だった為、すでに起きており二人して何か話し合っていた。
 
「おはよう、どうしたの?」
「アビリティ・スキルについて、考えていて……」
「このまだ使えないアビリティ・スキルは何があるのか気になっていて、二人で話をしていた、という感じです」
 どうやら何か発見したわけでもなく、アビリティ・スキルの事だった。
「あ、そういえば思い出したんだけどさ、僕たちって互いの固有スキルを共有できてるけれど、誰の固有スキルを共有しているのかわからないよな。それって二人には見えていたりする?」
 僕が聞くと二人は顔を見合わせて、アビリティ・スキルを表示させたのか目に力を込めて何かを探していた。しばらく二人を見ていると同時に頷き、僕の方を向いた。
「「ありました」」
「えっ」
 
 その朝、新しい発見があったことをみんなと共有した。今更だけど、互いが仲間だという状態がわかる表示が見えるようになり、持っている固有アビリティがわかるようになった。元から互いに何を持っているのか共有していたので特に意味はなかったが表示される事で何か親密度が上がっているような気がして嬉しかった。
 
 それと同時に、生存確率も一緒に表示されるようになった。
 
 その中で僕だけ生存確率が50%で、他の人たちが70%や80%とかだった。いったいどうして僕だけ50%なのかよくわからなかったが、警戒を続けていかないとダメなのかなと落ち込んだ。
 
――コンコン
 
 ドアを叩く音が聞こえ、僕たちはその後に叩いた人の声がし、どうぞと声をかけた。
「おはよう、そしておつかれさまです。っと昨日は改めてありがとう。大変助かったよ。おかげでゾンビやあたりの探索が今しがた終わったよ。まあ、その情報共有なんだが、今大丈夫かい?」
 シュシャがやってきた。
「はい、大丈夫です」
「まあ、そのここじゃなんだし下のエントランスホールにあるいつもの場所的なところで話そうか」
 シュシャが陽気な顔をしていたので、おそらくゾンビは見当たらなかったのだろうと思った。
 
 僕たちは準備が出来たら下に行きますといい、各自装備を整えて向かった。
 
 到着するとそこにはアーネルトとアンネイもいた。
「昨日はゆっくりできたかい?」
「ええ、おかげさまでありがとうございます」
 アーネルトの気遣いにムッツーが笑顔で返した。
「いやぁすごかった、助かった、みんなやっぱり強かった」
 アンネイのテンションが高く、すごいご機嫌だった。
「あのそれでシュシャさんが共有した事っていうのは?」
 僕はとりあえず何か発見したのか聞いてみた。
 
「倒したゾンビの数は損傷が激しいのもあったが大体三百ぴったしだった。周りにゾンビがいないか探索してみたが発見はできなかった。おそらくゾンビの脅威は去ったと思われる」
「ゾンビの自然発生が起きる可能性は?」
「焼却したが問題ないとは思う。あるとしたら灰が身体に入っていた場合、数日後にゾンビになるという可能性はあるがな」
「防護服着ていただろう? そのあと防護服も洗浄したのに?」
「まあ、可能性としてな」
「ふむ、わかった。報告ありがとう」
 シュシャにアーネルトが確認し終えると納得したのか、情報の共有は終わった。
 
 僕の生存確率が50%のままで、何か気になってしまっていた。
 
「ちょっと私から質問してもいいか? 元の世界に帰る手立てを探していたりするだろうか?」
 ムッツーは期待を込めたまなざしでアーネルトたちに聞いた。
「私もその気になってるので教えてくれると嬉しいです」
 タッツーもとても気になっているようだ。
「ああ、まあ、ゾンビ問題が解決するまでいったん保留にしていた、というのが今の答えかな。まあゾンビ問題は今解決している、と見ても問題はないか」
「そしたら、一緒に協力できることもあるかもしれないですな」
 ムッツーは前のめりになっていた。まあ、ここで相手と協力関係になっておけば、帰る手立ても見つかりやすくなる。
「君たちが協力してくれるのなら、もちろん歓迎するよ」
 アーネルトやアンネイ、シュシャは控えめだが、嬉しさが溢れているような笑顔で歓迎してくれた。

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