9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
69 / 82

69

しおりを挟む

 遠くで銃撃音と悲鳴が聞こえる中、病院に到着した。途中で銃撃音や悲鳴を聞くたびに足を止めたくなったが、今はムッツーとタッツーを確かめることが優先だと言い聞かせた。病院に到着すると、建物は半壊し、地面には大きく穴が開いていた。穴の底は深くなく、広大な地下が存在しているのが外からでもわかる状態だった。
 敷地内から辛うじてエントランスから入ることが出来、中に入ると血まみれになって死んでいる職員やEXP部隊が何者かと戦って死んだ死体があった。
 
「うっ……」
 思わず口を覆いそうになるが、防護マスクをしているので目をしかめるだけにとどまった。死体、死体、死体があり僕たちはもうすでに吐くような程のメンタルの弱さを持ち合わせていなかった。マナチでさえ、どこか悲しい表情をしているだけだった。
 
 あたりを見て回るとどの死体も建物の中を向いていて、建物から何か出てきたのか? という感じだった。
 
「奥から何か出てきたのかな?」
「この街にきて、ゾンビ、触手兼ミミック、他に何がある?」
 僕はマナチがつぶやいた後にツバサとジュリに聞いてみた。
「生体兵器の暴走とか?」
「いやでもここで死んでる人たち、銃でやられているような感じですよ」
 ツバサが予想するとジュリが近くの死体を見ながら言った。
「銃、か……」
 
「とりあえず、この奥を探してみよ。ムッツーとタッツーがいるかもしれない」
 
 ハルミンは機密エリアと言われている方へと歩いていった。僕たちもそれに続き、歩いていくと地下への階段があり、一緒に降りた。階段の途中で、登って逃げようとしている人が殺されていた。職員、それに応戦して死んだEXP隊員たちがいた。
 
「何があったんだ……?」
 
 地下に何があったのか、僕はわからないまま、生存者がいないのか、どこかに隠れている人がいるかもしれないと思い探した方がいいのかと思ったりした。もしかしたらどこかでムッツーとタッツーがどこかにいると信じて、生存者がいれば何か話を聞けるかもしれないと思った。
 階段を降りきると爆発で吹き飛ばされたような形でくしゃりと曲がっていたドアがあり、そこから地下のエリアへと入る事ができた。通路にも死体があり、あたりを警戒しながら何かないか探していると、扉が空いている部屋があり何があるのかと入ると大量の透明な円状のケースに様々な生物が入っているのが見えた。
 
「なんだこれ?」
 
 僕は思わず声に出してしまっていた。生きているのか、死んでいるのかわからない状態の生物が大量に陳列され、何かの機械と繋がっていた。僕は嫌な予感がし、頭によぎったその考えが当たってしまう事になった。
 
 部屋の奥、中央に女性が二人、円状のケースに入っていた。
 
「う、うそ……よ……」
 
 ふらふらとハルミンがその円状のケースがある部屋に無防備に入っていった。仲間だったムッツーとタッツーがその円状のケースに入っていたのだった。全裸にされていて、丸坊主にされ、頭の後ろ半分からチューブが突き刺さっており、下半身は機械で固定されていた。
 
 ハルミンは二人の前まで着くと両ひざをついて、見上げていた。後ろ姿からじゃどんな表情をしているのかわからなかった。僕も自分の今の表情がわからない。
「ヨ、ヨーちゃん……あれ、あれさ……あれってさ」
 僕の腕を引っ張っているのがマナチで、マナチが僕に何かを聞いている。何か聞いているけれど、僕は部屋の奥にある円状のケースに入っている二人の事で頭がまわらなかった。
 
「ヨーちゃん、どうしまし……」
 ツバサが声をかけてきたが、中を見たんだろうか? そのあとに声は止まった。
「ツバサ? 何があったんですか…? あ……」
 ガシャン、と銃が地面に落ちる音が聞こえた。
 
 僕は部屋に足を踏み入れ、腕に何かが捕まっていたのを振りほどいてしまった。マナチが腕を掴んでいた事に気づいたのは、踏み入れた後だった。マナチの方を振り返るよりも、僕はムッツーとタッツーの近くへと行った。ハルミンの表情がわかるくらい近づくと、彼女は呆然としていた。口を震わせ、瞬きせず、涙を流し続けていた。
 僕がそっと抱きしめると、マナチ、ツバサ、ジュリも部屋に入り、一緒に彼女を抱きしめた。
 
 数分経った後に、この部屋が何なのか、あたりを調べたい気持ちが湧いてきた。どうしてムッツーとタッツーがこんな状態なのか、知りたいと思ったからだった。
 
「たぶん、これパソコンだと思います。幸いにもつけっぱなしなので……書いてある事はわかりませんがアイコンとか数字とかでなんとなく調べられると思います」
 ツバサは手慣れたように、操作をしていき、この街の地図を出したり、日誌と思われる動画や音声を調べていった。そこからここは大規模な研究都市の実験場だと知った。
 
 そこでアーネルトの活動日誌動画を見つけた。ツバサはそれを再生し、アーネルトが喋っているのが聞こえると僕たちは彼がどんな事をしてきたのか知ることになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...