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シュシャが毒殺した集団を見ていたところを、ヒロミが瓦礫を投げて攻撃した。あの集団の中に居たのなら、デジカメにヒロミとアイは一緒に映っていたはずだが、二人が一緒にいるような描写がなかった事を思い出す。
「ツバサ、ちょっと聞いてくる。あ、僕だけで行って聞いてくるからちょっと待っていてくれないか?」
ツバサは不安げな表情をしていた。
「大丈夫さ、もし僕たちを殺すつもりなら、もう死んでるよ」
僕はそう答えて、生存確率95%になっているのを確かめた。うん、大丈夫。多分。
「ちょっとヒロミとアイに聞きたい事があるから聞いてくるから、ちょっと行ってくる」
僕はみんなの返事を待たずに、彼女たちの方に戻った。
+
「絶対バレてたって……」
「いやでもさぁ、もう引かれちゃったしぃ……」
二人の声が聞こえた。何か話をしているようだったが、なんて言ってるか聞こえなかった。コソコソするのも悪いので声をかけた。
「おーい、ヒロミ、アイ~! ちょっとさっきの今で、聞きたいことがあるんだけど……?」
声をかけると振り向いた二人の顔が真っ赤になっていた。えぇ、なんか秘密の話でもしていたのか?
「あ、そのなんていうか、今いい?」
ヒロミはこくりと頷き、応えてくれた。
「な、なんだよ。聞きたい事って」
僕は彼女に、どうやってシュシャが襲ってきているのを知ったのか聞いた。
「その実はこの施設の地下にあった部屋で、瓦礫の山で襲っている動画を見て、ヒロミたちが戦っているのを見たんだ。それでどうやってあいつらが敵だってわかったのか、その気になってさ。よかったら教えてくれないか?」
「なんだ、そんな事かー。うーん、実は私の固有アビリティ・スキルで電子機器類をジャッキングできるんだ。乗っ取ることができて、事前にわかったから戦えたんだ。ははっ、前の世界だとSNSでハブられてるのを知らないで、裏で散々言われているのを知ってさ。その当てつけのようなスキルだよな」
だから、彼女は最初から出会う前から知っていた。
「そうだったんだ、もっと早く出会えていた……ら……」
僕はふと、ずっと持ち歩いていたデジカメの事を思い出した。
「あ、あのさ……もしかして僕が持ち歩いていたデジカメって――」
二人に筒抜けだったんじゃないだろうか?
「――ッ!」
「フヒッ」
二人は明らかに動揺していた。そりゃ、動揺するだろう。いや絶対に動揺する。マジで動揺する。僕だって動揺している。ていうかマジかっ! うおおおおおおおおお!! 僕は声には出さず、心の中で思いっきり叫んだ。これでもかってくらい叫んだ。
なぜか?
思春期真っ盛りのリビドー。仲間にバレないように気を使って一人で処理していた時の音とか、つい口に出してしまった言葉とか全部二人に筒抜けだった。
初めて会った時の二人の反応がなんか、まるで全部知ってます状態なわけだよ。なにこれ、とんだ羞恥心だよ。
「あ、あのその……なんていうか、あの」
言葉が出てこない、忘れて下さいって言えばいいかなと思ったけれど、何がって話だし、顔が熱い。
「だ、大丈夫だ。わかってる。その……な」
ヒロミが顔を真っ赤にしながらフォローしてくれた。死にたい。殺せ。
「フ、フヒッ、いい声だった」
アイの一言で涙が少し出た。もう殺してぇぇぇぇ!!
「ア、アイ! そのごめんな、そのさ、助けたってことでチャラな! な?」
僕はおもわず両手で顔を覆った。彼女たちは僕の顔をまともに見なかったのはそういう事だったんだろう。すかした顔して強がってるけれど、実は裏ではあんな風にしているのがわかっているんだから、そりゃあ! そりゃあさぁ!!!!
「あ、ああ。頼む、忘れてくれ」
僕は忘れてくれと頼んだが――
「あー、そのそれは無理かな、はは……」
「私も無理、フヒッ」
殺せ、もういい殺してくれぇぇぇ!!
「ううっ、屈辱だ……はぁ、まあいいや。その助けてくれてありがとう。その、まあ、いいや。もう行くね」
僕は恥ずかしさを抱え、その場を去ることにした。これからはもう多分盗み聞きされないはずだ。
「ヨーちゃんがこのデジカメを持っていた事で、私たちは勇気づけられたんだ。その、二人だけだったけれど、いつも横にいるような気がして、ここまで来れたんだ。だからその、こちらこそありがとう」
僕の背中越しにヒロミは感謝の言葉を投げかけた。
「フヒヒッ」
アイの下品な笑い声がして、台無しの気分に戻った。
僕は手をひらひらさせて、マナチたちの元に戻った。わ、忘れよう。いやこれから一人でするときに二人の事が思い浮かぶようになるんじゃないかと思うと何とも、何とも、げんなりとした。
んあああああああああああああああ!!
「ツバサ、ちょっと聞いてくる。あ、僕だけで行って聞いてくるからちょっと待っていてくれないか?」
ツバサは不安げな表情をしていた。
「大丈夫さ、もし僕たちを殺すつもりなら、もう死んでるよ」
僕はそう答えて、生存確率95%になっているのを確かめた。うん、大丈夫。多分。
「ちょっとヒロミとアイに聞きたい事があるから聞いてくるから、ちょっと行ってくる」
僕はみんなの返事を待たずに、彼女たちの方に戻った。
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「絶対バレてたって……」
「いやでもさぁ、もう引かれちゃったしぃ……」
二人の声が聞こえた。何か話をしているようだったが、なんて言ってるか聞こえなかった。コソコソするのも悪いので声をかけた。
「おーい、ヒロミ、アイ~! ちょっとさっきの今で、聞きたいことがあるんだけど……?」
声をかけると振り向いた二人の顔が真っ赤になっていた。えぇ、なんか秘密の話でもしていたのか?
「あ、そのなんていうか、今いい?」
ヒロミはこくりと頷き、応えてくれた。
「な、なんだよ。聞きたい事って」
僕は彼女に、どうやってシュシャが襲ってきているのを知ったのか聞いた。
「その実はこの施設の地下にあった部屋で、瓦礫の山で襲っている動画を見て、ヒロミたちが戦っているのを見たんだ。それでどうやってあいつらが敵だってわかったのか、その気になってさ。よかったら教えてくれないか?」
「なんだ、そんな事かー。うーん、実は私の固有アビリティ・スキルで電子機器類をジャッキングできるんだ。乗っ取ることができて、事前にわかったから戦えたんだ。ははっ、前の世界だとSNSでハブられてるのを知らないで、裏で散々言われているのを知ってさ。その当てつけのようなスキルだよな」
だから、彼女は最初から出会う前から知っていた。
「そうだったんだ、もっと早く出会えていた……ら……」
僕はふと、ずっと持ち歩いていたデジカメの事を思い出した。
「あ、あのさ……もしかして僕が持ち歩いていたデジカメって――」
二人に筒抜けだったんじゃないだろうか?
「――ッ!」
「フヒッ」
二人は明らかに動揺していた。そりゃ、動揺するだろう。いや絶対に動揺する。マジで動揺する。僕だって動揺している。ていうかマジかっ! うおおおおおおおおお!! 僕は声には出さず、心の中で思いっきり叫んだ。これでもかってくらい叫んだ。
なぜか?
思春期真っ盛りのリビドー。仲間にバレないように気を使って一人で処理していた時の音とか、つい口に出してしまった言葉とか全部二人に筒抜けだった。
初めて会った時の二人の反応がなんか、まるで全部知ってます状態なわけだよ。なにこれ、とんだ羞恥心だよ。
「あ、あのその……なんていうか、あの」
言葉が出てこない、忘れて下さいって言えばいいかなと思ったけれど、何がって話だし、顔が熱い。
「だ、大丈夫だ。わかってる。その……な」
ヒロミが顔を真っ赤にしながらフォローしてくれた。死にたい。殺せ。
「フ、フヒッ、いい声だった」
アイの一言で涙が少し出た。もう殺してぇぇぇぇ!!
「ア、アイ! そのごめんな、そのさ、助けたってことでチャラな! な?」
僕はおもわず両手で顔を覆った。彼女たちは僕の顔をまともに見なかったのはそういう事だったんだろう。すかした顔して強がってるけれど、実は裏ではあんな風にしているのがわかっているんだから、そりゃあ! そりゃあさぁ!!!!
「あ、ああ。頼む、忘れてくれ」
僕は忘れてくれと頼んだが――
「あー、そのそれは無理かな、はは……」
「私も無理、フヒッ」
殺せ、もういい殺してくれぇぇぇ!!
「ううっ、屈辱だ……はぁ、まあいいや。その助けてくれてありがとう。その、まあ、いいや。もう行くね」
僕は恥ずかしさを抱え、その場を去ることにした。これからはもう多分盗み聞きされないはずだ。
「ヨーちゃんがこのデジカメを持っていた事で、私たちは勇気づけられたんだ。その、二人だけだったけれど、いつも横にいるような気がして、ここまで来れたんだ。だからその、こちらこそありがとう」
僕の背中越しにヒロミは感謝の言葉を投げかけた。
「フヒヒッ」
アイの下品な笑い声がして、台無しの気分に戻った。
僕は手をひらひらさせて、マナチたちの元に戻った。わ、忘れよう。いやこれから一人でするときに二人の事が思い浮かぶようになるんじゃないかと思うと何とも、何とも、げんなりとした。
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