転生令嬢は恋愛しま戦 かかって恋、愛てになるわ!

犬宰要

文字の大きさ
38 / 46
二年目 恋よ、愛てにとって不足はない

38 あなたの好みはなんですか? 

しおりを挟む
 王族やそれに近しい貴族が使用するサロン、防音が施されている個室に二人の転生令嬢が令嬢とは思えない形相で話し合っていた。二人の使い魔も横に控えているものの、話し合いに頷いたりといったことはせずに見守っていた。それが一番いい接し方だと知っているが故に。
 
「あなたの好みって誰なの?」
 答えるわよね、と言わんばかりの態度でエリーレイドはユウヴィーに聞いていた。
「え、言うわけないし」
 ユウヴィーはそんな事に答えるつもりもない、それが自らの死に直結する情報であることは理解していたからだ。
「はぁ?」
「あぁん?」
 うら若き乙女の会話ではない。一触即発な剣幕で互いににらみ合っていた。
 
「あと何人いるの?」
 ユウヴィーはせっかく話ができるので、攻略対象者の情報を引き出そうと思ったのだった。
「教えたところで、新たな別の攻略対象者が世界の強制力で出てきたらと私にとってリスクでしかないから、言わないわ」
 目をひくひくとさせ、ユウヴィーは何も言えなかった。
 
「おわかりいただけたようで何よりだわ。あの〇〇が攻略対象者なの~よろしく~って伝えられたらそれはそれで、貴方が避けるだろうし、避けたら避けたで瘴気問題がさらにややこしくなって、私が対策してきたことが全く意味無くなるし教えないわ~」
「あーそーですかー! まあ、その瘴気問題も全部解決してやるわ。そうすれば殉愛なんていう事も起きないだろうしね」
「あら、それならどの攻略対象者とくっついても問題ないんじゃないの~?」
「え? そうなの? だったら各攻略対象者の殉愛ストーリー教えてエリーレイドさまぁ~!」
「ああぁん?」
「はぁん!?」
 
 この二人のやり取りを見ているエリーレイドの使い魔のマーベラスは震えていた。一方ユウヴィーの使い魔であるスナギモは寝ていた。それに気づいたマーベラスは、スナギモの方に寄り、身体を寄せて暖を取りつつ寝る事にしたのだった。
 
 主人であるエリーレイドとユウヴィーの話し合いは夕方まで続き、声が荒ぶっていても寝れたのだった。
 
「ふん、まあ、いいわ。精々しっかりと光の魔法を使う身として、サンウォーカー国と諸外国に対して瘴気の問題を解決していってくださいね」
「言われなくても致しますぅ~! 瘴気解決しちゃうしー」
 
 こうして二人の話し合いは終わったのだった。
 
「いくよ、スナギモ」
「わふ」
「ごきげんよう、エリーレイド様ッ」
 
 ユウヴィーは言うだけ言い、部屋から退出していったのだった。
 
 ぷんすこ起こりながらしながらユウヴィーは下手したら不敬罪で処される可能性がある事を忘れ、食堂に向かっていた。
(何か、食べてこのストレスを発散しなければ)
 
 彼女は食堂に行き、やけ食いをし、周りからその様子を目撃されるのだった。攻略対象者がうろ覚えの事、生死に関わってしまう恋愛、切っても切り離せない瘴気問題、これらの事に加えて同じ転生者のエリーレイドとの関係性は彼女にとってストレスだった。
 
 ちょっと前までは対魔物区画でストレス発散をしていたが、今はやり過ぎた事によりストップがかかってしまい運動による発散はできなくなっていた。どうにかいい方法はないかと思いつくわけもなく、それが食へ向かっていった。
 
「ユウヴィー……」
 
 やけ食いをしている所に、ハープから声をかけられ、食事を一時中断したユウヴィー。振り返ると心配そうな表情と引いてる表情が入り混じった顔をしていたのだった。
 
「あ、ハープ……どうしたの?」
「どうしたの、じゃなくて変な噂を耳にしたらか、まさかと思ってきたのよ」
「変な噂?」
「失恋でもしたのか、やけ食いしている令嬢がいて、光の魔法が使える聖女らしいって噂よ……」
 
(失恋……恋すらはじまってないのに、失恋……)
 
「ユウヴィー、大丈夫? とりあえず、わけは部屋で聞くから」
 
 ハープに言われ、さすがにこのまま食べ続けるのは令嬢としてあるまじき行為だとユウヴィーは自覚し、食べ物を片付け、残ったものを包んでもらい部屋に向かった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...