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3.聖女召喚
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あれから幾年かの月日が流れ、教会との関係は相変わらずギクシャクしている。
怒らせたのは、教会だけではなかったらしい。
でも、ジェニファーが聖女認定されてからはというもの、何かと聖女の仕事をタダ働きされるようになったのは、困ったことで。
それに加え、アランの婚約者としてのお妃教育までもが加わり、とてもではないけどいっぱいいっぱいで。
いくら聖女ではなく女神の化身だと主張しても、この国では相手にもされない。剣もほろろの対応で、誰も信じてくれないのだ。信じてくれるのは、血を分けた家族だけ。
つくづく人間と言いうものはおろかで厄介な生き物だと思う。
今でも手いっぱいなのに、15歳になれば貴族令嬢は否応なしにアカデミーに進学することに決まっている。
冗談じゃないわよ。アランは励ましてくれているけど、口先だけではいくらでも愛を囁かれる。みんな嘘っパチだということは、一番ジェニファーガよくわかっているというもの。
仕方がない。18歳まで辛抱するか、諦めかけた時、ベルリオーズの政敵、ハイドン侯爵がとんでもないことをしてくれた。
ハイドン侯爵は、魔塔の塔主で魔導師と聞いていた。ここのところ魔塔はロクに魔法研究もせず、タダ飯をくらっていると議会で批判されている。
ベルリオーズ公爵は、議長をしているから、目の敵にされてしまったようだった。
ハイドンがしでかしたとんでもないこととは聖女召喚の儀式を教会とつるんで、暗黙の裡に推し進めたこと。結果、異世界ニッポンという国から「安藤なつ」という娘を召喚してしまったことだ。
普通、聖女様がいる国で聖女様を召喚するなど禁忌を犯しているようなものなのだが、教会までもが一緒になって禁忌を犯すなど言語道断の所業。いずれ、しっかり神罰を与えて差し上げますわよ?
それに「アンドーナツ」というふざけた名前も気に入らない。親が面白半分に名付けたに違いない。どうせこんな娘はロクなものではない。
名前で人生が決まるのに、遊び半分で名付けられたのだから、シューベルト国での召喚聖女なら、ジェニファーも見て見ぬフリをするところだが、ここはシューベルト。絶対許さないわよ!
アンドーナツは、貴族が通うアカデミーに編入生として入学してきた。これもハイドンの差し金で。じわりじわりと我がベルリオーズ家を追い込んでいくつもりの腹らしい。
こんな小細工で女神の化身を追い込むことなどできると本気で思っているところが痛いとしか言いようがない。
ハイドン侯爵家もしっかりと神罰をあたえて差し上げますことよ。
聖女召喚の儀式に成功した教会とハイドンは、図に乗っている。もう一人聖女様が現れたのだから、アンドーナツに聖女様の仕事をさせればいいものを、なぜか聖女のお仕事は2倍に増やされることになった。
理由は、ジェニファー聖女が先輩で年上だからということだけで、ジェニファーはタダ働きなのに、異世界からのアンドーナツは仕事もしないくせに、聖女様の御手当だけはしっかりと受け取るという、まさに給料泥棒になっている。
それにアンドーナツは、しっかりハイドン家の養女に治まっているではないか、毎日、「お嬢様」と傅かれ上機嫌で、遊び惚けていると聞く。
んもうっアタマに来るー!
もう、マジで聖女辞めたい。と思っていたら、なんと、教会がジェニファーの聖女様資格をはく奪すると通告してきたのだ。
そんなバカなこと……、確かにジェニファーは偽聖女よ。だけど聖魔法が使えることは紛れもない事実で、まあ女神の化身だから当然なんだけど、本当に女神を偽聖女にしてしまってもいいの?と逆に聞きたいぐらいだ。
教会は、国王にも何も言わずに、ジェニファーの聖女資格をはく奪してしまったのだ。
まあ別にいいけど……ジェニファー自身は、これで聖女の仕事をしなくていいなら、それに越したことはないと思っている。
それにどうせシューベルト国は、このままでは滅びゆく運命にあるのだから、いらない慈悲は余計というもの。
聞くところによると、教会はジェニファーとアランの婚約にまで言及しているらしいが、要するに、ジェニファーとの婚約を破棄して、アランとアンドーナツの婚約を推し進めたいということで、完全にジェニファーの存在とベルリオーズ家を葬り去りたい心づもりのよう。
ベルリオーズ家も黙って指をくわえているわけではない。教会に、ハイドン侯爵家に抗議するも、取り合ってもらえない。
今のところ王家は、様子見を決め込んでいるらしい。なんといってもジェニファーには、今まで13年間にわたる聖女様としての実績が山のようにある。それに対して、アンドーナツには、これっぽっちの実績もなければ、ただ水晶玉が反応したというだけで、聖女認定された。いわば付け焼刃程度の実績しかない。これを実績と言えるかどうかは別の話だけどね。
とにかく国王陛下としては、頑としてジェニファーとの婚約破棄の話には応じるつもりがないらしい。異世界から来た聖女様を認めていないから。
だけど肝心かなめのアランが、もう揺れ始めている。本当に浮気者のクズ男だということがよくわかる。
男という生き物は、ツルペタでも若い女の方を好むもの。同じ聖女という立場があるなら、若い方がいいと思っているのだ。
しかし、ジェニファーの聖女資格は、教会に取り上げられた今では、名前だけの聖女アンドーナツに心惹かれるのも致し方がないのかもしれない。
幼いときに泣いて嫌がった婚約の経緯など、もう忘れ去られている様子。上等じゃない!そっちがその気なら、わたくしの方から、いつかきっとアランとシューベルト国を捨ててやる!と決意する。
怒らせたのは、教会だけではなかったらしい。
でも、ジェニファーが聖女認定されてからはというもの、何かと聖女の仕事をタダ働きされるようになったのは、困ったことで。
それに加え、アランの婚約者としてのお妃教育までもが加わり、とてもではないけどいっぱいいっぱいで。
いくら聖女ではなく女神の化身だと主張しても、この国では相手にもされない。剣もほろろの対応で、誰も信じてくれないのだ。信じてくれるのは、血を分けた家族だけ。
つくづく人間と言いうものはおろかで厄介な生き物だと思う。
今でも手いっぱいなのに、15歳になれば貴族令嬢は否応なしにアカデミーに進学することに決まっている。
冗談じゃないわよ。アランは励ましてくれているけど、口先だけではいくらでも愛を囁かれる。みんな嘘っパチだということは、一番ジェニファーガよくわかっているというもの。
仕方がない。18歳まで辛抱するか、諦めかけた時、ベルリオーズの政敵、ハイドン侯爵がとんでもないことをしてくれた。
ハイドン侯爵は、魔塔の塔主で魔導師と聞いていた。ここのところ魔塔はロクに魔法研究もせず、タダ飯をくらっていると議会で批判されている。
ベルリオーズ公爵は、議長をしているから、目の敵にされてしまったようだった。
ハイドンがしでかしたとんでもないこととは聖女召喚の儀式を教会とつるんで、暗黙の裡に推し進めたこと。結果、異世界ニッポンという国から「安藤なつ」という娘を召喚してしまったことだ。
普通、聖女様がいる国で聖女様を召喚するなど禁忌を犯しているようなものなのだが、教会までもが一緒になって禁忌を犯すなど言語道断の所業。いずれ、しっかり神罰を与えて差し上げますわよ?
それに「アンドーナツ」というふざけた名前も気に入らない。親が面白半分に名付けたに違いない。どうせこんな娘はロクなものではない。
名前で人生が決まるのに、遊び半分で名付けられたのだから、シューベルト国での召喚聖女なら、ジェニファーも見て見ぬフリをするところだが、ここはシューベルト。絶対許さないわよ!
アンドーナツは、貴族が通うアカデミーに編入生として入学してきた。これもハイドンの差し金で。じわりじわりと我がベルリオーズ家を追い込んでいくつもりの腹らしい。
こんな小細工で女神の化身を追い込むことなどできると本気で思っているところが痛いとしか言いようがない。
ハイドン侯爵家もしっかりと神罰をあたえて差し上げますことよ。
聖女召喚の儀式に成功した教会とハイドンは、図に乗っている。もう一人聖女様が現れたのだから、アンドーナツに聖女様の仕事をさせればいいものを、なぜか聖女のお仕事は2倍に増やされることになった。
理由は、ジェニファー聖女が先輩で年上だからということだけで、ジェニファーはタダ働きなのに、異世界からのアンドーナツは仕事もしないくせに、聖女様の御手当だけはしっかりと受け取るという、まさに給料泥棒になっている。
それにアンドーナツは、しっかりハイドン家の養女に治まっているではないか、毎日、「お嬢様」と傅かれ上機嫌で、遊び惚けていると聞く。
んもうっアタマに来るー!
もう、マジで聖女辞めたい。と思っていたら、なんと、教会がジェニファーの聖女様資格をはく奪すると通告してきたのだ。
そんなバカなこと……、確かにジェニファーは偽聖女よ。だけど聖魔法が使えることは紛れもない事実で、まあ女神の化身だから当然なんだけど、本当に女神を偽聖女にしてしまってもいいの?と逆に聞きたいぐらいだ。
教会は、国王にも何も言わずに、ジェニファーの聖女資格をはく奪してしまったのだ。
まあ別にいいけど……ジェニファー自身は、これで聖女の仕事をしなくていいなら、それに越したことはないと思っている。
それにどうせシューベルト国は、このままでは滅びゆく運命にあるのだから、いらない慈悲は余計というもの。
聞くところによると、教会はジェニファーとアランの婚約にまで言及しているらしいが、要するに、ジェニファーとの婚約を破棄して、アランとアンドーナツの婚約を推し進めたいということで、完全にジェニファーの存在とベルリオーズ家を葬り去りたい心づもりのよう。
ベルリオーズ家も黙って指をくわえているわけではない。教会に、ハイドン侯爵家に抗議するも、取り合ってもらえない。
今のところ王家は、様子見を決め込んでいるらしい。なんといってもジェニファーには、今まで13年間にわたる聖女様としての実績が山のようにある。それに対して、アンドーナツには、これっぽっちの実績もなければ、ただ水晶玉が反応したというだけで、聖女認定された。いわば付け焼刃程度の実績しかない。これを実績と言えるかどうかは別の話だけどね。
とにかく国王陛下としては、頑としてジェニファーとの婚約破棄の話には応じるつもりがないらしい。異世界から来た聖女様を認めていないから。
だけど肝心かなめのアランが、もう揺れ始めている。本当に浮気者のクズ男だということがよくわかる。
男という生き物は、ツルペタでも若い女の方を好むもの。同じ聖女という立場があるなら、若い方がいいと思っているのだ。
しかし、ジェニファーの聖女資格は、教会に取り上げられた今では、名前だけの聖女アンドーナツに心惹かれるのも致し方がないのかもしれない。
幼いときに泣いて嫌がった婚約の経緯など、もう忘れ去られている様子。上等じゃない!そっちがその気なら、わたくしの方から、いつかきっとアランとシューベルト国を捨ててやる!と決意する。
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