8 / 35
死に戻り1
8.お誕生日会
しおりを挟む
その日は朝早くからたたき起こされて、軽い朝食を済ませた後は、お風呂に入らされて全身を磨かれる。
前世もこんなことがあったかなぁ。という気分。侍女もお妃に選ばれるかどうかの瀬戸際だから、気合の入れ方が違うよう。
絶対、イヤだからね。
あんな王宮に10年間も閉じ込められ、青春を返せ!と叫び出したいぐらい、おぞましい。
お風呂の後は髪形、縦ロールを作るために焼き鏝を手にした侍女を見た時、思わず前世の記憶が蘇ってくる。
赤く熱した焼き鏝を折檻だと言いながら何度も押し付けられたことか……、少しでも男たちに抗うような素振りを見せるとお仕置きだと言い、わき腹や内腿に押し付けられた記憶。
「痛い!熱い!」泣き叫ぶ声を聴き、さらに興奮して自慰行為に耽る者までいた。
決して、思い出したくもない黒歴史が思い出され、思わず身をかがめてしまう。
「お嬢様、お熱いのでお気をつけて、あまり動かれませんように」
そんなこと言われても、コワイ。
一人の侍女がアンジェリーヌのカラダを動かないように正面から抱き着く。後ろから髪の毛を少しずつ掬いクルクルと焼き鏝に巻き付けていく。首には火傷防止のための白い布を何枚も重ね巻き付けてくれている。
あの頃と違って、至れり尽くせりね。そりゃそうだ、今日選ばれるその日に、令嬢が首に火傷を負っていては選ばれるものも選ばれないというもの。
それから豪華なドレスに着替えさせられる。このドレスにも宝石の小粒がふんだんにあしらわれていて、これも後から頂戴しよう。思わずほくそ笑んでいるアンジェリーヌに侍女たちが褒めちぎる。
「お嬢様、とてもよくお似合いですわ」
「なんと!妖精のような可愛らしいお姿で、他のご令嬢はさぞかし悔しい思いをなされるのでしょうね」
誰も来ないわよ。
タウンハウスの玄関前に王宮行きの馬車が横付けされ、父公爵と共に出立する時間が近づいてくる。
「用意はできたか?」
「はい。お父様」
「おお!なんと美しい!まるで美の女神さまのようだな」
この親父、決して悪い人ではないのだろうけど、いや、悪い人だ。魔女が現れてから手の平返しをされたのだから、「お前など我が家の娘ではない!」あの時の言葉が今でも、耳の奥でこだましている。信じていた人間に裏切られたショックは計り知れない。
それがたとえ魅了魔法で精神を操られ洗脳されていたとしても、我が娘のことまで忘れ去ってしまうとは、つくづく情けない。
恐らく元からそういう人間だったのだろう。皆、自分のことだけ、我が身だけが可愛いのだ。だから平気で娘を見捨て、見殺しにできる。
そんな家族なら、いない方がマシだ。
アンジェリーヌは、父の前でドレスを翻して、クルっと回ってみせる。
もうそれだけで、父は悶絶して、鼻血を垂らしている。
「可愛い!アンジェリーヌ可愛すぎる!どこへもお嫁に行くことはない!一生、パパの傍にいてくれ!」
それを母にどやされ、執事に鼻血の手当てをしてもらっている。
本当っ!情けないダメ親父。
父がそんななっている隙に、アンジェリーヌは、こっそり厩舎の方へ回ってみる。5歳の誕生日の時、プレゼントとしてポニーをもらったのだ。
ポニーの首に手を回すと、乗れ!と合図を送ってくれる。
「いいの?重いよ」
前足を折り、乗りやすい高さに合わせてくれるポニー。ポニーでプチ家出をするつもりはなかったアンジェリーヌだが、せっかくの厚意は、ありがたく受ける。
颯爽と、ポニーに跨り、正面入り口ではなく裏口から街へ出かけた。
乗馬は、前世、お妃教育でもそれから学園に入る前でも、好きでよく一人で遠乗りをして出かけたものだ。ドレスを着たままの横乗りや跨って乗る騎乗、どちらもできるが今は跨って乗っている。両足で意思表示ができるから、この乗り方が好きだ。
前世もこんなことがあったかなぁ。という気分。侍女もお妃に選ばれるかどうかの瀬戸際だから、気合の入れ方が違うよう。
絶対、イヤだからね。
あんな王宮に10年間も閉じ込められ、青春を返せ!と叫び出したいぐらい、おぞましい。
お風呂の後は髪形、縦ロールを作るために焼き鏝を手にした侍女を見た時、思わず前世の記憶が蘇ってくる。
赤く熱した焼き鏝を折檻だと言いながら何度も押し付けられたことか……、少しでも男たちに抗うような素振りを見せるとお仕置きだと言い、わき腹や内腿に押し付けられた記憶。
「痛い!熱い!」泣き叫ぶ声を聴き、さらに興奮して自慰行為に耽る者までいた。
決して、思い出したくもない黒歴史が思い出され、思わず身をかがめてしまう。
「お嬢様、お熱いのでお気をつけて、あまり動かれませんように」
そんなこと言われても、コワイ。
一人の侍女がアンジェリーヌのカラダを動かないように正面から抱き着く。後ろから髪の毛を少しずつ掬いクルクルと焼き鏝に巻き付けていく。首には火傷防止のための白い布を何枚も重ね巻き付けてくれている。
あの頃と違って、至れり尽くせりね。そりゃそうだ、今日選ばれるその日に、令嬢が首に火傷を負っていては選ばれるものも選ばれないというもの。
それから豪華なドレスに着替えさせられる。このドレスにも宝石の小粒がふんだんにあしらわれていて、これも後から頂戴しよう。思わずほくそ笑んでいるアンジェリーヌに侍女たちが褒めちぎる。
「お嬢様、とてもよくお似合いですわ」
「なんと!妖精のような可愛らしいお姿で、他のご令嬢はさぞかし悔しい思いをなされるのでしょうね」
誰も来ないわよ。
タウンハウスの玄関前に王宮行きの馬車が横付けされ、父公爵と共に出立する時間が近づいてくる。
「用意はできたか?」
「はい。お父様」
「おお!なんと美しい!まるで美の女神さまのようだな」
この親父、決して悪い人ではないのだろうけど、いや、悪い人だ。魔女が現れてから手の平返しをされたのだから、「お前など我が家の娘ではない!」あの時の言葉が今でも、耳の奥でこだましている。信じていた人間に裏切られたショックは計り知れない。
それがたとえ魅了魔法で精神を操られ洗脳されていたとしても、我が娘のことまで忘れ去ってしまうとは、つくづく情けない。
恐らく元からそういう人間だったのだろう。皆、自分のことだけ、我が身だけが可愛いのだ。だから平気で娘を見捨て、見殺しにできる。
そんな家族なら、いない方がマシだ。
アンジェリーヌは、父の前でドレスを翻して、クルっと回ってみせる。
もうそれだけで、父は悶絶して、鼻血を垂らしている。
「可愛い!アンジェリーヌ可愛すぎる!どこへもお嫁に行くことはない!一生、パパの傍にいてくれ!」
それを母にどやされ、執事に鼻血の手当てをしてもらっている。
本当っ!情けないダメ親父。
父がそんななっている隙に、アンジェリーヌは、こっそり厩舎の方へ回ってみる。5歳の誕生日の時、プレゼントとしてポニーをもらったのだ。
ポニーの首に手を回すと、乗れ!と合図を送ってくれる。
「いいの?重いよ」
前足を折り、乗りやすい高さに合わせてくれるポニー。ポニーでプチ家出をするつもりはなかったアンジェリーヌだが、せっかくの厚意は、ありがたく受ける。
颯爽と、ポニーに跨り、正面入り口ではなく裏口から街へ出かけた。
乗馬は、前世、お妃教育でもそれから学園に入る前でも、好きでよく一人で遠乗りをして出かけたものだ。ドレスを着たままの横乗りや跨って乗る騎乗、どちらもできるが今は跨って乗っている。両足で意思表示ができるから、この乗り方が好きだ。
180
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる