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前世:断罪
15.聖女リリアーヌ
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結婚式まで、残すところ半年となったその日、悲劇は起きた。国境警備隊が謎の呪術師一行をすんなり通してしまったからだ。
国境警備隊の兵士は、なぜか皆、瞳が真っ赤になって、夢遊病者のような有り様で警備隊の任をとれない。
その呪術師一行は、リリアーヌ聖女様を筆頭とした一団で諸国を漫遊しているという。
漫遊されている間、お布施の金額の如何を問わず、聖女様の気まぐれでいくらでも聖力をもらえるという話に、それにその聖力をもらえた時は、天にも昇れるかのような得も言われぬ気持ちがいいものだという噂がある。
それで聖女様が泊まられる宿には参拝客が後を絶たない。一たび聖力を授かったものは、熱心な信者というより正気を失い従順な聖女様の僕のようにふるまうことから、王家では警戒を緩めない。
宿屋の主人から聞いた話では、その聖女様の聖力は、聖女様がカラダを開くことによって、信者に聖力を与えるというもので、したがって、夜な夜なその聖女様は複数の男の信者に抱かれ続けているという話である。
邪教、淫教という類のものなのであろうか?
聖女様の名前はリリアーヌという。遠い国の貧しい農家の三女として生まれ、口減らしのために親に廃られ、魔物に襲われ死にかけたところ、突如、その身から光が刺し聖女に昇格したという。
それからは生き延びるために街に出て、カラダを売って生計を立てていたが、どういうわけか、客となった男たちから聖女様と崇められるようになり、言わなくてもお布施を支払ってくれるようになっていく。
初心忘るべからず、で今もその時の恩を忘れずに自らカラダを開き、人々を救済しているという。
もっともらしく聞こえるが要するに淫乱女がどういうわけか聖女様に覚醒して、祝福を自らのカラダによって行っているということらしい。
学園でその話を聞いたときは、まったく他人事だったアンジェリーヌ、まさかそれから1か月も経たないうちに自身に悲劇が降りかかろうとは、思ってもみなかったこと。
それから1か月が経ち、聖女様一行は王都に入ってこられ、次々と聖女様の信奉者が増えていく。
一度、聖力を授かった信徒は、仕事もせずに聖女様の後をぞろぞろついて従うようになっていた。
それで、国王陛下に謁見を希望すると、申し入れた伯爵がいた。
その伯爵は、お母様の元婚約者だった男で、侯爵令嬢を娶ったものの、あまりお味がよろしくなくて、初夜だけで男の子を授かり、その侯爵令嬢は実家に帰されたらしい。以来、男手一つで息子を育て上げ、いまは21~22歳ぐらいになっていると思う。
5歳のお誕生会でクリストファーのお妃候補にならなかったら、我が家が立候補していたと、その伯爵ヒヒジジィから聞いた。
無理でしょ!?伯爵の息子と公女とでは、身分的につり合いがとれない。
それにお母様がそんな縁談を承知なさるはずがない!
伯爵から謁見の申し込みが来たら正当な理由もなく、断る術がない。
それで謁見を行うことになった時、その謁見の間にアンジェリーヌもクリストファー殿下と共に出席した。
案の定、伯爵は聖女様を伴って現れ、しずしずと頭を下げている。
しかし、その顔が上がった時、その謁見の間にいる誰もの瞳が真っ赤に染まることをアンジェリーヌは見逃さなかった。
ふと隣にいるクリストファー殿下も瞳を真っ赤にされていた。
国王陛下とアンジェリーヌだけが魅了魔法にかからなかったようで、そのことにいち早く気づいたリリアーヌは唇を尖らし、不服そうにしていた。
「その方がリリアーヌ聖女か?して、我が国へは何用で参った?」
「布教でございます。それにしても、そこの王子、名はなんと申す?」
「はっ。クリストファーと申します」
「その方、気に入った今宵、我が寝所へ参れ」
「はい。かしこまりました」
聖女様は、どうやらクリストファー殿下に一目ぼれをなさったようで、婚約者が隣にいるにもかかわらず、浮氣の返事をしている。陛下もアンジェリーヌもそのやり取りにポカンと口を開けている。
国境警備隊の兵士は、なぜか皆、瞳が真っ赤になって、夢遊病者のような有り様で警備隊の任をとれない。
その呪術師一行は、リリアーヌ聖女様を筆頭とした一団で諸国を漫遊しているという。
漫遊されている間、お布施の金額の如何を問わず、聖女様の気まぐれでいくらでも聖力をもらえるという話に、それにその聖力をもらえた時は、天にも昇れるかのような得も言われぬ気持ちがいいものだという噂がある。
それで聖女様が泊まられる宿には参拝客が後を絶たない。一たび聖力を授かったものは、熱心な信者というより正気を失い従順な聖女様の僕のようにふるまうことから、王家では警戒を緩めない。
宿屋の主人から聞いた話では、その聖女様の聖力は、聖女様がカラダを開くことによって、信者に聖力を与えるというもので、したがって、夜な夜なその聖女様は複数の男の信者に抱かれ続けているという話である。
邪教、淫教という類のものなのであろうか?
聖女様の名前はリリアーヌという。遠い国の貧しい農家の三女として生まれ、口減らしのために親に廃られ、魔物に襲われ死にかけたところ、突如、その身から光が刺し聖女に昇格したという。
それからは生き延びるために街に出て、カラダを売って生計を立てていたが、どういうわけか、客となった男たちから聖女様と崇められるようになり、言わなくてもお布施を支払ってくれるようになっていく。
初心忘るべからず、で今もその時の恩を忘れずに自らカラダを開き、人々を救済しているという。
もっともらしく聞こえるが要するに淫乱女がどういうわけか聖女様に覚醒して、祝福を自らのカラダによって行っているということらしい。
学園でその話を聞いたときは、まったく他人事だったアンジェリーヌ、まさかそれから1か月も経たないうちに自身に悲劇が降りかかろうとは、思ってもみなかったこと。
それから1か月が経ち、聖女様一行は王都に入ってこられ、次々と聖女様の信奉者が増えていく。
一度、聖力を授かった信徒は、仕事もせずに聖女様の後をぞろぞろついて従うようになっていた。
それで、国王陛下に謁見を希望すると、申し入れた伯爵がいた。
その伯爵は、お母様の元婚約者だった男で、侯爵令嬢を娶ったものの、あまりお味がよろしくなくて、初夜だけで男の子を授かり、その侯爵令嬢は実家に帰されたらしい。以来、男手一つで息子を育て上げ、いまは21~22歳ぐらいになっていると思う。
5歳のお誕生会でクリストファーのお妃候補にならなかったら、我が家が立候補していたと、その伯爵ヒヒジジィから聞いた。
無理でしょ!?伯爵の息子と公女とでは、身分的につり合いがとれない。
それにお母様がそんな縁談を承知なさるはずがない!
伯爵から謁見の申し込みが来たら正当な理由もなく、断る術がない。
それで謁見を行うことになった時、その謁見の間にアンジェリーヌもクリストファー殿下と共に出席した。
案の定、伯爵は聖女様を伴って現れ、しずしずと頭を下げている。
しかし、その顔が上がった時、その謁見の間にいる誰もの瞳が真っ赤に染まることをアンジェリーヌは見逃さなかった。
ふと隣にいるクリストファー殿下も瞳を真っ赤にされていた。
国王陛下とアンジェリーヌだけが魅了魔法にかからなかったようで、そのことにいち早く気づいたリリアーヌは唇を尖らし、不服そうにしていた。
「その方がリリアーヌ聖女か?して、我が国へは何用で参った?」
「布教でございます。それにしても、そこの王子、名はなんと申す?」
「はっ。クリストファーと申します」
「その方、気に入った今宵、我が寝所へ参れ」
「はい。かしこまりました」
聖女様は、どうやらクリストファー殿下に一目ぼれをなさったようで、婚約者が隣にいるにもかかわらず、浮氣の返事をしている。陛下もアンジェリーヌもそのやり取りにポカンと口を開けている。
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