15 / 35
前世:断罪
15.聖女リリアーヌ
しおりを挟む
結婚式まで、残すところ半年となったその日、悲劇は起きた。国境警備隊が謎の呪術師一行をすんなり通してしまったからだ。
国境警備隊の兵士は、なぜか皆、瞳が真っ赤になって、夢遊病者のような有り様で警備隊の任をとれない。
その呪術師一行は、リリアーヌ聖女様を筆頭とした一団で諸国を漫遊しているという。
漫遊されている間、お布施の金額の如何を問わず、聖女様の気まぐれでいくらでも聖力をもらえるという話に、それにその聖力をもらえた時は、天にも昇れるかのような得も言われぬ気持ちがいいものだという噂がある。
それで聖女様が泊まられる宿には参拝客が後を絶たない。一たび聖力を授かったものは、熱心な信者というより正気を失い従順な聖女様の僕のようにふるまうことから、王家では警戒を緩めない。
宿屋の主人から聞いた話では、その聖女様の聖力は、聖女様がカラダを開くことによって、信者に聖力を与えるというもので、したがって、夜な夜なその聖女様は複数の男の信者に抱かれ続けているという話である。
邪教、淫教という類のものなのであろうか?
聖女様の名前はリリアーヌという。遠い国の貧しい農家の三女として生まれ、口減らしのために親に廃られ、魔物に襲われ死にかけたところ、突如、その身から光が刺し聖女に昇格したという。
それからは生き延びるために街に出て、カラダを売って生計を立てていたが、どういうわけか、客となった男たちから聖女様と崇められるようになり、言わなくてもお布施を支払ってくれるようになっていく。
初心忘るべからず、で今もその時の恩を忘れずに自らカラダを開き、人々を救済しているという。
もっともらしく聞こえるが要するに淫乱女がどういうわけか聖女様に覚醒して、祝福を自らのカラダによって行っているということらしい。
学園でその話を聞いたときは、まったく他人事だったアンジェリーヌ、まさかそれから1か月も経たないうちに自身に悲劇が降りかかろうとは、思ってもみなかったこと。
それから1か月が経ち、聖女様一行は王都に入ってこられ、次々と聖女様の信奉者が増えていく。
一度、聖力を授かった信徒は、仕事もせずに聖女様の後をぞろぞろついて従うようになっていた。
それで、国王陛下に謁見を希望すると、申し入れた伯爵がいた。
その伯爵は、お母様の元婚約者だった男で、侯爵令嬢を娶ったものの、あまりお味がよろしくなくて、初夜だけで男の子を授かり、その侯爵令嬢は実家に帰されたらしい。以来、男手一つで息子を育て上げ、いまは21~22歳ぐらいになっていると思う。
5歳のお誕生会でクリストファーのお妃候補にならなかったら、我が家が立候補していたと、その伯爵ヒヒジジィから聞いた。
無理でしょ!?伯爵の息子と公女とでは、身分的につり合いがとれない。
それにお母様がそんな縁談を承知なさるはずがない!
伯爵から謁見の申し込みが来たら正当な理由もなく、断る術がない。
それで謁見を行うことになった時、その謁見の間にアンジェリーヌもクリストファー殿下と共に出席した。
案の定、伯爵は聖女様を伴って現れ、しずしずと頭を下げている。
しかし、その顔が上がった時、その謁見の間にいる誰もの瞳が真っ赤に染まることをアンジェリーヌは見逃さなかった。
ふと隣にいるクリストファー殿下も瞳を真っ赤にされていた。
国王陛下とアンジェリーヌだけが魅了魔法にかからなかったようで、そのことにいち早く気づいたリリアーヌは唇を尖らし、不服そうにしていた。
「その方がリリアーヌ聖女か?して、我が国へは何用で参った?」
「布教でございます。それにしても、そこの王子、名はなんと申す?」
「はっ。クリストファーと申します」
「その方、気に入った今宵、我が寝所へ参れ」
「はい。かしこまりました」
聖女様は、どうやらクリストファー殿下に一目ぼれをなさったようで、婚約者が隣にいるにもかかわらず、浮氣の返事をしている。陛下もアンジェリーヌもそのやり取りにポカンと口を開けている。
国境警備隊の兵士は、なぜか皆、瞳が真っ赤になって、夢遊病者のような有り様で警備隊の任をとれない。
その呪術師一行は、リリアーヌ聖女様を筆頭とした一団で諸国を漫遊しているという。
漫遊されている間、お布施の金額の如何を問わず、聖女様の気まぐれでいくらでも聖力をもらえるという話に、それにその聖力をもらえた時は、天にも昇れるかのような得も言われぬ気持ちがいいものだという噂がある。
それで聖女様が泊まられる宿には参拝客が後を絶たない。一たび聖力を授かったものは、熱心な信者というより正気を失い従順な聖女様の僕のようにふるまうことから、王家では警戒を緩めない。
宿屋の主人から聞いた話では、その聖女様の聖力は、聖女様がカラダを開くことによって、信者に聖力を与えるというもので、したがって、夜な夜なその聖女様は複数の男の信者に抱かれ続けているという話である。
邪教、淫教という類のものなのであろうか?
聖女様の名前はリリアーヌという。遠い国の貧しい農家の三女として生まれ、口減らしのために親に廃られ、魔物に襲われ死にかけたところ、突如、その身から光が刺し聖女に昇格したという。
それからは生き延びるために街に出て、カラダを売って生計を立てていたが、どういうわけか、客となった男たちから聖女様と崇められるようになり、言わなくてもお布施を支払ってくれるようになっていく。
初心忘るべからず、で今もその時の恩を忘れずに自らカラダを開き、人々を救済しているという。
もっともらしく聞こえるが要するに淫乱女がどういうわけか聖女様に覚醒して、祝福を自らのカラダによって行っているということらしい。
学園でその話を聞いたときは、まったく他人事だったアンジェリーヌ、まさかそれから1か月も経たないうちに自身に悲劇が降りかかろうとは、思ってもみなかったこと。
それから1か月が経ち、聖女様一行は王都に入ってこられ、次々と聖女様の信奉者が増えていく。
一度、聖力を授かった信徒は、仕事もせずに聖女様の後をぞろぞろついて従うようになっていた。
それで、国王陛下に謁見を希望すると、申し入れた伯爵がいた。
その伯爵は、お母様の元婚約者だった男で、侯爵令嬢を娶ったものの、あまりお味がよろしくなくて、初夜だけで男の子を授かり、その侯爵令嬢は実家に帰されたらしい。以来、男手一つで息子を育て上げ、いまは21~22歳ぐらいになっていると思う。
5歳のお誕生会でクリストファーのお妃候補にならなかったら、我が家が立候補していたと、その伯爵ヒヒジジィから聞いた。
無理でしょ!?伯爵の息子と公女とでは、身分的につり合いがとれない。
それにお母様がそんな縁談を承知なさるはずがない!
伯爵から謁見の申し込みが来たら正当な理由もなく、断る術がない。
それで謁見を行うことになった時、その謁見の間にアンジェリーヌもクリストファー殿下と共に出席した。
案の定、伯爵は聖女様を伴って現れ、しずしずと頭を下げている。
しかし、その顔が上がった時、その謁見の間にいる誰もの瞳が真っ赤に染まることをアンジェリーヌは見逃さなかった。
ふと隣にいるクリストファー殿下も瞳を真っ赤にされていた。
国王陛下とアンジェリーヌだけが魅了魔法にかからなかったようで、そのことにいち早く気づいたリリアーヌは唇を尖らし、不服そうにしていた。
「その方がリリアーヌ聖女か?して、我が国へは何用で参った?」
「布教でございます。それにしても、そこの王子、名はなんと申す?」
「はっ。クリストファーと申します」
「その方、気に入った今宵、我が寝所へ参れ」
「はい。かしこまりました」
聖女様は、どうやらクリストファー殿下に一目ぼれをなさったようで、婚約者が隣にいるにもかかわらず、浮氣の返事をしている。陛下もアンジェリーヌもそのやり取りにポカンと口を開けている。
149
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる