魔女と呼ばれ処刑された聖女は、死に戻り悪女となる

青の雀

文字の大きさ
17 / 35
前世:断罪

17.逃げられない

しおりを挟む
聖女リリアーヌにロックオンされてしまったアンジェリーヌは、その日から過酷な運命の激流に攫われてしまう。

学園にリリアーヌとその信者が押し寄せ、王の密命を受けた学園長が庇ってくれたものの信者どもの手に堕ちた。
今は、王も北の塔の中に幽閉されていると聞く。まさかとは思うけど、クリストファーが命令したのだろうか?

幽閉される前の王は、自らの危険を顧みず、アンジェリーヌを逃がすことを最優先に考え行動してくださったのに、その策略は、悉くリリアーヌの手により潰えてしまった。

亡き王妃の親戚の隣国へ逃がそうと試みてくださったが、使者が国境を越えられず死亡した。学園には、あらゆる魔法を封じ込める部屋があったが、その部屋を通して、別の場所に転移をさせ、そこからは追跡不能とできる部屋があったのに、それも聖女様の信者の手により占拠されてしまう。

どこへも逃げ場がないアンジェリーヌにとり、最後のよりどころとなるマキャベリ公爵邸だったが、ここにも聖女様の手が回り、アンジェリーヌがマキャベリ家の令嬢と謀って、本来リリアーヌ公女が着るべきドレスを盗んだと言われ、ドレスをはぎ取られ、後ろ手に捕縛された。スリップ姿のまま、執事のセバスチャンから何度も鞭を打たれ、公爵邸の地下牢に放り込まれ、お父様を呼んでも、お母様を呼んでも、お兄様を声がかれるまで呼んでも、誰も来てくれなかった。

セバスチャンはアンジェリーヌがまだ幼い頃に、マキャベリ家に雇われるようになり、その頃はまだ若かったセバスチャンから絵本の読み聞かせをしてもらったり、お菓子を一緒に食べたり、アンジェリーヌのために中庭に手製のブランコを作ってもらって、一緒に遊んでもらった。使用人の中で一番の仲良しだったセバスチャンは、今や目を真っ赤にして鬼の形相で鞭を揮う。

人が変わってしまったセバスチャンに恐怖心さえ感じるアンジェリーヌは、ただ黙って耐えるのみ。

わずかばかりの魔力を遣って、鞭で打たれた傷を癒していく。ついでにジメジメとした牢の中にいて、お風呂にも入れていないので、カラダも聖女魔法とは言いがたい程遠い微力な魔法で綺麗にしていく。何もしないよりは、マシというもの。

アンジェリーヌは、前に教会の水晶玉を光らせたことを思い出していた。今、ここで聖女様であることを告げたら事態は収拾するだろうか?

あれから一度も聖魔法をまともに勉強したことがない。あの時は司祭様から、結婚式の余興でのサプライズにしようと提案されて、それを飲んでしまったのだから、そもそも聖女様になれるのは純潔でなければならない。

リリアーヌのように、聖女になってから男性と関係を持ったのならば、聖女様の魔力に影響は出ないものなのかも?という気もしないではない。

しかし、結婚式のサプライズというのは、殿下と挙式さえしてしまえば、聖女様であろうがなかろうが関係ないということなのか?

釈然としないまま、王宮の牢に送致されることが決まったことを両親から告げられる。

「どこの馬の骨かもわからないお前なんぞ、娘でもなんでもないわ!我が家の公女はリリアーヌただ一人と昔から決まっておる!俺が浮気して、外で女を囲っていたような誤解をさせるな!このマキャベリに何か恨みでもあるのかっ!」

「綺麗なドレスを着たからと言って公女にはなれませんわ。今度、生まれ変わったら、貴族の家ではなくて、平民として心やすらかに過ごしなさい。それが貴女の為でもあります。分不相応な夢を見てはなりません」

両親の凍り付くような、そして汚物でも見るかのような蔑んだ目に身震いしてしまう。

お兄様に至っては、もっと辛辣だった。アンジェリーヌに向かって、「汚らわしい」と言って、唾を吐きかけられたのだ。

幼い頃は、可愛いと言って、何度も顔じゅうを舐め回されたものだが……、今や、その妹に痰交じりの唾を吐き捨てるようになるとは……。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ついで姫の本気

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。 一方は王太子と王女の婚約。 もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。 綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。 ハッピーな終わり方ではありません(多分)。 ※4/7 完結しました。 ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。 救いのあるラストになっております。 短いです。全三話くらいの予定です。 ↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。 4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

処理中です...