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前世:断罪
17.逃げられない
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聖女リリアーヌにロックオンされてしまったアンジェリーヌは、その日から過酷な運命の激流に攫われてしまう。
学園にリリアーヌとその信者が押し寄せ、王の密命を受けた学園長が庇ってくれたものの信者どもの手に堕ちた。
今は、王も北の塔の中に幽閉されていると聞く。まさかとは思うけど、クリストファーが命令したのだろうか?
幽閉される前の王は、自らの危険を顧みず、アンジェリーヌを逃がすことを最優先に考え行動してくださったのに、その策略は、悉くリリアーヌの手により潰えてしまった。
亡き王妃の親戚の隣国へ逃がそうと試みてくださったが、使者が国境を越えられず死亡した。学園には、あらゆる魔法を封じ込める部屋があったが、その部屋を通して、別の場所に転移をさせ、そこからは追跡不能とできる部屋があったのに、それも聖女様の信者の手により占拠されてしまう。
どこへも逃げ場がないアンジェリーヌにとり、最後のよりどころとなるマキャベリ公爵邸だったが、ここにも聖女様の手が回り、アンジェリーヌがマキャベリ家の令嬢と謀って、本来リリアーヌ公女が着るべきドレスを盗んだと言われ、ドレスをはぎ取られ、後ろ手に捕縛された。スリップ姿のまま、執事のセバスチャンから何度も鞭を打たれ、公爵邸の地下牢に放り込まれ、お父様を呼んでも、お母様を呼んでも、お兄様を声がかれるまで呼んでも、誰も来てくれなかった。
セバスチャンはアンジェリーヌがまだ幼い頃に、マキャベリ家に雇われるようになり、その頃はまだ若かったセバスチャンから絵本の読み聞かせをしてもらったり、お菓子を一緒に食べたり、アンジェリーヌのために中庭に手製のブランコを作ってもらって、一緒に遊んでもらった。使用人の中で一番の仲良しだったセバスチャンは、今や目を真っ赤にして鬼の形相で鞭を揮う。
人が変わってしまったセバスチャンに恐怖心さえ感じるアンジェリーヌは、ただ黙って耐えるのみ。
わずかばかりの魔力を遣って、鞭で打たれた傷を癒していく。ついでにジメジメとした牢の中にいて、お風呂にも入れていないので、カラダも聖女魔法とは言いがたい程遠い微力な魔法で綺麗にしていく。何もしないよりは、マシというもの。
アンジェリーヌは、前に教会の水晶玉を光らせたことを思い出していた。今、ここで聖女様であることを告げたら事態は収拾するだろうか?
あれから一度も聖魔法をまともに勉強したことがない。あの時は司祭様から、結婚式の余興でのサプライズにしようと提案されて、それを飲んでしまったのだから、そもそも聖女様になれるのは純潔でなければならない。
リリアーヌのように、聖女になってから男性と関係を持ったのならば、聖女様の魔力に影響は出ないものなのかも?という気もしないではない。
しかし、結婚式のサプライズというのは、殿下と挙式さえしてしまえば、聖女様であろうがなかろうが関係ないということなのか?
釈然としないまま、王宮の牢に送致されることが決まったことを両親から告げられる。
「どこの馬の骨かもわからないお前なんぞ、娘でもなんでもないわ!我が家の公女はリリアーヌただ一人と昔から決まっておる!俺が浮気して、外で女を囲っていたような誤解をさせるな!このマキャベリに何か恨みでもあるのかっ!」
「綺麗なドレスを着たからと言って公女にはなれませんわ。今度、生まれ変わったら、貴族の家ではなくて、平民として心やすらかに過ごしなさい。それが貴女の為でもあります。分不相応な夢を見てはなりません」
両親の凍り付くような、そして汚物でも見るかのような蔑んだ目に身震いしてしまう。
お兄様に至っては、もっと辛辣だった。アンジェリーヌに向かって、「汚らわしい」と言って、唾を吐きかけられたのだ。
幼い頃は、可愛いと言って、何度も顔じゅうを舐め回されたものだが……、今や、その妹に痰交じりの唾を吐き捨てるようになるとは……。
学園にリリアーヌとその信者が押し寄せ、王の密命を受けた学園長が庇ってくれたものの信者どもの手に堕ちた。
今は、王も北の塔の中に幽閉されていると聞く。まさかとは思うけど、クリストファーが命令したのだろうか?
幽閉される前の王は、自らの危険を顧みず、アンジェリーヌを逃がすことを最優先に考え行動してくださったのに、その策略は、悉くリリアーヌの手により潰えてしまった。
亡き王妃の親戚の隣国へ逃がそうと試みてくださったが、使者が国境を越えられず死亡した。学園には、あらゆる魔法を封じ込める部屋があったが、その部屋を通して、別の場所に転移をさせ、そこからは追跡不能とできる部屋があったのに、それも聖女様の信者の手により占拠されてしまう。
どこへも逃げ場がないアンジェリーヌにとり、最後のよりどころとなるマキャベリ公爵邸だったが、ここにも聖女様の手が回り、アンジェリーヌがマキャベリ家の令嬢と謀って、本来リリアーヌ公女が着るべきドレスを盗んだと言われ、ドレスをはぎ取られ、後ろ手に捕縛された。スリップ姿のまま、執事のセバスチャンから何度も鞭を打たれ、公爵邸の地下牢に放り込まれ、お父様を呼んでも、お母様を呼んでも、お兄様を声がかれるまで呼んでも、誰も来てくれなかった。
セバスチャンはアンジェリーヌがまだ幼い頃に、マキャベリ家に雇われるようになり、その頃はまだ若かったセバスチャンから絵本の読み聞かせをしてもらったり、お菓子を一緒に食べたり、アンジェリーヌのために中庭に手製のブランコを作ってもらって、一緒に遊んでもらった。使用人の中で一番の仲良しだったセバスチャンは、今や目を真っ赤にして鬼の形相で鞭を揮う。
人が変わってしまったセバスチャンに恐怖心さえ感じるアンジェリーヌは、ただ黙って耐えるのみ。
わずかばかりの魔力を遣って、鞭で打たれた傷を癒していく。ついでにジメジメとした牢の中にいて、お風呂にも入れていないので、カラダも聖女魔法とは言いがたい程遠い微力な魔法で綺麗にしていく。何もしないよりは、マシというもの。
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リリアーヌのように、聖女になってから男性と関係を持ったのならば、聖女様の魔力に影響は出ないものなのかも?という気もしないではない。
しかし、結婚式のサプライズというのは、殿下と挙式さえしてしまえば、聖女様であろうがなかろうが関係ないということなのか?
釈然としないまま、王宮の牢に送致されることが決まったことを両親から告げられる。
「どこの馬の骨かもわからないお前なんぞ、娘でもなんでもないわ!我が家の公女はリリアーヌただ一人と昔から決まっておる!俺が浮気して、外で女を囲っていたような誤解をさせるな!このマキャベリに何か恨みでもあるのかっ!」
「綺麗なドレスを着たからと言って公女にはなれませんわ。今度、生まれ変わったら、貴族の家ではなくて、平民として心やすらかに過ごしなさい。それが貴女の為でもあります。分不相応な夢を見てはなりません」
両親の凍り付くような、そして汚物でも見るかのような蔑んだ目に身震いしてしまう。
お兄様に至っては、もっと辛辣だった。アンジェリーヌに向かって、「汚らわしい」と言って、唾を吐きかけられたのだ。
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