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死に戻り2
28.ターゲット
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聖女判定をしてもらった夜のこと、子供たちを早々に寝かしつけ、アンジェリーヌとマクシミリアンは夫婦の時間を過ごす。
今宵こそは、主導権を握りたいアンジェリーヌだが、いつも結局は、喘がされ、気持ちよくさせてもらってばかりいる。
夫婦というものは、対等でなければならない。というのは、アンジェリーヌの持論で。だから今夜こそ、負けてなるものか!という意気込みで臨んでいる。
一体、何と闘うというのだろうか?
マクシミリアンは、妻を満足させるのは、夫の務めである。と、かたくなに信条を曲げない。
何より、アンジェリーヌが自分に身を任せているときの蕩け切った微笑みを見るのが楽しみのひとつであるから、むやみに、この愉しみを奪われたくないという本音もある。
入浴後、夫婦の寝室に向かったアンジェリーナは、そこに先客が……というか、マクシミリアンが先に入っていたのだ。
いつになく深刻な顔で、何やら書類に目を通している。
っもう!夫婦の寝室に仕事を持ち込むなんて、野暮ね!アンジェリーヌは、さっきまでの主導権云々の話はケロっと忘れて、マクシミリアンの横にドカっと座る。
よく見ると、マクシミリアンはため息を吐きながら、額を抑え、アンジェリーヌが傍に座ったことにも気づいていない。
「どうしたの?そんな顔をして……」
アンジェリーヌが声をかけ、ようやく気付いたという顔をした。柔らかく微笑んで、
「なんでもないよ」
「何でもないって、そんな顔はされていませんでしたわ。何があったか、おっしゃってくださいませ」
「実はな……、クリストファーのこともだが、最近、貴族令息の中でインポテンツになっている者がほとんどで、このままでは、跡継ぎを苦慮しているという報告が来ている。アンジェの兄のシャーロック殿もそうであるそうな」
「まあ!お兄様まで?」
「何やら、悪夢を伴うケースまで、報告されているのだが、調べようにも、コトがコトだけに本人に確かめると、見栄を張って、本当のことを言わないので困っておる」
アンジェリーヌは自分が死に戻りであることをマクシミリアンには言っていない。
今世のことと、前世のことが繋がっていることを知っているのはアンジェリーヌだけだと思っていたのだが、前世、あの後、リリアーヌの魔法が解け、それでアンジェリーヌを成敗したことについて、トラウマがあるのではないかと考える。
押し黙ったアンジェリーヌを気遣うマクシミリアンだが、
「アンジェも知っていると思うが、近衛騎士団長のエリオット・ヘーゲルは侯爵家の嫡男で、まだ独身の身だ。もし、敵対する国と戦になった時、未婚のまま戦場に赴くことになった場合、申し訳ないで済まぬ事態になるやもしれぬ。それを想うと不憫でな」
「名前ばかりの聖女では、ございますれば、それでも国境に結界を張りましょうぞ」
「おお!アンジェがそういってくれるなら、頼もしい限りだ」
エリオット・ヘーゲル、その名を聞くだけで、身震いするほど恐ろしい男。
前世、盗賊がアンジェリーヌを他国に売り飛ばそうとたくらんだ時、真っ先にエリオット・ヘーゲルが、剣先を突き立てて、両腕と両足を切断しに来た男だった。あの時の恐怖は今でも忘れられない。
死に戻ったからと言って、到底、許せるものではない。
さあて、どうやって、料理しましょうかね。インポぐらいでは、収まり切れない恨みがあるのよ。
翌日になって、執務室にエリオット・ヘーゲルを呼び出すことにした。
ヘーゲルは緊張した面持ちで、執務室の扉をノックした。
いつ見ても、さわやかイケメンが鼻につく。こいつをどう料理するかによって、今後の復讐人生が決まるわね。
今世では、復讐すべきターゲットが多すぎて、そこが思案のしどころだけど、マクシミリアンと3人の子供たち以外は、全員が復讐すべき相手だから大雑把にザックリといきましょうか。
今宵こそは、主導権を握りたいアンジェリーヌだが、いつも結局は、喘がされ、気持ちよくさせてもらってばかりいる。
夫婦というものは、対等でなければならない。というのは、アンジェリーヌの持論で。だから今夜こそ、負けてなるものか!という意気込みで臨んでいる。
一体、何と闘うというのだろうか?
マクシミリアンは、妻を満足させるのは、夫の務めである。と、かたくなに信条を曲げない。
何より、アンジェリーヌが自分に身を任せているときの蕩け切った微笑みを見るのが楽しみのひとつであるから、むやみに、この愉しみを奪われたくないという本音もある。
入浴後、夫婦の寝室に向かったアンジェリーナは、そこに先客が……というか、マクシミリアンが先に入っていたのだ。
いつになく深刻な顔で、何やら書類に目を通している。
っもう!夫婦の寝室に仕事を持ち込むなんて、野暮ね!アンジェリーヌは、さっきまでの主導権云々の話はケロっと忘れて、マクシミリアンの横にドカっと座る。
よく見ると、マクシミリアンはため息を吐きながら、額を抑え、アンジェリーヌが傍に座ったことにも気づいていない。
「どうしたの?そんな顔をして……」
アンジェリーヌが声をかけ、ようやく気付いたという顔をした。柔らかく微笑んで、
「なんでもないよ」
「何でもないって、そんな顔はされていませんでしたわ。何があったか、おっしゃってくださいませ」
「実はな……、クリストファーのこともだが、最近、貴族令息の中でインポテンツになっている者がほとんどで、このままでは、跡継ぎを苦慮しているという報告が来ている。アンジェの兄のシャーロック殿もそうであるそうな」
「まあ!お兄様まで?」
「何やら、悪夢を伴うケースまで、報告されているのだが、調べようにも、コトがコトだけに本人に確かめると、見栄を張って、本当のことを言わないので困っておる」
アンジェリーヌは自分が死に戻りであることをマクシミリアンには言っていない。
今世のことと、前世のことが繋がっていることを知っているのはアンジェリーヌだけだと思っていたのだが、前世、あの後、リリアーヌの魔法が解け、それでアンジェリーヌを成敗したことについて、トラウマがあるのではないかと考える。
押し黙ったアンジェリーヌを気遣うマクシミリアンだが、
「アンジェも知っていると思うが、近衛騎士団長のエリオット・ヘーゲルは侯爵家の嫡男で、まだ独身の身だ。もし、敵対する国と戦になった時、未婚のまま戦場に赴くことになった場合、申し訳ないで済まぬ事態になるやもしれぬ。それを想うと不憫でな」
「名前ばかりの聖女では、ございますれば、それでも国境に結界を張りましょうぞ」
「おお!アンジェがそういってくれるなら、頼もしい限りだ」
エリオット・ヘーゲル、その名を聞くだけで、身震いするほど恐ろしい男。
前世、盗賊がアンジェリーヌを他国に売り飛ばそうとたくらんだ時、真っ先にエリオット・ヘーゲルが、剣先を突き立てて、両腕と両足を切断しに来た男だった。あの時の恐怖は今でも忘れられない。
死に戻ったからと言って、到底、許せるものではない。
さあて、どうやって、料理しましょうかね。インポぐらいでは、収まり切れない恨みがあるのよ。
翌日になって、執務室にエリオット・ヘーゲルを呼び出すことにした。
ヘーゲルは緊張した面持ちで、執務室の扉をノックした。
いつ見ても、さわやかイケメンが鼻につく。こいつをどう料理するかによって、今後の復讐人生が決まるわね。
今世では、復讐すべきターゲットが多すぎて、そこが思案のしどころだけど、マクシミリアンと3人の子供たち以外は、全員が復讐すべき相手だから大雑把にザックリといきましょうか。
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