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死に戻り2
29.エリオット・ヘーゲル視点
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聖女様であらせられる王妃陛下が、国境に結界を張り巡らすため、王妃付きの騎士団だけではなく、国王陛下直属の近衛騎士を動かされるとは、いかに国王が王妃様にメロメロかと示すものであり、エリオット・ヘーゲルもまた身に余る光栄なことと思っている。
当日は、王妃陛下だけがご参加になると思っていたら、なんと、国王までご参加されることになるとは……、それで我々、近衛が任命されたと初めて分かった。
国境までの道のりを我々、近衛が先導する形で行き、ついで、陛下が載られる馬車、しんがりが王妃陛下付きの騎士団という順番になった。
帰りは先頭としんがりが逆になる。損な役回りであるが、それだけ陛下が重用されていただけることに誇らしさを感じる。
幼いときより、剣術の修練に打ち込んできて、ようやく近衛の団長にまで昇り詰められたことは、父のヘーゲル侯爵にも鼻高である。
本来なら、年齢が近いクリストファー殿下付きの騎士団に入るところだが、噂では、どうやら廃嫡になる?らしい。いまだに婚約者候補の令嬢を1人に絞れず、剣術の修練にも力を入れず、公務を疎かにしているという話が絶えない。
クリストファー殿下に3人もの婚約者候補がいるという。いずれも名だたる名家の令嬢中の令嬢揃い。エリオットには、一人もいない……。
見た目だけで、昔から、よくモテたのだが、なんせ、アッチの方がサッパリなものだから、つい不愛想になってしまう。
女にきちんとしているという評価が勝手に出来上がってしまい、若くして、近衛騎士団長という栄誉に与かっている。
これで可愛い嫁さんがいれば、言うことはないのだが、そちらの方はサッパリで……、何を見ても、触ってもらっても、勃起しない。だから、「天は二物を与えず」ということで我慢している。
エリオットの夢
どこかで若い女性のすすり泣きがしている。
耳障りなその声を振り払おうと、白い細い何かを斬った。よく見ると、それは蠟でできた鹿だった。
直後、猛烈に下半身が痛みだし、立っていられないほどの苦痛と恐怖心が起こる。
剣で恐怖心を薙ぎ払おうとしてみるも、宙を斬り虚無感が増していく。
睾丸が血の色に染まり、痛みで目が覚める。
こんな夢を何度も見させられては、正直なところ気力さえ失いかけてしまう。
まあ、そのうち何とかなるだろう。という境地にようやく達したところだった。
今日は、王妃様が聖女様に覚醒され、初めての晴れの舞台。国境に結界を張り巡らし、騎士団の命を尊ぶためと言われている。実にありがたいことだ。
否が応でも鼓舞する気持ちを緊張に置き換え、前進している。
最初の宿場町リンデルシュに到着した頃は、まだ陽も沈んでおらず、行程としては無理がなかった。リンデルシュの街は、ヘーゲル家の領地の一部で。街名主の息子は、幼馴染が務めている。
陛下ご夫妻の宿泊先は、街一番の豪華な造りで、騎士団の部屋も両隣にある別棟ですべて収容できる。
正面に本館、その両隣が別館となっている。それぞれに調理場がある。
国王陛下は、いつも遠出をなさる時、街道沿いに従い進まれる。民の暮らしぶりを見るためと民に金銭を与えるため、国王が滞在した街となれば、一大観光地となり、その後の収益がかなり見込まれる。
今回のルートは、近衛が任命されたときにさかのぼり、騎士団の領地を通る目的で作成された。
その最初の宿泊地にエリオットの家の領地が選ばれたことは、ありがたき幸せ。「謹んで、歓待させていただきます」と返事をしたのも、つい先日のこと。
リンデルシュの街の売りは、なんといっても温泉が出ること。ご夫妻が泊まられる部屋には部屋付きの露天風呂が設置されており、大浴場に足を運ばれなくても、お部屋にて、露天風呂を堪能できる。
当日は、王妃陛下だけがご参加になると思っていたら、なんと、国王までご参加されることになるとは……、それで我々、近衛が任命されたと初めて分かった。
国境までの道のりを我々、近衛が先導する形で行き、ついで、陛下が載られる馬車、しんがりが王妃陛下付きの騎士団という順番になった。
帰りは先頭としんがりが逆になる。損な役回りであるが、それだけ陛下が重用されていただけることに誇らしさを感じる。
幼いときより、剣術の修練に打ち込んできて、ようやく近衛の団長にまで昇り詰められたことは、父のヘーゲル侯爵にも鼻高である。
本来なら、年齢が近いクリストファー殿下付きの騎士団に入るところだが、噂では、どうやら廃嫡になる?らしい。いまだに婚約者候補の令嬢を1人に絞れず、剣術の修練にも力を入れず、公務を疎かにしているという話が絶えない。
クリストファー殿下に3人もの婚約者候補がいるという。いずれも名だたる名家の令嬢中の令嬢揃い。エリオットには、一人もいない……。
見た目だけで、昔から、よくモテたのだが、なんせ、アッチの方がサッパリなものだから、つい不愛想になってしまう。
女にきちんとしているという評価が勝手に出来上がってしまい、若くして、近衛騎士団長という栄誉に与かっている。
これで可愛い嫁さんがいれば、言うことはないのだが、そちらの方はサッパリで……、何を見ても、触ってもらっても、勃起しない。だから、「天は二物を与えず」ということで我慢している。
エリオットの夢
どこかで若い女性のすすり泣きがしている。
耳障りなその声を振り払おうと、白い細い何かを斬った。よく見ると、それは蠟でできた鹿だった。
直後、猛烈に下半身が痛みだし、立っていられないほどの苦痛と恐怖心が起こる。
剣で恐怖心を薙ぎ払おうとしてみるも、宙を斬り虚無感が増していく。
睾丸が血の色に染まり、痛みで目が覚める。
こんな夢を何度も見させられては、正直なところ気力さえ失いかけてしまう。
まあ、そのうち何とかなるだろう。という境地にようやく達したところだった。
今日は、王妃様が聖女様に覚醒され、初めての晴れの舞台。国境に結界を張り巡らし、騎士団の命を尊ぶためと言われている。実にありがたいことだ。
否が応でも鼓舞する気持ちを緊張に置き換え、前進している。
最初の宿場町リンデルシュに到着した頃は、まだ陽も沈んでおらず、行程としては無理がなかった。リンデルシュの街は、ヘーゲル家の領地の一部で。街名主の息子は、幼馴染が務めている。
陛下ご夫妻の宿泊先は、街一番の豪華な造りで、騎士団の部屋も両隣にある別棟ですべて収容できる。
正面に本館、その両隣が別館となっている。それぞれに調理場がある。
国王陛下は、いつも遠出をなさる時、街道沿いに従い進まれる。民の暮らしぶりを見るためと民に金銭を与えるため、国王が滞在した街となれば、一大観光地となり、その後の収益がかなり見込まれる。
今回のルートは、近衛が任命されたときにさかのぼり、騎士団の領地を通る目的で作成された。
その最初の宿泊地にエリオットの家の領地が選ばれたことは、ありがたき幸せ。「謹んで、歓待させていただきます」と返事をしたのも、つい先日のこと。
リンデルシュの街の売りは、なんといっても温泉が出ること。ご夫妻が泊まられる部屋には部屋付きの露天風呂が設置されており、大浴場に足を運ばれなくても、お部屋にて、露天風呂を堪能できる。
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