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死に戻り2
34.夢診断
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シャーロックは頭を抱えている。
騎士団の知り合いから、悪夢に出てくる女性が実の妹のアンジェリーヌだとわかった。
実の妹を死なすばかりでなく、辱めを与えた女性までもがアンジェリーヌだったという事実を突きつけられ、頭が真っ白になり鬼畜にも劣る行いに、ただただ茫然とするしかない。
いくら身分が高かろうが、この世の中に踏みにじってもいいという人権は、ひとつもないことを思い知らされた。
こともあろうに妹を犯していたとは、夢にも思わなかった。
悪夢を見たら必ず懺悔の日々を送っていただけに、取り返しのつかないことをしてしまった自責の念に、呆然とするばかり。
社交界に属する貴族の中に、少しずつだが、悪夢に出てくる女性の正体が明らかになっていくにつれ、己を叱責したくてもできない状況と欺瞞と怒り、羞恥、複雑な感情が入り混じって満ちてくる。
悪夢の真相を突き付けられ、ある者は発狂し、ある者は自殺を志すも、皆、失敗に終わり、沈痛な表情だけが残される。
死ぬことも狂うこともできない。ただただ、反省するしかない日々は、さながら地獄絵図のように思われる。
終わりのない反省は、生きる意味を問う。
人間は、何のために生まれ、そして死を迎えた後はどうなるのか?という哲学的思考が流行するようになる。
その思想は、やがて平民にまで波及し、平民の中でも、前世、アンジェリーヌに無体なことをしたものが含まれていることから、たちまちその思想が受け入れられるようになってきた。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-*-*-*-*-*-
その頃、王宮ではアンジェリーヌが4人目の出産を終え、今度は初めての王女様の誕生に沸き立っている。
そういえば、前世では、そろそろ魔女リリアーヌが登場してもいいころ合いになってきているのに、今世は、一向に現れたという報告を聞かない。
やはり、あの結界に阻まれて、一歩も国境を越えられないのだろうか?
それにしても、他国や隣国からも、そういった魔女や聖女もどきが現れたという情報を得ていない。
首をかしげるものの、今は産褥で多忙を極めている。
マクシミリアンは、というと次の子供も男の子だと勝手に決めつけていたので、王子の名前しか考えていなく、王女だと知り慌てて命名を考えている。
「え……ッと、アンジェリーヌの娘だから……ドン……いや、鈍くさい子供になってもらったら困るから、ドロシー、スーザン、ジャネット、リンダ……ロザリア……ロザリアンヌがいいではないか?」
ということで王女の名前はロザリアンヌということになった。もしかしてまた聖女様になるかもしれないという期待を込めて、名付けられたのである。
「ロザリアンヌ、おお、よしよし、いい娘だ。大きくなって美しく成長しても、どこへもお嫁に行かなくていいぞ」
すっかり親ばかの出来上がり。
そんなマクシミリアンの姿をほほえましく見ているうちに、父のマキャベリ公爵のことを思い出す。
「どこの馬の骨ともわからぬ。お前なんぞ、我が家の娘ではない!」
前世、言いきられたときは、さすがにショックで、それまでものすごく大切な存在として育てられてきたから、なおさらそのショックは大きかった。今世は、最初から微塵も期待していなかったことで、もし今、同じことを言われても、前世ほどのショックは受けない。
だから、巷で流行っている哲学論にも関心がない。なんでも、最近は、夢判断まで出てきているらしいが、前世の悪夢をどれだけ診断できる人がいるのだろうか?
それは哲学ではなく、心理学の領域であることに気づいているのか。深層心理学を解明するには、まだまだ時間がかかりそうな予感がする。
騎士団の知り合いから、悪夢に出てくる女性が実の妹のアンジェリーヌだとわかった。
実の妹を死なすばかりでなく、辱めを与えた女性までもがアンジェリーヌだったという事実を突きつけられ、頭が真っ白になり鬼畜にも劣る行いに、ただただ茫然とするしかない。
いくら身分が高かろうが、この世の中に踏みにじってもいいという人権は、ひとつもないことを思い知らされた。
こともあろうに妹を犯していたとは、夢にも思わなかった。
悪夢を見たら必ず懺悔の日々を送っていただけに、取り返しのつかないことをしてしまった自責の念に、呆然とするばかり。
社交界に属する貴族の中に、少しずつだが、悪夢に出てくる女性の正体が明らかになっていくにつれ、己を叱責したくてもできない状況と欺瞞と怒り、羞恥、複雑な感情が入り混じって満ちてくる。
悪夢の真相を突き付けられ、ある者は発狂し、ある者は自殺を志すも、皆、失敗に終わり、沈痛な表情だけが残される。
死ぬことも狂うこともできない。ただただ、反省するしかない日々は、さながら地獄絵図のように思われる。
終わりのない反省は、生きる意味を問う。
人間は、何のために生まれ、そして死を迎えた後はどうなるのか?という哲学的思考が流行するようになる。
その思想は、やがて平民にまで波及し、平民の中でも、前世、アンジェリーヌに無体なことをしたものが含まれていることから、たちまちその思想が受け入れられるようになってきた。
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その頃、王宮ではアンジェリーヌが4人目の出産を終え、今度は初めての王女様の誕生に沸き立っている。
そういえば、前世では、そろそろ魔女リリアーヌが登場してもいいころ合いになってきているのに、今世は、一向に現れたという報告を聞かない。
やはり、あの結界に阻まれて、一歩も国境を越えられないのだろうか?
それにしても、他国や隣国からも、そういった魔女や聖女もどきが現れたという情報を得ていない。
首をかしげるものの、今は産褥で多忙を極めている。
マクシミリアンは、というと次の子供も男の子だと勝手に決めつけていたので、王子の名前しか考えていなく、王女だと知り慌てて命名を考えている。
「え……ッと、アンジェリーヌの娘だから……ドン……いや、鈍くさい子供になってもらったら困るから、ドロシー、スーザン、ジャネット、リンダ……ロザリア……ロザリアンヌがいいではないか?」
ということで王女の名前はロザリアンヌということになった。もしかしてまた聖女様になるかもしれないという期待を込めて、名付けられたのである。
「ロザリアンヌ、おお、よしよし、いい娘だ。大きくなって美しく成長しても、どこへもお嫁に行かなくていいぞ」
すっかり親ばかの出来上がり。
そんなマクシミリアンの姿をほほえましく見ているうちに、父のマキャベリ公爵のことを思い出す。
「どこの馬の骨ともわからぬ。お前なんぞ、我が家の娘ではない!」
前世、言いきられたときは、さすがにショックで、それまでものすごく大切な存在として育てられてきたから、なおさらそのショックは大きかった。今世は、最初から微塵も期待していなかったことで、もし今、同じことを言われても、前世ほどのショックは受けない。
だから、巷で流行っている哲学論にも関心がない。なんでも、最近は、夢判断まで出てきているらしいが、前世の悪夢をどれだけ診断できる人がいるのだろうか?
それは哲学ではなく、心理学の領域であることに気づいているのか。深層心理学を解明するには、まだまだ時間がかかりそうな予感がする。
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