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宝島から帰ってからというもの、宝の山の前にどうしようかと話し合いするも、どうにもならないので、領地で少しずつ宝石類を売ることにしたのだが、とても全部売りさばける量ではない。
ストラッカー国では、ハートフルス家は一山当てたという噂が出るほどの金額だったのである。
宝の出所を言うにもいかず、お嬢様の家出先がわかるかもしれないので、一山当てたということでいいか。
ブラッドリボン国でも少し売ることにしたのである。聖女様がダンジョン攻略したことは知られていたから、そんなに不審がられることもなく、ある程度の量がさばけることになった。
そして、レストランは盛況である。聖女様レストランとして、この前、ファフニールのお披露目会をかねて、オーク肉の食べ放題をやったから、それでいっぺんに聖女様のレストランとして名前が知れてしまったのである。
それからというもののレストランというよりは、診療所になってしまって、とりあえず病気やけがをしたら、聖女様のところへ行こう。という話になり、ちょっぴり迷惑している。
いつもレストランにいるとは、限らないので、公爵邸で刺繍や編み物をしていることが多いから。それとレストランはクレンリネスという衛生面で気を付けている場所なので、病人やけが人が来られると食中毒の心配もある。
なんだか居心地が悪くなったわね。店をたたんでブラッドリボン国から出て行こうか、また話し合いが行われることに。レストランは、しばらく休業の札を立てる。
せっかく、終の棲家を見つけられたと思ったけど、次は何処へ行く?あの宝島で暮らすにも少し不便である。
アンジェリーナは考えた。いっそのこと、領地へ戻ろうか?
ここは、元あった貴族の別荘だけを元の位置に戻して、あとは、異空間に放り込んで、領地で移築するというのはどうであろうか?
ここを借りる権利金は、支払い済みだから、時々、別荘代わりに戻ってきたらいい。
引っ越しが住めば、この国から出発するフリをすればいい。そしたら今までのように大挙して押しかけてこないだろう。
そして、アンジェリーナは、何度となくブラッドリボンの公爵邸と領地を往復して、引っ越し作業を終える。
もしも父の出張が終わり、帰ってきたとしても、領地にいたら文句は言われない。きちんと領地経営をしていたことになるからで、公爵家長女としての責務を全うしたことになる。
たまに、ちょいちょいっと冒険していて、それで鉱脈を当てたで、宝の山の説明もつく。
我ながら、冴えているわね。自画自賛する。
元々あった貴族別荘のクローゼットの中に、異空間扉をセットし終えたアンジェリーナは、使用人全員を集めて、出発するフリをするから、と伝える。
といっても荷物は、全部領地へ送ったので、荷物を運ぶフリだけしてもらう。空箱ばかりを馬車に乗せる。
せっかく住みやすかったブラッドリボン国を離れるのは、心苦しいけど、自分のところの聖女様をもっと頼れば?旅行者の聖女が治療しなければならない義務はないのだから。
別に治療するのが嫌で、ブラッドリボン国を出国するわけではない。家出している身だから、大挙して押しかけてこられるのが嫌なのである。家出って、大っぴらにするものではないでしょ。というのがアンジェリーナの言い分である。
ブラッドリボン国では、せっかくなので北上して北門から出国することにする。南側から出て、ゴールデンラブリス国の付近を通るのが嫌だからである。
あとで聞いた話だが、ゴールデンラブリス国の国王陛下というのは、相当なスケベジジイだと聞いた。あの時、国王と謁見していたら、と思うとゾッとしたわ。
とにかく北門へ急ごう、ぐずぐずしていたら日が暮れる。
ぎりぎり閉門時間までには、間に合った。よかった。
目指すは、隣国シルバースクリュー国、いい国ならいいな。と思っていたら、ファフニールちゃんが、クロードとジャックとアンジェリーナに背中に乗るよう促す。
「え?なに?」
「私の背中に乗って、ひとっ飛びで、隣国シルバースクリュー国まで行って、そこから異空間で皆さんを迎えに来られたら、よろしいでしょう。」
そうだった。ファフニールは、空が飛べると言うことをすっかり失念していたわ。
そしたら、あの貴族別荘で、みんな待っててもらっていたほうが好都合だったと思うにも、すでに閉門したあとで、どうしましょう。
とりあえず、ここから領地へ帰ることにして、明日は、みんなを領地に残して、ここから出発すればいいよね?ということで、その日は適当な木を見つけて、異空間を作り通路を通って、帰ることにした。
翌朝、北門近くの木から、また出てきた4人。アンジェリーナとファフニール、ジャック、クロードである。
ここからひとっ飛びで、シルバースクリュー国まで行ってもらった。相変わらず、空の上は風がきついけど、前に乗った時よりは、少しは慣れたみたい。
シルバースクリュー国へ着いて、入国審査を受ける。いっそのこと、この先の国まで行っちゃう?と思いながら、アンジェリーナの番が回ってきた。
聖女カードを見せても、何も言われなかったので、ほっとして入国する。
ここでの本拠地が欲しい、とジャックに言うと商業ギルドへ向かって歩き出す。
途中冒険者ギルドの前を通るが、スルーする。冒険者ギルド内はなんだか、外から見ていても剣呑とした雰囲気が漂っている。
触らぬ神に祟りなし
急いで商業ギルドに向かう4人。
そこに、「ちょっと、待ったぁー!」
冒険者ギルドの入り口が開いて、呼び止められるも、無視を決め込む。
そそくさと商業ギルドに入る。
なんと、冒険者ギルドから出てきた男たちは、アンジェリーナたちを追って、商業ギルドの中にまで入ってきたのだ。
「お嬢ちゃん、なんで無視する?」
「は?わたくしでございますか?」
「そうだよ、ちょっと酌してくれや!」
アンジェリーナの手首を掴もうとした瞬間、護衛のクロードと執事が素早くアンジェリーナを後ろ側に隠した。
と同時に、ファフニールが相手の男ののど元に剣を突き立てた。素早い!
「ははは。冗談だよ。」
男たちは、笑って去って行った。
アンジェリーナたちは、この国をスルーすることにして、再び隣国のホワイトマロン国へ向かうことにしたのである。
ホワイトマロン国も、すんなり入国でき、商業ギルドでレストランを開業できるぐらいの土地のあっせんもしてもらった。
もし、ここが居心地よければ、ここで暮らしてもいいかしら。
早速、異空間からレストランを出し、周辺を整えていくことにする。レストランの異空間通路を使い、みんなに来てもらうことにしたのよ。
この国がシルバースクリュー国でなく、ホワイトマロン国だったことから、シルバースクリュー国で何があったのかを問い詰められ、苦笑するのである。
「大したことはないのだけど、ちょっとゴロツキに絡まれただけよ。」
「なにぃ!」
騎士や他の護衛、メイドまでもがいきり立っているのを宥めつつ、引っ越しの用意と言っても何もないけど、レストラン準備をしていく。
今度は、ここでは泊まらずに、レストランの商売だけをここですることにした。ここで泊まって、聖女様のレストランだってわかると、また大勢で押しかけられたら困るものね。
そして、開店の日を迎える。
やっぱり、客は来ない。仕方なく街の中心部で割引券付きのビラを撒くことに、侍女をはじめ女性陣ばかりで撒いたら、ボツボツお客さんが来てくれた。最初は、有り余っているオーク肉を市価の半額で提供したら、ランチは飛ぶように売れたわ。
それから、カフェタイムは、異世界から珍しいお菓子を取り寄せ提供したら、これもあっという間になくなり、翌日からは、宣伝しなくても口コミだけでお客様が入るようになり、一安心。
落ち着いたら、この国でもダンジョン行きたいな。
ストラッカー国では、ハートフルス家は一山当てたという噂が出るほどの金額だったのである。
宝の出所を言うにもいかず、お嬢様の家出先がわかるかもしれないので、一山当てたということでいいか。
ブラッドリボン国でも少し売ることにしたのである。聖女様がダンジョン攻略したことは知られていたから、そんなに不審がられることもなく、ある程度の量がさばけることになった。
そして、レストランは盛況である。聖女様レストランとして、この前、ファフニールのお披露目会をかねて、オーク肉の食べ放題をやったから、それでいっぺんに聖女様のレストランとして名前が知れてしまったのである。
それからというもののレストランというよりは、診療所になってしまって、とりあえず病気やけがをしたら、聖女様のところへ行こう。という話になり、ちょっぴり迷惑している。
いつもレストランにいるとは、限らないので、公爵邸で刺繍や編み物をしていることが多いから。それとレストランはクレンリネスという衛生面で気を付けている場所なので、病人やけが人が来られると食中毒の心配もある。
なんだか居心地が悪くなったわね。店をたたんでブラッドリボン国から出て行こうか、また話し合いが行われることに。レストランは、しばらく休業の札を立てる。
せっかく、終の棲家を見つけられたと思ったけど、次は何処へ行く?あの宝島で暮らすにも少し不便である。
アンジェリーナは考えた。いっそのこと、領地へ戻ろうか?
ここは、元あった貴族の別荘だけを元の位置に戻して、あとは、異空間に放り込んで、領地で移築するというのはどうであろうか?
ここを借りる権利金は、支払い済みだから、時々、別荘代わりに戻ってきたらいい。
引っ越しが住めば、この国から出発するフリをすればいい。そしたら今までのように大挙して押しかけてこないだろう。
そして、アンジェリーナは、何度となくブラッドリボンの公爵邸と領地を往復して、引っ越し作業を終える。
もしも父の出張が終わり、帰ってきたとしても、領地にいたら文句は言われない。きちんと領地経営をしていたことになるからで、公爵家長女としての責務を全うしたことになる。
たまに、ちょいちょいっと冒険していて、それで鉱脈を当てたで、宝の山の説明もつく。
我ながら、冴えているわね。自画自賛する。
元々あった貴族別荘のクローゼットの中に、異空間扉をセットし終えたアンジェリーナは、使用人全員を集めて、出発するフリをするから、と伝える。
といっても荷物は、全部領地へ送ったので、荷物を運ぶフリだけしてもらう。空箱ばかりを馬車に乗せる。
せっかく住みやすかったブラッドリボン国を離れるのは、心苦しいけど、自分のところの聖女様をもっと頼れば?旅行者の聖女が治療しなければならない義務はないのだから。
別に治療するのが嫌で、ブラッドリボン国を出国するわけではない。家出している身だから、大挙して押しかけてこられるのが嫌なのである。家出って、大っぴらにするものではないでしょ。というのがアンジェリーナの言い分である。
ブラッドリボン国では、せっかくなので北上して北門から出国することにする。南側から出て、ゴールデンラブリス国の付近を通るのが嫌だからである。
あとで聞いた話だが、ゴールデンラブリス国の国王陛下というのは、相当なスケベジジイだと聞いた。あの時、国王と謁見していたら、と思うとゾッとしたわ。
とにかく北門へ急ごう、ぐずぐずしていたら日が暮れる。
ぎりぎり閉門時間までには、間に合った。よかった。
目指すは、隣国シルバースクリュー国、いい国ならいいな。と思っていたら、ファフニールちゃんが、クロードとジャックとアンジェリーナに背中に乗るよう促す。
「え?なに?」
「私の背中に乗って、ひとっ飛びで、隣国シルバースクリュー国まで行って、そこから異空間で皆さんを迎えに来られたら、よろしいでしょう。」
そうだった。ファフニールは、空が飛べると言うことをすっかり失念していたわ。
そしたら、あの貴族別荘で、みんな待っててもらっていたほうが好都合だったと思うにも、すでに閉門したあとで、どうしましょう。
とりあえず、ここから領地へ帰ることにして、明日は、みんなを領地に残して、ここから出発すればいいよね?ということで、その日は適当な木を見つけて、異空間を作り通路を通って、帰ることにした。
翌朝、北門近くの木から、また出てきた4人。アンジェリーナとファフニール、ジャック、クロードである。
ここからひとっ飛びで、シルバースクリュー国まで行ってもらった。相変わらず、空の上は風がきついけど、前に乗った時よりは、少しは慣れたみたい。
シルバースクリュー国へ着いて、入国審査を受ける。いっそのこと、この先の国まで行っちゃう?と思いながら、アンジェリーナの番が回ってきた。
聖女カードを見せても、何も言われなかったので、ほっとして入国する。
ここでの本拠地が欲しい、とジャックに言うと商業ギルドへ向かって歩き出す。
途中冒険者ギルドの前を通るが、スルーする。冒険者ギルド内はなんだか、外から見ていても剣呑とした雰囲気が漂っている。
触らぬ神に祟りなし
急いで商業ギルドに向かう4人。
そこに、「ちょっと、待ったぁー!」
冒険者ギルドの入り口が開いて、呼び止められるも、無視を決め込む。
そそくさと商業ギルドに入る。
なんと、冒険者ギルドから出てきた男たちは、アンジェリーナたちを追って、商業ギルドの中にまで入ってきたのだ。
「お嬢ちゃん、なんで無視する?」
「は?わたくしでございますか?」
「そうだよ、ちょっと酌してくれや!」
アンジェリーナの手首を掴もうとした瞬間、護衛のクロードと執事が素早くアンジェリーナを後ろ側に隠した。
と同時に、ファフニールが相手の男ののど元に剣を突き立てた。素早い!
「ははは。冗談だよ。」
男たちは、笑って去って行った。
アンジェリーナたちは、この国をスルーすることにして、再び隣国のホワイトマロン国へ向かうことにしたのである。
ホワイトマロン国も、すんなり入国でき、商業ギルドでレストランを開業できるぐらいの土地のあっせんもしてもらった。
もし、ここが居心地よければ、ここで暮らしてもいいかしら。
早速、異空間からレストランを出し、周辺を整えていくことにする。レストランの異空間通路を使い、みんなに来てもらうことにしたのよ。
この国がシルバースクリュー国でなく、ホワイトマロン国だったことから、シルバースクリュー国で何があったのかを問い詰められ、苦笑するのである。
「大したことはないのだけど、ちょっとゴロツキに絡まれただけよ。」
「なにぃ!」
騎士や他の護衛、メイドまでもがいきり立っているのを宥めつつ、引っ越しの用意と言っても何もないけど、レストラン準備をしていく。
今度は、ここでは泊まらずに、レストランの商売だけをここですることにした。ここで泊まって、聖女様のレストランだってわかると、また大勢で押しかけられたら困るものね。
そして、開店の日を迎える。
やっぱり、客は来ない。仕方なく街の中心部で割引券付きのビラを撒くことに、侍女をはじめ女性陣ばかりで撒いたら、ボツボツお客さんが来てくれた。最初は、有り余っているオーク肉を市価の半額で提供したら、ランチは飛ぶように売れたわ。
それから、カフェタイムは、異世界から珍しいお菓子を取り寄せ提供したら、これもあっという間になくなり、翌日からは、宣伝しなくても口コミだけでお客様が入るようになり、一安心。
落ち着いたら、この国でもダンジョン行きたいな。
応援ありがとうございます!
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