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いじめられっ子
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「無料お試し期間終了まで、残すところあと3日となったけど、どう?続けられそう?」
今日も今日とて、女神様の朝ごはんを作りに来ている。
前世、子供のころから培った料理の腕前が、今頃こんな形で役に立つとは思っていなかった。
「さぁ、どうかなぁ。でもベンジャミンさんのご家族からはみんなよくしていただいています。今のところ、不満なしだけど。」
「だけど?」
「まだ、あと3日あるから、その間に決めます。というかまだ、身の振り方がハッキリしないのよね。今のところ、従業員でもなさそうだし、まだお客さん扱いで。」
「それは仕方ないんじゃない?向こうだって、聖女様をどう扱っていいかわからないだろうから。それなら、いっそのこと、教会か修道院に行くという手もあるよ。聖女様の仕事をしながら、物品の販売もできるはず。」
「また、珍獣ハンターに追いかけられながら?とにかく、今日にでもベンジャミンさんに、商売をするにはどうしたらいいかを相談してみるわ。」
そのまま異世界へ戻り、自分の部屋のクローゼットから出る。
そして、商会主のベンジャミンさんに商売がしたいと言うと、
「何をお売りになるおつもりですか?我が商会で、取り扱えるものなら、こちらで売れますが……。」
「お酒を売りたいのです。お酒を売るのに、免許などありますか?」
「作るのにも、売るにも免許は必要ありません。」
良かった、王家の専売特許ではなくて。前世ニッポンは、作るのも売るのも、すべて免許が必要で。そのために妙子時代は、酒税法と言う税理士科目を取得したぐらいだから。
「これなど置いていただきたいのですが、できますか?」
カトレーヌは、異世界通販で買っておいたお酒を次々出していく。
「まずは試飲を……、お!これは……美味い!」
ベンジャミンさんは、カトレーヌが出したお酒のふたを切り、グラスに注ぎ飲んでいる。
そこへ息子さんのクラークも来て、朝から酒盛りが始まる。商会の従業員も相まって、これが言い、いや、あっちの方が売れる、など商談兼酒談義が始まる。
朝からこんな調子では、仕事にならず、今日は閉店して、酒の値段を決めることに専念する。
カトレーヌが持ち込んだ酒のほとんどは、ニッポンで焼酎に分類される酒がほとんどで、中には清酒と呼ばれる酒も混じっている。
焼酎のほうが、アルコール度数が高いので、異世界では喜ばれる。
だいたい価格帯は、1本1000円前後の安い酒がほとんどなのであるが、
「聖女様、お値段はいかほどで売ろうとなさっていますか?」
「ちょっと高いかもしれませんが、1本あたり金貨1枚(日本円換算で1万円)は、欲しいと思っています。」
「それはまた……。」
あ!やっぱり高い?そうよね、本当は銀貨3枚(日本円換算で3000円)でも十分、もうけが出るんだけどね。
「安すぎる!」
へ?
「この1本なら、少なくても金貨10枚、いや15枚でも売れるだろう。」
いやぁ、それはいくらなんでも、高すぎるでしょう。そう思っていると、クラークからも
「そう言えば聖女様の母国も基幹産業として、酒造りが盛んですが、これほどの上等の酒は聞いたことも見たことも、飲んだこともございません。」
え?そうなの?でも、あのパーティでは、本当にロクなお酒がなかったわ。見るに見かねて、カトレーヌが異世界からお酒を出したぐらいだから。
「儂も何度もアルバン国には行っているが、こんなうまい酒には出会ったことがない。だからと言って、聖女様、儂らに仕入れ先を教える必要はない。商人には、仕入れ先が重要な秘密なのだからな。それを聞き出すほど野暮でもない。」
そう言えば、前世の会社でも仕入れ先、調達先は極秘事項で一部役員と関係の上級管理職しか知りえない事項だったわ。
ベンジャミンさんが助け船?を出してくれて、それで話は終わるが、それからあとは酒盛り談議に尽きると言ってもいいだろう。
「売り上げの1割を商会が手数料としてもらう。残りの9割が聖女様の取り分でいいだろう。」
「それでは、多すぎます。」
「いいのだ。儂らは先行投資をしているのだからな。聖女様と言う先物取引に投資しているのだ、だから1割でいいのだ。」
わかったような?わからないような?理屈にとにかく納得するしか方法がない。
あとから聞くと、商業ギルドに登録さえすれば、商会を通さなくてもいくらでも商売ができることを知るが、この異世界ではまだまだ男尊女卑の思想が根強く、聖女様といえども女は下に見られ舐められてしまうから、商会を通しての商いは結果オーライのことであったのだ。
カトレーヌが持ち込んだ酒は、「聖女リキュール」と名付けられ、飛ぶように売れることになる。中には、予約販売をしても追いつかなく、入荷まで3か月待ちでも、予約が絶えることはない。
最低価格金貨10枚、中には金貨100枚を超える代物まである。
あまりの高値にカトレーヌは申し訳がないからと、1本1本の酒に聖女の祈りを施したら、万病に効く薬としてもてはやされたのである。
今日も今日とて、女神様の朝ごはんを作りに来ている。
前世、子供のころから培った料理の腕前が、今頃こんな形で役に立つとは思っていなかった。
「さぁ、どうかなぁ。でもベンジャミンさんのご家族からはみんなよくしていただいています。今のところ、不満なしだけど。」
「だけど?」
「まだ、あと3日あるから、その間に決めます。というかまだ、身の振り方がハッキリしないのよね。今のところ、従業員でもなさそうだし、まだお客さん扱いで。」
「それは仕方ないんじゃない?向こうだって、聖女様をどう扱っていいかわからないだろうから。それなら、いっそのこと、教会か修道院に行くという手もあるよ。聖女様の仕事をしながら、物品の販売もできるはず。」
「また、珍獣ハンターに追いかけられながら?とにかく、今日にでもベンジャミンさんに、商売をするにはどうしたらいいかを相談してみるわ。」
そのまま異世界へ戻り、自分の部屋のクローゼットから出る。
そして、商会主のベンジャミンさんに商売がしたいと言うと、
「何をお売りになるおつもりですか?我が商会で、取り扱えるものなら、こちらで売れますが……。」
「お酒を売りたいのです。お酒を売るのに、免許などありますか?」
「作るのにも、売るにも免許は必要ありません。」
良かった、王家の専売特許ではなくて。前世ニッポンは、作るのも売るのも、すべて免許が必要で。そのために妙子時代は、酒税法と言う税理士科目を取得したぐらいだから。
「これなど置いていただきたいのですが、できますか?」
カトレーヌは、異世界通販で買っておいたお酒を次々出していく。
「まずは試飲を……、お!これは……美味い!」
ベンジャミンさんは、カトレーヌが出したお酒のふたを切り、グラスに注ぎ飲んでいる。
そこへ息子さんのクラークも来て、朝から酒盛りが始まる。商会の従業員も相まって、これが言い、いや、あっちの方が売れる、など商談兼酒談義が始まる。
朝からこんな調子では、仕事にならず、今日は閉店して、酒の値段を決めることに専念する。
カトレーヌが持ち込んだ酒のほとんどは、ニッポンで焼酎に分類される酒がほとんどで、中には清酒と呼ばれる酒も混じっている。
焼酎のほうが、アルコール度数が高いので、異世界では喜ばれる。
だいたい価格帯は、1本1000円前後の安い酒がほとんどなのであるが、
「聖女様、お値段はいかほどで売ろうとなさっていますか?」
「ちょっと高いかもしれませんが、1本あたり金貨1枚(日本円換算で1万円)は、欲しいと思っています。」
「それはまた……。」
あ!やっぱり高い?そうよね、本当は銀貨3枚(日本円換算で3000円)でも十分、もうけが出るんだけどね。
「安すぎる!」
へ?
「この1本なら、少なくても金貨10枚、いや15枚でも売れるだろう。」
いやぁ、それはいくらなんでも、高すぎるでしょう。そう思っていると、クラークからも
「そう言えば聖女様の母国も基幹産業として、酒造りが盛んですが、これほどの上等の酒は聞いたことも見たことも、飲んだこともございません。」
え?そうなの?でも、あのパーティでは、本当にロクなお酒がなかったわ。見るに見かねて、カトレーヌが異世界からお酒を出したぐらいだから。
「儂も何度もアルバン国には行っているが、こんなうまい酒には出会ったことがない。だからと言って、聖女様、儂らに仕入れ先を教える必要はない。商人には、仕入れ先が重要な秘密なのだからな。それを聞き出すほど野暮でもない。」
そう言えば、前世の会社でも仕入れ先、調達先は極秘事項で一部役員と関係の上級管理職しか知りえない事項だったわ。
ベンジャミンさんが助け船?を出してくれて、それで話は終わるが、それからあとは酒盛り談議に尽きると言ってもいいだろう。
「売り上げの1割を商会が手数料としてもらう。残りの9割が聖女様の取り分でいいだろう。」
「それでは、多すぎます。」
「いいのだ。儂らは先行投資をしているのだからな。聖女様と言う先物取引に投資しているのだ、だから1割でいいのだ。」
わかったような?わからないような?理屈にとにかく納得するしか方法がない。
あとから聞くと、商業ギルドに登録さえすれば、商会を通さなくてもいくらでも商売ができることを知るが、この異世界ではまだまだ男尊女卑の思想が根強く、聖女様といえども女は下に見られ舐められてしまうから、商会を通しての商いは結果オーライのことであったのだ。
カトレーヌが持ち込んだ酒は、「聖女リキュール」と名付けられ、飛ぶように売れることになる。中には、予約販売をしても追いつかなく、入荷まで3か月待ちでも、予約が絶えることはない。
最低価格金貨10枚、中には金貨100枚を超える代物まである。
あまりの高値にカトレーヌは申し訳がないからと、1本1本の酒に聖女の祈りを施したら、万病に効く薬としてもてはやされたのである。
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