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いじめられっ子
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「聖女リキュール」の名は、カトレーヌの母国アルバン国にも響き渡り、アルバート王太子は、婚約者である聖女様を迎えに行くべく支度をしている。
アルバートは婚約破棄をした認識がなく、ジャネット公爵家にも破棄違約金の支払いをしていないので、まだ婚約は続いていると信じている。
まぁ、信じるのは勝手だけど、もう婚約破棄している。事実は揺らがない。
アルバートは知らずにいたのだが、その場に王家の書記官もいて、婚約破棄は成立しているのである。高らかに宣言して、カトレーヌ嬢が「どうぞ。」と言った瞬間に婚約破棄は成立している。
ただ翌日になり、カトレーヌ嬢が聖女に覚醒と言う事実をもたらされたから、違約金の支払いがストップしているだけなのである。
いくらカトレーヌが魅力的な女性だと気づいても、もうそれは婚約破棄が成立してしまった後で、どうにもならない事実である。
アルバートは、ベルゾーラ国までの旅費を申請するが、あっさり却下され断られる。
「なぜだ?婚約者を迎えに行くのに、なぜダメだと言われるのだ?」
「聖女様はもう、婚約者様ではございません。」
「な、な、なんだとぉ!そんなはずはない!あのパーティで、カトレーヌに破棄は嘘だと言っただろう。」
「いいえ、おっしゃっていません。殿下は毒婦にひっかかり、聖女様との婚約を破棄されてしまわれたのです。」
「確かに、リリアーヌは毒婦ではあるから、リリアーヌを退けたではないか?だから、破棄の破棄は成立しているはずだと……?」
「カトレーヌ嬢は承諾されておりませんから、破棄の破棄は成立しておりません。」
「そんな……。せっかく聖女様と婚約しておきながら、知らずに破棄してしまったというのか?なんとかならぬのか?リリアーヌのせいだ!リリアーヌが俺を誑かすから、こんなことになったのだ。リリアーヌを探せ!見つけ出し次第、切り殺しても構わん!死体でもいいから、持ってこい!」
アルバートは部屋の中をうろうろ回りながら、爪を噛みながら思案している。爪はもう真っ赤で指先からは血が出ている。
「そうだ、それとジャネット家を取りつぶそう。元はと言えば、ジャネットが後妻の魅了魔法にひっかかってしまったから、我が国は聖女様を失うことになったのだ。」
カトレーヌの生家、ジャネット家は即刻取りつぶしが決まる。領地没収の上、私財ごと没収されたうえで屋敷ごと、取りつぶされることになったのだ。
ジャネット元公爵も、その処遇を甘んじて受け入れる。今まで、さんざんカトレーヌを蔑ろに扱ってきたことは重々承知しているから、いくら、後妻の魅了魔法にかかったとはいえ、実の娘に対してあまりにもひどい仕打ちを行ってきたのだから当然の報いである。
聖女様の父の資格がない。カトレーヌを屋根裏部屋に押し込み、食事も一日に一度しか与えず、かろうじて学園だけは、通わせていたが、馬車を使わせず、徒歩での通学を強いていたのだ。
カトレ-ヌのことを庇い立てする使用人を次々にクビにしていき、カトレーヌを孤立させたのだ。
冷遇を強いていたからこそ、カトレーヌは聖女様になれたのだろう。と思っている。
死罪にならなかっただけでもマシと思わなければ、でもアルバン国に入れば、いつ何時、死罪を言い渡されるかわからないから、出国することにする。
カトレーヌがいるベルゾーラ国へ行きたいが、カトレーヌは許してくれるだろうか?
そのベルゾーラ国は、聖女様が滞留してくださっているだけで、税収が増え、ウハウハなのだ。経済は潤滑に回っている。
商売人に、色恋ごとを言うと、あからさまにイヤな顔をされるので、ベルゾーラ国は聖女様に縁談を言わないでいる。
本当は、王子と婚約してほしいのだが、ダンベーゼ国から逃れてこられた理由がそれだからなおさら言えないのである。
「初対面の好きでもない殿方と結婚話が出るなど正気の沙汰とは思えない。」カトレーヌの言葉は伝説になっているほどである。
今迄の貴族、王族の常識を覆すほどの威力がある言葉。それはまさしく正論で、誰も反論できない。
ダンベーゼ国のエリオット王子も、結婚の申し込みを行ったために、聖女様に逃げられ、廃嫡されてしまう。せっかく、聖女様が入国してくださったというのに、しばらく様子見してからでもよかったのではないか?との意見が廃嫡にさせたのだ。
アルバン国で元ジャネット家の使用人だった者も、カトレーヌが聖女覚醒し、ベルゾーラ国で一旗揚げている噂を聞きつけ、続々と入国して、カトレーヌが厄介になっている商会を訪ねてくる。
「カトレーヌお嬢様、お久しゅう存じます。お嬢様はお忘れになったかも存じませんが、私は以前、ジャネット家で仕えていたセバスチャンでございます。」
「ごめんなさい。記憶があいまいでほとんど覚えておりませんのよ。」
「ジャネット家では、ひどい仕打ちをされていらっしゃいましたから、記憶がないのは仕方ございませんが、私は、旦那様や新しい奥様に何度も、カトレーヌお嬢様の処遇を改善するように進言したものでございます。その結果、旦那様の逆鱗に触れ解雇されてしまいましたが、できればもう一度カトレーヌお嬢様の傍で、お役に立てないかとこうして参った所存でございます。」
熱意にほだされて、結局セバスチャンを雇い入れることにはなったんだけど、まだカトレーヌもベンジャミン商会の一員ではないから、立場が微妙なところ。
クラークさんに相談すると、
「カトレーヌ様は、もう我が家族も同様なので、いつまでもいてくださって構いません。」
それって、どういう意味?よくわからない。商会の従業員ではない。と言うことはわかる。でも家族同然と言うことはわからない。
ま、いいっか。
セバスチャンには、カトレーヌが異世界通販で買ったお酒のラベルをはがし、聖女リキュールのラベルを上から貼るという仕事を与えたのである。それで数がそろえば、商会の係へ渡し、本数を数えて、売上代金と手数料をもらってくるという仕事も併せて、してもらうことになったのである。
商会の中にもう一部屋借り受け、そこを聖女リキュールの事務所兼セバスチャンの住居としたのである。
カトレーヌの部屋が前は事務所にしていたのだが、相変わらず、クローゼットの中に自宅マンションを出し、その中で生活していることは内緒にしているから。
セバスチャンの最初のお給金は、手取り金貨で50枚にした。前世の記憶から、この年齢の人には、と思いながら算出したのだが、セバスチャンは、しばし絶句して、茫然としている。
「聖女様、これは……1年分のお給金でございますか?」
「いいえ、1か月分だけど、何か?」
「多すぎます。こんなにはいただけません。」
「いいわよ、前にわたくしの味方になってくださったのでしょう?それでお父様から、追い出されてしまって……違う?」
「いや、しかし……。では、聖女様がお嫁に行かれるまでの支度金として、お預かりいたします。」
セバスチャンは、何気に自分のお給金のことを元居たジャネット家の使用人に話したら、なんとか自分も雇ってもらえないか、と口添えを頼まれるも、セバスチャン自身も、どう考えても自分は余剰人員であるとしか、思えないから答えられない。
カトレーヌは、セバスチャンの口から、元ジャネット家の使用人の受け入れを考えるも、商会を借りている身分では、手狭で動きが取れない。商業ギルドに登録して、別のリキュール部門専用の商会を立ち上げようとしたら、ベンジャミン商会が先回りをして、カトレーヌのために敷地内にもう一つ建物を建て、そこを無料で使わせてくれることになったのだ。
「どうして、そこまでご親切にしてくださるのですか?」
「女神様からのお告げの方で、私どもは、聖女様のおかげでずいぶん儲けさせていただきましたから、当然のことをしたまでです。それに聖女様は、前にも申し上げましたが家族同然と思っています。」
「え?それはどういう意味ですか?」
「あの通行手形の時から、あなた様は私の娘同然なのです。娘が昔、お世話になった方を雇いたいと言えば、許可します。そのお世話になった方がさらに増え、手狭になり身動きが取れないと難儀されているようだったので、手助けしたまででございますよ。」
「ありがとう存じます。この御恩は一生忘れません。実の親からも捨てられたも同然の身に、あまりあるご親切、なんとお返しすればよろしいのでしょうか?」
「だから、その必要はございません。私どもは聖女様の親代わりになれて光栄なのですから。」
カトレーヌは、前世の深尾妙子時代のことを思い出しながら知らない間に涙を流している。
そこへ、クラークさんが来て、ハンカチを差し出しながら、
「もし、よろしければ戸籍上も父の義理の娘になってくれませんか?」
「え?」
「カトレーヌ嬢、どうか、私の妻になってください、そして、家族同然ではなく本当の家族になっていただきたいのです。初めて、お会いした時からあなた様に心を奪われ、愛しておりました。カトレーヌ嬢に一生の愛を捧げることを誓います。」
「ありがとうございます。わたくしを妻にしてください。」
「え?本当?いいの?やったー!なんでも言ってみるもんだね。」
それからすぐに、結婚式が行われ、カトレーヌ・ベンジャミンとなった聖女様は、ますますお商売を頑張ります。
その姿を遠目で見て、帰って行くジャネット元公爵。もう自分の出番など少しもないことを悟り、黙って出て行こうとしたら、セバスチャンに呼び止められる。
「旦那様!旦那様では、あらせられませんか?カトレーヌお嬢様に会わずに出ていかれるのでございますか?」
「ここへ来たことは、他言無用で願いたい。今さらどの面下げて会えると思うか?」
「しかし……。」
「頼む。」
とそこへ、カトレーヌが通りがかり、
「あら、セバスチャンお客様でございますか?どうぞ、中へ。」
「カトレーヌ!」
「え?どなたでございますか?わたくし、昔のことは何一つ覚えておりませんの?セバスチャン、この方のことを教えてください。」
「お嬢様……おいたわしい。悲しい過去をお忘れになってしまわれたのですね……。」
「どうしたの?セバスチャン、大丈夫?」
父ジャネットは、その隙にそっと出て行く。忘れなければならないほどに悲しい過去を作ってしまった責任が自分にあることを知っているから。
そして、二度とカトレーヌの前に姿を現さない父は、そのまま出国する。
アルバートは婚約破棄をした認識がなく、ジャネット公爵家にも破棄違約金の支払いをしていないので、まだ婚約は続いていると信じている。
まぁ、信じるのは勝手だけど、もう婚約破棄している。事実は揺らがない。
アルバートは知らずにいたのだが、その場に王家の書記官もいて、婚約破棄は成立しているのである。高らかに宣言して、カトレーヌ嬢が「どうぞ。」と言った瞬間に婚約破棄は成立している。
ただ翌日になり、カトレーヌ嬢が聖女に覚醒と言う事実をもたらされたから、違約金の支払いがストップしているだけなのである。
いくらカトレーヌが魅力的な女性だと気づいても、もうそれは婚約破棄が成立してしまった後で、どうにもならない事実である。
アルバートは、ベルゾーラ国までの旅費を申請するが、あっさり却下され断られる。
「なぜだ?婚約者を迎えに行くのに、なぜダメだと言われるのだ?」
「聖女様はもう、婚約者様ではございません。」
「な、な、なんだとぉ!そんなはずはない!あのパーティで、カトレーヌに破棄は嘘だと言っただろう。」
「いいえ、おっしゃっていません。殿下は毒婦にひっかかり、聖女様との婚約を破棄されてしまわれたのです。」
「確かに、リリアーヌは毒婦ではあるから、リリアーヌを退けたではないか?だから、破棄の破棄は成立しているはずだと……?」
「カトレーヌ嬢は承諾されておりませんから、破棄の破棄は成立しておりません。」
「そんな……。せっかく聖女様と婚約しておきながら、知らずに破棄してしまったというのか?なんとかならぬのか?リリアーヌのせいだ!リリアーヌが俺を誑かすから、こんなことになったのだ。リリアーヌを探せ!見つけ出し次第、切り殺しても構わん!死体でもいいから、持ってこい!」
アルバートは部屋の中をうろうろ回りながら、爪を噛みながら思案している。爪はもう真っ赤で指先からは血が出ている。
「そうだ、それとジャネット家を取りつぶそう。元はと言えば、ジャネットが後妻の魅了魔法にひっかかってしまったから、我が国は聖女様を失うことになったのだ。」
カトレーヌの生家、ジャネット家は即刻取りつぶしが決まる。領地没収の上、私財ごと没収されたうえで屋敷ごと、取りつぶされることになったのだ。
ジャネット元公爵も、その処遇を甘んじて受け入れる。今まで、さんざんカトレーヌを蔑ろに扱ってきたことは重々承知しているから、いくら、後妻の魅了魔法にかかったとはいえ、実の娘に対してあまりにもひどい仕打ちを行ってきたのだから当然の報いである。
聖女様の父の資格がない。カトレーヌを屋根裏部屋に押し込み、食事も一日に一度しか与えず、かろうじて学園だけは、通わせていたが、馬車を使わせず、徒歩での通学を強いていたのだ。
カトレ-ヌのことを庇い立てする使用人を次々にクビにしていき、カトレーヌを孤立させたのだ。
冷遇を強いていたからこそ、カトレーヌは聖女様になれたのだろう。と思っている。
死罪にならなかっただけでもマシと思わなければ、でもアルバン国に入れば、いつ何時、死罪を言い渡されるかわからないから、出国することにする。
カトレーヌがいるベルゾーラ国へ行きたいが、カトレーヌは許してくれるだろうか?
そのベルゾーラ国は、聖女様が滞留してくださっているだけで、税収が増え、ウハウハなのだ。経済は潤滑に回っている。
商売人に、色恋ごとを言うと、あからさまにイヤな顔をされるので、ベルゾーラ国は聖女様に縁談を言わないでいる。
本当は、王子と婚約してほしいのだが、ダンベーゼ国から逃れてこられた理由がそれだからなおさら言えないのである。
「初対面の好きでもない殿方と結婚話が出るなど正気の沙汰とは思えない。」カトレーヌの言葉は伝説になっているほどである。
今迄の貴族、王族の常識を覆すほどの威力がある言葉。それはまさしく正論で、誰も反論できない。
ダンベーゼ国のエリオット王子も、結婚の申し込みを行ったために、聖女様に逃げられ、廃嫡されてしまう。せっかく、聖女様が入国してくださったというのに、しばらく様子見してからでもよかったのではないか?との意見が廃嫡にさせたのだ。
アルバン国で元ジャネット家の使用人だった者も、カトレーヌが聖女覚醒し、ベルゾーラ国で一旗揚げている噂を聞きつけ、続々と入国して、カトレーヌが厄介になっている商会を訪ねてくる。
「カトレーヌお嬢様、お久しゅう存じます。お嬢様はお忘れになったかも存じませんが、私は以前、ジャネット家で仕えていたセバスチャンでございます。」
「ごめんなさい。記憶があいまいでほとんど覚えておりませんのよ。」
「ジャネット家では、ひどい仕打ちをされていらっしゃいましたから、記憶がないのは仕方ございませんが、私は、旦那様や新しい奥様に何度も、カトレーヌお嬢様の処遇を改善するように進言したものでございます。その結果、旦那様の逆鱗に触れ解雇されてしまいましたが、できればもう一度カトレーヌお嬢様の傍で、お役に立てないかとこうして参った所存でございます。」
熱意にほだされて、結局セバスチャンを雇い入れることにはなったんだけど、まだカトレーヌもベンジャミン商会の一員ではないから、立場が微妙なところ。
クラークさんに相談すると、
「カトレーヌ様は、もう我が家族も同様なので、いつまでもいてくださって構いません。」
それって、どういう意味?よくわからない。商会の従業員ではない。と言うことはわかる。でも家族同然と言うことはわからない。
ま、いいっか。
セバスチャンには、カトレーヌが異世界通販で買ったお酒のラベルをはがし、聖女リキュールのラベルを上から貼るという仕事を与えたのである。それで数がそろえば、商会の係へ渡し、本数を数えて、売上代金と手数料をもらってくるという仕事も併せて、してもらうことになったのである。
商会の中にもう一部屋借り受け、そこを聖女リキュールの事務所兼セバスチャンの住居としたのである。
カトレーヌの部屋が前は事務所にしていたのだが、相変わらず、クローゼットの中に自宅マンションを出し、その中で生活していることは内緒にしているから。
セバスチャンの最初のお給金は、手取り金貨で50枚にした。前世の記憶から、この年齢の人には、と思いながら算出したのだが、セバスチャンは、しばし絶句して、茫然としている。
「聖女様、これは……1年分のお給金でございますか?」
「いいえ、1か月分だけど、何か?」
「多すぎます。こんなにはいただけません。」
「いいわよ、前にわたくしの味方になってくださったのでしょう?それでお父様から、追い出されてしまって……違う?」
「いや、しかし……。では、聖女様がお嫁に行かれるまでの支度金として、お預かりいたします。」
セバスチャンは、何気に自分のお給金のことを元居たジャネット家の使用人に話したら、なんとか自分も雇ってもらえないか、と口添えを頼まれるも、セバスチャン自身も、どう考えても自分は余剰人員であるとしか、思えないから答えられない。
カトレーヌは、セバスチャンの口から、元ジャネット家の使用人の受け入れを考えるも、商会を借りている身分では、手狭で動きが取れない。商業ギルドに登録して、別のリキュール部門専用の商会を立ち上げようとしたら、ベンジャミン商会が先回りをして、カトレーヌのために敷地内にもう一つ建物を建て、そこを無料で使わせてくれることになったのだ。
「どうして、そこまでご親切にしてくださるのですか?」
「女神様からのお告げの方で、私どもは、聖女様のおかげでずいぶん儲けさせていただきましたから、当然のことをしたまでです。それに聖女様は、前にも申し上げましたが家族同然と思っています。」
「え?それはどういう意味ですか?」
「あの通行手形の時から、あなた様は私の娘同然なのです。娘が昔、お世話になった方を雇いたいと言えば、許可します。そのお世話になった方がさらに増え、手狭になり身動きが取れないと難儀されているようだったので、手助けしたまででございますよ。」
「ありがとう存じます。この御恩は一生忘れません。実の親からも捨てられたも同然の身に、あまりあるご親切、なんとお返しすればよろしいのでしょうか?」
「だから、その必要はございません。私どもは聖女様の親代わりになれて光栄なのですから。」
カトレーヌは、前世の深尾妙子時代のことを思い出しながら知らない間に涙を流している。
そこへ、クラークさんが来て、ハンカチを差し出しながら、
「もし、よろしければ戸籍上も父の義理の娘になってくれませんか?」
「え?」
「カトレーヌ嬢、どうか、私の妻になってください、そして、家族同然ではなく本当の家族になっていただきたいのです。初めて、お会いした時からあなた様に心を奪われ、愛しておりました。カトレーヌ嬢に一生の愛を捧げることを誓います。」
「ありがとうございます。わたくしを妻にしてください。」
「え?本当?いいの?やったー!なんでも言ってみるもんだね。」
それからすぐに、結婚式が行われ、カトレーヌ・ベンジャミンとなった聖女様は、ますますお商売を頑張ります。
その姿を遠目で見て、帰って行くジャネット元公爵。もう自分の出番など少しもないことを悟り、黙って出て行こうとしたら、セバスチャンに呼び止められる。
「旦那様!旦那様では、あらせられませんか?カトレーヌお嬢様に会わずに出ていかれるのでございますか?」
「ここへ来たことは、他言無用で願いたい。今さらどの面下げて会えると思うか?」
「しかし……。」
「頼む。」
とそこへ、カトレーヌが通りがかり、
「あら、セバスチャンお客様でございますか?どうぞ、中へ。」
「カトレーヌ!」
「え?どなたでございますか?わたくし、昔のことは何一つ覚えておりませんの?セバスチャン、この方のことを教えてください。」
「お嬢様……おいたわしい。悲しい過去をお忘れになってしまわれたのですね……。」
「どうしたの?セバスチャン、大丈夫?」
父ジャネットは、その隙にそっと出て行く。忘れなければならないほどに悲しい過去を作ってしまった責任が自分にあることを知っているから。
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