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愛人に子供ができたからと
1リケジョ
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それは一本の電話から、始まる。
「こちら畠山丘第一中学校です。お嬢さんのかおりさんが雪崩に巻き込まれ意識不明の重体です。警察や消防から連絡があると思いますが、落ち着いて行動してください。」
山下美月は、電話口でぶっ倒れてしまう。昨年暮れに78歳の父が脳梗塞でたおれ、そのまま帰らぬ人となり、今度は一人娘のかおりが卒業前のスキー合宿で、雪崩に巻き込まれ意識不明になるとは、呪われているとしか思えない不幸続き。
美月には、心当たりがある。7歳年上の婿養子の旦那にオンナの影がある。そのオンナは旦那の半分の年齢の25歳で、旦那は会社で専務取締役をしているが、自分だけ秘書を採用したのである。
山下家は、祖父の代から小さな町工場を経営していて今や、大企業へと発展した会社がある。
美月は小さい頃から、家の工場の手伝いをして、大学も工学部を選んだいわゆるリケジョなのであるが、自分の会社に就職して、経営を学びながら製造ラインのほうにも在籍している。新製品の設計図、図面づくりなどお手の物である。
父もそんな美月に社長になってもらうべく、厳しく育てられたのであるが、婿養子はそれが面白くない。
それで父が亡くなった後、美月が社長に就任したのだが、何かと足を引っ張ることばかり。夫婦仲は冷え切り、そこへ今度の娘の雪崩騒ぎは、仕組まれたものとしか考えられない。
仕組むと言っても、相手は自然相手だから、どうやって?とも思うのが普通だが、理科系を卒業している美月からすれば、いとも簡単に人工的に雪崩ぐらい起こせるというもの。
社長業を専務の夫に任せ、自分は現地入りして安否確認に走る美月。
だが、その間に着々と美月を社長の座から引きずりおろす算段をしている旦那。自分の血を分けた娘が危篤だというのに、愛人兼秘書とイチャついているのだ。
現地へ飛んだ美月は娘の亡骸と対面するも、気丈にその場で荼毘に付し、遺骨として、一緒に帰宅したのだ。
娘の四十九日が近づいたころ、夜中にふと目が覚めると寝室は別のはずの旦那が、美月に馬乗りになっている。
「何しているの?どいてよ。重いから。」
旦那は、濡れた和紙を持っていて、美月の顔にかぶせようとしていたのだ。
「今、楽に死なせてやろうと思ったのに、さっさと俺に社長の座を譲れば、良かったのだ。」
「やめてよ。放して。警察に言うわよ!」
美月は、とっさに枕元に置いてあるスマホに手を伸ばし、110番する。それに気づかず、旦那は馬乗りのまま降りない。
「うう……。かおりもアナタが殺したの?」
「そうさ、だがあれは事故で処理された。他の生徒には悪いが、オリンポスヤマシタを俺のものにするには、かおりが邪魔なんだ。お前を殺して、俺はが社長になり、深雪と結婚するのさ、あいつの腹の中には俺の子がいる。」
「だったら、離婚で済む話でしょ?」
「離婚したら、俺には何も残らない。かおりとお前にくたばってもらわないと、俺には何もない。」
「25歳も年下の女になんて、すぐ捨てられることになるわよ。」
「うるさい!死ね。」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「いらっしゃいませ。ようこそ肉体ブティックへ。」
「は?」
旦那に首を絞められ、せき込んでいるところまでの記憶はあるが、気づいたら、知らないところを、パジャマを着たまま裸足で歩いている。不思議と足の裏は痛くない。
ここは、三途の川の一歩手前にある摩訶不思議な店、この店の前を通れる人は、前世、もっと幸せな人生を送れるはずだった人が、第三者の手により寿命を捻じ曲げられ人生を台無しにされた人の前にだけ出現する店舗なのである。
ブティックオーナーは、女神様である。神様直営の唯一の店がここ肉体ブティック。
このブティックの店内には、地球上に限らず異世界の様々な肉体があり、皆、訳アリで亡くなられた人間の肉体がクリーニング店のハンガーよろしく、ぶら下がっているのである。
その肉体を一つ選んで、リアルタイムで再び人生をやり直すことができる。
お代はたったの六文、異世界者ならば銅貨6枚(日本円換算で60円ほど)で人生のやり直しがきく店なのである。
復讐するもよし、もう二度と関わりたくないと思うのならそれでもよし、今度こそ幸せな人生が送れるというもの。
なぜ、こんな店があるかと言えば、天国が満員になるからである。非業の死を遂げた人全員を受け入れていると、天国が満員でどうにもならないから。それに不幸な死に方をした人の三途の川は知らない間に渡ってしまえるぐらい川幅が狭く、水深も2センチ程度なので、赤ん坊でもハイハイしながら渡ってしまうから、交通整理もままならないほど天国は混雑しているのである。
だから六文銭が浮いてしまう。渡し船に乗らなくても渡れてしまえるぐらいの川幅だから、六文銭が使われずに天国へ。天国はいっぱいになる。だから肉体ブティックで六文銭を使わせると、天国は満員にならず、魂は救済されるというもの。
「ご希望はありますか?なんなら異世界へも行けますが?最初の一週間はお試し期間で無料ですから、ぜひ、お気軽にお試しあれ。」
「わたし、死んだのですか?」
「そうよ。旦那に首を絞められて、殺されちゃったのよ。
「そうですか。1か月半ぐらい前に娘も来たと思うのですが?」
「ああ、あの娘ね。覚えているわ。15歳なのにしっかりした娘さんだったわね。」
「娘も転生したのでしょうか?」
「ええ、もちろんよ。それぞれお友達もみんな、『もう一度人生やり直そう』と元気いっぱいで旅立ったわ。どこへ行ったということは個人情報になるので、教えられないけどね。でも、会えばきっとわかるわ。肉親の血は水より濃いからね。」
「では、私も旅立ちたいです。娘がいる同じ世界でお願いします。」
「はい、待ってました。では、やはり経営系で行きましょうか?それともリケジョ系にしますか?」
「前世のように両方でお願いします。前世、製造系の社長をしていましたので、産業スパイとしては、もってこいです。」
「そうね。それでは、ちょっと違うかもしれないけど、これなんかどう?前世と同業他社で今回も社長令嬢なんだけど、リケジョなのよ。この人。経営センスもあるし、バッチリだと思うわよ。」
「あの……違うって何が?」
「ああ、ちょっと年齢が若いのよ。大学院の研究室に残りながら、研究もしつつ会社のお仕事もしつつ、経営補佐もしている。スーパーキャリアウーマンというのかしらね。まだ25歳と言う若さよ。ん?そう言えば、前世の愛人と同い年ね。ダメかなぁ?」
「いいえ、それでお願いします。」
「それでは、一週間のお試し付きだけど、イヤであれば、いつでも止められるから言ってね。え……と、今度のお名前は、杉本はるか25歳、独身、彼氏なし、本を読みながら歩いていて大学構内で角を曲がった途端に前から歩いてきた人とぶつかり、正面衝突ってとこね。そのまま意識不明、という設定で記憶を失くしている。ということです。」
女神様は、パチンと指を鳴らすと、意識が遠のいていく。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「大丈夫ですか?杉本さん!」
「……?……。」
「ああ、よかった。気が付かれましたね。こちらもボーっとして歩いていて、すみません。」
「あの……、ここはどこ?私は……誰?」
「!!!……まさか、記憶喪失?ど、ど、どうしよう……。」
ぶつかった人も同じ院生だったらしく、慌てふためいている。そして周りにいる人、誰彼を問わず、助けを求めている。
その大学は医学部があり、附属病院を併設している大学だったらしく、脳波は測られるわ。CTは撮られるわ。血液検査はされるわで、大変な騒ぎとなるが異常なし。ほっとけば、そのうち治るだろうという話になる。
割とアバウト?いい加減?
それもそのはず、リケジョは変人扱いされるものだから仕方がない。
いくら変人扱いでも、これでは人権無視だわ。
かおりとしての記憶はないが、美月としての記憶があるので憤慨している。
大学院から帰宅することも出来ず、家の人に迎えに来てもらうことになったのである。
「かおり、頭を打ったのか?大丈夫か?記憶がないというのは、本当か?」
「あの……どなたですか?」
「やっぱり……。病院の人が言ってた通りか。かおりは研究のし過ぎだから、神様が休養をくださったのだろう。会社のほうは、しばらく休め。」
「ひょっとして、お父さん!? 」
「早速、思い出してくれたか?」
美月はかぶりをふって、「何も。」
ガックリと肩を落とす父?と一緒に帰ることになる。
父らしき人は、帰りがけに「ラーメン食べて帰ろか?」
美月は、なんとなく父のことを思い出した父もよく二人だけになった時は、こうしてラーメンやギョーザ、焼き肉、寿司など「お母さんに内緒だぞ。」と連れて行ってくれたものだが、母にはそのことがお見通しだったことを思い出す。
美月は、黙って頷くと、父は破顔して、よろこび
「お母さんに内緒だぞ。」
カウンターで、並んでラーメンをすする。
ふと新製品について、アイデアが浮かんだので、
「お父さん、今度の新製品のことなんだけど、少し省エネ型で環境に優しいこういうのはどう?……で、……なの、……それを……コンパクトに……もう少し練り直すけど、今、アイデアを思いついたので。」
「相変わらず、仕事熱心だな。」
「後で、図面書くわ。」
「楽しみにしている。」
父娘と言うよりもエンジニア同士としての話が多い。それは、前世、美月の頃と全く同じことなので、自然と受け入れられる。持っている雰囲気も前世の父と同じだった。
帰宅して、早速図面を起こす。製図板がさすがにリケジョだけあり、部屋にあったのだ。このあたり前世美月と同じで、何か思いついたら、即、図面に起こす癖がついている。
次の日、父は会社で製造部の人間を集め、会議する。
はるかが書いた図面を前面に出し、これを作ることができるか?製造部長は、
「研磨次第だと思います。それとこの部分のネジを外注でできれば、ラインに乗せられるかと、採算もとれるのではないか?と思いますが、またお嬢さんのアイデアですか?」
「うん。我が家のエジソンでエンジンだからな。」
「こちら畠山丘第一中学校です。お嬢さんのかおりさんが雪崩に巻き込まれ意識不明の重体です。警察や消防から連絡があると思いますが、落ち着いて行動してください。」
山下美月は、電話口でぶっ倒れてしまう。昨年暮れに78歳の父が脳梗塞でたおれ、そのまま帰らぬ人となり、今度は一人娘のかおりが卒業前のスキー合宿で、雪崩に巻き込まれ意識不明になるとは、呪われているとしか思えない不幸続き。
美月には、心当たりがある。7歳年上の婿養子の旦那にオンナの影がある。そのオンナは旦那の半分の年齢の25歳で、旦那は会社で専務取締役をしているが、自分だけ秘書を採用したのである。
山下家は、祖父の代から小さな町工場を経営していて今や、大企業へと発展した会社がある。
美月は小さい頃から、家の工場の手伝いをして、大学も工学部を選んだいわゆるリケジョなのであるが、自分の会社に就職して、経営を学びながら製造ラインのほうにも在籍している。新製品の設計図、図面づくりなどお手の物である。
父もそんな美月に社長になってもらうべく、厳しく育てられたのであるが、婿養子はそれが面白くない。
それで父が亡くなった後、美月が社長に就任したのだが、何かと足を引っ張ることばかり。夫婦仲は冷え切り、そこへ今度の娘の雪崩騒ぎは、仕組まれたものとしか考えられない。
仕組むと言っても、相手は自然相手だから、どうやって?とも思うのが普通だが、理科系を卒業している美月からすれば、いとも簡単に人工的に雪崩ぐらい起こせるというもの。
社長業を専務の夫に任せ、自分は現地入りして安否確認に走る美月。
だが、その間に着々と美月を社長の座から引きずりおろす算段をしている旦那。自分の血を分けた娘が危篤だというのに、愛人兼秘書とイチャついているのだ。
現地へ飛んだ美月は娘の亡骸と対面するも、気丈にその場で荼毘に付し、遺骨として、一緒に帰宅したのだ。
娘の四十九日が近づいたころ、夜中にふと目が覚めると寝室は別のはずの旦那が、美月に馬乗りになっている。
「何しているの?どいてよ。重いから。」
旦那は、濡れた和紙を持っていて、美月の顔にかぶせようとしていたのだ。
「今、楽に死なせてやろうと思ったのに、さっさと俺に社長の座を譲れば、良かったのだ。」
「やめてよ。放して。警察に言うわよ!」
美月は、とっさに枕元に置いてあるスマホに手を伸ばし、110番する。それに気づかず、旦那は馬乗りのまま降りない。
「うう……。かおりもアナタが殺したの?」
「そうさ、だがあれは事故で処理された。他の生徒には悪いが、オリンポスヤマシタを俺のものにするには、かおりが邪魔なんだ。お前を殺して、俺はが社長になり、深雪と結婚するのさ、あいつの腹の中には俺の子がいる。」
「だったら、離婚で済む話でしょ?」
「離婚したら、俺には何も残らない。かおりとお前にくたばってもらわないと、俺には何もない。」
「25歳も年下の女になんて、すぐ捨てられることになるわよ。」
「うるさい!死ね。」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「いらっしゃいませ。ようこそ肉体ブティックへ。」
「は?」
旦那に首を絞められ、せき込んでいるところまでの記憶はあるが、気づいたら、知らないところを、パジャマを着たまま裸足で歩いている。不思議と足の裏は痛くない。
ここは、三途の川の一歩手前にある摩訶不思議な店、この店の前を通れる人は、前世、もっと幸せな人生を送れるはずだった人が、第三者の手により寿命を捻じ曲げられ人生を台無しにされた人の前にだけ出現する店舗なのである。
ブティックオーナーは、女神様である。神様直営の唯一の店がここ肉体ブティック。
このブティックの店内には、地球上に限らず異世界の様々な肉体があり、皆、訳アリで亡くなられた人間の肉体がクリーニング店のハンガーよろしく、ぶら下がっているのである。
その肉体を一つ選んで、リアルタイムで再び人生をやり直すことができる。
お代はたったの六文、異世界者ならば銅貨6枚(日本円換算で60円ほど)で人生のやり直しがきく店なのである。
復讐するもよし、もう二度と関わりたくないと思うのならそれでもよし、今度こそ幸せな人生が送れるというもの。
なぜ、こんな店があるかと言えば、天国が満員になるからである。非業の死を遂げた人全員を受け入れていると、天国が満員でどうにもならないから。それに不幸な死に方をした人の三途の川は知らない間に渡ってしまえるぐらい川幅が狭く、水深も2センチ程度なので、赤ん坊でもハイハイしながら渡ってしまうから、交通整理もままならないほど天国は混雑しているのである。
だから六文銭が浮いてしまう。渡し船に乗らなくても渡れてしまえるぐらいの川幅だから、六文銭が使われずに天国へ。天国はいっぱいになる。だから肉体ブティックで六文銭を使わせると、天国は満員にならず、魂は救済されるというもの。
「ご希望はありますか?なんなら異世界へも行けますが?最初の一週間はお試し期間で無料ですから、ぜひ、お気軽にお試しあれ。」
「わたし、死んだのですか?」
「そうよ。旦那に首を絞められて、殺されちゃったのよ。
「そうですか。1か月半ぐらい前に娘も来たと思うのですが?」
「ああ、あの娘ね。覚えているわ。15歳なのにしっかりした娘さんだったわね。」
「娘も転生したのでしょうか?」
「ええ、もちろんよ。それぞれお友達もみんな、『もう一度人生やり直そう』と元気いっぱいで旅立ったわ。どこへ行ったということは個人情報になるので、教えられないけどね。でも、会えばきっとわかるわ。肉親の血は水より濃いからね。」
「では、私も旅立ちたいです。娘がいる同じ世界でお願いします。」
「はい、待ってました。では、やはり経営系で行きましょうか?それともリケジョ系にしますか?」
「前世のように両方でお願いします。前世、製造系の社長をしていましたので、産業スパイとしては、もってこいです。」
「そうね。それでは、ちょっと違うかもしれないけど、これなんかどう?前世と同業他社で今回も社長令嬢なんだけど、リケジョなのよ。この人。経営センスもあるし、バッチリだと思うわよ。」
「あの……違うって何が?」
「ああ、ちょっと年齢が若いのよ。大学院の研究室に残りながら、研究もしつつ会社のお仕事もしつつ、経営補佐もしている。スーパーキャリアウーマンというのかしらね。まだ25歳と言う若さよ。ん?そう言えば、前世の愛人と同い年ね。ダメかなぁ?」
「いいえ、それでお願いします。」
「それでは、一週間のお試し付きだけど、イヤであれば、いつでも止められるから言ってね。え……と、今度のお名前は、杉本はるか25歳、独身、彼氏なし、本を読みながら歩いていて大学構内で角を曲がった途端に前から歩いてきた人とぶつかり、正面衝突ってとこね。そのまま意識不明、という設定で記憶を失くしている。ということです。」
女神様は、パチンと指を鳴らすと、意識が遠のいていく。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「大丈夫ですか?杉本さん!」
「……?……。」
「ああ、よかった。気が付かれましたね。こちらもボーっとして歩いていて、すみません。」
「あの……、ここはどこ?私は……誰?」
「!!!……まさか、記憶喪失?ど、ど、どうしよう……。」
ぶつかった人も同じ院生だったらしく、慌てふためいている。そして周りにいる人、誰彼を問わず、助けを求めている。
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割とアバウト?いい加減?
それもそのはず、リケジョは変人扱いされるものだから仕方がない。
いくら変人扱いでも、これでは人権無視だわ。
かおりとしての記憶はないが、美月としての記憶があるので憤慨している。
大学院から帰宅することも出来ず、家の人に迎えに来てもらうことになったのである。
「かおり、頭を打ったのか?大丈夫か?記憶がないというのは、本当か?」
「あの……どなたですか?」
「やっぱり……。病院の人が言ってた通りか。かおりは研究のし過ぎだから、神様が休養をくださったのだろう。会社のほうは、しばらく休め。」
「ひょっとして、お父さん!? 」
「早速、思い出してくれたか?」
美月はかぶりをふって、「何も。」
ガックリと肩を落とす父?と一緒に帰ることになる。
父らしき人は、帰りがけに「ラーメン食べて帰ろか?」
美月は、なんとなく父のことを思い出した父もよく二人だけになった時は、こうしてラーメンやギョーザ、焼き肉、寿司など「お母さんに内緒だぞ。」と連れて行ってくれたものだが、母にはそのことがお見通しだったことを思い出す。
美月は、黙って頷くと、父は破顔して、よろこび
「お母さんに内緒だぞ。」
カウンターで、並んでラーメンをすする。
ふと新製品について、アイデアが浮かんだので、
「お父さん、今度の新製品のことなんだけど、少し省エネ型で環境に優しいこういうのはどう?……で、……なの、……それを……コンパクトに……もう少し練り直すけど、今、アイデアを思いついたので。」
「相変わらず、仕事熱心だな。」
「後で、図面書くわ。」
「楽しみにしている。」
父娘と言うよりもエンジニア同士としての話が多い。それは、前世、美月の頃と全く同じことなので、自然と受け入れられる。持っている雰囲気も前世の父と同じだった。
帰宅して、早速図面を起こす。製図板がさすがにリケジョだけあり、部屋にあったのだ。このあたり前世美月と同じで、何か思いついたら、即、図面に起こす癖がついている。
次の日、父は会社で製造部の人間を集め、会議する。
はるかが書いた図面を前面に出し、これを作ることができるか?製造部長は、
「研磨次第だと思います。それとこの部分のネジを外注でできれば、ラインに乗せられるかと、採算もとれるのではないか?と思いますが、またお嬢さんのアイデアですか?」
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