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青の雀

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愛人に子供ができたからと

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 結局、ササキングのTOBは失敗に終わり、オリンポスヤマシタはスギベンコーポレーションの傘下となり、山下肇社長は、グループ会社の社長になる。

 前世美月のはるかから言えば、申し分がない結果となったのであるが、M&Aが成功したあたりから、父が行かず後家になるとやたら言い出したのである。

 そう言えば、前世も博士課程の修了が近づき出したら、途端に行かず後家になると言われ、無理やり会社の課長補佐をしていた康夫と結婚させられたのである。真面目だからという理由で。でも真面目ってムッツリスケベが多いよね。

 「お父さん、私、好きな人がいるの。今度連れてくるから、会ってよ。」

 先手を打って、父に言うと、父の目は彷徨っている。まだ心の準備ができていないみたい。もちろん、はるかに好きな男性などいない。そんなヒマなかったからね。だから、これから必死のパッチで探すつもり。

 「いや、まだ、はるかは若いから、急いで結婚などしなくていいよ。それにお相手は婿養子に来てくれることに承知しているのか?」

 「いいえ。まだ一人娘だとは、言っていないわ。」

 とたんに父の機嫌が良くなり、

 「だったら、大学院を卒業するまでは、家にいていい。結婚話はそれからでも、十分間に合うさ。」

 さっきまであれほど、早く結婚相手を見つけないと、行き遅れになると騒いでいたくせに、彼氏を連れてこられ、会う勇気がないのだ。

 大学院の研究室でため息をついているところを同僚の平岡洋一に目撃される。平岡洋一とは、以前、大学構内で正面衝突した相手の男性なのだが、あれ以来、洋一は何かとはるかの面倒を見てくれるようになったのである。

 「どうしたんですか?はるかさん、ため息を吐くと幸せが逃げていってしまいますよ。」

 「父から早く結婚しろと言われて、今度彼氏を連れてくると嘘を吐いてしまったのよ。そしたら、父が慌てて今すぐでなくてもいいと言い出してしまって。」

 「だったら、俺が彼氏になってあげるよ。はるかさん、俺と付き合ってよ。」

 「ええ?私、悪いんだけど面食いなのよね。」

 今まで、そんな風に思っていなかったけど、よくよく見ると、洋一さんはまぁまぁのイケメン?ぽくもない。

 「男は中身だよ。試してみる?」

 エイヤ!と何かの武道の形を披露する。やっぱり理系は変人ばかりだ。でも、カラダはいいかもしれない?

 カラダの良し悪しが夫婦生活の決め手となるわよね。

 「わかったわ。お試しで3か月間付き合うことにする。その間で、やっぱり無理と思ってしまったら、潔く身を引いてね。」

 「いいよ、これからどう?」

 「え?何が?」

 「本当に、はるかさんお嬢さんなんだな。これからデートするのは、どう?ってこと。」

 そのまま、二人は映画館へ行き、お茶して、感想を言い合う。

 久しぶりのデートというのも、悪くはない。前世美月にとっては、かれこれ25年ぶりぐらいのデートになる。

 はるかとしての記憶はないから、はるかとしてはわからない。

 しばらくは、顔を合わすたびに、デートを重ねる。そのうち二人は自然なカップルとなっていく。二人でいても、何もしゃべらなくても、沈黙の時間を共有できるようになったのだ。

 歩いていて手がふれると、自然と恋人繋ぎをする。一緒にお酒を飲みに行けば、背中から腰を抱かれ、引き寄せられる。時折、腰の手は太ももを撫で、やがて……おっぱいを触られるようになっても、そう嫌ではなくなる。むしろ、もっと触ってほしいぐらいになった時、キスされたのだ。

 洋一は女のあしらいに慣れていた?と思う。

 一度唇を交わす間柄になれば、後はもう、はるかは洋一と言う「まな板」に載せられたようなものも同然で、気分次第で触られまくるようになる。

 度重なる寸止めに、「どうしてほしいか、ちゃんと言ってごらん。」などと意地悪を言われるようになったのだ。

 洋一は、よく辛抱していると思うわ。これが前世の夫の康夫ならば、とっくに我慢できずに襲われているところなのだが、はるかも処女かもしれないし、恥ずかしくて、その先のことが言えない。

 ある時は、ラブホに連れ込まれたのだが、二人でAVを観ただけで、それ以上のことは何もない。はるかに触りもしない洋一。

 「そろそろ帰る?」

 「え?」

 「ひょっとして、何かを期待してた?」

 ぶるぶると首を横に振り、帰り支度をしていると、いきなり後ろから押さえつけられ、うつぶせ寝のまま、スカートをめくられタイツごと足首まで脱がされる。

 「俺と結婚してくれ。今日がお試し期間の3か月目だ。だから今日、味見させてもらう。それであまりはるかが美味しくないと思えば、この話は今日で終わり、明日からはまた元通り、ただの研究室での同僚となる。はるか、俺に抱かれたいかどうか選んでくれ。」

 「抱いて。」

 「はるかが不味かったら、捨てるぞ、それでもいいのか?」

 「はい、私も洋一さんが気に入らなければ、今日が最初で最後です。」

 「よく言った。」

 二人はそのまま深い関係となり、朝まで続く。はるかはやはり初めてだったが、美月の記憶がはるかを支える。

 美月の感覚からすれば、洋一は夫たるにしては、十分すぎるほどの合格点であったのだ。前世の夫とは比べ物にならないぐらい強い。

 はるかと洋一は、朝帰りのままスギベン社長宅へ帰り、そのまま結婚の挨拶をする。

 「お父さん、私の好きな人よ。彼とは朝まで一緒だったの。言っている意味がわかるでしょ?私たち愛し合っています。」

 「お父さん、お嬢さんをください。」

 父の前で、頭を下げる洋一さんに

 「一発殴らせろ!と言いたいところだが、娘をよろしく頼む。」

 父もまた、洋一さんに頭を下げてくれたのである。

 はるかと洋一さんは、院生同士で学生結婚することになる。はるかは、スギベンから給料をもらっているので生活費には困らないが、洋一さんもまたスギベンに就職することになり、二人そろって、研究室と会社と家をトライアングルに行き来することになる。

 新居は、実家からスープの冷めない距離、最初はマスオさんでもいいと、洋一さんは言っていたけど、それでははるかが思う存分、洋一さんに甘えられないから、近くに家を借りた。

 子供でも出来たら、実家に同居するかもしれないけど、今はラブラブ新婚生活を送りたい。

 はるかの論文は博士号を取得し、レジェンド山下美月と並ぶ存在となる。
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