ようこそ肉体ブティックへ~肉体は魂の容れ物、滅んでも新しい肉体で一発逆転人生をどうぞ

青の雀

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ただの貧血で女医から嫉妬され殺される

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 合コンは無事?終了したのだけど、東大の藤村君が友里恵に急接近することになり、石橋君は気が気でない。

 藤村君とは、親衛隊としての紳士協定をしていない。だから、他の親衛隊メンバーから苦情が石橋のところへ来る。

 「お前が、友里恵ちゃんから店内へ。という誘いを断ればこんなことにならなかったんだぞ。」

 「そんなこと言ったって。友里恵ちゃんからの誘いを断れるか!っつうの。」

 仲良し幼馴染の親衛隊は、ほとんど喧嘩状態。

 当の友里恵は、確かに藤村君とは、一番喋ったかもしれないけど、興味はない。ただ女子高からのエスカレーターで男の子とあまり喋った経験がないから、物珍しさからくる興味程度のものだったのだ。

 前世も同い年の男の子とのお喋りは禁止されていたから、なおさらのこと。

 前世の事務所は今頃どうしているのかな。きっと別の女の子に似たようなことを言っているのかもしれない。

 もい、前世のように自分のルックスだけで、お金儲けをしたいとは思わない。中身で勝負したい。そのためには、勉強あるのみだけど、なかなか覚えられないわ。

 気分転換に、また合コンの誘いが来たけど、断わる。あんなの気分転換にならない。この前行った合コンでは、同級生の女子大生の何人かは、東大生にお持ち帰りされたみたいだけど、結婚までの道はなかなか遠い。

 だって、東大生って、ほとんど奇人変人の類が多いから、とても意気投合するなんて、思えない!

 結局のところ、打算なのよね。そういえば、ウチのパパとママ、どこで知り合ったのか知らない。

 友里恵がいくら聞いても教えてくれない。両親のなれそめってそんなにロマンティックだったのかしらね。

 実のところは、なんてことない中学高校の同級生で、最初、ママがパパに一目惚れしてバレンタインデーにチョコレートを渡したところからの付き合いらしい。

 バレンタインデーでのチョコレートを渡したからといって、すぐそれに飛びつくってことは、当時はまだ初心だったのね。

 あんなもの恋愛でも何でもない、ただのお遊びだということがわかっていない。

 もう最近では、ママはパパのことを腐れ縁、宿六呼びしているのだから、それが本当のところらしいわ。

 友里恵は中学高校と白薔薇学園で過ごしたから、男子生徒と縁がない。今はエスカレーターで白薔薇女子大だから、そろそろ焦ったほうがいいのかもしれないけど、なんせ前世の死因がアレだから、ちょっと男性恐怖症なところがある。

 友里恵は3年生に進級すると、やはり蛙の子は蛙で、公認会計士の2次試験を一発で合格したのである。税理士も受けようかと思ったけど、3次試験が通れば、税理士資格をもらえるのであるから、無理して通る必要はないが、法人税と所得税、相続税の知識があったほうがいいからとあえて、受験参考書を買って、勉強したのである。

 卒業後研修のために受け入れ監査法人も決まり、就活する気はない。

 そのつもりでいたのだが、周りが急に慌ただしくなり、黒いリクルートスーツにリクルートバッグで大学へ来るようになると、なんとなくダメ元で国家公務員試験を受けてみることにしたのである。

 だって、友里恵はリクルートスーツを持っていない。銀行支店長の父に頼めば、縁故でいくらでもいい会社に就職できるけど、監査法人に内定をもらっている以上、むやみに就活はできない。

 と言うことから鑑みれば、おのずと公務員試験に走るのは、無理はない。

 女神様が言っていた「もっと上を目指せ」と言うことは、ひょっとしたら公務員試験のことだったのかも?と思えるようになってきたのだ。それぐらい難関試験で大変な勉強量を必要とする。

 友里恵は見事、上級試験にパスし本日が入省式の日である。監査法人の内定はいったんお断りすることにしたのであるが、監査法人はそれを快諾してくれたのだ。

 東大卒ではないから、キャリア官僚ではない。が、上級職ではある。

 友里恵の美貌は、省内で噂になるほど美しい。その噂は遠く海外の王室まで届く、友里恵の才色健美ぶりを一目見ようと、省庁の受付に列をなされるほどの人気ぶりである。

 本来は上級職として入省すれば、全国の所轄税務署をまわり署長職を拝命するところが常ではあるが、新入上級職があまりの美貌でおいそれと異動させられない現実がある。

 なぜなら外国の王室ばかりかニッポンの皇室も目をつけ始めたから、皇太子妃や皇后はなり手がありそうでない。窮屈な生活を強いられるから。各宮家の妃殿下からのいじめが待っているようなところへ行きたがる人は少ない。

 中には、大学教授の娘で玉の輿を狙うお嬢さんもいるにはいるみたいだけどね。

 そう言う人は何があろうとへっちゃらなんだろうな。厚顔だから、普通の人ならノイローゼにでもなるところを神経が太いからなんてこともない。。

 大蔵官僚には石橋和樹君と藤村茂樹君が同期入省としている。あちらは東大卒なので、本物のキャリア官僚ではある。

 もうすでに石橋君は、名古屋国税局の管内に赴任し、藤村君も福岡国税局の管内に赴任している。

 まぁ、あっちは正真正銘のキャリア官僚だから、友里恵とは比べ物にならないぐらい将来を嘱望されている身だもの。

 別に友里恵が、美人以外取り柄がないわけではない。ちゃんと正規のルートで上級試験に合格したのだから、ただ最近は、マスコミに美人過ぎる官僚として追いかけまわされているのだ。

 マスコミはちょっとおっぱいが大きいだけでもデカメロンとか、スイカップなどと勝手に名付けて一般人を追いかけまわすところがあり、それだけ芸能人に魅力がなくなってきているということだろうか。

 石橋君は官庁が休みの日に東京に帰り、友里恵の親衛隊をやっているぐらいだ。

 まだ親衛隊は健在なのである。親衛隊メンバーは、皆、友里恵と小学校の頃の同級生だから、みんな大学を卒業しているが、中には一浪して、まだ大学生をやっているものがいる。

 親の手伝いをして労働時間に制約を受けないものなどが、親衛隊を務めていてくれている。

 友里恵は玉の輿を狙うより、小さい頃から友里恵のことを守ってくれている親衛隊の中の誰かと結婚するつもりでいるが、そのことは誰にも言っていない。

 誰かひとりに決められないから、みんないい子だから。みんな紳士的で優しい。同級生との結婚だなんて、まるでパパとママみたいだけど、これも遺伝のせいか?

 だから藤村君とだなんて、1000パーセントありえない!ただの同期入省と言うだけ、それなら石橋君は、というと……彼がやっぱり結婚相手としては一番近い存在かもしれない。

 ただ和樹君には、そのことを一言も言っていない。だって、面と向かっては照れるもん。

 そんな時、TV出演の依頼がついに来た。友里恵直接に来たものなら、全部お断りをしているのだが、大臣からの指名で大臣とともにTVに出るものだから、いわば公務としての出演となる。

 友里恵は初めてのTV出演は不安で仕方がない。同期入省の石橋和樹と共に行くのなら、と渋々承諾したのである。

 TV局では、大臣とは別に楽屋をあてがわれた。石橋和樹と同じ部屋だったけど、別に着替えるわけではないので、かまわない。

 「ねぇ、友里恵ちゃん、どうして、俺を指名してくれたの?藤村も同期だよ。」

 「だって、小さい頃からずっと一緒にいてくれたでしょ?それに……。」

 「それに?」

 楽屋の扉がノックされ、「リハーサルです。」の声がかかる。

 「帰りに言うわ。すぐ名古屋に戻るわけではないのでしょ?」

 「今夜は、実家に泊るよ。おふくろがうるさくってさ。」

 リハーサルの後、本番が始まる。

 大蔵行政の話になるのかと思えば、リハーサルではなかった大臣に腰を触られながらの友里恵にばかり、質問される。

 「西園寺さん、ご趣味は?休みの時に何をされていますか?血液型は?」

 なんで?こんなことに応えなければならないの?

 「個人的なご質問には答えかねます。」

 MCは「そんな堅いこと言わなくていいじゃないですか?視聴者の皆さんが知りたいことを聞いているのだから。」

 「わたくしの話よりも大臣に今後の政策などを聞かれては?」

 チラリと大臣のほうを見ると、

 「君、いいヒップしているね。スリーサイズ教えてくれる?」

 「やめてください!大蔵行政の話をされるから補助者として、我々がいるのです。」

 和樹君が声を荒げてくれた。

 「なんだね、君は無礼な?」

 「……西園寺さんが嫌がっているではありませんか?セクハラ発言は控えてください。」

 「木っ端役人風情が儂を誰だと思っている。こいつをつまみ出せ!」

 「では、わたくしも退席させていただきます。」

 席を立とうとする友里恵の腕を掴んで抱き寄せようとしたところ、石橋君がすかさず大臣との間に入ってくれる。

 「なんなんだ!お前は!」

 大臣と秘書が、石橋君に殴りかかって、引き離そうとしている。

 「わたくしの婚約者です。」

 友里恵の一言に、MCも他のタレントも大臣も、そして婚約者呼びされた石橋君も茫然としている。

 「「「「「「「「「「え?ええっ!えええーっ!」」」」」」」」」」

 その後は、静まり返った。

 その場をなんとか取り直そうと、MCは

 「そりゃ、大臣が悪いですよ。婚約者がいる女性に婚約者の前でおさわりするなど、セクハラしたらダメですよ。婚約者の男性が怒って当然です。」

 大臣は、バツが悪そうに「冗談だから」と

 結局、収録はボツになった。

 そして、西園寺友里恵、石橋和樹は大蔵省からお咎めなしとなる。

 帰り道、お互い無言のままで帰路についている。沈黙を破ったのは石橋和樹。

 「友里恵ちゃん、さっき……、なんで?俺を救うために嘘をついたの?」

 「うん。それもあるけど。あのね。和樹君のこと、前から好きだったの。できれば結婚してください。」

 「!」

 「だめ?」

 上目づかいで見上げる友里恵をいきなり抱きしめ、唇を奪う。

 「ダメなわけないだろ。愛しているよ。ありがとう。」

 パシャパシャパシャ!シャッター音が響くが気にしない。そのまま和樹君の実家へ行き、結婚の報告をする。そして、西園寺家まで送ってもらい、和樹君が両親に頭を下げ

 「友里恵さんをください。」

 友里恵の両親はニコニコ顔で

 「いつか、こんな日が来ると思っていたよ。」

 二人はしばらく名古屋と東京を行ったり来たりする別居婚になるだろう。もう親衛隊も解散である。

 親衛隊の面々も、相手が和樹なら仕方がないと思っているのか、皆、祝福してくれたので嬉しい。

 同期の藤村君は地団太踏んで悔しがったとか?

 美人過ぎる官僚の路上キスは、その時だけは騒がれたが、相手が婚約者だとわかり次第に騒ぎはおさまる。

 大蔵省も二人が結婚するにあたり、同じ赴任地にしてくれたので、当面の別居婚はなしと決まる。

 前世はそれなりに華やかな世界に身を置いていたが、今世は地味ながらも着実な幸せを掴むことになったことは、まぎれもなく女神様の肉体ブティックのおかげと言えよう。

 そして東京で行われた結婚式には、大臣をはじめとするたくさんのご来賓が集まり、盛大な式典、披露宴が執り行われることになったのだが、大臣がまたしても酒に酔った挙句、友里恵の母に「美人だ。愛人にならないか?」と口説き、ひと悶着あったが、オフレコのことになる。

 その場に女神様も同席していたのに、女神様には目もくれず友里恵の母にばかり口説くので、女神様は少々ふくれっ面であったが、参列者全員に祝福の雨を降らし、事なきを得る。
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