ようこそ肉体ブティックへ~肉体は魂の容れ物、滅んでも新しい肉体で一発逆転人生をどうぞ

青の雀

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偽聖女様を虐めたと成敗される

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 聖女様に覚醒した途端、殺されてしまったキャロライン・ルビンスタインは迷いに迷った挙句、異世界の神の勧めもあり、別の異世界に転生することになったのであるが、元の世界ではゴリラの王子様がいるから、ゴリラと永遠の愛など無理!

 本当はあのブティック内にあった黒髪に平べったい顔をしている女性として、転生したかったけど、文明が発達しているところらしいから、すぐには無理とのことで、同じような世界へ行くことになったのである。

 今度も公爵令嬢としてだが、双子姉が王太子妃となっているので、まだ婚約者はいない設定だから、その分気楽である。

 双子の姉とは、二卵性なものらしく、あまり似ていない。今回は金髪金眼で、どうやら双子の姉に嫉妬されて階段から突き落とされて死んだらしいが、記憶を失ったということでまたこのカラダに転生してきたらしい。

 でも1週間のお試し期間中だから、どうしても合わないと思った場合は、返品できるらしい。

 もうすでに、合わないと思っている。なぜなら双子の姉と思われる人物からものすごい形相で睨まれているから。

 「アンタのせいで、わたくしのお腹の赤ちゃんが死んだのよ。返してよ!わたくしの赤ちゃんを返しなさいよ!」

 そんなこと言われてもね、女神様の話によれば、双子姉が妹を突き飛ばし、殺そうとしたくせに。はずみでご自分も落ちてしまったのかしらね。

 「やめないか!エスメラルダ、階段から落ちたのは、ミランダのせいではなかろう。ミランダが下だったから、クッションになって、エスメラルダが助かった。そうだろう?」

 誰?この人?

 わたくしのことをミランダと呼んでいるから?義兄?かしら?

 キャロラインと呼ばれて18年だから、まだミランダと呼ばれても慣れない。

 エスメラルダと呼ばれた女性はますます目を吊り上げて、絶叫するかのように叫ぶ。

 「あなたが、そんなんだからミランダがいい気になるのよ!ミランダなんて、こうしてやるわ!」

 隠し持っていた剣で胸を一突きにされる。

 え?転生したばかりなのに、もう殺されてしまうの?

 またもや地響きがして、目の前が真っ暗になる。また、女神様にお会いすることができるかしら?

 「聖女様を殺したのは誰だ?」

 「え?聖女?ミランダが聖女様のはずはございませんわ。」

 「お前が殺したのか?」

 「ええ、憎いミランダをやっと殺すことができましたわ。清々しましてよ。」

 「たわけ者!異世界から、聖女様に頼んで来ていただいたものを貴様が殺したというのか?実の妹を殺して、清々しただと!あれは、実の妹のミランダではない!ミランダの姿を借りた聖女様だったというのに。お前はこの姿に変えてやろう。ドブネズミだ!一生暗い穴倉の中で怯えながら暮らすがよい。」

 義兄に向き直り、

 「貴様がしっかりせぬから、聖女様をまたしても失ってしまったのだ。貴様も同罪だから、貴様はこの姿に変えてやろう。ゴキブリだ。せいぜい前の嫁さんに食われるなよ!ガハハ。また女神から大目玉を食うことになろうとは。トホホ。」



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 「ようこそ肉体ブティックへ。」

 女神様はキャロラインの姿を見るなり、驚いて、立ち尽くされている。

 「え?また、戻ってきちゃったの?」

 「そうみたいです。エスメラルダに胸を一突きにされて。」

 「2回も殺されて、ここへ来る人も珍しいわね。それも転生して、1日も経たないうちに。」

 ああ、やっぱりそうなんだ。そうかもしれないとは思ったけど。自分から合わなくてお試し期間中に返品を申し出てくる人は過去にもあったそうだけど、いきなり転生してすぐに殺されるっていうのは、そうない。

 ミランダとエスメラルダの間に何があったんだろう?きっと、前世、前々世、敵同士とか?そんな間柄だったのだろうか?

 他人の前世なんてわからない。自分の前世すら、キャロラインの記憶しかないから、その前など、わからないのと同じである。

 仕方なく、次のカラダが決まるまでの間、キャロラインのカラダに戻ることにしたのである。だって、このカラダが一番しっくりいく。

 サイズ感と言うべきか?やはり自分の元のカラダがピッタリおさまるのは仕方がない。

 キャロライン姿でウロチョロしていると異世界の神様も肉体ブティックの女神様も

 「「やっぱり、その姿が一番似合うわね。」」

 納得されるものの、元の世界に戻る気はない。ゴリラの王子様のお守りなんて、まっぴらごめんだから。

 異世界の神様が妙な提案をしてくる。

 あのゴリラの王様と王子様は、放っておけば隣国の人間に戦争を仕掛けられ、滅びるのだが、そもそもゴリラの王様と王子様の言うことなど人間の家臣が利くはずがない。

 そこでルビンスタイン公爵があの国を乗っ取るということでは、どうだろうか?

 ルビンスタイン家は聖女様を輩出した家だから、今後、孫やひ孫の代に聖女さまが出てもおかしくはない。

 キャロライン聖女様は、あの国の聖女として、復活する。

 え?それって、このまま生き返るということ?

 そこが思案のしどころ

 それって、あまりにも怖くない?死んだ人間が生き返るなんて。だいたい、死後二日は経っていると思うんだけど。。。

 ルビンスタイン公爵の娘として、もう一度生きるのはどうか?と言うことが問われる。

 いやいや、それってどういうこと?

 ルビンスタインの娘として聖女様が現れたなら、間違いなくルビンスタインの転嫁になるというもの。うん、そこまではわかるんだけど……つまり?

 キャロラインとしてではなく、ルビンスタインには、もう一人娘がいたという設定を無理やり作り、その娘としてもう一度生きる。しかるべき婿養子を取り、ルビンスタイン国を盛り立ててる人生を送る。

 はぁ、なるほどね。

 キャロラインのカラダのまま、キャロラインの双子の妹として聖女に覚醒したというように人々の記憶を操作するということで、解決できそうに。

 はぁ、なるほどね。

 そういう手がありましたか?

 そうなると、二人同時に聖女様に覚醒し、1人は偽聖女を虐めた冤罪で成敗され、1人は風邪で卒業記念パーティを欠席したがために、無事生き残ったということになるそうだ。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 「ん……、……。」

 目を覚ますとそこは紛れもなく前世キャロラインの部屋で寝ていた。

 「やっとお目覚めになられましたか?キャサリンお嬢様。」

 見ると、あの日を最後に見た懐かしい侍女のアグネス、結婚間近でもうすぐ花嫁姿を観られることを待ち望んでいたアグネスは変わらぬ笑顔を向けてくれる。

 「お城では大変な騒ぎになっておりますのよ。お姉さまのキャロライン様が偽物の聖女を虐めた冤罪で殺されてから、神罰が下り、その場にいた全員がゴリラの姿に変えられてしまって、キャサリン様はキャロライン様の最後を見てしまわれて、そのショックから気を失っておいででしたから。」

 そんな話になっているのか。

 「同時にキャサリン様も聖女様に覚醒されて、不思議ですわよね。双子のお嬢様がそろって、聖女様になられるとは。双子と言うのは前世からの縁で、そういうものなのでございましょうか。」

 双子姉妹と言ってもエスメラルダとミランダのような姉妹もいる。

 前世キャロラインには、キャサリンなどと言う双子の妹はなかったのだが、苦し紛れに異世界の神様が作られたのであろう。

 前世キャロラインのキャサリンはアグネスの話に黙って耳を傾ける。

 そこへお母様が慌ただしく入ってくるなり、キャサリンを抱きしめる。

 ずいぶんお元気そうで何より。

 そしてキャサリンの耳元でそっと

 「わかっておりますとも、あなたがキャロラインちゃんだってこと。お母様はお見通しよ。」

 クスリと笑って、キャサリンから離れるお母様。

 母親とはそういうものなのかもしれない。いくら異世界の神様が記憶を塗り替えたとしても、母親の目だけはごまかしきれない。

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