ようこそ肉体ブティックへ~肉体は魂の容れ物、滅んでも新しい肉体で一発逆転人生をどうぞ

青の雀

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偽聖女様を虐めたと成敗される

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 キャサリンが目覚めてから、父に卒業パーティの会場に結界を張るように頼まれる。

 「キャサリン、病み上がりですまないのだけど卒業パーティが行われた会場に結界を張り、ゴキブリやゴリラが外に出られないようにしてくれるかい?」

 「お安い御用ですわ。お父様。」

 今までは、見張りの立ち番を置き、会場の扉を封鎖していたのだが、いつまでもそうしているわけにもいかないから。

 本当は、キャサリンが結界を張るまでもなく異世界の神様が結界を張り、誰もゴキブリやゴリラが外へ出られないようにしてくださっているのだが、一般の人間はそんなこと知らないから、扉を封鎖していたのだ。

 異世界の神様の結界の上にさらにキャサリンが結界を張る。

 これで神罰により姿を変身させられたものは、金輪際白日のもとへは出られない。

 餓死しても、すぐ元のゴリラならゴリラへ、ゴキブリはゴキブリにしか生まれ変われない。それも卵や赤ん坊時代を割愛して、いきなり大人として転生する。

 会場はまるで地獄絵図のよう。

 結婚するはずだったカップルは、人目?ゴリラ目もはばからず、ずっとイチャイチャしている。最初はお互いショックで、そっぽを向き合っていたけど、そのうち本能に勝てず、一組のカップルがイチャつき始めたら、もうそこらじゅうで腰を動かしている。果てることない欲望でメスは辟易しているにもかかわらず逃げられない。

 国王陛下は、こうなったのは、我が息子の愚行が原因とばかりに、ロビンソンを殴りつけても体力的には、若い息子に勝てず、すぐ殺されてしまうが、再びすぐに復活するため、国王陛下の近衛兵とロビンソンの護衛騎士との間でいざこざというより、殺し合いが続く。

偽聖女様のゴキブリはというと、チョンガーのゴリラから狩られている。

 「もう、イヤ!こんなことなら聖女なんて名乗らなかったら良かった。でもロビンソン様が見た目だけかっこよくて、つい……、その後引っ込みがつかなくなっただけ。何もゴキブリに姿を変えなくてもいいじゃない!」

 大声を張り上げるたびにすぐ見つかり、踏みつぶされるものの言わずにはおれない。

 「神様お願いです!もう二度と嘘はつきません。だからゴキブリ以外の何か……人間でも?きゃぁっ!」

 言い終わるや否や、また踏みつぶされる。

 「その願い聞き届けてやろう!」

 偽聖女様のゴキブリは、人間の姿になったのだが、生まれたままの格好で、ウエディングドレスは、既に踏みちゃちゃくれてドロドロになっているから、それでも裸よりマシとばかりに、ウエディングドレスをめざして走る。

 偽聖女様が人間に戻れたことで、願えば叶うかも?との思いで、口々に他のゴリラが跪いて願う。

 しかし、偽聖女様がウエディングドレスに到達する前に、他のゴリラに押し倒され、犯され食いちぎられる姿を見て、皆、やめる。

 ゴリラは雑食だから、なんでも食べる。

 偽聖女は爪を剥がれ、髪の毛をむしられ手足を食いちぎられ、胴体だけになってもなお犯し続けられ、飽きたら首を噛んで殺される。

 その地獄が永遠と繰り返されるので、悲鳴を上げる暇もない。

 偽聖女様のせいで、聖女様が殺されたのだから、神様がそう簡単に許してはくれない。












 ゴリラの国王陛下を閉じ込めたことにより、王城は無血開城のごとくすんなり明け渡され、王妃様はご実家に戻られることになったのだ。

 お付きの侍女や今まで働いていた騎士や庭師、料理長、事務官はそのまま王城で雇われることになる。

 聖女様の父であるルビンスタイン公爵が王城へ入っても、誰も文句を言われず、そのまま王城の主に収まる。

 戴冠式は、神様主導で行われ、世界各国から大勢の招待客がみえる。

 あの病弱だった公爵夫人も、キャロラインの聖魔法と女神様のおかげで、すっかり健康体になり、そのまま王妃様となる。

 前世キャロラインのキャサリンは、王女殿下に就任。世界各地から聖女様と縁談を勧めようとわんさか贈り物が届く。

 いっそのこと、婿探しをするため、集団お見合いをしたらどうかと家臣から提案があり、実行することになった。

 今日がお見合い当日、キャサリン対100人の王子様が一堂に集まる。中には、本当に王子?と疑いたくなるようなハゲまでいる。

 それぞれの国の紋章をかたどったエンブレムを手に持ち、お見合いが始まる。

 お見合いは立食形式で、キャサリンが各テーブルを回るという形にしたのだけど、キャサリンが行く前に、殺到し、身動きが取れない。

 うまくいけば、聖女様を嫁にでき、連れ帰ることができるかもしれないからと言う目論見がある。

 だからどこの国の王子様も必死になる。

 聖女様がその国に一人いらっしゃれば、平和と繁栄が約束され、安泰となるから。

 そして聖女様を嫁にできた王は、開国以来の賢王と呼ばれる。

 お見合い相手の中でひときわしつこくキャサリンに話しかけているのがクリストファーという隣国サンダーバードの王子様、いい加減キャサリンもうんざりした調子で相槌を打ち聞いているフリをしているが、クリストファーはいっこうにそれに気づかない。

 鈍感男はそれだけでNGです。

 それを嗜めているのが、ルビンスタイン国の反対側に当たる隣国のエリオット・クライン王子殿下

 一見して良さそうに見えるが、グチグチとお小言を言いながらクリストファーを嗜める姿に辟易する。

 「クリストファーいい加減にしないか?キャサリン様がお疲れだろう。お前ひとりだけのお見合いではないのだぞ!だいたい、お前は学園にいる時から、いつも話が長い。いつだったか?授業中に質問した他の生徒に対して、いつまでも批判がましいことを言ったではないか?おかげで、そのことに深く議論するはずがまたお前の独壇場となってしまったではないか。それに……(省略)……。」

 エリオット様も相当話が長い。

 どうやら話の内容からすると、ご学友?みたい。

 公爵家からの執事が見かねて、キャサリンに耳打ちして

 「ちょっと失礼。」

 言うように指図してくれて、その場を離れることができた。

 それを追いかけようとする二人の王子様に、執事が何やら言って、やっと解放されたことは、嬉しい。

 控室に戻り、ドレスを着替えて、今度は二人から遠く離れた入り口を目指し、そこから庭園に入る。

 一番、近くにいたテーブルに所在なさげに座っていらっしゃった男性に声をかけると、相手は驚いたように目を見開き

 「キャサリン王女殿下が私などに声をかけてくださるとは恐悦至極に存じます。」

 その男性は汗を拭き拭き、慌てて立ち上がったら、意外と背が高い。

 「もっといろんな方とお話ししたかったのに、なかなか抜け出せなくてごめんなさい。」

 「仕方ありませんよ。誰でも聖女様とお話ししたいのですから。申し遅れました私はリチャード・ブルーフォード、第2王子をしております。王位継承権は……兄が病弱で、まだ決まっていません。周囲はとやかく言いますが、私にとっては自慢の兄です。」

 「まぁ!それは何かとご心配ですわね。もし、よろしければわたくしが診に行ってさしあげましょうか?」

 「え?いいのですか?光栄です。兄もきっと喜びます。ぜひ、お願いします。」

 話はトントン拍子に進み、今からすぐ行くことになったのであるが……。ブルーフォードへは行ったことがない。行ったことがない国へはイメージできないから行けない。

 こういう時は、神様にお願いしたら、何とかなるかも?

 何と言っても、1度目の転生の時、転生してすぐ殺されてしまったから、異世界の神様から困ったことがあれば、いつでも先に言ってくれたらいいという「お墨付き」をもらったのである。

肉体ブティックの女神様も同じことを言ってくれたけど、あちらはお忙しいかも?という遠慮がある。

 キャロラインが死んだときに、病弱な母を心配して領地へ飛んだ時、丈夫な身体に代えてくれた経緯がある。これ以上、迷惑はかけられないという思いから頼みにくい。

 庭の一隅に跪き、異世界の神様を呼ぶ。

 すぐに現れてくれるが、お食事の最中だったらしく口の周りに白いものが付いている。それをキャサリンは、持っていたハンカチで嫌がりもせずそっとぬぐう。

 「おお!これは聖女様にこんなことまでしていただいては、何なりと望みを言うがよい。」

 「実は、リチャード様のお兄様が病弱らしくて、わたくし一度もブルーフォード国へ行ったことがございませんから、診たてに行きたくても行けません。」

 「何?これから行きたいというのか?今はお見合いの最中ではないか?他の王子をほったらかしにして行くというのか?」

 そう言われたら、何かものすごく失礼なことをしている気分になる。

 「では、お見合いが終わったら……にします。」

 「がはは。それがよかろう。見合いが終われば、自室でそのリチャードとともに待っておれ。」

 言い残して、すぐに消えてしまった。

 「リチャード様、そういうことで、後でわたくしのお部屋へ来てくださいますか?」

 「もちろんです。必ずお伺いします。」

 そしてキャサリンは、二人のやり取りをうらやまし気に見ていた他のテーブルへと移る。

 そしてまた自己紹介をして、歓談の輪に入り、ふとリチャード様のほうを見たら、もう先ほどまで話していたテーブルにはいらっしゃらなくなり、どこへ行かれたかは不明。

 リチャードは神に呼ばれていたのだ。

 「聖女様を慈しみ、守る覚悟はできているか?」

 「はい。神に誓って、愛し守り抜きます。」

 「よかろう。では兄上の命を助けてやるが、政局になる可能性があるぞ。その時に必ず、聖女様の盾となれ!よいな?」

 「はっ!」

 お見合いは無事、終了し、自室に戻ろうと部屋の前まで来たら、もうリチャード様が花束を抱え待っていらっしゃった。

 なぜだかその姿を見た途端、胸の奥がキュンとなってしまう。

 まだ出会ったばかりだというのに、もう恋に落ちてしまったのだろうか?リチャード様のことを何も知らないというのに。

 モジモジしながら、リチャード様からの花束を受け取り、すぐに侍女のアグネスに渡す。アグネスはニヤニヤしながら、その花束を受け取り、花瓶に生ける。

 自室に戻り、お茶が出される前、着替える暇もなく異世界の神様がやってきて

 「これからここへ兄上を呼び、この部屋で治療を行うとする。」

 「へ?」

 「聖女様をブルーフォードへお連れしてもいいのだが、すぐその場で戦になるやもしれぬ。第1王子派と第2王子派のいざこざに巻き込まれると困るからな。なにリチャードが守ってくれるとは思うが、念には念を入れて、だな。」

 「わかりました。こちらに兄上様をお連れくださいませ。」

 「うむ。そう言うと思ってな、既に異空間で待ってもらっておるわい。」

 リチャード様の兄上は、すぐ異空間の中から現れた。リチャード様とよく似ていらっしゃる顔立ちだが、顔色が悪く痩せている。

 「兄上!」

 リチャード様の呼びかけに薄目を開けられる。

 「リチャ……ド?」

 「兄上!今、聖女様が兄上の病を治してくださいます。」

 「聖女様……かた、じけ……な……い。」

 もうそれは聖魔法を使う前に、兄上様の病が毒によりものだということがすぐにわかる。

 ブルーフォードで治せば、リチャード様の一派が毒殺しようとしたという疑いをかけられる。今さらながら、神様の言っていた意味がわかり、その洞察力に敬服するばかりなのだ。

 兄上様の治療は、まず解毒から始める。肝臓に蓄積された解毒、小腸や他の内臓と神経、血管の中も解毒を施す。

 みるみる兄上様の顔色がよくなる。そして、まともに口が利けるようになる。

 「聖女様、なんだかカラダがポカポカと温かくなりました。それにカラダの中から力が漲ってくる感じがします。」

 「気のせいです。」と言いたいところをグッと我慢し、静かに微笑む。

 まだまだ予断を許さないから。一応の解毒は終わったものの、兄上様のカラダに手をかざすとまだピリピリ感が取れない。まだ何かがある。それが何かはわからない。

 異世界の神様は、心配そうな顔をなさって

 「ウチのカミさん呼んでこようか?カミさんは、元人間の聖女様だったから、少しは役立てると思う。」

 そう覚えていらっしゃるかしら?母親が恋敵のところで前世王女殿下が異世界の聖女様になるという設定でエリザベス聖女様がラジャードという神様と結婚するという話。

 だが、キャサリンはその申し出をキッパリ断る。こと治療にかけては、聖女様よりもっと適任者がいる。

 肉体ブティックの女神様のこと。あの方ならキャロラインの母の病気もたちどころに治してくださり、以前よりも丈夫な病気知らずの健康なカラダにしてくださった。

 だから今度も思い切って、頼んでみようと思う。もう遠慮などしているヒマがない。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 「ようこそ!肉体ブティックへ。」

 「あら、またアナタ?また殺されちゃったの?クーリングオフは……、ギリギリセーフってとこね。」

 「いえ、違います。実は治してほしい肉体がありまして、お願いに参上した次第でございます。」

 「まぁ!わたくしのことを頼って、会いに来てくれたの?嬉しいわ。異世界の木偶の坊(神様)よりもわたくしを頼って?」

 久しぶりの異世界だから何を着ていこうかしらと、女神様はクローゼットの中を物色されている。

 「え?このままでいいの?うーん、行くけどちょっと待って。おしゃれをしなくなったら女はお終いなのよ。あらら……引っ張らなくても、行くから。ちょっと待って……。」

 「女神様はもう今のままで十分すぎるほど、お美しいですよ。ほら、早く!」

 女神様の顔がパァっと明るくなり、嬉しそう。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 もう半ば無理やりの状態で元のルビンスタインの自室へ女神様を連れてきたら

 「あら、木偶の坊もいるじゃない?はっはーん。木偶の坊では、役に立たなかったってことね。ラジャード!退いて!」

 女神様に言われ、歯ぎしりするラジャード様(異世界の神様)。

 「どれどれ?ふむふむ。この男性がキャサリンのいい人?」

 「ち、違います。」

 キャサリンは、リチャードの兄上様との仲を誤解している女神様に真っ赤になりながら、弁明している。

 「ということは?そっちのアナタ?」

 リチャード様を指さし、リチャード様もしどろもどろになりながら

 「そうありたいと願っています。」

 わ!わ!わ!キャサリンは大慌てで、真っ赤になり俯いている。

 「いいわね。キャサリンちゃんをよろしく頼みます。え?わたくし?女神です。キャサリンちゃんから依頼を受けて、三途の川から飛んできましたのよ。ほほほ。」

 リチャード様は、さんずのかわ?とはなんぞや?という顔をされている。

 「うーん、これはアレだね。アレだということはわかっている?」

 「はい、クド(毒)です。」

 「そううまく言えたわね。解毒はうまくいったみたいだけど、まだ細胞の中に潜んでいるのよ。それを除去しなきゃね。」

 女神様はそう言いながら、両手を広げて念入りに、兄上様のカラダの上を念じている。

 兄上様のカラダからは、時折、黒い煙のようなものが出て行くのが見える。
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