ようこそ肉体ブティックへ~肉体は魂の容れ物、滅んでも新しい肉体で一発逆転人生をどうぞ

青の雀

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偽聖女様を虐めたと成敗される

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 飛び降り自殺した男子高校生の下敷きになったというのに奇跡的に助かった花園まりあは、マスコミから大きく取り上げられ、またその容姿がいいこともあって、奇跡の女子大生として、もてはやされる。

 キャサリンは、自分で自分に結界を張っていたから、ほとんど無傷で、そのかわりぶつかった衝撃で記憶を失くしてしまったという設定になる。

 両親や一緒にお買い物に来た友達が病室に駆けつけるが、誰が誰だかその関係性もわからない。

 お友達は、その場にいたので事情がわかっているので自己紹介を始める。

 「まず私は、赤薔薇女子大学1年生で同じ栄養学部の同級生で新藤真紀子です。今日、3講目が休講になったので、ケーキバイキングを兼ねてお買い物に来ました。まりあちゃんは、真っ赤なワンピースを気に入り、試着したら少し大きめだったので、諦めてタータンチェックのスカートを買われました。早く思い出してね。」

 「次は私、同じく赤薔薇女子大学の1年生で家政学部の篠原まゆみです。第2外国語の講義が休講になったので、真紀子ちゃんに誘われて昼食代わりにケーキを食べにきました。よろしくね。お寿司12貫とケーキ10個をたいらげ、今はお腹ぽんぽんです。」

 「最後に私は桜井美由紀。みゆと呼んでくれたらいいよ。私は音楽学部の1年生一浪しているから、アナタたちとは一つ年上なのよ。語学が休講になったからケーキにつられてついてきちゃった。早く良くなってね。」

 「まりあちゃん、私たちがまりあちゃんの両親よ。親の顔もわからないなんて、余程強い衝撃があったのね。そのうち思い出すと思うから、焦らずに気長にいきましょうね。」

 前世のルビンスタインの父のほうがはるかに男前だが、今の父も悪くはないダンディな感じで母は優しそうな感じがする。

 からだは大丈夫なので、すぐに退院が決まったのである。

 ほどなくして大学へ行くとマスコミが待ち構えていて、雷魔法?のような光るフラッシュを大量に浴びせられる。

 そして女性リポーターが追いかけてきて、

 「落ちた時の記憶を失われたと伺いましたが、実際はどうだったのでしょうか?何か恐怖心のようなものは感じませんでしたか?」

 「何も覚えておりません。」

 「そうでしょうね?上から何か降ってくる感じとかはありませんでしたか?声が聞こえたとか?」

 「何も覚えておりません。」

 律儀に答えると、ますます図に乗って、どんどん質問が来る。そのうちキャンパス内にまで入り込んで、一緒にいた同級生に質問が及ぶ。

 「歩いていたら急にドスンという音がして、まりあちゃんが倒れていたのよ。その他のことは何もわかりません。」

 「怖かったですね。人が落ちてくるなんて想像できなかったでしょうね。」

 迷路のような大学構内を抜けて、ようやくマスコミ連中を撒く。これが毎日続くものだから、正直うんざりしている。

 カトレーヌのところでのテレビでは、ドラマやニュース、映画に歌番組しか見てなかったので、もっとバラエティやワイドショーを観て勉強しとけばよかったと悔やまれる。

 だいたいキャサリンことまりあは、将来の進路を何も決めていない。たまたま栄養学部だったので、将来は調理をする人か、学校給食や病院食の献立を作る人になりたいと漠然と考えているに過ぎない。

 そうこうしている間に真紀子ちゃんが、合コンの誘いをもってきた。相手は東都大学の学生さんらしい。スポーツで頭角を現し、世界大会で優勝しているつわもの。

 対して赤薔薇の目玉は、奇跡の女子大生のまりあである。

 スポーツ選手などは、ゲンをかつぎ奇跡の女子大生から運をもらいたいと目論んでいるよう。

 そこでなんと!まりあは会いたくない人?あの兵士さんが転生され、今や普通の大学生となっている安林大輔と出会ってしまう。

 合コンで王様ゲームが始まると、大輔はまりあの横に陣取り、耳元で

 「アンタ、あのブティックにいた娘だろ?」

 「え?違います!」

 「嘘つけ!人が降ってきて、無傷なわけないだろ?聖女様の魔法を使ったんだろ?」

 「兵隊さんこそ、なんでこんなところにいるのよ?裏切り者を成敗するんじゃなかったの?」

 「大統領が暗殺されて、俺を売った奴らは皆、戦犯で処刑されてしまったよ。俺は平和な時は祖国でプロのサッカー選手だったんだぜ。それでスポーツ推薦で一発合格よ。」

 「でも女神様、アナタのことを怯えていたような気がするわ。」

 「ハハハ。それはだな、俺のカラダの本来の持ち主のかわりに仕返しをしていたからだ。俺がカラダを借りて生き返った途端、俺が中に入っているとも知らずにまた性懲りもなくイジメをしてきたからな、ほんの少しボコボコにしてやったんだ。それでクーリングオフの最終日にそのカラダを返品し、またイジメられっ子のカラダに入る。イジメをやっていた奴がいくらアイツにやられたと反論しても、死んだ人間がどうやって仕返しをするのかと逆に問われ、今までイジメをしていたことがバレ、退学処分になり少年院へ送られ、中には精神を病んでいると言われて精神病院へ措置入院させられ一生出て来れなくなる。なんせ俺には兵役の時に培ったシステマがあるからな。素人の不良が束になってもかなわないさ。」

 「うそ!それ何回繰り返したの?」

 「もう数えきれないぐらいかな?おかげでニッポンの不良どもは、ずいぶん減ったぞ。」

 大輔は胸を張る。

 はぁ。それで女神様がもう思い出すのもイヤと言う顔をされていた理由がわかる。

 それからというもの大輔は頼みもしていないのに、まりあのボディガードを買って出たのだ。

 確かにマスコミに自称ファンと名乗る男性から付きまとわれ迷惑していたから、大輔なら強いから心強い。

 それに元サッカー選手で兵士の経験もあるから、動体視力に運動神経が抜群なところがいい。

 大輔は意外にも紳士的で、やはりニッポン男児の魂を持っていないからか?レディファーストで接してくれる。

 最初は怖がっていたキャサリンも同じ転生者と言うこともあり、次第に打ち解けていく。

 「俺はこう見えても祖国では、敬虔な信徒だったんだぜ。だから聖女まりあ様をお守りする義務がある。」

 「プロのサッカー選手だったってことは、結婚していなかったの?」

 「してたさ。でも戦火で空爆され、みんな死んでしまった。だから志願して兵として戦争に行ったんだ。生きていたら上の娘は5歳で、下は3歳になっているだろうな。」

 「ごめんなさい。辛いことを思い出させてしまって。」

 「もう過去のことさ。今はこのカラダでできることを精一杯するだけさ。」

 「わたくしに何かして差し上げることはできますか?聖女の魔法は教えてあげられないけど?」

 「うん。できれば俺に結界を張ってほしいことぐらいかな?高校時代からプロのスカウトに目を付けられ、同級生は不審な事故でみんな選手生命を絶たれている。ライバルのせいだとは思うが、それが誰か特定できないし、証拠もない。だから、聖女様の傍にいるということは俺の安全のためでもあるんだ。」

 「わかったわ。そんなことぐらいなら、お安い御用よ。わたくしも3度死んだときに異世界の神様から……異世界の神様の奥様は元人間の聖女様だったのよ。その人から自分で自分に結界を張る方法を伝授していただいたの。それでこのカラダを選んだようなものよ。上から人が降ってきても結界があるので、助かるからね。」

 「結界か。やっぱりな……。それにしてもまりあ様は、3回も殺されているのか?俺がいたら聖女様にそんな真似、絶対にさせない!」

 「ありがとう。では手短にさっさと済ませちゃいましょ。」

 まりあは、大輔に自分にしがみつくように言い、両手を高く上げ掌を合わせる。自分の分も二度掛けするためで、あの衝撃で結界はビクともしていないが、念のためである。

 「はい。もう結界は張ったわ。いつまで抱きついているの!」

 「あ、すみません。聖女様はいい匂いがしたので、つい……。」

 男性からそんな風に言われたことがなかったので、とても恥ずかしい。真っ赤になりまりあは俯く。

 その恥ずかしがっている姿を見て、大輔にも伝染し、大輔も真っ赤になりながら照れて頭を掻いている。

 と、そこへものすごい殺気を纏った複数人が近づいてきた。その殺気は、まりあでさえも気づくぐらいの魔物クラスの狂気じみた殺気。

 「おうおう、さっきから何イチャイチャしてやがんだ。どこかで見たことがある娘だと思ったら奇跡の女子大生様じゃねぇか。ちょうどいい、くたばり損ないが二人揃っているというわけか。お前さんには、何の恨みもねぇが、ここであの世へ行ってくんな。」

 金属バットやら、出刃包丁を手にした男たちに取り囲まれてしまったが、なんせ結界を張ったばかりなので、その威力のほどがわからない大輔。

 まりあに小声で

 「俺が奴らを惹きつけますから、聖女様はその間に逃げてください。」

 「そんなことできるわけがないでしょ。」

 「男のほうは、足を狙え!女のほうは、味見してから売り飛ばしてやってもいいぜ。」

 舌なめずりをしながら、男が近づいてくる。

 まりあはリュックサックの両脇のポケットから催涙スプレーを二本ずつ取り出し、二本を大輔に渡し、自分も両手に催涙スプレーを持ち、構える。このスプレーは心配だからと両親が持たせてくれていたもの。

 「せーの!」の掛け声とともに、一斉にスプレーを放つ。

 あたり一面真っ白になる。

 「何しやがんだ。このアマ!」

 必死に目元を押さえる悪人ども。

 どうにか目を開けた時には、二人の姿は忽然と消え失せていたのだ。

 まりあはスプレーを放ってすぐさま、二人に隠蔽魔法をかけ、浮遊魔法で空高く飛んでいたのである。そして上空から、悪人どもの動向を見張っている。

 どこへ行ったと探し回っている悪人どもの頭上から網をかぶせる。

 まりあは隠蔽魔法を解き、悪党どもの前にでる。そして大輔は、「誰に頼まれた?」と尋問していくが、なかなか口を割らない。

 仕方なくまりあは、網を一人ずつ外し、1人ずつの尋問に変えた。ボスと思しき男が「余計なこと喋んじゃねぇ。」と喚くので、急遽、土魔法で小屋を作り、その中で尋問することにした。

 「お前。いったい何者なんだ?」

 「知らないのかよ?このお方はな、奇跡の聖女様だよ。」

 「はっ。嘘つくな!聖女様なんて、この世にいない!いるはずがない!言うに事欠いて、聖女様だと?ふざけるな!サッカー選手って言うのはあれだな、頭でボールを蹴っているからおかしいんだな?」

 その男は右手の人差し指を自分の頭の横に持っていき、くるくるとまわしている。

 「これはあれね。女神様に頼むしかないかもしれない?どうしても白状しないなら、死んでもらうけどいい?」

 「ほらな、人殺しをする聖女様なんて、聞いたことがないぜ。やっぱり大ウソつきだったんだ。」

 「わたくしは異世界人ですから、あなたを消すことなどたやすいことですわ。」

 「殺れるものなら殺ってみろってんだ。」

 「では、とりあえず凍死してもらいましょうか?」

 まりあは土魔法を消し、代わりに氷で小屋を作る。まりあと大輔は浮遊魔法で下から30センチぐらい上のところで浮かんでいる。

 「それはどんな手品だ?」寒さに耐えられなくなった悪党は、震えながら聞く。

 それを無視して、さらに氷の腹巻を上からかぶせる。もうこれだけで身動きが取れなくなる。

 だんだん息も絶え絶えになってくる。顔色はほとんど青。

 「ま、まさか本当に殺るつもりなのか?言う言う。有望なサッカー選手をNリーガーにさせないために、ある人が大金を支払って……、俺たちはただ雇われただけだ。何人か高校生を痛めつけただけで、まだ誰も殺してない!」

 「ばか!喋るな!」

 「うっせえ!てめえも氷漬けにされろってんだ。」

 まりあは、悪党全員を氷漬けにして、異空間収納に放り込んだ。

 もうこれは神様の範疇だから、このまま殺すかどうか女神様に判断してもらうことにする。

 大輔とともに女神様のブティックへ転移魔法で行く。
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